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第1章 アストリア王国に転生

49 シュヴィーツ地方の解放

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 マリエルは、家と家の間を土壁で繋ぐ形を取って、魔力の消費を減らす工夫をしました。魔力枯渇で気を失った事を教訓にしたのです。
 ケンちゃんの【魔力譲渡】でマナを回復できますが、これから広い地域を浄化しなければならないので、魔力節約志向になったのでした。

 シュヴィーツ地方の大きな街であるヴィンタートゥール、ルツェルン、フリプール、べルーンと生きる者の姿が見えないと密偵から報告がきました。
 まるでゾンビタウンです、はたして生き残ってる人族は居るのでしょうか?
 サンクトガレン城にもゾンビや魔物が来ますが、【浄化】でゾンビを土塊つちくれにします。
 魔物は高くした城壁の上から、騎士や兵士が弓や魔法で撃退しました。


「まずは1番近い街ヴィンタートゥールへ向かいましょう」

「「「はい」」」



 マリエルと騎士団は、それぞれ従魔や馬に跨りヴィンタートゥールの街の外に到着しました。

「私が町全体を囲むように【聖域】サンクチュアリを発動しますから。ケンちゃんは、その後スグに【魔力譲渡】を私にしてくださいね」

「了解、マリちゃん」


「【土壁】を作れる者は、街の外側の家と家の間に土壁を作って下さい。そうでない者は材料は何でも良いですから、ゾンビが侵入出来ない様にバリケードを作ってください」

「「「畏まりました」」」


「それではいきます。【聖域】サンクチュアリ!」

 シュィイイイイインッ!
 キラキラキラキラ!

 雲の切れ間から強い太陽光が降り注ぎ、街の中に居る魔物達をまぶしく照らします。光の帯がゾンビを照らしていくと、ゾンビが次々と土塊つちくれに成って崩れていきました。
 ゾンビが全滅すると、今度は光の粒子がキラキラと中空に集結して、無数の光る剣が出現しました。
 沢山の光る剣が一斉に魔物達に降り注ぎます。光の剣が全ての魔物を一斉につらぬいていきました。
 光の剣に突き刺された魔物は、光の粒になり空に消えていきます。後には魔石が転がっているだけでした。


「マリちゃんに【魔力譲渡】!」

 ホワワワワァァンッ!

 私は、すぐにケンちゃんに魔力を分けて貰い、今回は気絶しないで済みました。


 マリエルと騎士団は小1時間程で町を壁で囲みます。騎士団員も【土壁】を使える者が多かったので、時間短縮ができました。
 それに今回は輜重で食料や回復薬も持って来ているので魔力枯渇をする者も出ませんでした。

 私達が中央の広場で食事をして休憩を取っていると、何処からか私達の活動を見ていたのでしょうか、ぞろぞろと街の住民が広場に集まってきました。


 1人の老紳士が代表して話しかけてきます。

「ありがとうございます、女神様と眷属の皆様。私達の願いを聞き届けてくださり感謝の念に耐えません」

「この御方はアストリア王国レオポルド侯爵の御令嬢マリエル様です。我々はマリエル騎士団と申します」
 エリザが老紳士に答えました。


「聖女と御評判の高いマリエル様でしたか。しかし、先程の御業みわざは、女神様のものとしか思えません。『女神様の御親友』として、御業みわざを行って下されたのですね」

「……確かにエイル様のお陰で街を救うことが出来たのでしょう。私達を助けてくださった神に感謝しましょう」

「はい、神に感謝します」
「「「神に感謝します」」」

(私が目立たない様にも気をつけないとね)


「聖女マリエル様、我々が備蓄していた食糧がありますので、ささやかながら、おもてなしをさせてくださいませ」

「いいえ、お気持ちだけ頂きます。あなた方は、これから復興の為に大変な苦労をするのですから、備蓄食料は大切にしてください。それにまだ助けに行かなければならない街が残っています。私達は次の街ルツェルンに一刻も早く向かいたいので、これで失礼いたします」


「御老人に提案があるのですが。サンクトガレン城に保護しているヴィンタートゥールの住民を、治安維持の為の兵士と共に、この町に連れてきたいのですが、宜しいでしょうか?」
 エリザが言葉を切りながらゆっくりと聞きました。

「はい、是非お願いします」


『ミミちゃん、ミミちゃん。応答願います』

『はい、マリエル様。感度良好です、どうぞ』


『これから転移門をヴィンタートゥールに繋げますから、治安維持の為の兵士と保護してる住民を城の中庭に集めてください』

『はい、畏まりました。少々お待ちくださいませ』


 〇 ▲ 〇


『マリエル様、準備できました。城の中庭に集合しております』

『は~い、それでは転移門を繋げますねぇ』


「サンクトガレンの中庭に【転移門】オープンッ!」
 ケンちゃんが呪文を唱えました。

 ブゥウウウウウンッ!

 サンクトガレン城に避難していたヴィンタートゥールの住民達は転移門で街に移動して、離れ離れに成っていた者との再会を喜びあいました。


 〇 ▲ 〇


 ヴィンタートゥールの街を開放したマリエル達は次の街ルツェルンに向かいます。

「まだ生き残ってる人が居るようですから、早く助けに行きましょう」

「「「はい」」」




 同じ様な行動を残りのシュヴィーツ地方の各街で繰り返して、1日に2つの街を解放して行き、3日で6箇所の街を開放しました。

 この6ヶ所の街をそれぞれ壁で囲んで魔物の侵入を防ぎ、その他の小さな町の住民達も、とりあえず避難して貰ったのです。


「私達は女神エイル様のお導きで助けに参りました。神に感謝してください」

 エリザや騎士団員にそう言って貰い、なるべくマリエルの名が挙がらないようにして貰いました。


「だって、面倒で堅苦しい事は避けたいもの。私は冒険家で植物博士か動物博士になるのよっ、王宮には住みたくないの!」


 マリエル騎士団は更に魔物とゾンビを西に追い詰めていきます。
 フランク王国との国境に近いライン川、アーレ川、点在する湖を結んだ線の西に追いやり。橋を切り落し、浅瀬の渡河可能地点の川岸に土壁を築き、物見櫓と歩哨を立てて防衛線を構築しました。

 ただし、魔物とゾンビの為の防衛線です。決してフランク王国の為の防衛線ではありませんよ。
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