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本編2 試される男
16・素のままでいいだろう @泉州
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オレの天使ロイズが導くのに従い、オレはたった今出て来たばかりの建物内へと戻る事になった。
ロイズと茶を飲みながら会話を楽しむ時間を貰ったからだ。
神官長の命令とやらで、愛しのロイズに無理強いするのは不本意なんだが……。
ロイズとオレは初対面だ。まずはお互いにシッカリ知り合わなきゃ、始まるモンも始まらねぇし。せっかくだから利用させて貰うぜ。
アチラ側としても、異世界人なオレが立ち去るのを防げたんだ。オレがここに留まる理由が百パーセント下心のみでも文句は言わねぇだろう。
これぞ正しく、ウィンウィンの素敵な関係ってヤツだな。
ロイズの隣にシッカリ並んで扉を潜る直前。オレは振り返って景色を覚える。
視界に広がるのは何の変哲もない、教会前にある単なる庭だ。
だがオレにとっちゃ、そこは重要な場所になった。
オレとロイズが出逢い、初めて言葉を交わした記念すべきメモリアルだから。
先導役を任されたロイズが、オレ達の後ろを歩く神官長を振り返った。
「神官長っ! おれ、こんな気持ち悪いヤツ…」
「言うな、ロイズ! これは命令だ、異世界人をちゃんともてなせ。」
「なぁオッサン、あんまりロイズを強く叱るんじゃねぇよ。」
そっとロイズと手を繋ごうとしたのが嫌だったんだろう。
すぐ隣にいるのが嬉しくて、つい手が伸びちまった。反省しねぇとな。
「今のはオレが悪かったんだ。ちょっと急だったよな?」
「お前なぁっ。そんなにすぐ反省するぐらいなら、軽々しく触って来るな。」
「反省……、しなくていいのか?」
「そんな事は言ってないだろっ。もう…っ、触るなっ。」
目をクワッと見開いたロイズは顔をちょっと赤くして文句を言って来る。
いちいち表情が可愛いなって思うのは、オレの欲目だけじゃねぇぞ。
唇もワナワナさせてんのが更に、ポイント倍率ドンっ、だ。
ロイズが照れてンじゃねぇって事は、流石にオレだって分かっちゃいるさ。
でもな? そういう、『計算じゃない感』がまた、イイんだって。分かるだろ?
「そう言えばロイズは神官兵だって話だったよな? ……って事は、ここの教会がロイズの職場なのか?」
「………。ん……、……あぁ、そうだけど?」
オレの質問へ答える前に、ロイズは神官長を振り返り、ちょっと口をモゴモゴする。
すぐに答えていいのかどうかを確認してんだろうが、そういうトコもしっかり考えてるとか。ロイズはちゃんと働いてるんだな。
「そう聞いたら、何の変哲も無ぇ廊下もまた、違って見えるモンだなぁ。……好きな相手の職場を歩くってのも、滅多に無い事だろうからな。」
「………うわぁ……。」
嫌そうに顔を引き攣らせたロイズが呻いた。
今の発言は流石に自分でもちょっと気持ち悪いかと思ったんで、これについては何にも言えねぇや。
オレは誤魔化すように苦笑いを浮かべた。
後ろの方からちょっと溜息が聞こえる。
あっ、これはもしや……って思うのと同時ぐらいに、だ。
「あー、……ロイズ?」
「オッサン、待てって。いちいちロイズを叱らなくていいから。」
これから説教する気満々な声でロイズの名を呼んだのは、やっぱり神官長だった。
どうも神官長は、ロイズがオレに気安く話すのが良くないと思ってるらしい。
なんつ~か、精悍な見た目で結構適当そうな男に見えンのに、案外と神官長はマナーとか言葉遣いに関しちゃ口煩いタイプなのかも知れねぇぞ。
大丈夫か、オレ? ロイズの上司だからそれなりに上手くはやって行きたい所だが、オレも礼儀作法とか態度については人の事を言えたモンじゃないんだが?
