上 下
84 / 100
第2章 アリタリカ帝国に留学

84 『未開の迷宮』

しおりを挟む
 私は『未開の迷宮』の101階に居るそうです。

 始めて会った5人の冒険者達と焚火で焼いたクモ(キラースパイダーという魔物)を食べて屑野菜スープを飲みました。


「アダモさん、この子は何処の誰なの?」

『御嬢様は私のマリエル様ですぅ。ズガガガアアアンッ! ドッゴオオオンッ! ズッキュウウウンッ! な、御嬢様なのですぅ』

「「「はぁあ?」」」


「あのねぇ、生まれた国とか住んでる街を聞いてるのよ?」

『生まれたのはアラカワクで、住んでるのはガクインリョですぅ』


「う~ん、聞いたことありませんねぇ、マリエルちゃん思い出したぁ?」

「いいえ、全然ピンとこないです。頭も痛く成りませんでした」


「アダモさんとマリエルちゃんは、どういう関係なのかしら?」

『まぁ、母子おやこですねぇ』


「はぁあ!? 年齢が近すぎるだろ! 何歳の時の子供なんだよ?」

『私は今年生まれましたぁ』


「そんな訳あるかい! あんたが母親でも無いんかい?」

『マリエル様が私のお母様ですぅ』


「余計におかしいだろう。心配してるんだから真面目に答えてくれよ」

『本当ですぅ。私はマリエル様に作られた護衛ゴーレムですからぁ』

「「「……」」」


「こんな、ゴーレムって有るの? ゴーレムは土とか石とかだと思っていたわ」

『私はアダマンタイトとゴムとカツラで出来ていますぅ』

「「「ヘエェ……」」」


「どうするか? このまま先に進むか、この子を返す為に戻ろうか?」

「せっかくここまで来たんだから、この階だけ攻略しようぜ」

「そうだなぁ。……お嬢ちゃん、俺たちはこの階のボスを倒したいんだ。連れ帰るのはその後で勘弁してくれるかなぁ?」

「「は~い」」


「はぁ、軽いな~。ここがどういう所か知らないんだよな?」

「はい」


「ここはトップクラスの冒険者パーティが、命懸けでやっと辿り着ける危険な101階なんだ。お嬢ちゃん1人で生き残ってる事が既に奇跡なんだぜ!」

「はい」


「まぁいいや。サクッとボスを倒して地上に送り届けてやんよ」

「お願い致します」




 又、キラースパイダーが出てきました。5人はかなり苦戦しましたがキラースパイダーを倒しました。

「ふぅ、強かったなぁ……」

「あぁ」


 この階はクモ、サソリ、ムカデ、ダニ、サソリモドキ、ウデムシ等、巨大で足の多い節足せっそく動物のエリアだったようです。
 毒針や毒液、酸液、長い触手や足による鋭い突き刺し攻撃で襲ってきます。いずれの魔物も体長が2メートルぐらいありました。気持ち悪い見た目をしてましたが、冒険者達はそれらの肉を美味しいと言われてる部分だけ切り取ってバッグに入れてました。勿論魔石と素材も持って帰ります。

「それって、美味しいのですよね?」

「そうよ、珍味なのよ」

「……」


「さぁ、この先がボスエリアの筈だ。体力と魔力を確認して気合を入れ直すぞ!」

「「「「オゥ」」」」



 少し開けた場所にテーブルの様な大きな石台があります。
 そして、その石台に文字が刻まれていました。

「何々? クモの複眼、ダニの口器、ムカデの触角、サソリの 鋏角きょうかくを石段に乗せるのか……」

 冒険者達は集めた素材を書かれた通りに乗せていきます。
 すると、何処からともなくカサカサと音が聞こえてきました。


 シャアアアアアッ!

 フロアボスのクイーンデススパイダーが現れました。
 体長5メートル以上あり、足1本が7メートルぐらいありそうです。


 シャカ、シャカ、シャカ、シャカ、シャカッ!

