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第1章 アストリア王国に転生

28 王宮の夕食会

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 ダンジョンを無事に脱出した後、私達は馬車で魔法学院に戻って来ました。

「明日は1学期の終業式です。授業はありませんがホームルームはあります。いつも通りの時間に来て下さい」

「「「は~い」」」


「それでは解散して、帰宅してください」

「「「は~い」」」


「家に帰るまでが課外実習ですから、寄り道をせずに真っ直ぐ帰ってくださいね」

「「「は~い」」」


「アレクシス王子とマリエルさんは一緒に学院長室に行きましょう、事件に付いて報告を致します」

「「はい」」



 私達はターニャ・ハルトシュルール先生と一緒に、魔法学院本部棟最上階の5階にある学院長室に来ました。

「アレクシス第1王子とマリエル・レオポルド辺境伯令嬢を連れて来ました」
 先生が私達を学院長に紹介します。

「学院長のシャルロッテ・ノルマンドじゃ」

 大きな執務机の向こうの椅子に座った子供がそう言いました。
 私と同じ10歳ぐらいに見える、あどけなさが残る金髪碧眼の美少女です。


「こう見えても88歳じゃ、恐れおののくが良いのじゃ」

「「「ははーっ」」」
 何故かハルトシュルール先生までも恐れ入ってました。


「説明するのじゃ」

「はい、本日は1年生の1学期最後の課外授業として、ダンジョン1階の攻略にパーティ毎に向かったのですが、何故かアレクシス王子とレオポルド令嬢だけが10階に【転移】してしまいました」

「ふむ、【転移】した時の事を詳しく話すのじゃ」

「はい、1階最奥の宝箱から攻略証明書を取得して戻ろうとした時に『マリエル、マリエル』と私を呼ぶ声が聞こえました。ふり向くと新たな扉が出現していて、ドアノブに触れた所、10階に【転移】してしまったのです。王子は私を止めようとして私の肩に触れていたので、一緒に【転移】してしまったのだと思います」

「ほうほう、それで10階も攻略して『ブローチ』を取得して、奥の部屋から地上に戻ったと言うのじゃな」

「「はい」」


「1階奥の罠はマリエルを狙って仕掛けられたと言う事じゃな」

「その様です」


「分かったのじゃ、アレクシス王子ご苦労じゃった、先に帰ってよいのじゃ」

「……はい、失礼致します」
 王子は私をチラと見て部屋を出て行きました。


「初めての2人だけの共同作業じゃったのか?」

「え……いいえ、実は私の3人の従魔を【転移】で呼んで助けて貰いました」

「ほほう、それを隠さず打ち明けてくれるのじゃな?」

「はい……何故か学院長には隠せないと感じましたから」

「ふむ、さすが『女神の御親友』じゃ。しかしこのままでは、お主を取り巻く環境は悪化していきそうじゃのぅ」

「……はい」


 学院長は丸型のピンクのコンパクトを机の上に出した。

「それを取って蓋を開けるのじゃ」

「はい」


 私はコンパクトを手に取り蓋を開けました。蓋の裏には鏡があり三日月模様が刻んで有ります、受け皿には小さなスティックと3色のファンデーションがありました。

「お主にこれを預けよう。事件が起きた時は変身して、自身を隠して戦うのじゃ。コンパクトの中のマジカルステッキを取り出して、呪文を唱えながら踊るのじゃ、従魔と共に身体強化と魔力増加の恩恵が得られるじゃろう。呪文は自然と浮かんでくるのじゃ」

「はい」


「その昔この国が魔族に占領された時、ある公爵令嬢がこのコンパクトで魔法少女に変身して、この国を救ったのじゃ」

「はい、有難う御座います。お預かりさせて戴きます」
(学院長は中二病なのかしら……それとも日本の魔法少女アニメを知ってるのかなぁ?)

