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本編1 警戒される男
6・追い掛けて縋り付きたいのか? @泉州
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扉の先は、まだ屋内。
高い位置にある窓から陽射しの差し込む、明るい廊下だった。
全体的に白を基調にした、清潔感と高級感のある洋風な感じ。
ここは恐らく教会なんだろう。
誰かが追い掛けて来る気配を感じて、オレは足を速めて小走りになった。
モタモタしてたら追い付かれちまいそうだし、それに……。オレが実は引き止めて欲しがってる、とか思われンのも悔しいからな。
そんな面倒臭い奴じゃねぇっつ~の。
「待たれよ! 待たれよ、異世界人殿!」
ちょうどオレが向かおうとした方向から声を掛けられた。
ガタイの良さそうな長身で精悍な男が、なんか偉そうな中年……ジジィの一歩手前くらいの年齢……の男を背負って、階段を下りて来る所だった。
たぶんオレが王子と話してる間に異世界人の来訪を知らされたんだろう。
呼び掛けて来たのはどうやら、偉そうな中年男の方だ。
別に呼び寄せた存在でもない単なる異世界人なんか、ほっといてもバチは当たらねぇだろうよ。
わざわざ偉い人を呼んで来る程の事か?
それにしても、初対面のハズなんだが、よくオレが異世界人だって分かったな。
……ん? ……あぁ、そっか。オレの格好が周りから浮いてるもんな。
今、オレが着てるのは。袖が脱着式になってるデニム製のライダースジャケット、それもオールインワン。平たく言えばツナギだ。
推定・教会の廊下に、明らかに衣装のおかしい男がいたらそりゃ、アイツが異世界人だ! ってバレるよな。
なんだか中年男はオレを引き止める気満々な様子だ。
自分を背負ってる男に身振り手振り付きで、オレの元へ急ぐよう指示を出してる。
さっきの王子と言い、そこの中年男と言い。あぁ、そうだ……神様も、か。偉い人だけがオレに対応してくれてるんだが……それも、ナンだかなぁ。
偉い人ならではの義務感ってヤツなのか?
よっぽどオレは、可哀想な奴に見えンだろうな。
「司教様、失礼します。」
精悍な男が中年男に声を掛けて、おんぶから下ろす。
何でか知らんがオレを捕まえようって気、満々な表情の男を見て。
反射的に、身体が動いた。
オレは踵を返して、ソイツらが下りて来たのとは別の階段を駆け上がってた。
見た感じだと、司教達の近くにある扉から外に出られそうなんだが、そこから出るのは諦める。
司教はともかく、精悍な男は動きが機敏そうだからだ。
せめて窓がもうちょっと低い位置にあれば、って恨めしく思わざるを得ない。
推定・二階の廊下を適当に走ったら、普通の位置に窓のある場所に出た。外からの光があって明るい。
精悍な男が「待ってくれ」とか言いながら追って来る。
なんで追って来んだよ。追い掛けてど~すんだよ。余計に逃げたくなんだろが。
親切心からにしちゃあ、ちょっとしつこいぞ。
まさかとは思うが……知らねぇ内にオレ、宗教的なNGでも踏み抜いてンのか? やべぇぞ、これ、意外に本気で捕まえられる流れか?
「良く分かんねぇが……捕まるワケには行かねぇ、のか……?」
外を見ると、ここは地面からアパートの三階程度の高さだった。
ちょうど良い具合に。換気をする為か、ちょっと開いてる窓を見付けた。
素早く全開にする。
窓枠に足を掛ける。
日本でやったら結構な無茶だが、ここは異世界だ。
何とかなるだろう。
「オイ、待て……!」
「あばよっ!」
焦ったような声を振り切り。
オレは外へと跳んだ。
高い位置にある窓から陽射しの差し込む、明るい廊下だった。
全体的に白を基調にした、清潔感と高級感のある洋風な感じ。
ここは恐らく教会なんだろう。
誰かが追い掛けて来る気配を感じて、オレは足を速めて小走りになった。
モタモタしてたら追い付かれちまいそうだし、それに……。オレが実は引き止めて欲しがってる、とか思われンのも悔しいからな。
そんな面倒臭い奴じゃねぇっつ~の。
「待たれよ! 待たれよ、異世界人殿!」
ちょうどオレが向かおうとした方向から声を掛けられた。
ガタイの良さそうな長身で精悍な男が、なんか偉そうな中年……ジジィの一歩手前くらいの年齢……の男を背負って、階段を下りて来る所だった。
たぶんオレが王子と話してる間に異世界人の来訪を知らされたんだろう。
呼び掛けて来たのはどうやら、偉そうな中年男の方だ。
別に呼び寄せた存在でもない単なる異世界人なんか、ほっといてもバチは当たらねぇだろうよ。
わざわざ偉い人を呼んで来る程の事か?
それにしても、初対面のハズなんだが、よくオレが異世界人だって分かったな。
……ん? ……あぁ、そっか。オレの格好が周りから浮いてるもんな。
今、オレが着てるのは。袖が脱着式になってるデニム製のライダースジャケット、それもオールインワン。平たく言えばツナギだ。
推定・教会の廊下に、明らかに衣装のおかしい男がいたらそりゃ、アイツが異世界人だ! ってバレるよな。
なんだか中年男はオレを引き止める気満々な様子だ。
自分を背負ってる男に身振り手振り付きで、オレの元へ急ぐよう指示を出してる。
さっきの王子と言い、そこの中年男と言い。あぁ、そうだ……神様も、か。偉い人だけがオレに対応してくれてるんだが……それも、ナンだかなぁ。
偉い人ならではの義務感ってヤツなのか?
よっぽどオレは、可哀想な奴に見えンだろうな。
「司教様、失礼します。」
精悍な男が中年男に声を掛けて、おんぶから下ろす。
何でか知らんがオレを捕まえようって気、満々な表情の男を見て。
反射的に、身体が動いた。
オレは踵を返して、ソイツらが下りて来たのとは別の階段を駆け上がってた。
見た感じだと、司教達の近くにある扉から外に出られそうなんだが、そこから出るのは諦める。
司教はともかく、精悍な男は動きが機敏そうだからだ。
せめて窓がもうちょっと低い位置にあれば、って恨めしく思わざるを得ない。
推定・二階の廊下を適当に走ったら、普通の位置に窓のある場所に出た。外からの光があって明るい。
精悍な男が「待ってくれ」とか言いながら追って来る。
なんで追って来んだよ。追い掛けてど~すんだよ。余計に逃げたくなんだろが。
親切心からにしちゃあ、ちょっとしつこいぞ。
まさかとは思うが……知らねぇ内にオレ、宗教的なNGでも踏み抜いてンのか? やべぇぞ、これ、意外に本気で捕まえられる流れか?
「良く分かんねぇが……捕まるワケには行かねぇ、のか……?」
外を見ると、ここは地面からアパートの三階程度の高さだった。
ちょうど良い具合に。換気をする為か、ちょっと開いてる窓を見付けた。
素早く全開にする。
窓枠に足を掛ける。
日本でやったら結構な無茶だが、ここは異世界だ。
何とかなるだろう。
「オイ、待て……!」
「あばよっ!」
焦ったような声を振り切り。
オレは外へと跳んだ。
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