上 下
43 / 100
第1章 アストリア王国に転生

43 街道整備

しおりを挟む
 レオポルド辺境伯領は、元々アストリア王国の西側国境を守るウォルフ辺境伯領でした。
 そこへ私のお父様が婿と成り、名称もレオポルド辺境伯領に変えたのです。

 アストリア王国西隣にはフランク王国が有り、長年対立していましたが。フランク王国は私を誘拐して、父レオポルド辺境伯を寝返らせようとしたのです。
 しかし私が、捕まっていたサンクトガレン城を逆に攻略してしまった為に、レオポルド辺境伯は領土をフランク王国側に大きく広げる事に成ったのです。

 その功績でレオポルド辺境伯はレオポルド侯爵に陞爵しましたが、領土は西のフランク王国側に突出してしまいました。その為、領都ウォルフスベルクは侯爵領の中で東に拠り過ぎているのです。

 それに、別荘であるリヒテンシュタイン城とサンクトガレン城の間には、山が有り交通の便が悪いので、領土を維持する為には何らかの対策を取らなければなりません。
 今の所はケンちゃんの【転移門】で移動していますが……。

「ロベルト騎士団長、高価だがサンクトガレン城に転移の魔道具を設置しようかのぅ。それぞれの城に『転移の間』を作り、相互に行き来出来る様に管理するのだ」

「侯爵様、転移には魔力を沢山使いますし魔道具も高価です。それに、緊急時に一度に大量の兵士や物資を運ぶ事も出来ません。平民や商人の移動の為にも、やはり街道を整備しなければならないでしょう」


「ふむ、谷に橋を架け、峠にトンネルを掘らなければならないか」

「はい。それでは、土属性魔法を使える者を集めて、週明けに視察に行って参ります」

「うむ、ワシも現場に出向くとしよう」


 〇 ▼ 〇


「ケンちゃん。今の魔力は、どのぐらい溜まってるの?」

 ケンちゃんは魔力量の上限が無く、走ればドンドン魔力が溜まっていくのです。


「オークとの戦闘で結構使ったけど、真面目に毎日30分ジョギングしてるから、まだ1億以上有るよ」

「うふふ、成人病対策をしてる中年男性みたいだね。でも魔力量1億って、異世界転生小説でも聞いた事が無いチートだね」

「しーっ! マリちゃん。『チート』って言わないで!」

「あら、今更だわ。私達とっても『チート』な存在でしょ」

「そうだけどぅ、なるべく隠そうよぉ」

「そうよねぇ」


「そう言えば、サンクトガレン城が又襲われない様に、そして街が発展する様に、街道を整備した方が良いんじゃないの?」

「そうよねぇ、【転移門】が無い人達は行き難いよね。私達で街道を整備しましょうね」





 アストリア魔法学院が休みである次の日曜日の朝食後……。

「ケンちゃん、ピーちゃん、スズちゃん。【転移門】で街道整備に行きましょう」

「オッケー」
「は~い」
「キュルキュル」


「マリエル様、侯爵様に報告しますから待って下さい、私も行きます」

 マリエルの私室の壁際に控えていたエリザが慌てて言った。


「サンクトガレン城郊外に【転移門】オープン!」

 ケンちゃんがエリザに忖度せずに詠唱してしまいました。

 ブゥウウウウウンッ!


「「「行ってきま~す」」」
「キュルキュル~」

「あ~っ、私も行きまーすっ!」

 ドアノブに手を掛けていたエリザは、急いで引き返してきてギリギリで【転移門】を潜りました。


「もうっ、お嬢様っ! 置いてかないで下さい。私はマリエル様の護衛騎士なんですから」

「うふふ、エリザ。私の護衛騎士は大変ですね、早く馴れて下さいね」

「はぁっ、又、侯爵様にお叱りを頂いてしまいます」


 私達は土属性魔法で山を削り、谷を埋め、石を運びアーチ状に積んで橋を架け、トンネルを掘りました。

 4人とも魔力を出し惜しみせず、夕方まで街道整備にいそしみました。
 ケンちゃんの1億の魔力を【魔力譲渡】で分け合いながら、丸1日働き通したのです。


『ケンちゃんが真面目に溜めた魔力を、社会の為に生かせる様に【魔力譲渡】のスキルを上げましょうね』

 エイルちゃんがそう言って、ケンちゃんにスキルを増やしてくれたのです。
 エリザも土属性魔法の適正を持っているので、街道整備を手伝って貰いました。
 レオポルド家の者は皆、土属性魔法が遺伝している様ですね。


