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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード35 初依頼では準備が大切です
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「ぐわぁー!」
オレは偽ブタの突進で十メートルぐらい吹っ飛ばされ、地面に背中を強打した。
「「「クライヴ!」」」
小盾は衝撃のあまり凹んでいたが、三人ともオレの心配をしてくれているので何とか右手のサーベルを持ち上げて無事だとアピールした。
(あー怖かった! 死ななくてよかった。ちゃんと頑丈なハードレーザーの防具や盾買ってて良かったあ……でも背中痛い……息するだけで痛い……痛すぎる)
運良くオレのサーベルが偽ブタの左眼に刺さったようで、偽ブタは勢いを弱め少し怯んでいるようだった。
「くらえ!」
その隙をついてリアナが長剣で偽ブタの右眼に斜め斬りを繰り出した。
偽ブタは右前脚の爪で長剣を受け止め、そのまま長剣を引っ張るように前脚を力強く地面に踏みしめた。長剣を握っていたリアナも長剣から手を離すのが遅れ右前方に引き込まれるように体勢を崩していた。
「クッ!」
リアナはバランスを崩した事でつい声が漏れてしまい、そして偽ブタは立ち上がり体勢を崩したリアナの頭を目掛けて反対の左前脚の爪を振り下ろした。
甲高い衝突音とともにリアナのくぐもった声が聞こえた。
「ウゥッ!」
頭を狙った一撃はリアナの咄嗟の判断によって細剣で受け流したように見えたが、充分受け流せずにリアナの右脇腹のレザーアーマが完全に破壊されていた。
中の服もボロボロとなり血が滲んでおり、所々露出している肌には爪による傷で僅かに肉が抉れていた。
「リアナ!」
フィーネが援護で矢を放ち、なんとかリアナは偽ブタとの距離を離すことができた。
「リアナ! 大丈夫!」
「フィーネ、ありがとう」
「リアナ! その傷……無理せず後に下がってて」
「いや、せっかくクライヴが玉砕覚悟で作ってくれたチャンスなんだ! ぼくの傷なんか大したことないさ」
「……わかったわリアナ! モーガンの魔法の詠唱があと少しだから、それまでアタシ達で耐えましょう」
フィーネとリアナの熱い友情が繰り広げられていて、なんか二人ともオレの事完全に忘れてない?
正直怖いのでこのまま見過ごすのもありだと思う………………
本当にそれで良いのかオレ!
助けれなかったと後悔しないか!
母さんの時のように!
「ウオォォー!」
オレは震える身体を鎮めるように大声を上げて自分自身を鼓舞して走り出した。
偽ブタとの距離は約十メートル。
「フィーネ! あのブタの左眼付近を狙って矢を出来るだけ多く放ってくれないか!」
「クライヴ! 君は何をするつもりだ! ぼくとフィーネと一緒に偽ブタを誘導して時間稼ぎをするんだ」
リアナは慌てたようにオレに言ったが、オレは「任せてくれ」と一言だけ伝えて偽ブタに向かっていく。
「クライヴ! この距離での狙い撃ちなら三本が限界よ!」
フィーネはオレの事を信頼してくれて、何も疑わずに行動をしてくれた。
「モーガン! あのブタに一撃くらわすから、後は任せたぞ」
オレは集中して説唱をしているモーガンに一声かけて偽ブタに大声を上げながら向かっていた。
偽ブタもオレの挑発に引っかかり、こっちを見ていて今にも突撃してくる様子だ。
しかしその前に、偽ブタの左眼を狙ったフィーネの矢が一本…………左前脚で弾かれた。
そしてオレはスピードを落とす事なく距離を詰めていき偽ブタまで残り八メートル……
フィーネの矢がもう一本…………また弾かれる……だがオレはその間に偽ブタが突進する助走が取れない位置まで進んでいた。
残り五メートル……
ついに偽ブタは立ち上がり、オレを迎撃する体勢となった。
最後のフィーネの矢が仁王立ちの偽ブタの左眼にピタリと照準を合わせてきた………………しかし偽ブタは左前脚を振り上げて矢を弾いた。
残り二メートルをきった!
