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真夏の暑い日差しが昇り始めて少し時間が経った頃、晶と夕は力斗の運転で山道を走っている。
なんでも、力斗の職場でバーベキューをする話になり、晶と夕を誘ったわけだが、本当は力斗の親でもある組長が 二人に興味を持ってしまった事も原因である。
規模の大きな組織は身内であってもプライベートの情報が出回る。
とくに組長に日ごろから会う人間等は念入りである。
今ではほとんど起こりうる事は少なくなったが、一度でも経験があると用心するものだ。
晶と夕を連れて行く事は力斗は好ましくないと思っているが親が黒と言えば白であっても黒になるのは常識である。
いくら親が断られたら仕方がないといっても連れて来る選択しかない。
此処で遂行できなければ、下の者に舐められる可能性もあり力斗の地位を狙う者にスキを与える事にもなる。
いくら世間の目が厳しくなり昔みたいに派手な事が出来なくなっても未だに武道派は数多くいる。そのような者に晶と夕を見せる事で何かしらに巻き込まれる可能性が出てくる。
今以上に二人に目を光らせて気に掛けないといけなくなるという事だ。
「いや~BBQ楽しみだな。良いお肉が食えるのだろ?」
「あぁ、河原で食うような肉では無いと言っておく」
「すいません。私達が力斗さんの会社にお邪魔する事になってしまって、本当に手ぶらですけど大丈夫ですか?」
「こっちが急に呼んだから気にしなくて良いぞ。好きなだけ食べて遊んでくれ」
力斗の気苦労を知らない夕はのんびりと外を眺め今かいまかと楽しみにしている。
もちろん二人は力斗が裏社会の人間だという事は知っている。なので、今から会う人物がどういった人物なのか容易に想像がついているのに、なぜ楽しもうとしている不思議だと感じるであろう。
今まではコンパニオンを呼ぶ事はあった。
仕事だといえプロの彼女達ですら緊張と不安と恐怖の感情が表れていた。
しばらく山道を走っていると山の中にある別荘が見え始める。
建物を見ても明らかに金持ちと思わせるほどの木造の豪華な作りである。
何十台も止められる駐車場には黒塗りのセダンが何十台も止まってナンバープレートもゾロ目である。
一目見ただけで所持している人がわかるほどである。
「晶は大丈夫だと思うが、夕! お前は絶対に変な事を言うなよ!」
「おっ!? 俺か? 俺が変な奴みたいに言うなよ? いたって普通だぞ?」
短い付き合いだが、力斗は夕の異常に気がついているといっても変な事では無い。
ただフレンドリーすぎると言う難点である。
本来なら長所なのだが、人によって不快に思う者もいる。
とくに力斗のいる世界ではなおさらである。
なぜか意を決した力斗が車から降りる。
すると若い衆が後部座席の扉を開け、晶と夕が車から降りる。
駐車場に力斗の車が入って来るタイミングで黒いスーツ姿の人が駐車場に集まり始めていたので、数十名は晶と夕の姿に見入ってしまう。
テレビで見る女性や生きて来た中でもまず会う事が無い程の整った容姿は魅了その者である。
邪な考えをする人も少なからずいるだろう。
「「「ご苦労様です!」」」
まるで何処かのドラマや映画で見た事があるシーンの様に一列に並び力斗に頭を下げる。
「ご苦労」
力斗の言葉と現状で明らかに高い地位であるという事はわかる。
「うむ。ご苦労」
力斗につられての発言ではなく、その場のノリと言って見たかっただけである。
「夕! なんて事を言っているの!? すいませんうちの子が、見た目はあれですけど、頭の中はポンコツ気味でして」
渋い男に憧れていた時期に晶は任侠映画等を見ていたからこそ夕の行動に何度も謝り頭を下げる。
もちろん映画等関係なく目上の人に言ってはダメだという認識もある。
「ポンコツってなんだよ! テレビで見る事しかなかった事が今現実で再現されていたら一つぐらい言いたくもなるだろ?」
「ならないよ! 上司でもない人からご苦労って言われたら誰もが不機嫌になるよ!」
夕の言葉に血の気の多い者はこめかみに青筋を浮かべるが、力斗や組長の客人となればおいそれと声を出す事も出来ない。
「お前ら…… 頼むからそのぐらいにしといてくれよ」
「力斗さんにも迷惑かけるから夕は黙っていて」
この先の不安に力斗と晶は頭を悩ますのであった。
別荘の玄関の両脇に一人ずつ立ち力斗に無言で頭を下げる。
晶と夕も挨拶程度に頭を下げ中に入ろうとすると、手で遮られる。
