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第1章 アストリア王国に転生

9 ジュディの幸せ

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 カピバラの名前はピーちゃんにしました。
 日本で飼っていた黄色のセキセイインコの名前を貰ったのです。

「ジュディ、おにわにピーちゃんの、おうちを作ってほしいの」

「はい。……ですが、私は大工仕事ができません」

「イヌごやぐらいの、おおきさでいいのよ」

「はい。私は犬小屋を作った経験がないので……、すいません」

「じゃあ、ルイスにたのんで、くれる?」

「はい……。お嬢様、一緒に行って頂けないでしょうか?」

 ジュディは又、体をくねらせモジモジしてます。


「もう、しょうがない、こどもね~」

 私とジュディは手を繋いで、護衛騎士の休憩室に向かいました。
 ジュディはとても嬉しそうです。


「ねぇ、ジュディ。もっとせっきょくてきに、なったほうが、いいのよ」

「はい。でも~、そういう経験が無くて~」

「おとこは、にぶいから。おんなから、さそわないと、わからないの」

「はい……わかりました」



 ジュディが休憩室のドアをノックします。

 コンッ、コンッ、

「どうぞ~」

 ガチャリッ、

「お嬢様!」

 休憩中の2人の護衛騎士が立ち上がり、マリエルに敬礼しました。
 残念ですがルイスはそこに居ませんでした。ジュディがガッカリした顔をしています。


「わたしのピーちゃんのおうちを、おにわにつくって、ほしいの」

「畏まりました」
 ロベルトが応えました。

「ルイスにおねがいしたいの」

「ルイスは大工仕事をしたことが無いと思いますが……」

「じゃあ、ロベルトがおしえてあげて」

「はい、畏まりました」


「おおきめの、いぬごやぐらいで、ねわらをいっぱい、いれてね」

「子馬が1頭入るぐらいで、いいですか?」

「うん、ピーちゃんは、すぐ、おおきくなるからね」

「はい、畏まりました」


「ルイスは、どこにいるの、おしごとしてるの?」

「はい、今は門衛をしています」

「そう」



 私は休憩室を出てからジュディに言いました。

「モンまで、オサンポしましょう」

「はい」
 ジュディの顔がパーッと明るくなりました。

(こいするおとめ、なのねぇ)


「ジュディ、ルイスとケッコンしちゃえば?」

「ヒッ、そんな……恥かしい……」

 ジュディは何か妄想してるのか、虚ろな表情でボーッとしながら門まで一緒に歩きました。



「ルイス!」

「はい、お嬢様」

「ロベルトにおそわって、ピーちゃんの、おうちをつくってね」

「はい。畏まりました」


「それと、ジュディをおよめさんに、してね」

「はい。畏まり……えぇぇっ!」

「いや、なの?」

「いいえ……」


「だれか、すきなひと、いるの?」
「いいえ……」

「こんやくしゃとか、いるの?」
「いいえ……いません」

「おしろのなかで、ジュディが、いちばん、かわいいでしょ?」
「はい……」

「かわいいでしょっ!」
「はい、とっても可愛いですっ」


「こどもができたら、わたしの、おともだちにしてあげるわ」

「はい、よろこんで!」

 ジュディは真っ赤に成ってうつむいているだけでした。


 ◇ ◆ ◇ ★


 夕食時、

「ママン、ジュディとルイスのケッコンをゆるしてあげて、ほしいの」

「まぁ、ジュディはルイスが好きだったの?」

「はい」

 ジュディは下を向いた侭、小さく返事をしました。


「ルイスもジュディが好きなのね?」

「はい」

「それじゃあ、問題無いわね。結婚を許可します」

「ワ~イ、おめでと~」

「「有難う御座います」」

 2人はお互いに目が合うと、赤くなって下を向きました。

(ふたりとも、こどもね~)


「ママン。ふたりを、わたしのせんぞくに、してほしいの」

「ジュディは、もう専属側使えに成ってるから、ルイスを専属護衛騎士に取り立てるわね」

「うん、ママンありがとう」

 ルイスとジュディの顔を見ると、嬉しそうにニッコリ微笑んでいた。


「ふたりとも、よろしくね」

「「はい、畏まりました」」

 ◆ ▽ ★ □

 ケンちゃんは私の右の席でジーッと座っていました。
 ピーちゃんも私の左横のフロアでジーッと座っています。
 時々、私がサラダをピーちゃんに上げると、行儀よく口だけ動かして食べるのでした。

 ケンちゃんは(俺も食べたいな~、けどママンがいるからな~)と考えていました。

「マリちゃん、ママンに言ってよ。俺も食べるって」

「オニンギョウが、たべたらおかしいでしょ」

「でも~……食べたいな~」


「うふふ、ケンちゃんも食べていいわよ」
 きこえてたっ!

「ママン奥様ありがとう。いただきま~す!」

 ガツ、ガツ、ガツ……、んっぐ、んっぐ、んっぐ……。


「ママン、ケンちゃんのこと、こわくないの?」

「あら、魔石で動く人形は魔道具屋さんで売ってるわよ」

「ケンちゃんのほかにも、うごくニンギョウあるんだ~」

「そうね~。ケンちゃんは普通のお人形だった筈だけどね~」

「……はははっ」

 ケンちゃんは笑って誤魔化しました。




 翌日から、ルイスはピーちゃんのおうちを作り始めました。

 私達はお庭で作業を見学しています。
 ピーちゃんは、お庭の草を美味しそうに食べていました。

 ジュディが時々お茶とお菓子を運んで来ます。
 ポカポカで気持ちの良い日差しが降りそそいでいました。

 ペットのお家と言っても、領主のお庭なので、ちゃんと作らないといけないらしいのです。
 その日はまだ完成しませんでした。





「エイルちゃん、こんばんは。
 ルイスとジュディが結婚しました。
 2人を祝福してあげて下さいね。
 カピバラの名前はピーちゃんにしました。
 いつも見守ってくれて、ありがとう。
 おやすみなさい。
 親友マブダチのマリエルより」



「マリエルちゃん、こんばんは。
 ルイスとジュディの結婚おめでとう。
 私達の神様が、2人を祝福して下さることでしょう。
 カピバラのピーちゃんも可愛い名前ですね。
 おやすみなさい。
 親友マブダチのエイルより」
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