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突如、始まる咆哮はまるで天を裂くかのように響く。
 それを聞いたフリード達は慌てて席を立つ。
 レインは走り部屋を後にする。
「ついに始まるのか……。 俺達も準備を急ごう」
 ツカサとマリンは無言で頷く。
 急ぎ準備を終わらした3人はエントランスで待機をしている。
 鮮やかな軍人服ぽい服をきたレインが現れる。
「待たせた。これより城門に向かい様子を見に行くが、危険が無いわけではない。くれぐれも危ない真似はしないでくれよ」
 4人は馬車に乗り込み城門の上を目指した。
 ポイントに着いた4人は直ぐに周囲を確認する。
 今回討伐のために力を貸してくれる各国の兵士達は、すでに隊をくみ、何時でも挑める状態であった。
 今回参加人数は約5万と聞いている。
 それだけの人数の命を、ツカサ達が預かっている。
 自分の言葉一つで多くの命が失われるかと思うと怖いものを感じる。
 実際にその数を目の当たりにすると、自ずと足がすくう。
 それに気がついたレインが、ツカサを後ろから優しく包む。
「大丈夫だよ。君達には苦労をかけはしない。僕達が必ず平和な明日を作って見せる」
 その光景を見たフリードは何かを言いたそうにしているが、言葉を飲み込む。
 しばらくすると平原向こう側から、砂ぼこり起きている事がわかる。
 どうやら魔物達が帝国に向けて進軍をしてきている。
 レインはある程度の魔物の種類、数を兵士に伝えて、報告に向かわす。
「数はこちらと同じ位か……」
 魔物はゴブリンを始め、ウルフ、オーガ、ベリアルと多種見受けられる。
 もちろんその魔物の上位もいる。
 そして最後尾に一際大きいドラゴンが見える。
 きっと魔物の大将と思われる。
 黒いドラゴンが咆哮をあげる。
 戦いが始まる合図のように。
 咆哮を聞いた魔物は進軍を早める。
 それをみたレインは急いできた道を戻り、軍の中に入っていく。
 各国の隊長に指示を飛ばし、開戦の時期をみはる。
 魔法部隊の射程距離に入ったとたんに、魔法を一斉に放つ。
 火を使うものは火柱を発生させて、風を使う者はその火柱を魔物の後方に火をおくり、土を遣う者は壁を作り足止めをする。
 ツカサが考えた方法は以外と上手く行き、下位の魔物に大城な被害を与える。
 魔法部隊の魔力が無くなって火力が弱まりはじめる。
 盾をもった部隊が、魔法部隊の前にでて壁になる。
 魔法が切れた部隊は速やかに後退するが、その隊が目にしたのは、先ほどまで守っていた盾兵がキングオーガのこん棒によって、陣が崩れているところだ。
「ひぃぃ!」
 悲鳴すらまともに出せない状況に陥った魔法部隊は、足がすくみ逃げ遅れる者も出始める。
 城壁から見ていたツカサはあの中にいるカルロの事が心配であった。
 いつも時間を作ってくれて魔法の練習を手伝ってくれた。
 最近カルロが結婚して一次父になり、今回の戦いを辞退しないか?と聞きに言ったとき、赤ちゃんをあやすカルロの姿が浮かぶ。
 その顔は、だらしないぐらい緩みきっていた。
 それを見たツカサはこの者達の笑顔を守らないといけないと思った。
 気がつけばツカサは城壁から降りて味方陣地の中を駆け抜けていた。
 
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