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第三部

緊急クエスト

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 私はもうそのままバーに留まる気分ではなくなっていた。

「ギルドに、行ってみるか? 詳しい、状況が、わかる、はずだ」

 クラウディオの提案にみんながうなずく。
 店を出てギルドに向かう。私たちにできることがあるのかはわからないけれど、何かせずにはいられない。
 同じことを考える人が多かったらしく、ギルドは人でごった返していた。

「星二つ以上の冒険者は、皆コルシの洞窟へ向かってくれ。これは強制クエストだ」

 ギルド職員が声を張り上げている。

「まずいな……」

 ヴィートが指をあごに当てて考え込んでいた。
 星が二つ以上ということは、私以外はみんな半強制的にギルドの要請に従わなければならない。ギルドに登録した時にもらった冊子に書いてあったらしいけど、私はまだ読んでない。
 要請に従わなかったからといって特にペナルティがあるわけじゃないけど、街の安全に関わることが多いから、ほとんどの冒険者は進んで受注するそうだ。
 確かに迷宮からあふれた魔物がこの街に押し寄せてくれば、クエストがー、とか、報酬がーとか言っていられる場合じゃないのはよくわかる。

「ルチアは、行かなくても、いいが……」
「私、行くよ!」

 私はクラウディオの言葉を遮った。
 私たちはパーティじゃないか! 一人だけ待ってるなんて、できないよ。

「迷宮のなかは厳しい戦いになる。覚悟しておけ」
「準備もな」
「もちろん」

 四人で顔を見合わせてにやりと笑う。
 ちょっと予定より早くなったけど、迷宮ダンジョンデビューだよ!

「じゃあ、先にパーティ登録しておくか」

 ルフィのパーティ登録はまだだったので、ギルドに来たついでに済ませておくことにする。

「よし、これで俺もやっとパーティの一員だな」

 ギルドカードにルフィの名前が増えた。
 窓口で緊急クエストも受注した。

「じゃあ、薬草とか、食料とか必要な物を買って、すぐに迷宮に行くぞ」

 ルフィはやる気満々だ。

「二手に分かれるか。食料組と、薬組だな」
「わかった~。じゃあ、ギルドで待ち合わせにしようよ」
「了解した」
「いいぞ」

 私は食料についてはほとんど役に立たないので、クラウディオと一緒に傷薬を買いに行くことになった。
 薬屋さんもギルドのすぐ近くにある。緊急クエストの所為で、かなり品揃えが少なくなっていたが、基本的な傷薬や、魔力の回復薬をいくつか購入する。
 初めて薬屋さんに来たけど、いろんな薬があって珍しさにきょろきょろしてしまう。
 何を買うのかは全部クラウディオにお任せだ。

「高っ!」

 傷薬の値段の高さに私は目をむいた。
 こんなに小さな瓶一つで銀貨一枚とか、あり得ない。
 いくらルフィが回復魔法を使えるからって言っても、これだけ高いとそうそう使えないだろうし、不安が残る。私も回復魔法を練習しておいた方がいいかもしれない。
 あ、そうだ。忘れてた。

「クラウディオ、これ」

 大猪を売った代金をクラウディオに渡す。

「ああ、そこそこの、値段に、なったな」

 クラウディオは手渡された銀貨に顔をほころばせた。
 これだけあれば、傷薬を買う足しになるだろう。ヴィートに頼まれた分も買っていたみたいだし、結構な値段になっていた。
 私も二つだけ魔力の回復薬を購入することにする。

「一つ銀貨一枚半だけど、緊急クエストを受けているんだろう? 二つで二枚半に負けとくよ」
「ありがとう」

 大発生が起きていることはもうみんなの耳に届いているようだ。

「よし、こんな、ところだな」

 武器は今からでは間に合わないという判断をして、このままでいくことになった。

「お待たせ~」
「俺たちもちょうど戻ってきたところだよ」

 ルフィとヴィートチームも買い出しが終わったところみたいで、ちょうどギルドの前で合流できた。

「それじゃあ、このまま行こうか」

 買い物の代金をみんなで清算して、準備完了だ。

「準備はいいな」
「うん」

 私たちはコルシニの北にあるコルシの洞窟に向かって旅立った。
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