愛犬との想い出

ムーワ

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最終章

武蔵ありがとう!

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僕が成人式を迎え、武蔵が来てからすでに12年が経つ。武蔵を散歩に連れていっても昔のような力強さというのも感じられなくなってきた。また、食事をあげても昔のようにガツガツ食べることもなくなってきて食も細くなってきた。

僕は心の中で「ムサシもそろそろ寿命なのかもしれないな」って感じるようになっていった。

実際、武蔵と同時に生まれた子犬たちはすでに亡くなっていると母親が話していて、「ムサシはとっても長生きなのよ」って話していた。

僕は武蔵の子犬時代からの想い出を振り返ってこんなこともあったなって時々、考えることもあった。武蔵がやってきた頃は母親が抱っこしてあげるとすぐに眠ってしまって可愛かったなとか、成犬になってからは一緒によく散歩に連れていったなとか、僕が学校で嫌なことがあっても武蔵はいつも笑顔で僕に接してくれたなとか・・・。

武蔵が来てから13年が経ち、日に日に調子を崩していって食欲もなくなり、子犬の頃のように家に入れることも多くなった。だんだん吠えることも少なくなってきて弱弱しい武蔵をみているともうそろそろ寿命なのかなとは感じていた。以前は散歩が大好きだったが、だんだん散歩に行くのも嫌になってきたようでトイレにちょっといく時以外は家で寝そべった格好をしていることが多くなった。そんな武蔵の姿をみていたので家にいるときは武蔵と一緒にいることが多くなっていった。

そんなある日、僕と母親が弱弱しい姿の武蔵を見ていた時、突然、武蔵がきれいな姿勢でお座りをした。武蔵がこんなきれいな姿勢でお座りをするのは久しぶりだったし、一瞬、驚いた。

そして、僕と母親の顔を見て大きな声で「ワン・ワン・ワン」と吠えた・・・。

こんなに大きな声で武蔵が吠えたのは久しぶりだった。

その後、武蔵は「バタン」と倒れて僕は「ムサシ」と必死に必死に声をかけても立ち上がることはなく武蔵は天国へと旅立っていった。近所で武蔵を可愛がっていたおばさんも武蔵の声を聞いて「ムサシどうしたの」といって駆けつけてきた。

あの時、武蔵は最後の力を振り絞ってお座りをして、「ワン・ワン・ワン」と吠えた。

僕はあの時の光景は一生忘れないし、今でも思い出すと涙が出てくる。

武蔵と一緒に過ごした時間は本当に楽しかった。

武蔵ありがとう(完)





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