(さすがフィーネ完璧だよ! ありがとう)
オレは【身体強化】で加速してガラ空きの左脇腹を狙おうと横切りの動き出しをしたが、偽ブタもすぐに身体を捻り右前脚で振り下ろした…………
「ひっかかったなブタモドキ!」
オレの横切りの動き出しはフェイントで、一瞬だけサーベルを振る素振りをしてバックステップをした。
三十センチ目の前には空振りした偽ブタの右前脚が地面についていた……
オレは【身体強化】でサーベルを横一閃に斬った偽ブタの右前脚を目掛けて!
ボトッ
重たい音が地面に響き、偽ブタの右前脚の肘の上部分から切り落とされていた。
「プギィィ! プギィィィ!」
さすがに前脚を斬り落とされた偽ブタはバランスが取れず前のめりに崩れてきた。
くそ! 頑張ったんだけどここまでか!
オレはもう身体がギシギシと悲鳴をあげ動く事が出来なかった……
そして後方からタイミング良く甲高い声が聞こえた。
「一気に行くよ! 氷の地面」
モーガンが氷の初級魔法を詠唱して、偽ブタの周辺の地面が凍りついた。
立てろうとしていた偽ブタは氷で滑って転倒し仰向けになった。
フィーネとリアナは好機を見逃さず一気に駆け寄った。
フィーネが腹部を狙って弓で矢を放つと腹部のかなり奥の方まで矢が突き刺さった。
「プギャャアア!」
偽ブタに大ダメージを与えているようだ。どうやらお腹が弱点らしいぞ。
「これでさよならだね!」
リアナが偽ブタの腹部の上の方を細剣で奥まで突き刺した。
すると偽ブタはピクピク震えた後に動かなくなった。
(えっ! もしかして心臓を一突で?)
偽ブタが死んだ事を確認すると、みんながこっちに駆け寄って来た。
「「「クライヴ」」」
「君ってやつは……見直したよ、迅速に行動しフィーネの盾となる姿、仲間の為に果敢に攻める勇気ある行動はまさに騎士道だよ。
このぼくが君から騎士道を教えられるとはな……クライヴ今まですまなかった。ぼくは心のどこかでクライヴに不信感を持っていた。騎士にあるまじき感情だ。怒ってくれて構わない!」
いや! 知らんって騎士道なんか! 何その満ち足りた顔! その前にリアナはオレより怪我酷いぞ、大丈夫か?
そして、リアナは自分が怪我しているのに肩を貸そうとしてくれた。リアナ流の感謝を示そうとしているらしいが正直ありがた迷惑だ。
それに対抗して反対側にはフィーネが肩を貸そうとしてくれる。
「リアナ、クライヴはアタシに任せて! リアナは自分の怪我の事と獣が来ないか心配して!」
おいフィーネ! 引っ張らないでくれ! オレは今身体がダメなんだよギシギシからミシミシと音が変わってきたぞ! 肩が脱臼しちゃうか、折れちゃうって!
「わかったよフィーネ、ぼくがみんなを守らないとな」
リアナ男前なだなぁ……怪我して普通そんなセリフ言えるか?
フィーネも見習えよ! 何で笑顔で勝ったわって顔してるんだよ!
「はぁ」
オレはため息をついて改めて先程の戦闘を思い出すと手が震えてきた。
偽ブタの前脚を切り落とした感触が今も残っており不快な気分にさせられる。
突然のアクシデントで獣と遭遇し、初級冒険者では雑魚的扱いの偽ブタに対して誰一人欠けることなく紙一重で生き残る事ができた。
やはり、採取依頼にもある程度の危険はあるようだ。
王都に帰ると採取依頼をこれからも受けるか、みんなに考え直してもらおう!
しかしオレの中にもう一つ別の感情が沸き起こる。
慢心なのだろうか? チームとして討伐できた喜びなのか? みんなと協力した達成感が心に残った……
「あっ! ほら最後の一個見つけたよ。これで薬草十個集まったから依頼達成だね。ついでにこの偽ブタも持って帰ろうか」
このモーガンのちゃっかりもの。
いつのまにか、偽ブタの両脚はロープで木に吊るされていた。
フィーネに周りに獣がいないか確認してもらいながら、オレとモーガンとリアナで木に吊るされた偽ブタを王都まで運んで行った。
なんかどこかの民族とかもこんな感じでブタ運んでたよなぁ…………
依頼達成の小銀貨八枚、そして意外にも偽ブタの納品で銀貨四枚の臨時収入を得た。
「一人当たり銀貨一枚と小銀貨二枚だね」
モーガンが最初に発言した。
「オレ達はチームだし、オレもみんなで均等に分けるのに賛成」
オレもモーガンの案に同意した。
「そうねチームだもんね」
「フフッぼくも賛成だよ」
オレ達は団体行動で、まずリアナの治療目的で薬屋に向かった。
「あなた達が依頼受けてくれた子達だね。あら? お嬢ちゃん怪我してるじゃない! 特別にこの傷薬をあげるよ。高級な塗り薬でそのぐらいよ傷跡なら一時間で綺麗に治るわよ」
「ありがとうございます。しかしぼくは名誉の傷痕と思っていますのでお気遣いなく」
「何を言ってるのよ! 女の子なんだから肌に傷跡なんてダメなのに決まってるわよ! ちょっとこっちに来なさい!」
リアナは奥の部屋に連れて行かれて数分後にリアナの声が聞こえてきた。
「クッ! 好きにするが良い」
えっ何が起こってるの? そのセリフはわざとか?
そして綺麗さっぱり傷跡が消えたリアナと合流し、武器屋でそれぞれの武器や防具を修理した。
武器屋のオジサンもとても優しくサービスで修理代を半額にしてくて損傷具合にもよるが小銀貨二枚から五枚程度で修理をしてくれた。
そして夕方前に学生寮に戻ってきて、お腹が空いたオレ達は食堂に向かった。
今日のメニューは【海の男のおかげで更に推進する航海。類は友を呼ぶのが船乗りの熱い男たちっス。プロだろお前ら急な嵐に負けるな。コンパスだ! 方角を間違えるな!】と【ライス伯爵がご乱心で部屋に籠ったぞ! ほう、悔しいが彼にピッキングして開けてもらおう】だった。
いつも思う、料理長にこっちじゃなくて本業の育成の仕事をしろよ!
オレとリアナは【海の男のおかげで更に推進する航海。類は友を呼ぶのが船乗りの熱い男たちっス。プロだろお前ら急な嵐に負けるな。コンパスだ! 方角を間違えるな!】定食にして、モーガンとフィーネが【ライス伯爵がご乱心で部屋に籠ったぞ! ほう、悔しいが彼にピッキングして開けてもらおう】定食にした。
いつものようにカウンターに取りに行ってメニューの内容に気づく……もう当たり前過ぎて何も驚かない。
オレとリアナの【海の男のおかげで更に推進する航海。類は友を呼ぶのが船乗りの熱い男たちっス。プロだろお前ら急な嵐に負けるな。コンパスだ!方角を間違えるな!】定食。
要約すると、おからサラダに甲殻類のスープパスタだ。
そして、モーガンとフィーネの【ライス伯爵がご乱心で部屋に籠ったぞ! ほう、悔しいが彼にピッキングして開けてもらおう】
要約するとポークカレーだ。
味は美味しいよ。ボリュームもちょうど良いよ。定食を提供する早さもスピーディーだよ。ただ一つメニューがわからん! 普通に書け料理長!
今日はとても濃い一日となり、明日の入学式に支障をきたしそうだな……早く寝よう。
俺たちは食器を返却し食堂から出ようとすると、厨房の端の方に料理長が仁王立ちで佇んでいた。
そしてオレ達を睨みながら料理長は涙を流していた………………
オレは偽ブタの突進で十メートルぐらい吹っ飛ばされ、地面に背中を強打した。
「「「クライヴ!」」」
小盾は衝撃のあまり凹んでいたが、三人ともオレの心配をしてくれているので何とか右手のサーベルを持ち上げて無事だとアピールした。
(あー怖かった! 死ななくてよかった。ちゃんと頑丈なハードレーザーの防具や盾買ってて良かったあ……でも背中痛い……息するだけで痛い……痛すぎる)
運良くオレのサーベルが偽ブタの左眼に刺さったようで、偽ブタは勢いを弱め少し怯んでいるようだった。
「くらえ!」
その隙をついてリアナが長剣で偽ブタの右眼に斜め斬りを繰り出した。
偽ブタは右前脚の爪で長剣を受け止め、そのまま長剣を引っ張るように前脚を力強く地面に踏みしめた。長剣を握っていたリアナも長剣から手を離すのが遅れ右前方に引き込まれるように体勢を崩していた。
「クッ!」
リアナはバランスを崩した事でつい声が漏れてしまい、そして偽ブタは立ち上がり体勢を崩したリアナの頭を目掛けて反対の左前脚の爪を振り下ろした。
甲高い衝突音とともにリアナのくぐもった声が聞こえた。
「ウゥッ!」
頭を狙った一撃はリアナの咄嗟の判断によって細剣で受け流したように見えたが、充分受け流せずにリアナの右脇腹のレザーアーマが完全に破壊されていた。
中の服もボロボロとなり血が滲んでおり、所々露出している肌には爪による傷で僅かに肉が抉れていた。
「リアナ!」
フィーネが援護で矢を放ち、なんとかリアナは偽ブタとの距離を離すことができた。
「リアナ! 大丈夫!」
「フィーネ、ありがとう」
「リアナ! その傷……無理せず後に下がってて」
「いや、せっかくクライヴが玉砕覚悟で作ってくれたチャンスなんだ! ぼくの傷なんか大したことないさ」
「……わかったわリアナ! モーガンの魔法の詠唱があと少しだから、それまでアタシ達で耐えましょう」
フィーネとリアナの熱い友情が繰り広げられていて、なんか二人ともオレの事完全に忘れてない?
正直怖いのでこのまま見過ごすのもありだと思う………………
本当にそれで良いのかオレ!
助けれなかったと後悔しないか!
母さんの時のように!
「ウオォォー!」
オレは震える身体を鎮めるように大声を上げて自分自身を鼓舞して走り出した。
偽ブタとの距離は約十メートル。
「フィーネ! あのブタの左眼付近を狙って矢を出来るだけ多く放ってくれないか!」
「クライヴ! 君は何をするつもりだ! ぼくとフィーネと一緒に偽ブタを誘導して時間稼ぎをするんだ」
リアナは慌てたようにオレに言ったが、オレは「任せてくれ」と一言だけ伝えて偽ブタに向かっていく。
「クライヴ! この距離での狙い撃ちなら三本が限界よ!」
フィーネはオレの事を信頼してくれて、何も疑わずに行動をしてくれた。
「モーガン! あのブタに一撃くらわすから、後は任せたぞ」
オレは集中して説唱をしているモーガンに一声かけて偽ブタに大声を上げながら向かっていた。
偽ブタもオレの挑発に引っかかり、こっちを見ていて今にも突撃してくる様子だ。
しかしその前に、偽ブタの左眼を狙ったフィーネの矢が一本…………左前脚で弾かれた。
そしてオレはスピードを落とす事なく距離を詰めていき偽ブタまで残り八メートル……
フィーネの矢がもう一本…………また弾かれる……だがオレはその間に偽ブタが突進する助走が取れない位置まで進んでいた。
残り五メートル……
ついに偽ブタは立ち上がり、オレを迎撃する体勢となった。
最後のフィーネの矢が仁王立ちの偽ブタの左眼にピタリと照準を合わせてきた………………しかし偽ブタは左前脚を振り上げて矢を弾いた。
残り二メートルをきった!
