上 下
38 / 73

ミクス男爵の末路

しおりを挟む
「企んだとは人聞きの悪い」

「だが、意図を持って娘のヒートを誘発したのであろう」

真っ直ぐにミクス男爵をにらみつけているラルフの目力の強さに観念したかのように、ミクス男爵はしぶしぶと肯定する。

「それはまぁ、そうですが……ですが、それもこれも、ラルフ様と『運命の番』である我が娘アリアナを対面させてやりたいという

「言質は取れた。捕縛しろ」

「ハッ」

ラルフの後ろに控えていた護衛、ヒロが一瞬でミクス男爵に飛びかかり捕縛する。ミクス男爵は抵抗する間もなくあっさりと縄で縛られ床に転がされていた。

あまりの手際の良さに、オレも目を見開いて見守る事しかできない。

「な、何を!!!?」

「私が少しでも乱れているか? 貴殿の娘に誘惑されているとでも?」

驚愕するミクス男爵にラルフが冷静にそう指摘すると、さすがのミクス男爵もハッとしたようにラルフとアリアナ嬢を見比べる。

ヒートでグズグズに蕩けた顔でラルフを見ているアリアナ嬢とは比較にならないほど、ラルフの佇まいは落ち着き払っていた。

当たり前だ。

結界と浄化で守られてる上に、一発抜いてスッキリしたとこなんだから。

落ち着き払った涼しい顔で、ラルフはミクス男爵へ最後通告を行う。

「この件は陛下と騎士団に私自ら報告させてもらう。この記録玉と一緒にな」

「い、今の会話を記録していたと……!?」

悔しそうな表情を浮かべてミクス男爵が身を捩る。なんとか抜け出したいと思っているんだろうけれど、どう見ても無理だ。

「言い逃れはできんぞ。ここまでの不敬の数々。私を陥れようとした事。対価はその身で払うがいい」

「お、お待ちください、私は陥れようなどと大それた事は……!」

「そもそも私には生涯愛し抜くと誓った伴侶がいる。私は爵位も貴殿より上の筈だが……私から帰るよう指示があったにも関わらず、意図的にオメガをヒートにさせてまで引き合わせようとしたのは、充分に『大それた事』ではないのかね?」

「ラ、ラルフ様!」

「不愉快だ。連れて行け」

縋ろうとするミクス男爵を汚物を見るような目で一瞥して、ラルフは冷徹な決断を下す。

後にはヒートに襲われたままで悶え苦しむアリアナ嬢が残るのみだ。

ラルフの匂いは結界で閉ざしてあるし、この部屋の空気も浄化したから、ラルフの匂いは残ってない筈。少しでも苦しみがマシになってるといいんだけど。

きっとラルフが『運命の番』である事は気がついていたんだろう、アリアナ嬢はさっきからずっと葛藤しているような様子だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい

りまり
BL
 僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。  この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。  僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。  本当に僕にはもったいない人なんだ。  どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。  彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。  答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。  後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...