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第三部
素材屋さんで
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「そういえば、ルチア、大猪の肉と毛皮は持ってるか?」
「うん」
ルフィに問われて、私は元気よくうなずいた。
「じゃあ、素材屋に行って換金しとこうぜ」
「いいね! クエストの前に荷物を整理しておきたかったんだよ~」
「では、行くか」
素材の代金は三人で分ける約束をしていたし、保存の魔法がかかっているとはいえ、まったく時間が進まない訳でもない。早めに換金しておいた方がいいと、素材屋に向かうことになった。
お店はギルドのすぐ近くにあった。入り口が二つあって、片方が買取りの店で、もう一つは買い取った素材を売っている店になっていた。
私たちは買取りの店舗に足を踏み入れた。
結構混み合っていて、番号を呼ぶ声があちこちで聞こえてくる。
「魔石以外の素材はだいたい買い取ってくれる。薬草とか、羽とか、余っていたら売るといい」
ヴィートもアドバイスをしてくれる。
ふむふむ。でも、今回は大猪だけでいいかな。
査定には時間がかかるらしく、先にカウンターで素材を渡して、呼ばれるのを待つシステムになっていた。
ギルドだとちょっと役所っぽい雰囲気なんだけど、素材屋はリサイクルショップに近いかな。
私は麻袋をカウンターの上に置いて、なかから大猪の肉と毛皮を取り出した。三体分ともなると結構な量になる。
大きなカウンターなのに、たちまち毛皮と肉でいっぱいになった。
「こちらの番号でお呼びいたしますね」
番号の書かれた札を手渡された。
私たち以外にも何人か待っていて、呼ばれるまではもう少しかかりそうだ。
「あっちの、店を、のぞいて、みるか?」
確かに呼ばれるまでぼーっと待っているのも暇なので、隣の素材を売っている方の店舗に移動する。
肉や薬草のような鮮度が大事なものは扱っていないようだ。
何かの毛皮とか、綺麗な石とか、見たことの無いものが多く並べられていた。何に使うのか全く用途がわからないけど、見ているだけでも結構楽しい。
「これ、何に使うのかなぁ?」
ただの木の枝に見えたんだけど、少し先端が水晶のように透き通っていて、何となく気になって手に取ってみる。
木というには、ちょっと重い。
「これは迷宮産だな」
ヴィートは私が手にしている枝と同じものを手にして、くるくると手の中で回して眺めている。
「武器の材料にしたり、装備のボタンに使ったりするみたいだな」
へえ。
窓からの光にかざしてみると、キラキラと反射してとてもきれいだ。
迷宮にこんなものがあるなら、行くのが楽しみになってきた。
「こっちも迷宮産だぞ」
「え、どれ?」
特にほしい物はないけれど、綺麗なものが多くて、見ているだけで楽しい。ヴィートにいろいろと教えてもらいつつ、店を回っていると、いつの間にか私たちの素材の査定が終わっていた。
「四十八番の方~!」
「はーい」
買取り担当の店員さんに呼ばれたので、クラウディオとルフィの姿を探して声をかける。
「ねえ、査定が終わったって」
「ちょっと、見たいものが、ある。ルチアたちで、行ってきて、くれるか?」
「俺も! 買いたい素材があるんだよ」
「わかったよ」
「承知した」
私はヴィートと一緒に隣のお店に戻った。
「大猪の肉と毛皮が三体分ですね」
ヴィートと一緒に間違いがないことを確認する。
「はい。間違いありません」
「肉が一体につき銀貨五枚、毛皮が銀貨七枚になりますので、合計三十六枚になります。どうなさいますか?」
一体当たりが金貨一枚分って結構な金額だと思うんだけど、これが高いのか、安いのかもよくわからない。
目でヴィートに問いかけると、彼はにっこりと笑ってうなずいた。
「問題ないと思う」
じゃあ、買取ってもらおう。
「お願いします」
ギルドカードを店員に渡して、売買を記録してもらう。
サインとかも何もいらないなんて、本当にギルドカードは有能すぎるよ。
銀貨で受け取って、十二枚をヴィートに渡す。クラウディオの分はとりあえず預かっておく。
さて、そろそろあっちは終わったかな?
二人に合流すると、ちょうど買い物が終わったところだった。
「ふたりとも、何を買ったの?」
「金属を、少し」
クラウディオは甲冑の補修用に、金属素材を購入したらしい。
「俺は皮を買ったんだ」
ルフィは抱えた紙袋を少し開けて、落ち着いた色合いのなめした皮を見せてくれた。
「買うよりも、自分で作ったほうが安上がりだからな」
ルフィは自分で鞄を作るらしい。
「え、自分で作れるものなの?」
「あ、俺細工師の講習を受けたから」
細工師? 免許? 聞き慣れない言葉に、私の頭のなかは疑問符でいっぱいになった。
「裁縫師とか、細工師、鍛冶師なんかの職業に就こうと思ったら、師匠について修行するのが普通なんだけど、ちょっとした修理とか、加工だったら自分でやりたいっていう冒険者は多いんだ。だからちょっとした装備の作り方や、修理のやり方をギルドで教えてもらえる講習があるんだ」
ええ?! そんなのヴェルディのギルドでは教えてもらった覚えがないんだけど?
