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第1章 アストリア王国に転生

41 祝賀パーティとオーク撃退

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 ふと気が付くと、私のステータスに【女神見習】という職業が加えられていました。
 光属性はレベル10に成り、マルチシールドは【自動万能盾】オートマルチリフレクションシールドに進化していたのです。

「う~ん……チート?」


 アストリア魔法学院の夏休みはもうすぐ終わりです。
 日本で言えば8月終盤と言った所でしょうか。

 アストリア王国の王都アンディーヌでは領土拡大の祝賀祭りが行われるそうです。
 それに先立って、功労者であるレオポルド辺境伯のお父様とお母様と私は、領土獲得の報奨で王宮に呼び出されました。

 王宮の謁見の間には閣僚大臣を初め、沢山の貴族が居並んでいます。
 夏休みにリヒテンシュタインに遊びに来ていた私のクラスメートも閣僚の親と一緒に並んで居ました。
 その中で、お父様とお母様と私は赤い絨毯の上を中央に進み出て跪きます。


「レオポルド辺境伯、今回の領土拡大の第一功労者として侯爵に任ずる。そして、新たに獲得した領土をレオポルド侯爵に与えるものとする」

「ははーっ、有り難き幸せで御座います」

 謁見の間に拍手が沸き起こりました。


 続いてミミリル・ソソラソーラ・ソラランド王女とその一家が進み出ました。

「領土拡大の協力者ソラランド家を男爵に任ずる。尚、ソラランド男爵はレオポルド侯爵の陪臣として旧ソラランド家領地の自治権を与える」

「ははーっ、有り難き幸せで御座います」

 又、拍手が沸き起こりました。



 報奨の後、王宮で出席者達による祝賀パーティが行われます。
 美味しい料理と飲み物を堪能して、請われるままに慣れないダンスを何度も踊りました。
 もうすぐ11歳に成りますが、身長は低く胸も出てなく子供っぽく見えるので、ダンスが下手でも微笑んで見守って貰えたようです。
 お父様は沢山の婚約申し込みに辟易していました。



 翌日は、王都の街でも大々的に祝賀祭りが執り行われて、王家とレオポルド家とソラランド家は馬車で街の大通りをパレードしました。

 通り沿いには沢山の群集が出てお祝いムードに包まれています。
 沢山の屋台が出て、演劇やダンス等の催し物も行われました。



 しかし、祝賀ムードに浮かれる王都とは裏腹に、ソラランド自治区にオークの群れが迫っていたのです。
 レオポルド家とソラランド家の不在を狙ったのでしょうか?
 サンクトガレン城から王都に、魔導具を使って緊急の連絡が届きました。
 ソラランド家ではオークの数の多さにサンクトガレン城での籠城を決めた様です。


 私はケンちゃんにサンクトガレン城への【転移門】を出して貰いました。

 ブゥウウウウウンッ!

「お父様、私はミミちゃんとサンクトガレン城に行きます」

「良かろう、ワシも一緒に行くぞ! マリエル1人を危険に晒す事は出来んからな!」




 城に到着すると、すぐに私達は城門の上から戦況を確認します。
 城の正面(フランク王国側)に数え切れない沢山のオークが群がっていました。
 味方の兵士は弓を城壁の上から射掛けますが、皮膚が硬く命中しても中々致命傷にならないようです。

 すると、6匹のオーク達が、太い丸太を抱えて正面の城門を突き破ろうと突進してきました。
 城門以外の場所は空堀が有り城壁も高いので登れないからです。


「ファイヤーランス!」

 ボワッ、シュゥゥゥッ、バァアアアンッ!
「ヒギャアアアアアッ!」
「プッギィイイイッ!」

 ケンちゃんが6匹のオークに【火槍】を撃ち込みました。
 オーク達は堪らずに丸太を落とします。


 更に続いて城門に迫るオーク達に、私とスズちゃんは【石弾】、ピーちゃんは【氷弾】を撃ちます。

 ヒュゥゥゥッ、ドォオオオンッ!
 パリッパリッ、キィィィンッ、ダァアアアンッ!
「ヒギャアアアアアッ!」
「プッギィイイイッ!」

 魔法攻撃は結構効果があるようでした。
 しかし、あまりにもオークの数が多いので、焼け石に水の状態です。


「マリちゃん、あそこにオークキングが居るよ!」

 ケンちゃんが指差す方を見ると、他のオークより倍近い身長で筋肉隆々の大きなオークが居ました。

「オークキングを倒せば、群れはバラバラに散るかも知れないわ」

「そうかもね」

「あそこまで魔法は届かないから、こちらから倒しに行きましょう」

 魔法には有効範囲があります。
 個人差が有りますが、普通はせいぜい30メートルぐらいだそうです。
 私はまだ試した事が無いので分かりませんが、きっと人並でしょう。

 
 ピーちゃんに跨った私は、そのまま城門から飛び降りました。

 ピョ~ンッ、ヒュゥゥゥ…ダァァァンッ!