「マリちゃん、魔力量が残り1000を切ったから、今日はもう帰ろうよ?」

「そうね、ケンちゃん頑張ったんだね。良い子良い子!」

「へへぇ。それほどでも無いよぅ」


「ピーちゃんも、スズちゃんも、良い子良い子! ありがとうね」

「キュルキュル」
「は~い」


「エリザもご苦労様でした」

「いいえ、お役に立ててよかったです。それにしても頭が痛いのです、吐き気もしますし……」

「あははははっ、魔力酔いだよ。レベルが沢山上がったんだね」
 と、ケンちゃんが笑ってました。


「アストリア王国の王都アンディーヌに【転移門】オープン!」

 ブゥウウウウウンッ!


 私達は王都アンディーヌの屋敷に帰りました。
 疲れたエリザはお父様への報告も忘れ、スグに寝てしまったようでした。


 〇 ▼ 〇


 翌日、レオポルド侯爵と騎士団は街道整備の為に、視察に来ていました。

「侯爵様、街道の拡張整備工事が終わっています!」

「何と……これはマリエルの仕業だな! 又、黙って勝手に行動しおって、エリザは何をしているのだ!」


「私達は街道整備の視察を続けます。大まかな所は出来てる様なので、侯爵様は王都の屋敷にお帰り頂いても結構で御座います」

「うむ、後は任せたぞ」

「はい」


「アンディーヌに【転移】!」

 シュィイイイイインッ!


「エリザ!エリザ!」

 マリエルを学院に送った後、エリザは魔力2日酔いと筋肉痛で、ベッドで寝込んでいました。


 ガチャリ。

「はい、侯爵様」
 寝巻き姿のエリザが自室から顔を出しました。

「何だ、具合が悪いのか?」

「……はい、申し訳ありません」


「マリエルと街道整備をしたのか?」

「はい、昨日1日中お手伝いをしまして。レベルアップ酔いでこの有様です。申し訳有りません」

「ふむ、お主なりに頑張ったのならしょうがない。今日はユックリ休みなさい」

「はい、ありがとうございます」

 さすがのレオポルド侯爵も、病人に鞭打つ真似は出来ませんでした。


「そうだ……明日、マリエル騎士団に入る新人女性騎士達が来るから、新人教育を頼むぞ」

「はい、畏まりました。明日までに体調を回復して見せます」


「まぁ、新人が来る前にレベルが上がって良かったじゃないか」

「はい。新人共々、より精進致します」


「うむ、頑張ってくれ。期待しているぞ」

「はい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移は分解で作成チート

キセル
ファンタジー
 黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。  そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。  ※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとかコメントとかください(′・ω・`)。  1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。  よろしければお気に入り登録お願いします。  あ、小説用のTwitter垢作りました。  @W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。  ………それと、表紙を書いてくれる人を募集しています。  ノベルバ、小説家になろうに続き、こちらにも投稿し始めました!

