11 / 81
第一部
ルチア、いきまーす!
しおりを挟む
「私もやってみましゅ!」
私は兄と叔父の前で高らかに宣言した。
「ルチア、お前にはまだ早いと思うよ?」
「そうだよ。無理だよ」
「無理じゃねーの?」
口々に反対されて、私は少し落ち込む。
しかし、それくらいでへこたれるルチアさんではないのだ。
「できましゅ」
「そうだね」
叔父は意固地になって唇を尖らせていた私の頭をぽんぽんと撫でた。
「でもルチアは魔力操作になれていないのだろう? たくさんの魔力を圧縮しなければならないから、難しいと思うな」
「らいじょぶでしゅ」
ああ、きちんと発音できないのがもどかしい。
本当に私には人の姿になれるという自信があった。だって、私の魔力はさっき使い切ったばかりで、それほど多くないはずだからね。
これならそれほど圧縮しなくても、変身できるはず。
「ルチア!」
「ダメだって!」
私は叔父や兄たちの制止を振り切って、人の姿に変化し始めた。
掌を合わせて魔力を圧縮していく。
予想通りさほど残っていない魔力はあっさりと圧縮できた。
次は人の姿を思い浮かべるのだ。
叔父は変身するには想像力が大事だと言っていたのだ。前世の人間であった頃を思い浮かべれば、楽勝だ。
私は目をつぶり、記憶の底にかすかに残る風貌を思い起こした。
ストレートの黒髪で、確か肩辺りで切りそろえていたことが多かった気がする。ニホン人によくある茶色の目とあまり彫りの深くない顔だち。目はそれなりに大きかったような……。
ふっと身体が軽くなった気がした。
「ル、ルチアっ!」
慌てたような叔父の声に、目を開く。
視界に入った手はドラゴンのものではなく、きちんと人間のものだった。
見下した身体も足も、普通に人間の姿になっているように見える。
やった! 成功だ!
「わーい!」
と思わず飛び上がって喜んで、はたと気づく。
声は高く、まるで子供のような……って、完全にこれは子供じゃないか!
ぽっこりとした下腹はあまりドラゴンだった時と変わらない。そして視点の位置がほとんど変わっていないと言うことは、身長はまったく伸びていないのだろう。
手足も短く、全体的に頭が少し大きくてバランスが悪い。
顔はどんなふうになったんだろう?
「鏡は、ありますか?」
叔父を見上げてお願いする。
叔父は慌てて服のポケットをごそごそと探って、小さな手鏡を差し出した。
ラウル叔父は流石に普段から人間の姿をしているだけあって、こういった道具できちんと変身できたのかを確認しているのだろう。
私はありがたく叔父から手鏡を受け取って、恐る恐る覗き込んだ。
幼児特有のぽっちゃりと丸い顔に、あまり高くない鼻がちょこんと乗っている。アメジストとエメラルド色をした瞳は変わらず、私の鱗と同じ色の真っ白なおかっぱ頭の幼女がそこに、いた。
あああ……。
結局、人間の姿になっても子供なことは変わらないんだね。
がっくりと地面に崩れ落ちたところで、恐ろしいことに気づいた。
ぎゃー! 私裸だぁ!
