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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード18 ランパード辺境伯家
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鳥の囀りでオレは眼を覚ました。
テントから外に出ると辺りの草地は霜が降りていた。
「キャンプ生活するなんて夏休み以来かなぁ」
そんな呟き一つして、一人朝早くからストレッチをする。ここ数日身体を動かさないと、あの日の夜を思い出してしまう。
あれから三日が経ちヒュンメルも回復した。
そろそろ、このサンダース辺境伯の領土からランパード辺境伯の領土へ向けての移動の準備をしているらしい。
「スノウ様! ランパード郷がそろそろ出発するとのことです。ご準備のほどお願いします」
いつものヒュンメルの声だ。
これからのマクウィリアズ王国での暮らしを考えて、ヒュンメルはハットのような帽子に襟付きシャツにベストといったスタイルの小綺麗な格好をしていた。
しかし右側のシャツの先には手が見えない。あの時斬られた右手が。それでもヒュンメルはオレを守れた事を誇りに思っている。
だからオレは、なるべくもう悲しまず前を向いて進む事を考えた。
(これ普通の八歳児だったら無理だからね。俺でも前世でサッカーの引退や彼女の浮気やらで正直キツイ事があったが、この世界の母さんの出来事はしばらく立ち直れそうにないしさ)
ヒュンメルから再度支度を呼びかけられ、オレは妄想から戻ってきた。
そして王国で生きていくという新たな気持ちを胸に抱き、北西にある山々を見つめた。
オレは山々の先にあるアレクサンダー帝国との別れを告げた。
南のランパード家に帰る道中、ランパード辺境伯の馬車に招かれて今後について話をする。
「スノウ殿、馬車の長旅は大丈夫か」
「はい、少しずつですが慣れてきました」
「もっと良い馬車が用意出来ればと思ったのだが、軍事訓練を行う予定として計画していたのであまり上等な馬車だと怪しまれる危険性があったんだ」
「なるほど、この王国の貴族にも色々とあるのですね」
「スノウ殿、王国は平和の国だと言われているが怪しい人間はたくさんいるさ。コソコソと他国と繋がり富を得ようとする者や、派閥争いで敵対する貴族の御令嬢に危害を加えようとしたりね」
(アネッサのような事件が各地で起きているのかなぁ)
「スノウ殿とヒュンメル殿には、これから王国で新しい身分や名前を考えないといけないなあ」
「ランパード様、そもそもボクの【黒目】が帝国では皇子の証となりますが……」
父親と同じオニキスのような【黒目】は兄弟の中ではオレしかいない。もしかしたらそれが理由でダイアナやマキシムに目の敵にされていたのだろうか……
「えっ! うそ? ほんとに??」
ランパード様スッゴイ驚いている! 素が出てますよ~
「もしや、他国には知られていない情報なんですか?」
「帝国での皇族の特徴は【黒目】だと言うのは聞いた事がなかった。帝国では黒髪は珍しくもなく、瞳の色もダークブラウン系の人は多く存在する。おそらく帝国の一部の貴族達しか知らない情報ではないだろうか? 気休めになるかわからないが王国でも黒髪は多少いるので、目立たなければスノウ殿と気づく者はいないかと思うのだが……」
だから身分と名前を変えるだけで大丈夫と言う事か。
まあこの国では黒髪は珍しいが多少はいるらしいし、そんな感じで黒目も珍しいだけだと思われるだろう。
それにランパード様が言う通り、帝国でも皇族の特徴とかあまり知られていなかったのでは……
もし知っていたらオレが変装しても瞳の色で勘付かれる事があったはずだ。
「それでは日も暮れて来て、これから野営となるから名前を考えておいてくれるか? 身分はこちらで用意しておこう」
そうして本日で四度目のキャンプとなった。
ヒュンメルと名前について話し合いをすると、
「スノウ様に全てを委ねます」
と言われた。
それでは話し合いになりませんが!
どうしよう? 本当に良いんだなあ? とんでもない名前をつけるぞ! 命名【ドコサワットンガナーパミュパミューットナ……バルス】
どうだバルスまで入って名前だからな!
もう本当にあと少しで口から出そうになる言葉を堪えに堪えた。そして真面目に考えた。
「ヒュンメル、ヒューゴって名前はどうかな? 何となくヒュンメルと言う名前全てを消したくなかったし……やっぱり変かな」
オレは気恥ずかしくなり、少しで俯いてしまった。
(ちょっと恥ずかしいな人の名前を考えるのって、しかもヒュンメルの名残を残したいとか)
「ヒュンメルやっぱりさっ………………」
ヒュンメル大号泣である。嗚咽を漏らしながら、
「スォォーッォォッさまッッ!!わだッッじットナオオォー!!」
こいつ何なん? 一瞬だけ冷めるような目をしてヒュンメルを見てしまった! 命の恩人なのに……
でもこれ以上うるさかったら【ドコサワットンガナーパミュパミューットナ……バルス】と呼ぼう。
長い名前だから略して【セクハラ】と……多分この世界にはまだ無い言葉と信じて…………
オレは泣いてばかりだから【クライ】にしようかな? それと母さんを忘れないようにヴァネッサの一文字を最後に付けて【クライヴ】と名乗ろう。
ちょうどヒュンメルも泣き止み、オレの名前も決まったところに、ランパード様の使者がやって来て夕食を招待された。
流石ランパード辺境伯。テントが寝室とダイニングとリビング付き、簡易テーブルと椅子も完備されて、まさか異世界でグランピング! 食事メニューは何らかの肉のソテー、野菜のスープ、堅パン、ワイン、果実だった。まぁそんなもんでしょう現地調達や保存できる食糧達は。
テントや夕食ばかりに目を向けていたが、ランパード様の隣には
優しそうなイケメンがいた。清潔感のある茶髪のショートヘアーで髪と同じ茶色の目をしている。すらっと背の高いモデルさん? いやいや服装からしてランパード様の息子さんだろうか?
その顔面偏差値は、帝国のそこそこのイケメン貴族をサッカーで例えると冬に行われる全国的高校サッカーでスタメンは外れてしまったが、試合中どこかで呼ばれるだろうとベンチに座っているサブのメンバー。
しかも、いつまで経っても監督に呼ばれず試合終了のホイッスルがなるまでベンチを暖めただけのベンチウォーマーだ。
そして目の前にいるイケメンは、間違いなくチームのエースだ。
すると、向こうから挨拶された。
「お初目にかかりますスノウ皇子。私はトーマス・ランパードの息子のテリー・ランパードと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。私はスノウ・デア・アレクサンダーと申します。しかし、私は亡命した身ですのでもう帝国の皇子ではありません」
どっちもランパード様なんで、オレの中ではトーマス様はランパード辺境伯なのでランパード様、テリー様は息子なのでテリー様と呼ぶことにした。
話を聞いていたランパード様が、
「そう言えばスノウ殿、新たな名前は決まったかな?」
その発言にテリー様も反応した。
「確かに、どうお呼びすれば良いのか戸惑いますね」
俺は考えた名前を伝えた。
自分で考えた名前を相手に伝えるのは恥ずかしいものだ。
「私のことはクライヴとお呼び下さい、そしてヒュンメルは……ヒューゴと呼んで下さい」
あっぶなー
危うくヒュンメルの事を、
【ドコサワットンガナーパミュパミューットナ……バルス】で略して【セクハラ】と呼んで下さい絶対に! と言いそうになっていた。
ランパード様は続ける。
「ではこれからはそう呼ぶとしよう。そして次にこの国での身分をどうするかの話なんだが、最初はランパード家の養子という案も考えていたが、万が一のことがあるかもしれない」
「先程は教えていただいたコソコソと他国と繋がっている貴族の事ですね」
「理解が早くて助かるよ。そこで妻の実家であるシェリダン子爵の領地の平民として生活してもらうのはどうだろうか」
テントの入り口付近で待機していたヒュンメルが、中に入ってきて怒り出した。
「ランパード卿は、我々帝国の希望となるべき存在であるスノウ様を侮辱するのか!」
こういう時、忠義心が振り切っている男(ヒュンメル)は黙って欲しい。
オレはランパード様に謝った。
「ヒュンメルが申し訳ありません。早とちりしたようで……ランパード様にそこまで手厚く保護していただけるとは思ってもみませんでした」
そのときテリー様が反応した。
「失礼ですが、先程の父上からの発言が手厚い保護とどう繋がるのですか?」
「テリー様、私が亡命した事が帝国で知れ渡るのも時間の問題かと思います。もしかしたら既に帝国でコソコソ動いている他国の者の耳にも伝わっているかと」
「確かに、御令嬢の誘拐事件等を起こしている貴族なら何か行動を起こすかも知れませんね」
「はい、帝国側としても皇族の特徴を伝えるのは重要視されているようですので、他国の者では詳細は得られないはずです。おそらく私の事は黒髪ストレートのロングヘアー、体格ぐらいじゃないでしょうか、むしろヒュンメルの情報の方が得られやすいかと思います」
「しかしスノウ様! もし捕まってしまうと帝国との交渉材料に使われる危険性がありますよ」
「テリー様、王国の貴族の中には我々を捕まえると帝国との戦争の際に交渉のアイテムとして使えると考える者もいるかもしれないです。ですので国から手柄が貰えると思っているかも知れませんが、我々は帝国に対して交渉には使えないアイテムかもしれません。帝国内での私は皇太子の嫌われ者でしたから」
「えっ? そうなんですか……しかしそのような事を知らずに我が王国の貴族は動くと思います。まずは帝国側から一番近いサンダース辺境伯、続いて亡命する日の近くに合同訓練に参加した父上が怪しまれますね」
「ですからランパード辺境伯夫人の実家のシェリダン子爵の元に行く事でリスクは下がりますし、しかもそこの平民として過ごせばまず見つからないでしょう」
「なるほど……父上から聞きましたが、スノウ様は本当に八歳なのでしょうか? 恥ずかしながら私も父上とスノウ様の意図が読めず、スノウ様の聡明さに感服しております」
ごめんなさいテリー様、オレは前世も合わせると三十七歳です!!
そして食事をしながらの話し合いが終わり、最後にランパード様から、
「明日からは新しい名前で呼ぶ事にするよ。しばらくはランパード家の客人として、私の妻の元執事と、その孫として過ごしてもらう事となるよ。後は妻やシェリダン子爵と相談しながら移動日を決めるよ。だから明日からは言葉遣い変えさせてもらう事になるよ」
「はい」
「承知いたしました」
オレ(スノウ)とヒュンメルの皇太子と護衛の最後の役割を終えて、明日からは【クライヴ】と【ヒューゴ】の祖父と孫の役割となった。
テントから外に出ると辺りの草地は霜が降りていた。
「キャンプ生活するなんて夏休み以来かなぁ」
そんな呟き一つして、一人朝早くからストレッチをする。ここ数日身体を動かさないと、あの日の夜を思い出してしまう。
あれから三日が経ちヒュンメルも回復した。
そろそろ、このサンダース辺境伯の領土からランパード辺境伯の領土へ向けての移動の準備をしているらしい。
「スノウ様! ランパード郷がそろそろ出発するとのことです。ご準備のほどお願いします」
いつものヒュンメルの声だ。
これからのマクウィリアズ王国での暮らしを考えて、ヒュンメルはハットのような帽子に襟付きシャツにベストといったスタイルの小綺麗な格好をしていた。
しかし右側のシャツの先には手が見えない。あの時斬られた右手が。それでもヒュンメルはオレを守れた事を誇りに思っている。
だからオレは、なるべくもう悲しまず前を向いて進む事を考えた。
(これ普通の八歳児だったら無理だからね。俺でも前世でサッカーの引退や彼女の浮気やらで正直キツイ事があったが、この世界の母さんの出来事はしばらく立ち直れそうにないしさ)
ヒュンメルから再度支度を呼びかけられ、オレは妄想から戻ってきた。
そして王国で生きていくという新たな気持ちを胸に抱き、北西にある山々を見つめた。
オレは山々の先にあるアレクサンダー帝国との別れを告げた。
南のランパード家に帰る道中、ランパード辺境伯の馬車に招かれて今後について話をする。
「スノウ殿、馬車の長旅は大丈夫か」
「はい、少しずつですが慣れてきました」
「もっと良い馬車が用意出来ればと思ったのだが、軍事訓練を行う予定として計画していたのであまり上等な馬車だと怪しまれる危険性があったんだ」
「なるほど、この王国の貴族にも色々とあるのですね」
「スノウ殿、王国は平和の国だと言われているが怪しい人間はたくさんいるさ。コソコソと他国と繋がり富を得ようとする者や、派閥争いで敵対する貴族の御令嬢に危害を加えようとしたりね」
(アネッサのような事件が各地で起きているのかなぁ)
「スノウ殿とヒュンメル殿には、これから王国で新しい身分や名前を考えないといけないなあ」
「ランパード様、そもそもボクの【黒目】が帝国では皇子の証となりますが……」
父親と同じオニキスのような【黒目】は兄弟の中ではオレしかいない。もしかしたらそれが理由でダイアナやマキシムに目の敵にされていたのだろうか……
「えっ! うそ? ほんとに??」
ランパード様スッゴイ驚いている! 素が出てますよ~
「もしや、他国には知られていない情報なんですか?」
「帝国での皇族の特徴は【黒目】だと言うのは聞いた事がなかった。帝国では黒髪は珍しくもなく、瞳の色もダークブラウン系の人は多く存在する。おそらく帝国の一部の貴族達しか知らない情報ではないだろうか? 気休めになるかわからないが王国でも黒髪は多少いるので、目立たなければスノウ殿と気づく者はいないかと思うのだが……」
だから身分と名前を変えるだけで大丈夫と言う事か。
まあこの国では黒髪は珍しいが多少はいるらしいし、そんな感じで黒目も珍しいだけだと思われるだろう。
それにランパード様が言う通り、帝国でも皇族の特徴とかあまり知られていなかったのでは……
もし知っていたらオレが変装しても瞳の色で勘付かれる事があったはずだ。
「それでは日も暮れて来て、これから野営となるから名前を考えておいてくれるか? 身分はこちらで用意しておこう」
そうして本日で四度目のキャンプとなった。
ヒュンメルと名前について話し合いをすると、
「スノウ様に全てを委ねます」
と言われた。
それでは話し合いになりませんが!
どうしよう? 本当に良いんだなあ? とんでもない名前をつけるぞ! 命名【ドコサワットンガナーパミュパミューットナ……バルス】
どうだバルスまで入って名前だからな!
もう本当にあと少しで口から出そうになる言葉を堪えに堪えた。そして真面目に考えた。
「ヒュンメル、ヒューゴって名前はどうかな? 何となくヒュンメルと言う名前全てを消したくなかったし……やっぱり変かな」
オレは気恥ずかしくなり、少しで俯いてしまった。
(ちょっと恥ずかしいな人の名前を考えるのって、しかもヒュンメルの名残を残したいとか)
「ヒュンメルやっぱりさっ………………」
ヒュンメル大号泣である。嗚咽を漏らしながら、
「スォォーッォォッさまッッ!!わだッッじットナオオォー!!」
こいつ何なん? 一瞬だけ冷めるような目をしてヒュンメルを見てしまった! 命の恩人なのに……
でもこれ以上うるさかったら【ドコサワットンガナーパミュパミューットナ……バルス】と呼ぼう。
長い名前だから略して【セクハラ】と……多分この世界にはまだ無い言葉と信じて…………
オレは泣いてばかりだから【クライ】にしようかな? それと母さんを忘れないようにヴァネッサの一文字を最後に付けて【クライヴ】と名乗ろう。
ちょうどヒュンメルも泣き止み、オレの名前も決まったところに、ランパード様の使者がやって来て夕食を招待された。
流石ランパード辺境伯。テントが寝室とダイニングとリビング付き、簡易テーブルと椅子も完備されて、まさか異世界でグランピング! 食事メニューは何らかの肉のソテー、野菜のスープ、堅パン、ワイン、果実だった。まぁそんなもんでしょう現地調達や保存できる食糧達は。
テントや夕食ばかりに目を向けていたが、ランパード様の隣には
優しそうなイケメンがいた。清潔感のある茶髪のショートヘアーで髪と同じ茶色の目をしている。すらっと背の高いモデルさん? いやいや服装からしてランパード様の息子さんだろうか?
