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【ディエゴ視点】エリクサーの情報
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「試す気にはならないから勧めるなよ?」
「残念」
残念だと言いつつも楽しそうに笑ってるから、からかわれただけなんだろう。
「ああ、気分がいいねぇ」
店主は香りを楽しみながらうっとりした表情でそんな事を言う。目を閉じて自分の世界に入っているところを見るに、故郷の森でも思い出してるのかも知れない。
ラスクが作った茶葉は、本当に良いできだったんだろう。さすが俺の番。
「そうだ」
ふ、と店主が顔を上げた。
「素晴らしい贈り物を貰ったお礼に私からも何かプレゼントしよう。この店にある物の中からひとつ、何でもいいから選んでごらん。ものすごく稀少な品もあるから、目利きの腕が問われるよ」
ふふ、と笑う店主を尻目に、俺はラスクの腕をつんつんとつつく。
「ラスク、物を貰うより、情報貰った方が良くないか?」
「いいの? すごい物貰えるかも知れないのに」
「俺はラスクの夢の方が大事だ」
片眉を上げる店主に、ラスクは緊張した面持ちで話し出す。
「実は僕、夢があって……いつかエリクサーを作りたいんです」
「エリクサー……!」
「まだまだ実力が足りなすぎて口に出すのも恥ずかしいんですけど、本気なんです。一生かかってでも作り出したい。何か、エリクサーのレシピに関する情報を知りませんか?」
「うーん……」
店主は微妙な顔で唸り始めた。
「さすがにエルフでもエリクサーの情報は知らないのか……」
思わずそう呟いたら、店主は困ったように笑った。
「うーん、困ったねぇ。知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らないのだよ」
「? どういう意味だ?」
「世の中で言われている『エリクサー』はあまりにも様々な噂が出回っているだろう? 不良長寿の秘薬と言われることもあれば、傷や全ての病を治すと言われることもある。瀕死の者が完全回復するだの、果ては死人を生き返らせることができるという噂まで聞いたことがあるからね、さすがにそんな神の妙薬は私とて知らないよ」
「あー、確かに色々聞くなぁ」
どの噂が本当なのか、噂が色々ありすぎてエリクサーが本当はどんな薬なのか、もはや誰にも分からないんじゃ無かろうか。
「あの、ホンモノの『エリクサー』はどんな効能があるんですか?」
ラスクの真剣なまなざしに、店主も優しい微笑みを浮かべる。
「本物のエリクサーなんてものが実際にあるのかどうか、私にも分からない。もしかしたらたくさんの地域に伝わるそれぞれの秘薬が、『あれがエリクサーだったのでは』なんて憶測でごちゃまぜになって広まったのかも知れないね」
「残念」
残念だと言いつつも楽しそうに笑ってるから、からかわれただけなんだろう。
「ああ、気分がいいねぇ」
店主は香りを楽しみながらうっとりした表情でそんな事を言う。目を閉じて自分の世界に入っているところを見るに、故郷の森でも思い出してるのかも知れない。
ラスクが作った茶葉は、本当に良いできだったんだろう。さすが俺の番。
「そうだ」
ふ、と店主が顔を上げた。
「素晴らしい贈り物を貰ったお礼に私からも何かプレゼントしよう。この店にある物の中からひとつ、何でもいいから選んでごらん。ものすごく稀少な品もあるから、目利きの腕が問われるよ」
ふふ、と笑う店主を尻目に、俺はラスクの腕をつんつんとつつく。
「ラスク、物を貰うより、情報貰った方が良くないか?」
「いいの? すごい物貰えるかも知れないのに」
「俺はラスクの夢の方が大事だ」
片眉を上げる店主に、ラスクは緊張した面持ちで話し出す。
「実は僕、夢があって……いつかエリクサーを作りたいんです」
「エリクサー……!」
「まだまだ実力が足りなすぎて口に出すのも恥ずかしいんですけど、本気なんです。一生かかってでも作り出したい。何か、エリクサーのレシピに関する情報を知りませんか?」
「うーん……」
店主は微妙な顔で唸り始めた。
「さすがにエルフでもエリクサーの情報は知らないのか……」
思わずそう呟いたら、店主は困ったように笑った。
「うーん、困ったねぇ。知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らないのだよ」
「? どういう意味だ?」
「世の中で言われている『エリクサー』はあまりにも様々な噂が出回っているだろう? 不良長寿の秘薬と言われることもあれば、傷や全ての病を治すと言われることもある。瀕死の者が完全回復するだの、果ては死人を生き返らせることができるという噂まで聞いたことがあるからね、さすがにそんな神の妙薬は私とて知らないよ」
「あー、確かに色々聞くなぁ」
どの噂が本当なのか、噂が色々ありすぎてエリクサーが本当はどんな薬なのか、もはや誰にも分からないんじゃ無かろうか。
「あの、ホンモノの『エリクサー』はどんな効能があるんですか?」
ラスクの真剣なまなざしに、店主も優しい微笑みを浮かべる。
「本物のエリクサーなんてものが実際にあるのかどうか、私にも分からない。もしかしたらたくさんの地域に伝わるそれぞれの秘薬が、『あれがエリクサーだったのでは』なんて憶測でごちゃまぜになって広まったのかも知れないね」
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