慌てて地面にうずくまって小さくなりながら、叔父さんにお願いする。
「服を下さい」
もう涙目だった。
私は兄と叔父の前で高らかに宣言した。
「ルチア、お前にはまだ早いと思うよ?」
「そうだよ。無理だよ」
「無理じゃねーの?」
口々に反対されて、私は少し落ち込む。
しかし、それくらいでへこたれるルチアさんではないのだ。
「できましゅ」
「そうだね」
叔父は意固地になって唇を尖らせていた私の頭をぽんぽんと撫でた。
「でもルチアは魔力操作になれていないのだろう? たくさんの魔力を圧縮しなければならないから、難しいと思うな」
「らいじょぶでしゅ」
ああ、きちんと発音できないのがもどかしい。
本当に私には人の姿になれるという自信があった。だって、私の魔力はさっき使い切ったばかりで、それほど多くないはずだからね。
これならそれほど圧縮しなくても、変身できるはず。
「ルチア!」
「ダメだって!」
私は叔父や兄たちの制止を振り切って、人の姿に変化し始めた。
掌を合わせて魔力を圧縮していく。
予想通りさほど残っていない魔力はあっさりと圧縮できた。
次は人の姿を思い浮かべるのだ。
叔父は変身するには想像力が大事だと言っていたのだ。前世の人間であった頃を思い浮かべれば、楽勝だ。
私は目をつぶり、記憶の底にかすかに残る風貌を思い起こした。
ストレートの黒髪で、確か肩辺りで切りそろえていたことが多かった気がする。ニホン人によくある茶色の目とあまり彫りの深くない顔だち。目はそれなりに大きかったような……。
ふっと身体が軽くなった気がした。
「ル、ルチアっ!」
慌てたような叔父の声に、目を開く。
視界に入った手はドラゴンのものではなく、きちんと人間のものだった。
見下した身体も足も、普通に人間の姿になっているように見える。
やった! 成功だ!
「わーい!」
と思わず飛び上がって喜んで、はたと気づく。
声は高く、まるで子供のような……って、完全にこれは子供じゃないか!
ぽっこりとした下腹はあまりドラゴンだった時と変わらない。そして視点の位置がほとんど変わっていないと言うことは、身長はまったく伸びていないのだろう。
手足も短く、全体的に頭が少し大きくてバランスが悪い。
顔はどんなふうになったんだろう?
「鏡は、ありますか?」
叔父を見上げてお願いする。
叔父は慌てて服のポケットをごそごそと探って、小さな手鏡を差し出した。
ラウル叔父は流石に普段から人間の姿をしているだけあって、こういった道具できちんと変身できたのかを確認しているのだろう。
私はありがたく叔父から手鏡を受け取って、恐る恐る覗き込んだ。
幼児特有のぽっちゃりと丸い顔に、あまり高くない鼻がちょこんと乗っている。アメジストとエメラルド色をした瞳は変わらず、私の鱗と同じ色の真っ白なおかっぱ頭の幼女がそこに、いた。
あああ……。
結局、人間の姿になっても子供なことは変わらないんだね。
がっくりと地面に崩れ落ちたところで、恐ろしいことに気づいた。
ぎゃー! 私裸だぁ!
慌てて地面にうずくまって小さくなりながら、叔父さんにお願いする。
「服を下さい」
もう涙目だった。
0
お気に入りに追加
577
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
楽しくなった日常で〈私はのんびり出来たらそれでいい!〉
ミューシャル
ファンタジー
退屈な日常が一変、車に轢かれたと思ったらゲームの世界に。
生産や、料理、戦い、いろいろ楽しいことをのんびりしたい女の子の話。
………の予定。
見切り発車故にどこに向かっているのかよく分からなくなります。
気まぐれ更新。(忘れてる訳じゃないんです)
気が向いた時に書きます。
語彙不足です。
たまに訳わかんないこと言い出すかもです。
こんなんでも許せる人向けです。
R15は保険です。
語彙力崩壊中です
お手柔らかにお願いします。
わがまま妃はもう止まらない
みやちゃん
ファンタジー
アンロック王国第一王女のミルアージュは自国でワガママ王女として有名だった。
ミルアージュのことが大好きなルーマン王国の王太子クリストファーのところに嫁入りをした。
もともとワガママ王女と知れ渡っているミルアージュはうまくルーマンで生きていけるのか?
人に何と思われても自分を貫く。
それがミルアージュ。
そんなミルアージュに刺激されルーマン王国、そして世界も変わっていく
「悪役王女は裏で動くことがお好き」の続編ですが、読まなくても話はわかるようにしています。ミルアージュの過去を見たい方はそちらもどうぞ。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる