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第一章 王国編第二部(中等部)

エピソード? 戦闘祭り リアナサイド

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「何じゃあの光は?」

 そう言ってショーンが西の方角を見て、遠くに見える森の方を指差している。
 ぼくも森の方を振り向くと、森からは次々とまばゆい光が放たれていた。

「あれだけの光の数だと、どこかの組が脱落したのではないかな」
 
 ぼくの言葉にエルザも反応する。

「あ~あ、これだけ暇だと身体が鈍っちゃうのよね。私達もあっちの森に行ってみる?」

 そう言ってエルザは退屈そうに地面の小石を蹴っていた。

(クッ状況が分からないまま森に向かうのは危険だ。もしかしたら茂みに隠れて待ち伏せしているかもしれない。ここはまず運動場の中心に位置するであろう北西に見えるあの砦まで進むのが良いのではないかな)

「エルザ、ここはあの砦を目指すのはどうかな?」

「そうね、砦まではどのルートで行くの?」

「何言っとるんじゃ! ワシが先頭を歩くけぇ堂々とすりゃええんじゃ」

(フフフ、なるほど! 騎士たるもの臆せず進めか…………また一つショーンに教えられたよ)

「よし! 真っ直ぐ進も」

 そう決断した時に横から止めに入る声に言葉を遮られた。

「ダメよ! 敵がいるかもしれないんだから壁伝いに進みましょう。陣形は私を中心にショーン君とリアナで前方を任せたわよ。サッソ君とトルド君は後方ね。強敵が現れたら……まぁこの場合はジェイミーとクライヴ君達の事ね。その時は私の雷魔法で一人ぐらいは足止めをするから、後はリアナ達お願いね」

 エルザはやや焦り顔になっていて、早口でみんなに指示を出していた。他のみんなもその指示に従っていてぼくとショーンの【当たって砕けろ】案は却下された。

 そしてぼく達は真ん中の砦を目指して歩き出した。
 壁を越えた先には二階建ての建物があったり、迷路のように壁に阻まれた建物もあり、歩く事四十分。
 砦まで後二百メートルの所で今まで見た建物より小さくて、入り口が一つしかない建物が見えた。
 その建物は入口の扉が開いたままになっているが、ここからでは中の様子が薄暗くてよく見えない。

(ぼくの勘では妙に静かすぎる。それに不自然に扉が開いている事が怪しい。これは一度エルザと相談しよう)

ぼくとショーンはエルザの方へ近寄り小声で話し合う。

「どうするんじゃ? あの建物に入るんか?」

「ショーン、それは愚策だ。不自然じゃないか扉が開いている事が」

「そうね……確かにリアナの言う通り扉が開いているのは怪しいわね。だって今まで見てきた建物は扉が閉まっていたわよね。他の組が開けたのか、もしくは潜んでいるか」

「じゃったら、ここで返り討ちじゃ」

 ショーンが肩をぐるぐると回してやる気に溢れていた。

(フッ……全く君っていう人間は、どうやらぼくもその熱意に昂ってきたよ。ぼくも最大限注意を払うとしよう)

「ショーンとぼくで扉の所まで行って、敵がいるようなら建物の外まで誘き寄せるのはどうかな?」

 ぼくの提案にエルザは苦い顔をする。

「大丈夫なの? もしここで冒険者のリアナ達が抜けると優勝出来ないわよ」

「大丈夫だ。ぼく達はそんなヘマはしないよ」

 ぼくの熱意が伝わったのかエルザは納得してくれて、ぼくとショーンは作戦に移る。
 扉から十五メートル離れた壁の所にエルザ、そしてエルザと反対方向に二十メートル進んだ所にある壁にサッソ君とトルド君が待機した。
 
(ぼくとショーンは後方に下がるだけでいい。そうすれば中央にぼく達、左にエルザ、右にサッソ君とトルド君と陣形を組む事ができるはずだ。
 それに敵が前進してくれば、左右のエルザとサッソ君達で包囲する事が可能だろう。
 まぁこの陣形を考えたのはエルザだけどね。
 なんというか武のサンダース辺境伯は豪快な性格と聞いていたが、娘のエルザはすごく柔軟な発想の持ち主だね。まるでモーガンといるみたいだ)

 ぼくはそんな事を考えながらショーンとともに扉に向かった。

「ひっかかったな!」

「今だ! 俺につづけぇ!」

 やはり暗闇の室内からは多数の人影が襲いかかってくる。

(ひっかかったのは先輩方だよ)

「ショーン! 守りは任せた」

「おう! 誘い出してやらぁ!」

 ショーンは巧みに攻撃を盾で防ぎながら、ゆっくりと後退していく。
 建物の中からはゾロゾロと先輩方が飛び出してショーンを攻撃する。
 そして十メートル程度後退した所で立場が逆転する。
 エルザが素早くフェイントを織り交ぜた返斬りで、敵の腕の的に強い一撃を当て、一人脱落。
 ショーンは槍を振り回して正面の先輩二人の武器を弾き飛ばす。次に腕に一撃をそれぞれ加えて、二、三人目脱落。
 ぼくも敵の上段斬りを木剣で受け止めながら後方に引き寄せると、敵は前のめりにバランスを崩す。
 ガラ空きの背中に一撃を入れ、四人目脱落。
 五人目は、まさかの出来事が起きた。
 サッソ君がこの場には居ない!
 そしてトルド君は腕を打たれて、脱落していた。
 最後の一人がこちらに向けて走ってきたが、ショーンが槍で足を払って仰向けに転がしていた。
 そこをぼくが足に一撃で五人目脱落。

 戦いが終わるとぼく達は急いでトルド君に事情を聞きにいく。

「ゴメンみんな、実はサッソが突然逃げ出して……オレも呆気に取られた所を狙われちゃったんだ…………」

(なに? サッソ君が逃げ出した! クッ! やはりトラブルを起こしたか! クライヴのあの事件もあり、どうにもサッソ君が今回もクライヴに何かしないか監視していたんだが、まさかクライヴと出会う前に姿を眩ますとは…………変な事をしでかしてぼく達が失格にならなければいいけど。いや! すぐに捕まえよう彼が何かをしでかす前に!)

「エルザ!」

「うん、アリアからクライヴ君の事は聞いているわ。サッソ君を急いで探しに行こう」

「クソ! 何しとんじゃアイツは!」

 ぼく達はサッソ君が逃げたであろう北東に向かって走りだした。
 そして三百メートル先には大小様々なテントが見えていた。
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