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ミクス男爵の末路
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「企んだとは人聞きの悪い」
「だが、意図を持って娘のヒートを誘発したのであろう」
真っ直ぐにミクス男爵をにらみつけているラルフの目力の強さに観念したかのように、ミクス男爵はしぶしぶと肯定する。
「それはまぁ、そうですが……ですが、それもこれも、ラルフ様と『運命の番』である我が娘アリアナを対面させてやりたいという
「言質は取れた。捕縛しろ」
「ハッ」
ラルフの後ろに控えていた護衛、ヒロが一瞬でミクス男爵に飛びかかり捕縛する。ミクス男爵は抵抗する間もなくあっさりと縄で縛られ床に転がされていた。
あまりの手際の良さに、オレも目を見開いて見守る事しかできない。
「な、何を!!!?」
「私が少しでも乱れているか? 貴殿の娘に誘惑されているとでも?」
驚愕するミクス男爵にラルフが冷静にそう指摘すると、さすがのミクス男爵もハッとしたようにラルフとアリアナ嬢を見比べる。
ヒートでグズグズに蕩けた顔でラルフを見ているアリアナ嬢とは比較にならないほど、ラルフの佇まいは落ち着き払っていた。
当たり前だ。
結界と浄化で守られてる上に、一発抜いてスッキリしたとこなんだから。
落ち着き払った涼しい顔で、ラルフはミクス男爵へ最後通告を行う。
「この件は陛下と騎士団に私自ら報告させてもらう。この記録玉と一緒にな」
「い、今の会話を記録していたと……!?」
悔しそうな表情を浮かべてミクス男爵が身を捩る。なんとか抜け出したいと思っているんだろうけれど、どう見ても無理だ。
「言い逃れはできんぞ。ここまでの不敬の数々。私を陥れようとした事。対価はその身で払うがいい」
「お、お待ちください、私は陥れようなどと大それた事は……!」
「そもそも私には生涯愛し抜くと誓った伴侶がいる。私は爵位も貴殿より上の筈だが……私から帰るよう指示があったにも関わらず、意図的にオメガをヒートにさせてまで引き合わせようとしたのは、充分に『大それた事』ではないのかね?」
「ラ、ラルフ様!」
「不愉快だ。連れて行け」
縋ろうとするミクス男爵を汚物を見るような目で一瞥して、ラルフは冷徹な決断を下す。
後にはヒートに襲われたままで悶え苦しむアリアナ嬢が残るのみだ。
ラルフの匂いは結界で閉ざしてあるし、この部屋の空気も浄化したから、ラルフの匂いは残ってない筈。少しでも苦しみがマシになってるといいんだけど。
きっとラルフが『運命の番』である事は気がついていたんだろう、アリアナ嬢はさっきからずっと葛藤しているような様子だった。
「だが、意図を持って娘のヒートを誘発したのであろう」
真っ直ぐにミクス男爵をにらみつけているラルフの目力の強さに観念したかのように、ミクス男爵はしぶしぶと肯定する。
「それはまぁ、そうですが……ですが、それもこれも、ラルフ様と『運命の番』である我が娘アリアナを対面させてやりたいという
「言質は取れた。捕縛しろ」
「ハッ」
ラルフの後ろに控えていた護衛、ヒロが一瞬でミクス男爵に飛びかかり捕縛する。ミクス男爵は抵抗する間もなくあっさりと縄で縛られ床に転がされていた。
あまりの手際の良さに、オレも目を見開いて見守る事しかできない。
「な、何を!!!?」
「私が少しでも乱れているか? 貴殿の娘に誘惑されているとでも?」
驚愕するミクス男爵にラルフが冷静にそう指摘すると、さすがのミクス男爵もハッとしたようにラルフとアリアナ嬢を見比べる。
ヒートでグズグズに蕩けた顔でラルフを見ているアリアナ嬢とは比較にならないほど、ラルフの佇まいは落ち着き払っていた。
当たり前だ。
結界と浄化で守られてる上に、一発抜いてスッキリしたとこなんだから。
落ち着き払った涼しい顔で、ラルフはミクス男爵へ最後通告を行う。
「この件は陛下と騎士団に私自ら報告させてもらう。この記録玉と一緒にな」
「い、今の会話を記録していたと……!?」
悔しそうな表情を浮かべてミクス男爵が身を捩る。なんとか抜け出したいと思っているんだろうけれど、どう見ても無理だ。
「言い逃れはできんぞ。ここまでの不敬の数々。私を陥れようとした事。対価はその身で払うがいい」
「お、お待ちください、私は陥れようなどと大それた事は……!」
「そもそも私には生涯愛し抜くと誓った伴侶がいる。私は爵位も貴殿より上の筈だが……私から帰るよう指示があったにも関わらず、意図的にオメガをヒートにさせてまで引き合わせようとしたのは、充分に『大それた事』ではないのかね?」
「ラ、ラルフ様!」
「不愉快だ。連れて行け」
縋ろうとするミクス男爵を汚物を見るような目で一瞥して、ラルフは冷徹な決断を下す。
後にはヒートに襲われたままで悶え苦しむアリアナ嬢が残るのみだ。
ラルフの匂いは結界で閉ざしてあるし、この部屋の空気も浄化したから、ラルフの匂いは残ってない筈。少しでも苦しみがマシになってるといいんだけど。
きっとラルフが『運命の番』である事は気がついていたんだろう、アリアナ嬢はさっきからずっと葛藤しているような様子だった。
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