そりゃまぁ、惚れた相手のロイズに対しては、優しく話し掛けるよう心掛けられるがよ。ぶっちゃけ、今までの態度だって……神官長にはオレ、割と強めに言っちまってるなぁ。
まぁ今更、オレが神官長への言葉遣いを改めてもな。
いつまで持つか自信は無ぇし。
このまま、素のオレで行くとするか。
ロイズと茶を飲みながら会話を楽しむ時間を貰ったからだ。
神官長の命令とやらで、愛しのロイズに無理強いするのは不本意なんだが……。
ロイズとオレは初対面だ。まずはお互いにシッカリ知り合わなきゃ、始まるモンも始まらねぇし。せっかくだから利用させて貰うぜ。
アチラ側としても、異世界人なオレが立ち去るのを防げたんだ。オレがここに留まる理由が百パーセント下心のみでも文句は言わねぇだろう。
これぞ正しく、ウィンウィンの素敵な関係ってヤツだな。
ロイズの隣にシッカリ並んで扉を潜る直前。オレは振り返って景色を覚える。
視界に広がるのは何の変哲もない、教会前にある単なる庭だ。
だがオレにとっちゃ、そこは重要な場所になった。
オレとロイズが出逢い、初めて言葉を交わした記念すべきメモリアルだから。
先導役を任されたロイズが、オレ達の後ろを歩く神官長を振り返った。
「神官長っ! おれ、こんな気持ち悪いヤツ…」
「言うな、ロイズ! これは命令だ、異世界人をちゃんともてなせ。」
「なぁオッサン、あんまりロイズを強く叱るんじゃねぇよ。」
そっとロイズと手を繋ごうとしたのが嫌だったんだろう。
すぐ隣にいるのが嬉しくて、つい手が伸びちまった。反省しねぇとな。
「今のはオレが悪かったんだ。ちょっと急だったよな?」
「お前なぁっ。そんなにすぐ反省するぐらいなら、軽々しく触って来るな。」
「反省……、しなくていいのか?」
「そんな事は言ってないだろっ。もう…っ、触るなっ。」
目をクワッと見開いたロイズは顔をちょっと赤くして文句を言って来る。
いちいち表情が可愛いなって思うのは、オレの欲目だけじゃねぇぞ。
唇もワナワナさせてんのが更に、ポイント倍率ドンっ、だ。
ロイズが照れてンじゃねぇって事は、流石にオレだって分かっちゃいるさ。
でもな? そういう、『計算じゃない感』がまた、イイんだって。分かるだろ?
「そう言えばロイズは神官兵だって話だったよな? ……って事は、ここの教会がロイズの職場なのか?」
「………。ん……、……あぁ、そうだけど?」
オレの質問へ答える前に、ロイズは神官長を振り返り、ちょっと口をモゴモゴする。
すぐに答えていいのかどうかを確認してんだろうが、そういうトコもしっかり考えてるとか。ロイズはちゃんと働いてるんだな。
「そう聞いたら、何の変哲も無ぇ廊下もまた、違って見えるモンだなぁ。……好きな相手の職場を歩くってのも、滅多に無い事だろうからな。」
「………うわぁ……。」
嫌そうに顔を引き攣らせたロイズが呻いた。
今の発言は流石に自分でもちょっと気持ち悪いかと思ったんで、これについては何にも言えねぇや。
オレは誤魔化すように苦笑いを浮かべた。
後ろの方からちょっと溜息が聞こえる。
あっ、これはもしや……って思うのと同時ぐらいに、だ。
「あー、……ロイズ?」
「オッサン、待てって。いちいちロイズを叱らなくていいから。」
これから説教する気満々な声でロイズの名を呼んだのは、やっぱり神官長だった。
どうも神官長は、ロイズがオレに気安く話すのが良くないと思ってるらしい。
なんつ~か、精悍な見た目で結構適当そうな男に見えンのに、案外と神官長はマナーとか言葉遣いに関しちゃ口煩いタイプなのかも知れねぇぞ。
大丈夫か、オレ? ロイズの上司だからそれなりに上手くはやって行きたい所だが、オレも礼儀作法とか態度については人の事を言えたモンじゃないんだが?
そりゃまぁ、惚れた相手のロイズに対しては、優しく話し掛けるよう心掛けられるがよ。ぶっちゃけ、今までの態度だって……神官長にはオレ、割と強めに言っちまってるなぁ。
まぁ今更、オレが神官長への言葉遣いを改めてもな。
いつまで持つか自信は無ぇし。
このまま、素のオレで行くとするか。
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