「最初に道具をそろえるのはある程度金はかかるけど、素材と道具さえあれば手間賃がかからないしな。いくつか作れば売って小遣い稼ぎもできるし、自分で素材を採ってくれば、あんまり金もかからないぞ」
そう言って、ルフィは買ったばかりの道具を見せてくれた。
ハンマーや、太い針、糸、はさみとか、いろいろとそろえないといけないっポイ。
まあ、不器用な私には無理な芸当だね。
「うん」
ルフィに問われて、私は元気よくうなずいた。
「じゃあ、素材屋に行って換金しとこうぜ」
「いいね! クエストの前に荷物を整理しておきたかったんだよ~」
「では、行くか」
素材の代金は三人で分ける約束をしていたし、保存の魔法がかかっているとはいえ、まったく時間が進まない訳でもない。早めに換金しておいた方がいいと、素材屋に向かうことになった。
お店はギルドのすぐ近くにあった。入り口が二つあって、片方が買取りの店で、もう一つは買い取った素材を売っている店になっていた。
私たちは買取りの店舗に足を踏み入れた。
結構混み合っていて、番号を呼ぶ声があちこちで聞こえてくる。
「魔石以外の素材はだいたい買い取ってくれる。薬草とか、羽とか、余っていたら売るといい」
ヴィートもアドバイスをしてくれる。
ふむふむ。でも、今回は大猪だけでいいかな。
査定には時間がかかるらしく、先にカウンターで素材を渡して、呼ばれるのを待つシステムになっていた。
ギルドだとちょっと役所っぽい雰囲気なんだけど、素材屋はリサイクルショップに近いかな。
私は麻袋をカウンターの上に置いて、なかから大猪の肉と毛皮を取り出した。三体分ともなると結構な量になる。
大きなカウンターなのに、たちまち毛皮と肉でいっぱいになった。
「こちらの番号でお呼びいたしますね」
番号の書かれた札を手渡された。
私たち以外にも何人か待っていて、呼ばれるまではもう少しかかりそうだ。
「あっちの、店を、のぞいて、みるか?」
確かに呼ばれるまでぼーっと待っているのも暇なので、隣の素材を売っている方の店舗に移動する。
肉や薬草のような鮮度が大事なものは扱っていないようだ。
何かの毛皮とか、綺麗な石とか、見たことの無いものが多く並べられていた。何に使うのか全く用途がわからないけど、見ているだけでも結構楽しい。
「これ、何に使うのかなぁ?」
ただの木の枝に見えたんだけど、少し先端が水晶のように透き通っていて、何となく気になって手に取ってみる。
木というには、ちょっと重い。
「これは迷宮産だな」
ヴィートは私が手にしている枝と同じものを手にして、くるくると手の中で回して眺めている。
「武器の材料にしたり、装備のボタンに使ったりするみたいだな」
へえ。
窓からの光にかざしてみると、キラキラと反射してとてもきれいだ。
迷宮にこんなものがあるなら、行くのが楽しみになってきた。
「こっちも迷宮産だぞ」
「え、どれ?」
特にほしい物はないけれど、綺麗なものが多くて、見ているだけで楽しい。ヴィートにいろいろと教えてもらいつつ、店を回っていると、いつの間にか私たちの素材の査定が終わっていた。
「四十八番の方~!」
「はーい」
買取り担当の店員さんに呼ばれたので、クラウディオとルフィの姿を探して声をかける。
「ねえ、査定が終わったって」
「ちょっと、見たいものが、ある。ルチアたちで、行ってきて、くれるか?」
「俺も! 買いたい素材があるんだよ」
「わかったよ」
「承知した」
私はヴィートと一緒に隣のお店に戻った。
「大猪の肉と毛皮が三体分ですね」
ヴィートと一緒に間違いがないことを確認する。
「はい。間違いありません」
「肉が一体につき銀貨五枚、毛皮が銀貨七枚になりますので、合計三十六枚になります。どうなさいますか?」
一体当たりが金貨一枚分って結構な金額だと思うんだけど、これが高いのか、安いのかもよくわからない。
目でヴィートに問いかけると、彼はにっこりと笑ってうなずいた。
「問題ないと思う」
じゃあ、買取ってもらおう。
「お願いします」
ギルドカードを店員に渡して、売買を記録してもらう。
サインとかも何もいらないなんて、本当にギルドカードは有能すぎるよ。
銀貨で受け取って、十二枚をヴィートに渡す。クラウディオの分はとりあえず預かっておく。
さて、そろそろあっちは終わったかな?
二人に合流すると、ちょうど買い物が終わったところだった。
「ふたりとも、何を買ったの?」
「金属を、少し」
クラウディオは甲冑の補修用に、金属素材を購入したらしい。
「俺は皮を買ったんだ」
ルフィは抱えた紙袋を少し開けて、落ち着いた色合いのなめした皮を見せてくれた。
「買うよりも、自分で作ったほうが安上がりだからな」
ルフィは自分で鞄を作るらしい。
「え、自分で作れるものなの?」
「あ、俺細工師の講習を受けたから」
細工師? 免許? 聞き慣れない言葉に、私の頭のなかは疑問符でいっぱいになった。
「裁縫師とか、細工師、鍛冶師なんかの職業に就こうと思ったら、師匠について修行するのが普通なんだけど、ちょっとした修理とか、加工だったら自分でやりたいっていう冒険者は多いんだ。だからちょっとした装備の作り方や、修理のやり方をギルドで教えてもらえる講習があるんだ」
ええ?! そんなのヴェルディのギルドでは教えてもらった覚えがないんだけど?
「最初に道具をそろえるのはある程度金はかかるけど、素材と道具さえあれば手間賃がかからないしな。いくつか作れば売って小遣い稼ぎもできるし、自分で素材を採ってくれば、あんまり金もかからないぞ」
そう言って、ルフィは買ったばかりの道具を見せてくれた。
ハンマーや、太い針、糸、はさみとか、いろいろとそろえないといけないっポイ。
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