「ふむ、期待しておるが気楽に楽しめば良いのじゃ」

「はい、分かりました。失礼致します」

 私は待っていてくれた馬車に乗り屋敷に帰りました。




 翌日は終業式をして、ホームルームで成績表を貰い帰ります。
 結構良い成績でしたが、残念ながらと言うより、普通に1番では有りませんでしたよ。

「マリー、私の父(国王)が昨日のお礼に夕食に招待したいと言ってます。今日の夕方、お父上(レオポルド辺境伯)と一緒に王宮に来て頂けますか?」

「はい王子。喜んでお伺いさせて戴きます」
(これって絶対断ってはイケナイやつだよね!)

「ありがとう。楽しみにしています」

「はい」



 馬車で屋敷に帰宅すると、既に王宮からの勅使が尋ねてきた後だったそうです。

「お嬢様、すぐに湯浴みをしてドレスに着替えて頂きます」

「あらジュディ、まだ昼前ですよ夕食会には早すぎます。せめて昼食を取ってからでいいでしょ?」

「お嬢様、貴婦人は夕食会に招待された時は昼食を取らないのが通常です。コルセットを着けてドレスを着るのですからお腹が苦しくなりますし、トイレも1人では出来ませんから」

「まぁ、貴族の御婦人って大変なのね。でも10歳だからコルセットは要らないでしょ?」

「そんな事ありませんよ。子供のお腹はポッコリしてますから子供用のコルセットがあります」


 マリエルは自分のお腹をさすって考えます。

「ジュディ、私の体は10歳の女の子としてどう見えるの?」

「はい……世界一可愛いと思います」
 ジュディは体をくねらせモジモジしながら言いました。


「もぅ、ジュディ。私で変な妄想しないでね! ……メアリィは私の体どう見えるの?」

「はい……愛おしくて、ギュッとしたくなります」

「まぁ……ありがとう。だけど2人供健全な大人の女性になってくださいね!」

「「はい」」

(う~ん、お世辞なのか本心なのか? 鏡を見ても自分の事は見慣れてて良く分からないわ)


「お嬢様にとって今日の夕食会は、人生の大事な岐路だと思います。王妃候補に挙がってる事は間違いありません」
 と、ジュディが言いました。

「あっ、そう言う事なんだぁ!」

「「はい」」


「私、王妃になんか成らないよ」

「「えっ!」」


「結婚する気も無いんだから」

「「まぁ!」」


「せっかく異世界に来たんだから、王宮に閉じ込められて生活するなんて、絶対嫌なんだから!」

「「……」」


 ルイスが聞く。
「お嬢様は、大人に成ったら何をしたいのですか?」

「冒険家に成りたいです。あと植物博士か動物博士かなぁ」

「「「冒険家っ!」」」


「お嬢様は、お城の中でドレスを着てるのが1番似合うと思います」

「ありがとうルイス。でも私は、お飾りの人形には成りたくないわ」

「はい……」


 ケンちゃんとピーちゃんとスズちゃんはベッドで寛いでいます。

「ケンちゃんはどう思う?」

「今日のお昼はサンドイッチだと思うよ」

「違うのっ! 国王に夕食に誘われたのっ! 王妃候補に成ってるのじゃないかって、皆言ってるのよ?」


「結婚したら、俺達の事も後宮に連れて行ってねぇ」

「まぁ、私なんかが王妃に成れると思ってるの?」

「うん、見た目だけなら誰よりも相応ふさわしいと思うよ」


「……結婚した後も一緒のベッドで寝るつもりなの?」

「人形だから大丈夫だよね?」
「絶対ダメに決まってるでしょっ!」


「ママァ、私もダメなのぅ?」

「うぐぅ~、大人の諸事情により、スズちゃんもダメですぅ……」


「キュルキュルッ?」

「ピーちゃんはギリギリオッケーかなぁ?」

「キュルッ?」


「とりあえず今日はお昼抜きですっ!」

「ゲッ!」
「まぁ!」
「キュルッ!」


「あっ、貴方達は食べていいのよ。私はドレスとポッコリで食べない方が良いらしいの」

「王妃様って大変なんだね」

「うん」
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