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第2章 アリタリカ帝国に留学

77 ヘラクレスビートル戦

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 私達は髭面男フィリップ達と一緒に、クヌギの大木に向かいました。


「じゃあ、蜂蜜を木に塗るよぅ。準備オッケーだよね?」

 ケンちゃんが皆の顔を見回しました。

「「「オゥ」」」
「「「は~い」」」

 黄色い熊のヌイグルミが、蜜壺のハチミツをクヌギの木に塗り付けています。

 ヌリヌリヌリヌリ……、

 絵面を想像してはいけません、漫画やアニメだったら著作権の問題が発生しそうです。


 すると、何処からともなく、虫の羽音が聞こえてきました。

 ブウウウウウゥゥゥゥゥンッ!

 フロアボスのヘラクレスビートルが現われました。
 体長4メートル以上あり、角だけでも2メートルぐらいありそうです。

 ヘラクレスビートルは大木ではなく地面に降り立ち、こちらに向き直りました。


「「「アッ!」」」

 一瞬の沈黙を裂き、突然アダモがヘラクレスビートルに突進します。
 私達は止める隙もありませんでした。

 アダモは真っ直ぐ突き出されたヘラクレスビートルの角を下から蹴り上げます。

 ズッガアアアアアンッ!

 ヘラクレスビートルの体が真後ろに5メートル程も跳ね上がり、ひっくり返ってしまいました。
 アダモは仰向けになったヘラクレスビートルの腹部に手刀を真っ直ぐ突き刺します。

 ブッシャアアアアアッ!


 その手刀を包丁で切る様に、下に切り裂きます。

 ズッシャアアアアアァァァァァ……!


 ヘラクレスビートルの左胸の辺りに、再び手を突っ込んで引っ掻き回し始めました。

 グッチャグッチャ、ビチビチビチッ、ジュルジュル、ジュッポォォォォォンッ!


 アダモは引っ掻き回して魔石を探り当て、その手を引き抜くと高く掲げます。

『取ったどおおおっ!』


「アダモ! そこは、ゲットだぜえええっ! って、言うのです」

「サチコはポテモン派か? 俺はやっぱり無人島派だな」


「はぁ、ケンちゃんがアダモちゃんに教えたんだね?」

「うん」


 エリザとエリシャナは膝をついて下を向き、青い顔でリバースしながら嗚咽おえつしていました。

「ウップッ……、▼¥■&$%●▲……、ハァ、ハァ、ハァ」
「ンッンッ、オップ……、▼$%●¥■&▲……、ハァ、ハァ、ハァ」


「アダモちゃん、凄い凄い、良い子良い子。良く出来ましたね」

 私はアダモの頭をワシャワシャと撫でて上げました。

『あぁん、御嬢様に頭の先端をこすられると気持ちいいですぅ』

「そう……でもねぇアダモちゃん、専守防衛って言ったでしょう?」

『は~い、専守防衛しましたですぅ』


「えっとぅ……アダモちゃんは、ヘラクレスビートルを攻撃して倒しましたよね?」

『攻撃は最大の防御と言いますぅ』


「専守防衛とは『専ら守りに徹する』と、言う意味ですよ」

『は~い、フレニ様を専守防衛する為に先制攻撃して倒しましたですぅ』


「はぁ……まぁ、結果オーライって事で良しとしましょうね」

『は~い』


「「いいんかい!」」

 サチャーシャとケンちゃんが、ピッタリ息を合わせて突っ込みを入れてくれました。


「あらまぁ、大分汚れちゃいましたね。アダモちゃんを【洗浄】【乾燥】!」

 シュワシュワシュワワワアアアンッ!
 ホワワワワァァァンッ!

 私はヘラクレスビートルの体液で汚れてるアダモを綺麗にして上げます。

『はぁ、スッキリですぅ!』

 アダモはヤリキッタ感を出して、サッパリした顔をしていました。


「俺達は一体何しにここへ来たんだろう?」

 と、剣を振るう機会が無かった手持ち無沙汰なフィリップがメンバー達に言いました。

「まぁ、たぶん俺達も11階を攻略した事に成るんだろうから、良かったんじゃないか?」

「はぁ……とりあえず、そうしとこうかなぁ」

「ギルドに帰っても余計な事を言わなければ大丈夫さっ」

「「「はははっ」」」


 そんな事を話してる内にヘラクレスビートルの体が消えて、大木周辺に大量のドロップアイテムが現われました。

「私達は魔石が欲しいのですけどぅ?」

「おぅ、お嬢ちゃん達が倒したんだから、遠慮なく持っていってくれ」


「有難う御座います。それでは他のドロップアイテムは全てお譲り致しますね」

「えっ、本当にいいのか? レアアイテムも有りそうだぞ」


「私達は上質の魔石が欲しいだけですので、どうぞどうぞ」

「じゃあ、遠慮なく貰っとくよ。ありがとな」


「こちらこそ、有難う御座いました」

「「「ありがとうございました~」」」
「「「ありがとなぁ」」」


「それじゃあ、きょうはこれで帰るとするか?」

「「「おぅ」」」


「私達も一緒に帰りますわ」

「おぅ、そうか。じゃあ帰ろう」


 今回は11階に有る帰りの転移魔方陣からフィリップ達と一緒に帰ります。

「なるべくヤラカサナイためなのですよ」

「って、きょうも既に結構ヤラカシタよね!」
「ケンちゃん、シィィィッ!」


 フィリップさんが魔方陣を起動してゲートを開きます。

 ブゥウウウウウンッ!


 私達はフィリップさん達と一緒に地上に戻って来ました。

「お譲ちゃん達もギルドに行くのか?」

「行った方がいいのですか?」

「クエスト報酬を貰うならな」


「エリザとエリシャナにお願いしても良いですか?」

「「はい、畏まりました」」


「フィリップさん達も馬車ですか?」

「おぅ、一緒に乗っていくか? ギュウギュウ詰めになっちまうがな」

「私達も馬車で来てますので結構ですわ。有難う御座いました、ごきげんよう」

「あぁ、またな」

 フィリップは手をヒラヒラさせながら馬車に向かいました。


「ケンちゃん、冒険者ギルドに【転移門】を繋げて下さい。エリザとエリシャナが使いますから」

「オッケー。冒険者ギルドに【転移門】オープン!」

 ブゥウウウウウンッ!


「私達も馬車に乗って帰りましょう」

「オッケー。学院寮の近くの森に【転移門】オープン!」

 ブゥウウウウウンッ!


【転移門】スキルを秘密にしたいので、ケンちゃんは近くの森にゲートを繋げたのでした。
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