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1章 憧れのゲームの世界へ
4話
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焔はマップで神殿の位置を確認。
どうやら魔王城だったりすることはなく、神殿はこの街を中央にある大きい建物のようだ。
やはり焔のクエストが一番楽なものということになる。
なので焔はすぐに神殿にはむかわず、街を回ってみることにした。
一応神殿の方向にはむかいつつ、ぶらぶらと街を歩く。
ここは平和で温かな街だ。
少し歩いただけでも焔にはそれが伝わってきた。
ゲームでの始まりの地としてはとてもいい場所だろう。
焔は、緩やかにカーブする大通りをそのまま進んでいく。
しばらく歩き、神殿にも近くなってきた辺りで噴水のある公園を見つけ、寄り道をすることにした。
入り口からすぐに見つけたベンチに座り、公園内を見渡す。
設置されている遊具は現実世界のものと同じようなものだが、そのどれもがピカピカに新しい。
きれいなのは当たり前かもしれないが、わざわざ劣化したりしないようになっているのだろう。
この大きい公園の中に、焔以外にはNPCの小さな女の子が噴水の前にいるだけだった。
ここもこのゲームが正式にサービスを開始したら、バカップルなどのたまり場になったりするのだろうか。
そう考えると焔は、今のこのほぼ貸し切り状態が恵まれたもののように思えてきた。
この贅沢な時間を今のうちに堪能させてもらうことにする。
噴水のところにいる女の子は舞依よりも小さく見えるが、守備範囲の広い焔には十分ありだった。
それに長いさらさらの髪と水色のワンピースの組み合わせは焔の大好物でもある。
(やっぱりゲームの女の子は最高だな!)
そんなわけで焔はその女の子を遠くから眺めながら、胸がときめく心地よさを味わっていた。
しかし突然、強烈な神風が公園内に吹き込んできた。
その風のせいで女の子のワンピースがめくれそうになり、その瞬間に紳士である焔は噴水の像の方に視線をそらす。
ゲームだし相手はNPCだし別に見ててもよかったのだが、あまりにリアルで女の子が本当に生きている気がして、焔にはそんなことはできなかった。
そのそらした視線の先にあった噴水の像は、驚くことに焔には見覚えのある人物のものだった。
その人物というのは焔の夢に出てくる桜色の髪のお姉さんだ。
焔は自分の夢に出てくる女性の像がゲーム内に存在することに戸惑いを隠せなかった。
なぜこのようなことが起こるのか。
どうしたら夢に出てきた女性がゲームに登場するのか。
焔は頭をフル回転させて考えたが、まったく答えは出なかった。
もはや偶然似ていただけとしか言いようがない。
焔には嫌な予感しかしなかった。
これまでも大体こういうときは面倒なことに巻き込まれてきたのだ。
ゲームの世界なのにいったい何が起こるというのだろうか。
げんなりする焔の顔を、さきほどの少女がじっと見上げていた。
いつの間にそばに来ていたのだろうか、焔はまったく気付けなかった。
「えっと……どうかした?」
焔はさっきの神風がイベントのもので、パンツを見たことになって進むストーリーなのかと思った。
だとしたらもったいない。
どうせ見たことになるなら、この目に焼き付けておきたかったと焔は後悔をした。
しかし警戒したようなイベントも起こらず、少女はくいくいっと焔の服の裾を引っ張っている。
(なんだこのかわいい生き物は……、俺はここで道を違えてしまうかもしれない)
(いや、ここはゲームの中、何をしたって問題ないだろう)
(いやいや、だとしても紳士は紳士として振る舞うべきだろう)
(いやいやいや)
(いやいやいやいや)
「どうしたのお嬢ちゃん、お兄ちゃんと楽しいことして遊ぼうか?」
さんざん葛藤しておいて、出てきた言葉は聞く人によっては通報されるようなものだった。
「ううん、遊ばない」
「ぐはっ、振られてしまったか」
千歳に続いてこれで本日二回目だ。
もっとこの子と触れ合いたかった焔は悲しみの底に落ちていった。
「それよりお兄ちゃん、お願いがあるの」
「ハイなんでしょう!」
お兄ちゃんと呼ばれただけで、谷底から一気に飛び上がってきた。
舞依以外の女の子にお兄ちゃんと呼んでもらう機会なんてそうそうない。
「あのね……そのね……」
少女は視線をそらしたりとなにやら言いづらそうにしている。
焔は不思議に思いながら、そして『もしかして愛の告白!?』なんてわずかな可能性を期待しつつ、少女の言葉を待つ。
「あのね、あれ取ってほしいの」
「あれ?」
少女の指さした先。