 クイーンデススパイダーが我々に近づいてきて立ち止まり、睨み付けてきました。


「「「アッ!」」」

 一瞬の沈黙を裂き、突然アダモがクイーンデススパイダーに突進します。
 誰も止める隙がありませんでした。


 アダモは真っ直ぐ突き出されたクイーンデススパイダーの長い脚を手刀で切り裂きます。

 ズッシャアアアアアッ!


 次から次へと繰り出される長い脚を全て手刀で切り落としていきました。

 ズシャッ! ズシャッ! ズッシャアアアアアッ!


 そして、クイーンデススパイダーの腹を蹴り上げて、真後ろにひっくり返しました。

 ドッカァアアアアアンッ!


 今度は仰向けになったクイーンデススパイダーの腹部にまたがり、手刀を真っ直ぐ突き刺します。

 ブッシャアアアアアッ!


 その手刀を包丁で切る様に下に切り裂きました。

 ズッシャアアアアアァァァァァッ!


 更に、クイーンデススパイダーの左胸の辺りに、再び手を突っ込んで引っ掻き回し始めます。

 グッチャグッチャ、ビチビチビチッ、ジュルジュル、ジュッポォォォォォンッ!


 アダモは引っ掻き回して魔石を探り当て、その手を引き抜くと高く掲げました。

『魔石、ゲットだぜえええええっ!』


「アダモちゃん、凄い凄い、良く出来ましたね」

 私はアダモの頭をワシャワシャと撫でて上げます。


「あらまぁ、大分汚れちゃいましたね。アダモちゃんを【洗浄】【乾燥】!」

 シュワシュワシュワワワアアアンッ!
 ホワワワワァァァンッ!

 クイーンデススパイダーの体液で汚れているアダモを綺麗にして上げました。


『はぁ、満足ですぅ!』

 アダモは達成感で充実した顔を見せました。

「あれ? 前にも同じ光景を見た気がするわ。デジャブって言うのかしら……」


「おい、俺達のボス戦への覚悟は、一体何処へ向ければいいのだろうか?」
 と、男の冒険者が呟きました。

「まぁ、101階を攻略した事には成るのだから、良しとしようぜ」

「はぁ……とりあえず、それでいいかぁ」

「ギルドに帰っても黙ってれば大丈夫さ」

「「「はははっ」」」


「ところでマリエルちゃん、今魔法を使ったよね。何か思い出したんじゃないの?」

「あっ、本当だ。 無意識の内に使っちゃいました。でも特に何も思い出してませんね」

「そう……」


 そんな事を話してる内にクイーンデススパイダーの体が消えて、周辺に大量のドロップアイテムが現われました。

 バラバラバラバラ……、


「ドロップアイテムは全て皆さんがお取りください」

「えっ、いいのか? レアアイテムも沢山有るぞ」


「地上に案内して貰うのですから、どうぞどうぞ」

「じゃあ、遠慮なく貰っとくよ。ありがとな」


「こちらこそ、アダモがお邪魔してすいませんでした」

「な~に、いいって事よ」

「「「ありがとなぁ」」」


「それじゃあ、きょうはこれで帰るとするか?」

「「「おぅ」」」


「じゃあ、転移門の魔法陣を探して地上に戻ろう」

「は~い、お願い致しま~すぅ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

糞ゲーと言われた乙女ゲームの悪役令嬢(末席)に生まれ変わったようですが、私は断罪されずに済みました。

メカ喜楽直人
ファンタジー
物心ついた時にはヴァリは前世の記憶を持っていることに気が付いていた。国の名前や自身の家名がちょっとダジャレっぽいなとは思っていたものの特に記憶にあるでなし、中央貴族とは縁もなく、のんきに田舎暮らしを満喫していた。 だが、領地を襲った大嵐により背負った借金のカタとして、准男爵家の嫡男と婚約することになる。 ──その時、ようやく気が付いたのだ。自分が神絵師の無駄遣いとして有名なキング・オブ・糞ゲー(乙女ゲーム部門)の世界に生まれ変わっていたことを。 しかも私、ヒロインがもの凄い物好きだったら悪役令嬢になっちゃうんですけど?!

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

処理中です...