悪役令嬢は、初恋の人が忘れられなかったのです。

imu
恋愛
「レイラ・アマドール。君との婚約を破棄する!」 その日、16歳になったばかりの私と、この国の第一王子であるカルロ様との婚約発表のパーティーの場で、私は彼に婚約破棄を言い渡された。 この世界は、私が前世でプレイしていた乙女ゲームの世界だ。 私は、その乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 もちろん、今の彼の隣にはヒロインの子がいる。 それに、婚約を破棄されたのには、私がこの世界の初恋の人を忘れられなかったのもある。 10年以上も前に、迷子になった私を助けてくれた男の子。 多分、カルロ様はそれに気付いていた。 仕方がないと思った。 でも、だからって、家まで追い出される必要はないと思うの! _____________ ※ 第一王子とヒロインは全く出て来ません。 婚約破棄されてから2年後の物語です。 悪役令嬢感は全くありません。 転生感も全くない気がします…。 短いお話です。もう一度言います。短いお話です。 そして、サッと読めるはず! なので、読んでいただけると嬉しいです! 1人の視点が終わったら、別視点からまた始まる予定です!

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?

カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。 ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を 助けようとして、事故死。 その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。 魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。

下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

ハルイロ
恋愛
「ごめんね。きみとこのままではいられない。」そう言われて私は大好きな婚約者に捨てられた。  アルト子爵家の一人娘のリルメリアはその天才的な魔法の才能で幼少期から魔道具の開発に携わってきた。 彼女は優しい両親の下、様々な出会いを経て幸せな学生時代を過ごす。 しかし、行方不明だった元王女の子が見つかり、今までの生活は一変。 愛する婚約者は彼女から離れ、お姫様を選んだ。 「それなら私も貴方はいらない。」 リルメリアは圧倒的な才能と財力を駆使してこの世界の頂点「聖女」になることを決意する。 「待っていなさい。私が復讐を完遂するその日まで。」 頑張り屋の天才少女が濃いキャラ達に囲まれながら、ただひたすら上を目指すお話。   *他視点あり 二部構成です。 一部は幼少期編でほのぼのと進みます 二部は復讐編、本編です。

悪役令嬢に転生してストーリー無視で商才が開花しましたが、恋に奥手はなおりません。

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】乙女ゲームの悪役令嬢である公爵令嬢カロリーナ・シュタールに転生した主人公。 だけど、元はといえば都会が苦手な港町生まれの田舎娘。しかも、まったくの生まれたての赤ん坊に転生してしまったため、公爵令嬢としての記憶も経験もなく、アイデンティティは完全に日本の田舎娘。 高慢で横暴で他を圧倒する美貌で学園に君臨する悪役令嬢……に、育つ訳もなく当たり障りのない〈ふつうの令嬢〉として、乙女ゲームの舞台であった王立学園へと進学。 ゲームでカロリーナが強引に婚約者にしていた第2王子とも「ちょっといい感じ」程度で特に進展はなし。当然、断罪イベントもなく、都会が苦手なので亡き母の遺してくれた辺境の領地に移住する日を夢見て過ごし、無事卒業。 ところが母の愛したミカン畑が、安く買い叩かれて廃業の危機!? 途方にくれたけど、目のまえには海。それも、天然の良港! 一念発起して、港湾開発と海上交易へと乗り出してゆく!! 乙女ゲームの世界を舞台に、原作ストーリー無視で商才を開花させるけど、恋はちょっと苦手。 なのに、グイグイくる軽薄男爵との軽い会話なら逆にいける! という不器用な主人公がおりなす、読み味軽快なサクセス&異世界恋愛ファンタジー! *女性向けHOTランキング1位に掲載していただきました!(2024.9.1-2)たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございます!

コブ付き女サヨナラと婚約破棄された占い聖女ですが、唐突に現れた一途王子に溺愛されて結果オーライです!

松ノ木るな
恋愛
 ある城下町で、聖女リィナは占い師を生業としながら、捨て子だった娘ルゥと穏やかに暮らしていた。  ある時、傲慢な国の第ニ王子に、聖女の物珍しさから妻になれと召し上げられ、その半年後、子持ちを理由に婚約破棄、王宮から追放される。  追放? いや、解放だ。やったー! といった頃。  自室で見知らぬ男がルゥと積み木遊びをしている……。  変質者!? 泥棒!? でもよく見ると、その男、とっても上質な衣裳に身を包む、とってもステキな青年だったのです。そんな男性が口をひらけば「結婚しよう!」?? ……私はあなたが分かりません!

処理中です...