(さすがフィーネ完璧だよ! ありがとう)
オレは【身体強化】で加速してガラ空きの左脇腹を狙おうと横切りの動き出しをしたが、偽ブタもすぐに身体を捻り右前脚で振り下ろした…………
「ひっかかったなブタモドキ!」
オレの横切りの動き出しはフェイントで、一瞬だけサーベルを振る素振りをしてバックステップをした。
三十センチ目の前には空振りした偽ブタの右前脚が地面についていた……
オレは【身体強化】でサーベルを横一閃に斬った偽ブタの右前脚を目掛けて!
ボトッ
重たい音が地面に響き、偽ブタの右前脚の肘の上部分から切り落とされていた。
「プギィィ! プギィィィ!」
さすがに前脚を斬り落とされた偽ブタはバランスが取れず前のめりに崩れてきた。
くそ! 頑張ったんだけどここまでか!
オレはもう身体がギシギシと悲鳴をあげ動く事が出来なかった……
そして後方からタイミング良く甲高い声が聞こえた。
「一気に行くよ! 氷の地面」
モーガンが氷の初級魔法を詠唱して、偽ブタの周辺の地面が凍りついた。
立てろうとしていた偽ブタは氷で滑って転倒し仰向けになった。
フィーネとリアナは好機を見逃さず一気に駆け寄った。
フィーネが腹部を狙って弓で矢を放つと腹部のかなり奥の方まで矢が突き刺さった。
「プギャャアア!」
偽ブタに大ダメージを与えているようだ。どうやらお腹が弱点らしいぞ。
「これでさよならだね!」
リアナが偽ブタの腹部の上の方を細剣で奥まで突き刺した。
すると偽ブタはピクピク震えた後に動かなくなった。
(えっ! もしかして心臓を一突で?)
偽ブタが死んだ事を確認すると、みんながこっちに駆け寄って来た。
「「「クライヴ」」」
「君ってやつは……見直したよ、迅速に行動しフィーネの盾となる姿、仲間の為に果敢に攻める勇気ある行動はまさに騎士道だよ。
このぼくが君から騎士道を教えられるとはな……クライヴ今まですまなかった。ぼくは心のどこかでクライヴに不信感を持っていた。騎士にあるまじき感情だ。怒ってくれて構わない!」
いや! 知らんって騎士道なんか! 何その満ち足りた顔! その前にリアナはオレより怪我酷いぞ、大丈夫か?
そして、リアナは自分が怪我しているのに肩を貸そうとしてくれた。リアナ流の感謝を示そうとしているらしいが正直ありがた迷惑だ。
それに対抗して反対側にはフィーネが肩を貸そうとしてくれる。
「リアナ、クライヴはアタシに任せて! リアナは自分の怪我の事と獣が来ないか心配して!」
おいフィーネ! 引っ張らないでくれ! オレは今身体がダメなんだよギシギシからミシミシと音が変わってきたぞ! 肩が脱臼しちゃうか、折れちゃうって!
「わかったよフィーネ、ぼくがみんなを守らないとな」
リアナ男前なだなぁ……怪我して普通そんなセリフ言えるか?
フィーネも見習えよ! 何で笑顔で勝ったわって顔してるんだよ!
「はぁ」
オレはため息をついて改めて先程の戦闘を思い出すと手が震えてきた。
偽ブタの前脚を切り落とした感触が今も残っており不快な気分にさせられる。
突然のアクシデントで獣と遭遇し、初級冒険者では雑魚的扱いの偽ブタに対して誰一人欠けることなく紙一重で生き残る事ができた。
やはり、採取依頼にもある程度の危険はあるようだ。
王都に帰ると採取依頼をこれからも受けるか、みんなに考え直してもらおう!