その光景に力斗から日ごろ二人と話すときと違う口調で話し始める。
「なんのつもりだ? 親父の客人だぞ?」
「それはわかっていますが、武器を持っていないか調べさせていただきます」
見知らぬ者を部屋に上げるという事はそれなりに危険が伴うので厳重の警戒を兼ねてのチェックである。だけど、その行為が力斗の勘に触るのであった。
「それはわかっているが、相手は別の組織の人間では無いぞ? 普通の女子高生だぞ? そんな人間が凶器を持ち歩いていると思うか?」
それは黒服の男性もわかっているが、摘める目は摘まんでおきたいという事だろう。
だが、あながち黒服の男性は良い目を持っているかもしれない。
もちろん二人は体に隠せる凶器は持ち合わせてない。違う空間にあると言えば正解だが、そもそも二人は既に人間凶器みたいなものである。
玄関先でもたもたとしていると、中から女性の声が聞こえる。
「いつまでそこで突っ立っているつもりなの!」
ドラマで見る着物姿に髪をきっちりと結び簪でとめている女性が現れる。さすが裏社会で生きる女性であり整っている容姿をしている目つきが鋭く力斗も頭を下げる。
「すいません姉御」
「私が代わりに確認するから力斗もそれで納得しなさい。 お二人さん悪いわね。少しこっちにいらっしゃいなさい」
力斗は確認される事すら嫌だったが、言いたい事はわかる。
手招きをされた二人は女性の前に立ち手を軽く上げる。
「ごめんなさいね。怖い思いをさせたかしら? 私は組長の妻、茂上(もがみ) 明菜(あきな)よ 明菜でも姉御でもどちらでも呼びやすい方で呼んで」
「浅井 晶です。 明菜さん」
「赤城 夕です。 よろしくお願いします。姉御!」
「おい、夕。さすがにダメだろう。すいません姉御。任侠系の映画にハマっているみたいで」
いきなり構成員でもないのに姉御呼びに驚く力斗である。冗談で明菜も姉御と言う言葉を言ったが、初めて会った人間に呼ばれた事に新鮮さを覚える。
「良いのよ。妹が出来た嬉しいわ。さっ、チェックも済んだし、中にどうぞ。顔面が凶器な人が多いけど、気楽にしていきなさいね。折角の息抜きが台無しになってしまうからね」
そして明菜に連れられて和式の部屋に案内される。
豪華な襖を開けると上座に袴を着た男性が座っており、部屋の隅には袴姿の男性やスーツ姿の男性が座っている。
なんでも、力斗の職場でバーベキューをする話になり、晶と夕を誘ったわけだが、本当は力斗の親でもある組長が 二人に興味を持ってしまった事も原因である。
規模の大きな組織は身内であってもプライベートの情報が出回る。
とくに組長に日ごろから会う人間等は念入りである。
今ではほとんど起こりうる事は少なくなったが、一度でも経験があると用心するものだ。
晶と夕を連れて行く事は力斗は好ましくないと思っているが親が黒と言えば白であっても黒になるのは常識である。
いくら親が断られたら仕方がないといっても連れて来る選択しかない。
此処で遂行できなければ、下の者に舐められる可能性もあり力斗の地位を狙う者にスキを与える事にもなる。
いくら世間の目が厳しくなり昔みたいに派手な事が出来なくなっても未だに武道派は数多くいる。そのような者に晶と夕を見せる事で何かしらに巻き込まれる可能性が出てくる。
今以上に二人に目を光らせて気に掛けないといけなくなるという事だ。
「いや~BBQ楽しみだな。良いお肉が食えるのだろ?」
「あぁ、河原で食うような肉では無いと言っておく」
「すいません。私達が力斗さんの会社にお邪魔する事になってしまって、本当に手ぶらですけど大丈夫ですか?」
「こっちが急に呼んだから気にしなくて良いぞ。好きなだけ食べて遊んでくれ」
力斗の気苦労を知らない夕はのんびりと外を眺め今かいまかと楽しみにしている。
もちろん二人は力斗が裏社会の人間だという事は知っている。なので、今から会う人物がどういった人物なのか容易に想像がついているのに、なぜ楽しもうとしている不思議だと感じるであろう。
今まではコンパニオンを呼ぶ事はあった。
仕事だといえプロの彼女達ですら緊張と不安と恐怖の感情が表れていた。
しばらく山道を走っていると山の中にある別荘が見え始める。
建物を見ても明らかに金持ちと思わせるほどの木造の豪華な作りである。
何十台も止められる駐車場には黒塗りのセダンが何十台も止まってナンバープレートもゾロ目である。
一目見ただけで所持している人がわかるほどである。
「晶は大丈夫だと思うが、夕! お前は絶対に変な事を言うなよ!」
