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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード113 神父とは

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 神父とは…………宗教的な事は一旦置いといて…………罪に苦しむ人を許す事をしたり、冠婚葬祭にも呼ばれたり、困った人へ対して手を差し伸べる善人?
 まあ色々とお役目があるのだろう。
 前世も今世もオレには信仰心が無いのであまり関わる事はないはずだった。
 念のために言うがこの世界に来てから神は信じるようになった。
 八歳の頃に神に会ったからだ。
 杖代わりにダンベルを持ったピチピチのシャツを着たムキムキな神さまだったが…………

 話は逸れたが、現在午後二時。
 今現在目の前に居る人物を神父と呼べる人物なのか?

「クライヴ! 久しぶりだマイブラザー! この一年間でブラザーのアイディ~アでウハウハだヨ! あの水で楽して働くのは自分、汗水流して働くのも自由! 神に祈る毎日オレの信仰心。金稼ぐ毎日オレの向上心! イェイ、カモン」

 目の前にはやけにハイテンションな一年前はとてもお世話になった神父らしき人が神父平服キャソックを着ていた。

(ブラザーって誰だよ! 呼ばれた事ねぇーよ! どうしてこうなった神父様? 何でそんなにチャラいの?)

 オレは状況整理をした。
 この町全体が活気があり、人が沢山増えた事で、色々と依頼が増えたが冒険者等も増えたので依頼数と解決数の重要と供給のバランスが丁度良くなった。
 そして依頼料達成料金の二割を教会に支払う仕組みで教会は儲かる……
 更に濾過水の【シェリダンの雫】やその他特産品や生活品を販売する為の倉庫や販売所の賃貸料と言う名のお布施…………
 そのまた依頼窓口や井戸水の水汲み配達等で教会の一部を借りているので賃貸料と言う名のお布施を商売を営む人達は神父様に渡していた。
 大金は人を狂わせる……その言葉通りの事を体現している人が目の前にいた………………
 
「ヨォ! クライヴ元気ないヨォ! そんなクライヴに辛い胸の中に抱える悲しむ世界なんざ! ドントクライ、未来を夢見て楽しむのが正解なのさ!」

 オレの悲しむ元凶が何かを言っていた……
 オレは何も言わずにこの場を離れて、シェリダン様へ挨拶に伺った。

「ねぇ、クライヴ。今の人は?」

「欲望にまみれて変わり果てたダメ人間だよ」

 フィーネはオレの悲しそうにしている顔を見て、それ以上言葉をかける事は無かった……

 オレは気を取り直して、シェリダン様の屋敷に向かった。
 今朝ヒューゴからシェリダン様へオレがいく事を伝えてくれているそうなので、正門も冒険者証明証を見せるとすぐに通してくれた。

 オレ達は屋敷に向かって歩いていると、敷地の奥の方で威勢の良い掛け声が聞こえてきた。
 どうやら警備兵が訓練をしているようだ。
 オレはそのまま真っ直ぐ歩いていくと高級旅館並みの大きさの屋敷にたどり着いた。
 執事と使用人がオレ達を出迎えてくれた。

「お久しぶりです。クライヴ様。お館様がお待ちしておりますのでこちらへどうぞ」

 オレ達は執事に案内されるがまま応接室まで連れて行ってもらった。
 執事が扉を開けると、グレイヘアーのオールバックに、ますますサンタさんのような体型と髭を蓄えたシェリダン様が座っていた。

「シェリダン様、夏休みに帰省できず申し訳ありません遅くなりましたが昨年の入学式のお祝いありがとうございました」

「おぉクライヴ。久しぶりじゃのぉ。一年振りに帰ってきたら町の様子に驚いたかのぉ。クライヴのおかげで我が領は栄えて人口も爆発的に増えておるぞ。ハッハッハこれからも色々なアイデアを出してこの領を繁栄させてほしいのぉ」

「いえいえ、町の繁栄はシェリダン様の手腕だと存じております。
 ボクのやりたい事を否定せずに許可してくれましたので」

 オレは子どもらしく向日葵のような満面の笑顔で答えた。
 それを見たシェリダン様も孫を見るような嬉しそうな顔をしていた。

「そうじゃ! この町の繁栄に貢献したクライヴに謝礼を渡そうと思っていたのじゃが、神父があの様に変わってしまったように町も大きく変わり改修工事や造築等で色々と使ってしまってのぉ………………」

「心中お察しいたします」

「すまぬな……僅かばかりじゃが受け取ってくれ」
 
 シェリダン様はそう言って近くの使用人に皮袋を運ばせた。

「金貨三枚分は入っておる。王都までの運賃や来年の中等部入学の足しになれば良いがのぉ」

「ありがとうございますシェリダン様。大切に使わせていただきます」

(ん? これって言わば税金みたいなもんだろ……あの神父が少し横領しているとして、オレの貢献なんて濾過水の【シェリダンの雫】と井戸水配達程度だろ? でこの金額…………どんだけ儲かってんだよシェリダン様!)

 オレはそんな事を考えると先程の神父のパーリーピーポーな姿が頭をよぎり……何故か釈然としなかった……

 それからはフィーネと一緒に町で買い物……と言っても買い物する場所は一つしかないんだが……あの教会の一部と化している特産品・生活品販売店しかない。

 オレとフィーネは店に入り、一通り何があるか見ようとした。

「へいらっしゃい! 本日入った活きの良いドリルマグロ! 裾物だけど良品ではないドレスをしているから頭、内臓、エラを取り除いている手間要らずで夕食にどうだい?」

「おいおい! こっちは小ぶりなドリルマグロだから投げて売るぜ相場より安い!」

「こっちのギンギラハマチは指値で小銀貨三枚だぜ!」
 
 ここシェリダンの町は漁業が盛んである。
 漁村からその日挙がった魚を舟で運んでくる。
 だがしかし!

(ここは魚市場なの? 分からん用語が飛び交っているぞ!)

 何故だが分からないが、野菜売り場、特産品売り場、【シェリダンの雫】売場……どの売り場も魚市場並みの専門用語と熱気が伝わってきた。

「フィーネ……あのさぁ」

「うん。クライヴ……帰ろっか」

 オレ達はヒューゴの待つ家に帰った。
 そして、三日間ヒューゴに地下室でボコボコに鍛えられて、最終日オレはフィーネを連れて逃げ出すように王都行きの乗合馬車に乗り込んだ。

「どうしたの? そんなに急いで」

「いや、オレ三日間ずっと地下室で鍛えられていて、もうメンタル限界だよ」

 そんなオレにフィーネはそっと寄り添って来てオレの愚痴にただ頷いてくれた。
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