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第2章 アリタリカ帝国に留学

62 聖アリタリカ神学院4年生

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 聖アリタリカ神学院は各国の寄付金(半強制)により運営されています。
 勿論、王族や上級貴族なら入学金や授業料を気にする事は無いと思いますが。貴族も平民の聖女候補も、寮費を含めて神学院の授業料は全額無料だそうです。
 ただし、側仕えや護衛騎士の宿泊費と食事代は有料です。

 聖アリタリカ神学院の授業内容は一般的な教養が中心で、宗教学校的な授業は必修課程には有りません。
 聖女課程は専門課程で、光属性魔法を持ってる平民には専攻を義務付けられていますが、貴族は選択科目になるのです。
 因みに私は聖女課程を選択しませんでした。学院長や教師達はガッカリです。


「私は聖女になるつもりは有りません。成人したら、気儘に旅行や研究や採取等をしたいのです」

 誰かに将来の事を聞かれた時は、いつもその様に答えているのでした。


 その他に騎士課程と魔法課程が有りますが、そちらは基本課程が必修で、応用課程は選択科目に成ります。
 ダンス等の社交授業は全生徒の必修に成っています。
 国ごとに風俗習慣はあるでしょうが、外交儀礼としての一般的な社交術を必修授業として全生徒が学ぶのです。

 アストリア王国からは、
 第1王子アレクシス・アストリア。
 騎士団長の息子ロズガルド・トーランド。
 宰相の息子ブランシュ・ロッテンシュタイン。
 将軍の息子セフィロス・スネイブル。
 侯爵の息子レイモンド・アンダーウッド。
 公爵令嬢マルグレーテ・ロゼリアル。
 伯爵令嬢モモリル・バクルー。
 も、一緒に留学しました。

 王子と王女は無条件で成績上位者が入るダイヤモンドクラスに入ります。
 その次はゴールドクラスで、3番目はシルバークラスです。

 その他の貴族と聖女候補は成績や品行等により、クラスが振り分けられると聞いています。
 私はダイヤモンドクラスに入りました。

 学院の4学年から編入する訳ですが、在校生との勉強レベルの調整を行う為に、1年間は留学生だけのクラスに成ります。
 いきなり在校生と一緒のクラスに成ると勉強の進捗しんちょく具合が合わないからです。

 留学生同士でも差が有ると思いますが、1年間で勉強不足を補わなければなりません。
 幸いにもアストリア魔法学院は聖アリタリカ神学院と勉強レベルが同じぐらいの様です。
 私達アストリアからの留学生は、すんなりと授業を受け入れる事が出来ました。
 しかし、遠く離れた国からの留学生や魔族や獣人や平民達は、勉強の進み具合に苦労している様です。


「お友達になるチャンスですわ!」

 私は授業中にクラスメート達を観察して、苦手そうな所をそっとアドバイスしてあげます。
 皆の前で大きな声で勉強出来ない所を指摘したりしませんよ。
 良かれと思ってした事が恥をかかせて、プライドを傷つけない様に配慮しないとね。

「でも男の子にアドバイスするのはちょっと難しそうです。何故か男の子は女の子に教えられるのを嫌がりますよね……何ででしょうか?」

「マリーったら、そんな事も分からないのですか?」

「あら、モモちゃんは、分かりますの?」

「勿論ですわ! 異性として意識するからですのよ。女子と特別な関係と成るのが恥かしいのです!」


「まぁ、勉強を教えあう事が特別な関係に成るのですの?」

「勿論ですわ、異性と勉強を教えあうなんて、意識してなければ出来ませんでしょう?」

「私は特に意識してませんよ、クラスメートなら誰でも勉強を教えあえると思いますけどぅ……」

「そうかしら、私ならやっぱり意中の人と教えあいたいですけどね」

「あらまぁ、モモちゃん! 誰なんですか、その殿方は?」

「い、言えませんわ、まだ内緒なのです。上級貴族がその様な発言を簡単にする事は…いけませんのよ!」


 普通上級貴族は早くから婚約者が決まりますが、アストリア王国ではアレクシス王子が未だ婚約者を決めていない影響で、殆どの上級貴族の同級生が婚約していません。御令嬢達の親は王族と連なる可能性を探り、御子息達の親は王子が婚約者を選ぶのを待って派閥を探っているのです。
 マリエルは、王族も派閥も考えた事はありませんが、ただお友達と恋バナがしたいだけなのでした。

「じゃあじゃあ、後で2人きりになったら教えてねぇ?」

「む、無理ですわ。教えられませんわ」

「またまたぁ、ローザンヌ特産のチーズケーキを一緒に食べながら、お話ししましょうねぇ?」

「あうっ、チーズケーキ……だけ、ありがたく頂戴しますわ」


「グレーテちゃんも、ヤッパリ意中の殿方がいるのですか?」

「うふふふふ……わたしもチーズケーキのご相伴に預かりますわ。そう言う話題も含めましてね」

「そうですね、この場はとりあえずチーズケーキの御約束だけしときましょう。おほほほほ」

 周りで耳を大きくして聞いているクラスメート達に気付いて、恋バナを打ち切りました。


 フランク王国のマリアンヌ・フランク王女は、ツンとして、ずっと私を無視しています。
 いわゆる取り巻きの令嬢達もいらっしゃいますが。それらは皆、フランク王国の属国や同盟国の御令嬢達でした。

 マリアンヌが横目でマリエルを見ながら呟きます。

「私だって、ローザンヌのチーズケーキが食べたいですわ。どなたか手に入れられないのですか?」

「「「……申し訳有りません」」」


 そんな事は意に介さずに、マリエルは分け隔てなくクラスメートとお友達に成り、勉強も教え合いたいと思っていました。
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