「おっ!? 俺か? 俺が変な奴みたいに言うなよ? いたって普通だぞ?」
短い付き合いだが、力斗は夕の異常に気がついているといっても変な事では無い。
ただフレンドリーすぎると言う難点である。
本来なら長所なのだが、人によって不快に思う者もいる。
とくに力斗のいる世界ではなおさらである。
なぜか意を決した力斗が車から降りる。
すると若い衆が後部座席の扉を開け、晶と夕が車から降りる。
駐車場に力斗の車が入って来るタイミングで黒いスーツ姿の人が駐車場に集まり始めていたので、数十名は晶と夕の姿に見入ってしまう。
テレビで見る女性や生きて来た中でもまず会う事が無い程の整った容姿は魅了その者である。
邪な考えをする人も少なからずいるだろう。
「「「ご苦労様です!」」」
まるで何処かのドラマや映画で見た事があるシーンの様に一列に並び力斗に頭を下げる。
「ご苦労」
力斗の言葉と現状で明らかに高い地位であるという事はわかる。
「うむ。ご苦労」
力斗につられての発言ではなく、その場のノリと言って見たかっただけである。
「夕! なんて事を言っているの!? すいませんうちの子が、見た目はあれですけど、頭の中はポンコツ気味でして」
渋い男に憧れていた時期に晶は任侠映画等を見ていたからこそ夕の行動に何度も謝り頭を下げる。
もちろん映画等関係なく目上の人に言ってはダメだという認識もある。
「ポンコツってなんだよ! テレビで見る事しかなかった事が今現実で再現されていたら一つぐらい言いたくもなるだろ?」
「ならないよ! 上司でもない人からご苦労って言われたら誰もが不機嫌になるよ!」
夕の言葉に血の気の多い者はこめかみに青筋を浮かべるが、力斗や組長の客人となればおいそれと声を出す事も出来ない。
「お前ら…… 頼むからそのぐらいにしといてくれよ」
「力斗さんにも迷惑かけるから夕は黙っていて」
この先の不安に力斗と晶は頭を悩ますのであった。
別荘の玄関の両脇に一人ずつ立ち力斗に無言で頭を下げる。
晶と夕も挨拶程度に頭を下げ中に入ろうとすると、手で遮られる。
その光景に力斗から日ごろ二人と話すときと違う口調で話し始める。
「なんのつもりだ? 親父の客人だぞ?」
「それはわかっていますが、武器を持っていないか調べさせていただきます」
見知らぬ者を部屋に上げるという事はそれなりに危険が伴うので厳重の警戒を兼ねてのチェックである。だけど、その行為が力斗の勘に触るのであった。
「それはわかっているが、相手は別の組織の人間では無いぞ? 普通の女子高生だぞ? そんな人間が凶器を持ち歩いていると思うか?」
それは黒服の男性もわかっているが、摘める目は摘まんでおきたいという事だろう。
だが、あながち黒服の男性は良い目を持っているかもしれない。
もちろん二人は体に隠せる凶器は持ち合わせてない。違う空間にあると言えば正解だが、そもそも二人は既に人間凶器みたいなものである。
玄関先でもたもたとしていると、中から女性の声が聞こえる。
「いつまでそこで突っ立っているつもりなの!」
ドラマで見る着物姿に髪をきっちりと結び簪でとめている女性が現れる。さすが裏社会で生きる女性であり整っている容姿をしている目つきが鋭く力斗も頭を下げる。
「すいません姉御」
「私が代わりに確認するから力斗もそれで納得しなさい。 お二人さん悪いわね。少しこっちにいらっしゃいなさい」
力斗は確認される事すら嫌だったが、言いたい事はわかる。
手招きをされた二人は女性の前に立ち手を軽く上げる。
「ごめんなさいね。怖い思いをさせたかしら? 私は組長の妻、茂上(もがみ) 明菜(あきな)よ 明菜でも姉御でもどちらでも呼びやすい方で呼んで」
「浅井 晶です。 明菜さん」
「赤城 夕です。 よろしくお願いします。姉御!」
「おい、夕。さすがにダメだろう。すいません姉御。任侠系の映画にハマっているみたいで」
いきなり構成員でもないのに姉御呼びに驚く力斗である。冗談で明菜も姉御と言う言葉を言ったが、初めて会った人間に呼ばれた事に新鮮さを覚える。
「良いのよ。妹が出来た嬉しいわ。さっ、チェックも済んだし、中にどうぞ。顔面が凶器な人が多いけど、気楽にしていきなさいね。折角の息抜きが台無しになってしまうからね」
そして明菜に連れられて和式の部屋に案内される。
豪華な襖を開けると上座に袴を着た男性が座っており、部屋の隅には袴姿の男性やスーツ姿の男性が座っている。
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