その顔面偏差値は、帝国のそこそこのイケメン貴族をサッカーで例えると冬に行われる全国的高校サッカーでスタメンは外れてしまったが、試合中どこかで呼ばれるだろうとベンチに座っているサブのメンバー。
しかも、いつまで経っても監督に呼ばれず試合終了のホイッスルがなるまでベンチを暖めただけのベンチウォーマーだ。
そして目の前にいるイケメンは、間違いなくチームのエースだ。
すると、向こうから挨拶された。
「お初目にかかりますスノウ皇子。私はトーマス・ランパードの息子のテリー・ランパードと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。私はスノウ・デア・アレクサンダーと申します。しかし、私は亡命した身ですのでもう帝国の皇子ではありません」
どっちもランパード様なんで、オレの中ではトーマス様はランパード辺境伯なのでランパード様、テリー様は息子なのでテリー様と呼ぶことにした。
話を聞いていたランパード様が、
「そう言えばスノウ殿、新たな名前は決まったかな?」
その発言にテリー様も反応した。
「確かに、どうお呼びすれば良いのか戸惑いますね」
俺は考えた名前を伝えた。
自分で考えた名前を相手に伝えるのは恥ずかしいものだ。
「私のことはクライヴとお呼び下さい、そしてヒュンメルは……ヒューゴと呼んで下さい」
あっぶなー
危うくヒュンメルの事を、
【ドコサワットンガナーパミュパミューットナ……バルス】で略して【セクハラ】と呼んで下さい絶対に! と言いそうになっていた。
ランパード様は続ける。
「ではこれからはそう呼ぶとしよう。そして次にこの国での身分をどうするかの話なんだが、最初はランパード家の養子という案も考えていたが、万が一のことがあるかもしれない」
「先程は教えていただいたコソコソと他国と繋がっている貴族の事ですね」
「理解が早くて助かるよ。そこで妻の実家であるシェリダン子爵の領地の平民として生活してもらうのはどうだろうか」
テントの入り口付近で待機していたヒュンメルが、中に入ってきて怒り出した。
「ランパード卿は、我々帝国の希望となるべき存在であるスノウ様を侮辱するのか!」
こういう時、忠義心が振り切っている男(ヒュンメル)は黙って欲しい。
オレはランパード様に謝った。
「ヒュンメルが申し訳ありません。早とちりしたようで……ランパード様にそこまで手厚く保護していただけるとは思ってもみませんでした」
そのときテリー様が反応した。
「失礼ですが、先程の父上からの発言が手厚い保護とどう繋がるのですか?」
「テリー様、私が亡命した事が帝国で知れ渡るのも時間の問題かと思います。もしかしたら既に帝国でコソコソ動いている他国の者の耳にも伝わっているかと」
「確かに、御令嬢の誘拐事件等を起こしている貴族なら何か行動を起こすかも知れませんね」
「はい、帝国側としても皇族の特徴を伝えるのは重要視されているようですので、他国の者では詳細は得られないはずです。おそらく私の事は黒髪ストレートのロングヘアー、体格ぐらいじゃないでしょうか、むしろヒュンメルの情報の方が得られやすいかと思います」
「しかしスノウ様! もし捕まってしまうと帝国との交渉材料に使われる危険性がありますよ」
「テリー様、王国の貴族の中には我々を捕まえると帝国との戦争の際に交渉のアイテムとして使えると考える者もいるかもしれないです。ですので国から手柄が貰えると思っているかも知れませんが、我々は帝国に対して交渉には使えないアイテムかもしれません。帝国内での私は皇太子の嫌われ者でしたから」
「えっ? そうなんですか……しかしそのような事を知らずに我が王国の貴族は動くと思います。まずは帝国側から一番近いサンダース辺境伯、続いて亡命する日の近くに合同訓練に参加した父上が怪しまれますね」
「ですからランパード辺境伯夫人の実家のシェリダン子爵の元に行く事でリスクは下がりますし、しかもそこの平民として過ごせばまず見つからないでしょう」
「なるほど……父上から聞きましたが、スノウ様は本当に八歳なのでしょうか? 恥ずかしながら私も父上とスノウ様の意図が読めず、スノウ様の聡明さに感服しております」
ごめんなさいテリー様、オレは前世も合わせると三十七歳です!!
そして食事をしながらの話し合いが終わり、最後にランパード様から、
「明日からは新しい名前で呼ぶ事にするよ。しばらくはランパード家の客人として、私の妻の元執事と、その孫として過ごしてもらう事となるよ。後は妻やシェリダン子爵と相談しながら移動日を決めるよ。だから明日からは言葉遣い変えさせてもらう事になるよ」
「はい」
「承知いたしました」
オレ(スノウ)とヒュンメルの皇太子と護衛の最後の役割を終えて、明日からは【クライヴ】と【ヒューゴ】の祖父と孫の役割となった。
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