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帝国に使者を遣わし1ヶ月が立つ。
帝国から受け入れをしてくるため、ツカサ達は帝国に向けて出発をしていた。
10日ほど馬車に揺られながら目的地を目指しているツカサだが、慣れない長旅に不満を抱えていた。
この世界は日本と違い技術はあまり進んでいない。
そのため、王族の馬車であってもクッション性が悪く、長時間座っていたツカサのお尻は痛くなって堪らなかった。
「痛い……」
そう言いながらお尻をさする。
 淑女としてあるまじき行動だが、そんなツカサを見て微笑む。
「耐えれないなら、ここにすわるか?」
フリードは自分の膝あたりを軽く叩き合図する。
「フリードは筋肉で固そうだから、座るのならキララの方がいい」
 座ってくれると期待していたが、見事にフラれて肩を落とす。
ツカサは旅の間余りにもすることがなくて、馬車から顔を出して護衛の兵士達と会話をすることが楽しみの一つになっている。
護衛の間では毎晩馬車の窓枠付近をかけて勝負事が行われているらしい。
今回窓枠を勝ち取っていたのはカルロだった。
久しぶりのカルロに声をかける。
「カルロお久しぶりです」
突然の言葉に少し驚く。
「お…… お久しぶりですツカサ様」
 カルロは成長したツカサに見とれてしまう。
「どうしたの~?」
 動かなくなったカルロの顔を付近まで手を伸ばし上下に動かす。
我に戻ったカルロは恥ずかしそうに、手綱から片手を放し頬をかく。
ツカサは馬を見て思った。
こちらの世界に来てから、馬に乗った記憶が無いことに。
ツカサはフリードに馬に乗りたいとフリードに言う。
「フリード私乗馬したい」
突然の言葉に口が開く。
言い出したら聞かないツカサを知っているので、深く考え事いい方法がないか探す。
「自国に帰れば、何時でも乗せてやろう」
ぜったい納得してくれないだろうと思いながら、とりあえず言ってみる。
「今がいい……」
うるうると並だ目になりながら、おねだりをするツカサ。
そんなツカサに勝てるはずもなく、タメ息を漏らしながら渋々許可を出す。
ただしひとり一人で乗るなと条件をつける。
自然とフリードかキラキラどちらかしか選ばれないだろうと思っていた。
フリードは知らないツカサはカルロと友達だと言うことに。
「わかった。カルロに乗せてもらうよ」
「なっ! カルロとは誰だ」
焦るフリードを見てクスっとキララ。
「カルロさんはツカサ様のお友達でございます。魔法師団に所属しております」
いつの間にそんな知り合いをと思うフリーだが、ツカサの行動力を見れば不思議ではなかった。
大きなタメ息を漏らしながら、馬車をとめる。
急に止まった馬車に何があったのか、兵士の警戒心が高まる。



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