そこには噴水の像があり、さらにその像が持つ剣の先に何か布が引っかかっている。
「あれはもしや、パンツか?」
「うん……」
どうやら魔王城だったりすることはなく、神殿はこの街を中央にある大きい建物のようだ。
やはり焔のクエストが一番楽なものということになる。
なので焔はすぐに神殿にはむかわず、街を回ってみることにした。
一応神殿の方向にはむかいつつ、ぶらぶらと街を歩く。
ここは平和で温かな街だ。
少し歩いただけでも焔にはそれが伝わってきた。
ゲームでの始まりの地としてはとてもいい場所だろう。
焔は、緩やかにカーブする大通りをそのまま進んでいく。
しばらく歩き、神殿にも近くなってきた辺りで噴水のある公園を見つけ、寄り道をすることにした。
入り口からすぐに見つけたベンチに座り、公園内を見渡す。
設置されている遊具は現実世界のものと同じようなものだが、そのどれもがピカピカに新しい。
きれいなのは当たり前かもしれないが、わざわざ劣化したりしないようになっているのだろう。
この大きい公園の中に、焔以外にはNPCの小さな女の子が噴水の前にいるだけだった。
ここもこのゲームが正式にサービスを開始したら、バカップルなどのたまり場になったりするのだろうか。
そう考えると焔は、今のこのほぼ貸し切り状態が恵まれたもののように思えてきた。
この贅沢な時間を今のうちに堪能させてもらうことにする。
噴水のところにいる女の子は舞依よりも小さく見えるが、守備範囲の広い焔には十分ありだった。
それに長いさらさらの髪と水色のワンピースの組み合わせは焔の大好物でもある。
(やっぱりゲームの女の子は最高だな!)
そんなわけで焔はその女の子を遠くから眺めながら、胸がときめく心地よさを味わっていた。
しかし突然、強烈な神風が公園内に吹き込んできた。
その風のせいで女の子のワンピースがめくれそうになり、その瞬間に紳士である焔は噴水の像の方に視線をそらす。
ゲームだし相手はNPCだし別に見ててもよかったのだが、あまりにリアルで女の子が本当に生きている気がして、焔にはそんなことはできなかった。
そのそらした視線の先にあった噴水の像は、驚くことに焔には見覚えのある人物のものだった。
その人物というのは焔の夢に出てくる桜色の髪のお姉さんだ。
焔は自分の夢に出てくる女性の像がゲーム内に存在することに戸惑いを隠せなかった。
なぜこのようなことが起こるのか。
どうしたら夢に出てきた女性がゲームに登場するのか。
焔は頭をフル回転させて考えたが、まったく答えは出なかった。
もはや偶然似ていただけとしか言いようがない。
焔には嫌な予感しかしなかった。
これまでも大体こういうときは面倒なことに巻き込まれてきたのだ。
ゲームの世界なのにいったい何が起こるというのだろうか。
げんなりする焔の顔を、さきほどの少女がじっと見上げていた。
いつの間にそばに来ていたのだろうか、焔はまったく気付けなかった。
「えっと……どうかした?」
焔はさっきの神風がイベントのもので、パンツを見たことになって進むストーリーなのかと思った。
だとしたらもったいない。
どうせ見たことになるなら、この目に焼き付けておきたかったと焔は後悔をした。
しかし警戒したようなイベントも起こらず、少女はくいくいっと焔の服の裾を引っ張っている。
(なんだこのかわいい生き物は……、俺はここで道を違えてしまうかもしれない)
(いや、ここはゲームの中、何をしたって問題ないだろう)
(いやいや、だとしても紳士は紳士として振る舞うべきだろう)
(いやいやいや)
(いやいやいやいや)
「どうしたのお嬢ちゃん、お兄ちゃんと楽しいことして遊ぼうか?」
さんざん葛藤しておいて、出てきた言葉は聞く人によっては通報されるようなものだった。
「ううん、遊ばない」
「ぐはっ、振られてしまったか」
千歳に続いてこれで本日二回目だ。
もっとこの子と触れ合いたかった焔は悲しみの底に落ちていった。
「それよりお兄ちゃん、お願いがあるの」
「ハイなんでしょう!」
お兄ちゃんと呼ばれただけで、谷底から一気に飛び上がってきた。
舞依以外の女の子にお兄ちゃんと呼んでもらう機会なんてそうそうない。
「あのね……そのね……」
少女は視線をそらしたりとなにやら言いづらそうにしている。
焔は不思議に思いながら、そして『もしかして愛の告白!?』なんてわずかな可能性を期待しつつ、少女の言葉を待つ。
「あのね、あれ取ってほしいの」
「あれ?」
少女の指さした先。
そこには噴水の像があり、さらにその像が持つ剣の先に何か布が引っかかっている。
「あれはもしや、パンツか?」
「うん……」
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