 大きくなったケンちゃんと忍者モードのスズちゃんも私に続きます。

 ピョピョ~ンッ、ヒュゥゥゥ…ダダァァァンッ!


「マリエル待ちなさい! 侯爵令嬢が先陣を切って突貫してはならぬ!」

 ピョ~ンッ、ヒュゥゥゥ…ダァァァンッ!

 騎乗できる恐竜『ガリミムス』に跨るお父様が、私の後を追い掛けて来ましたが。私とピーちゃんは振り返らずに突進していきます。


 先頭で敵陣に突っ込んで行く私の頭上に、先頭のオークが【戦鎚】せんついウォーハンマーを振り下ろしました。
 ブゥウウウウウンッ!

 しかし私の前方に、勝手に魔方陣が浮かび上がり、ウォーハンマーを跳ね返したのです。次の瞬間、そのオークの頭が割れ血飛沫ちしぶきを上げました。
 シュィイイイイインッ!
 バイイイイインッ!
 ズッガァアアアアアンッ!

 上級魔法に昇華した【自動万能盾】オートマルチリフレクションシールドがオークの攻撃を跳ね返し、逆にその魔物を傷つけたのです。


 尚もオーク達は、槍や斧などを投げ付けて来ますが、シールドはマリエルが意識する事無く、勝手に魔物に反射し続けます。
 お父様の【自動万能盾】は3分の使用時間制限と5分の待機時間が必要ですが、私のそれはパッシブスキル化していて、時間制限が無く魔力の続く限り稼動し続けました。

「マリエル! 遂に父自慢のスキルも凌駕してしまったのだな!」

「いいえ、お父様あってのマリエルです」

「そうかそうか……グスン、父は嬉しいぞ!」


 お父様と私は、【石弾】ストーンバレットを撃ちながら、オークの群れ深くに切り込んで行きます。
 大きくなり【凶戦士】ベルセルク状態で無双するケンちゃんと、忍者モードで瞬殺するスズちゃんが、私達の後に付き従いました。

 シールドに攻撃が跳ね返され、逆に我が身を傷つけるオーク達が左右に道を開けていきます。
 それでも襲い掛かるオークをケンちゃんとスズちゃんが排除してくれました。


 やがて、敵の大将が見えて来ました、オークキングです。

「キュルキュル!」

「ピーちゃんっ?」


「キュールキュル!」

「分かったわピーちゃんっ!」


「オークキングを【ブラインド】【石化】!」

 ピッキィイイイイインッ!
 ミシミシミシミシッ!

 オークキングの視覚が奪われ、足から徐々に石化していきます。
 私がピーちゃんから降りると、ピーちゃんは【氷弾】アイスニードルを口から撃ちながら、オークキングに向かって突撃していきました。
 石化していくオークキングの体はピーちゃんの【氷弾】でヒビが入ります。
 そこへピーちゃんが、そのまま体当たりしました。

 ドッガァアアアアアンッ!
 ガラガラガラガラッ!

 オークキングの下半身がバラバラと崩れ落ちます。
 そして、ケンちゃんが断末魔のオークキングにロングソードを振り下ろして止めを指しました。

 ズッシャアアアァァァッ!
「ブッキィィィッッッ…………」


 リーダの居なくなったオークの群れに動揺が広がります。

「今だわ! オークの群れに【雷嵐】サンダーストーーーム!」

 ピカピカッ、バリバリッ、ドドドドドドドォオオオオオンッ!

「ヒギャアアアアアッ!」
「プッギィイイイッ!」

 私が放った光属性上位魔法の【雷嵐】サンダーストームが、オーク達を蹂躙しました。

 城門が開き、守備兵が打って出て来て掃討戦が始まります。
 お父様、ケンちゃん、ぴーちゃん、スズちゃんと一緒に生き残ったオークを倒していきました。




「クッソー、またしても失敗だっ! こんなに早く城に戻って来るとは、どう言う事だ! このままではワシは責任を取らされて失脚してしまうぞ!」

 遠方から様子を窺っていたフランク王国のアランフォード辺境伯が、地団駄じたんだを踏んで悔しがります。
 彼は、レオポルド辺境伯やソラランド家が王都に行って留守である事を知っていて、オークをけしかけてきたのでした。
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