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結界を解いて

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「それはいいけど……でも、オレまだ発情の周期じゃなくて」

そう、残念なことに僕の発情の周期はまだあと二週間は先だ。ラルフがこんなにも求めてくれているのに、それが申し訳なかった。

けれど、ラルフはそんなことは気にとめた様子もない。

「周期はもちろん知っている。でも、発情させる自信があるから大丈夫。今日間違いなく番えるよ」

「え、まさか薬?」

きょとんとするオレに、ラルフは優しく微笑んでくれる。

「僕がビスチェにそんな薬を使う訳がないだろう。実力でいける。もう必要ないから結界を解いてくれないか?」

実力って、つまり。

「だってあの騒動の直前、僕達はあんなに高まっていたじゃないか。互いの愛を確信できた今、触れあって愛し合ってヒートにならない訳がないからね」

なんなんだ、その自信……!

かあっと頬に熱が集まるのを自覚して目を逸らそうとしたけれど、それはすぐに阻止されてしまった。

「目を逸らさないで、ビスチェ。あの娘を助けたら、僕に褒美をくれると約束したじゃないか」

「や、約束したけど」

「僕が望むものなんていつだってひとつしかないんだ。分かっているだろう? ビスチェ」

ラルフの指が、オレのうなじを守ってきたチョーカーをさらに撫でる。

「このチョーカーを外してくれ。そして、一生僕のものになると誓って欲しい」

「ラルフ」

もうこのチョーカーを外すことに躊躇なんて無いはずなのに、なぜか小刻みに指が震える。

さっき、身体を交えながら懇願されてこのチョーカーを外そうとしたときは、熱に浮かされていたから夢中だったけど、まだしっかりと頭が働いてる状態で外すのって、こんなにも緊張するんだって思い知った。

早鐘のように打ち始めた心臓を押さえながら深呼吸して、オレはチョーカーに手をかける。

ラルフを見上げると、怖いくらいに真剣な表情のラルフと目が合った。

「ビスチェ、震えてる」

オレはちょっとだけ微笑んだ。

怖いんじゃない、この震えはきっと、嬉しすぎるからだ。

「なんか、これから本当にお前のものになるんだなって思うと嬉しすぎて……結婚式の誓いの言葉より緊張する」

その言葉を聞いた瞬間、ラルフはオレの身体をぎゅうっと力一杯抱きしめてくれた。

「ビスチェ……! 絶対に一生、大切にする……!」

「うん。オレもラルフを信じる。オレを、ラルフの番に……お前の唯一にして欲しい」

「一生、ビスチェだけだ」

オレ、今、最高に幸せだ……。

ラルフにぎゅうぎゅうに抱きしめられながらチョーカーに魔力を通す。
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