しかしオレの中にもう一つ別の感情が沸き起こる。
慢心なのだろうか? チームとして討伐できた喜びなのか? みんなと協力した達成感が心に残った……
「あっ! ほら最後の一個見つけたよ。これで薬草十個集まったから依頼達成だね。ついでにこの偽ブタも持って帰ろうか」
このモーガンのちゃっかりもの。
いつのまにか、偽ブタの両脚はロープで木に吊るされていた。
フィーネに周りに獣がいないか確認してもらいながら、オレとモーガンとリアナで木に吊るされた偽ブタを王都まで運んで行った。
なんかどこかの民族とかもこんな感じでブタ運んでたよなぁ…………
依頼達成の小銀貨八枚、そして意外にも偽ブタの納品で銀貨四枚の臨時収入を得た。
「一人当たり銀貨一枚と小銀貨二枚だね」
モーガンが最初に発言した。
「オレ達はチームだし、オレもみんなで均等に分けるのに賛成」
オレもモーガンの案に同意した。
「そうねチームだもんね」
「フフッぼくも賛成だよ」
オレ達は団体行動で、まずリアナの治療目的で薬屋に向かった。
「あなた達が依頼受けてくれた子達だね。あら? お嬢ちゃん怪我してるじゃない! 特別にこの傷薬をあげるよ。高級な塗り薬でそのぐらいよ傷跡なら一時間で綺麗に治るわよ」
「ありがとうございます。しかしぼくは名誉の傷痕と思っていますのでお気遣いなく」
「何を言ってるのよ! 女の子なんだから肌に傷跡なんてダメなのに決まってるわよ! ちょっとこっちに来なさい!」
リアナは奥の部屋に連れて行かれて数分後にリアナの声が聞こえてきた。
「クッ! 好きにするが良い」
えっ何が起こってるの? そのセリフはわざとか?
そして綺麗さっぱり傷跡が消えたリアナと合流し、武器屋でそれぞれの武器や防具を修理した。
武器屋のオジサンもとても優しくサービスで修理代を半額にしてくて損傷具合にもよるが小銀貨二枚から五枚程度で修理をしてくれた。
そして夕方前に学生寮に戻ってきて、お腹が空いたオレ達は食堂に向かった。
今日のメニューは【海の男のおかげで更に推進する航海。類は友を呼ぶのが船乗りの熱い男たちっス。プロだろお前ら急な嵐に負けるな。コンパスだ! 方角を間違えるな!】と【ライス伯爵がご乱心で部屋に籠ったぞ! ほう、悔しいが彼にピッキングして開けてもらおう】だった。
いつも思う、料理長にこっちじゃなくて本業の育成の仕事をしろよ!
オレとリアナは【海の男のおかげで更に推進する航海。類は友を呼ぶのが船乗りの熱い男たちっス。プロだろお前ら急な嵐に負けるな。コンパスだ! 方角を間違えるな!】定食にして、モーガンとフィーネが【ライス伯爵がご乱心で部屋に籠ったぞ! ほう、悔しいが彼にピッキングして開けてもらおう】定食にした。
いつものようにカウンターに取りに行ってメニューの内容に気づく……もう当たり前過ぎて何も驚かない。
オレとリアナの【海の男のおかげで更に推進する航海。類は友を呼ぶのが船乗りの熱い男たちっス。プロだろお前ら急な嵐に負けるな。コンパスだ!方角を間違えるな!】定食。
要約すると、おからサラダに甲殻類のスープパスタだ。
そして、モーガンとフィーネの【ライス伯爵がご乱心で部屋に籠ったぞ! ほう、悔しいが彼にピッキングして開けてもらおう】
要約するとポークカレーだ。
味は美味しいよ。ボリュームもちょうど良いよ。定食を提供する早さもスピーディーだよ。ただ一つメニューがわからん! 普通に書け料理長!
今日はとても濃い一日となり、明日の入学式に支障をきたしそうだな……早く寝よう。
俺たちは食器を返却し食堂から出ようとすると、厨房の端の方に料理長が仁王立ちで佇んでいた。
そしてオレ達を睨みながら料理長は涙を流していた………………
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