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本編2 試される男
17・悩み事を隠すのは案外ヘタだな @泉州
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オレが案内されたのは、応接室と会議室のハイブリッドみたいな部屋だった。
普通の応接セットもあるんだが、割と立派なデカい長机が部屋の中央から少しだけ脇にずれた位置にドドンと鎮座して、やたらと存在感を放ってた。
んで、だ……。
そのデカい長机には、オレ達が部屋に入った時から既に先客アリ、だ。
誰だ、コイツら。……って思った次の瞬間、一人は思い出した。さっき神官長におんぶされてた司教様って中年だ。
その横にいる僧侶っぽい数名は、ちょっと分からねぇ。
もしかしたらさっき、オレが降り立った部屋の中にいたかも知れねぇが、あん時は結構な人数がいたからな。一人一人の僧侶達の顔なんざ、流石に覚えてねぇわ。
「あ、司教様……、……えっ? えっ?」
オレに続いて部屋に入ったロイズが驚いた顔で、神官長と『しきょうさま』って中年とを交互に見る。
てっきり知ってるのかと思ってたらロイズも、部屋に司教達がいる事を知らなかったようだ。
どうしていいか分からねぇで狼狽えちまってるロイズも魅力的なんだが、ロイズを自分でも知らねぇ事で無駄にドキドキさせたままってのは良くない。
ちょうどオレとロイズを通り越すように入って来た神官長を、オレは呼び止めた。
振り返った神官長がチラッと司教達の方へ視線を向け、それからコッチを見てニヤリと笑う。
「あぁ、あちらにいるのは司教……えぇと、そうだな……、ここの、神殿で一番偉い人だ。ちょうどティータイムでな、まぁ……今は気にしないでくれ。」
神官長が『ココの』って強調した所を見ると。
組織全体のってよりは、この建物限定でって思っとくのがイイトコだな。さしずめ、支社長って所か。
さも偶然だってアピールしちゃいるが、アレだろ?
異世界から来て自分を勇者だとかホザいた頭のオカシイ男が、ここに勤めてるロイズに「好きだ」とか何とか言い出したから、支社を預かる者としてどんなモンかを見に来てんだろ?
さっきオレが司教に「待たれよ」とか言われたのをブッチしたから、余計に怪しんでんだろ?
神官長は、納得がいってなさそうなロイズに何か指示を出してから、オレには応接セットの方を示した。
そっちに座れ、って事だ。
ソファに座ったら司教達からは丸見えになって、居心地は良くねぇんだがな。
気にしなくていいらしいから、本気で無視するが……いいんだよな?
「そう言やぁ、異世界人サマは食事は済んでるのか? 腹は? 減ってないか?」
「それなぁ……。ロイズが聞いてくれたら、最高なんだがなぁ。」
「そりゃあ悪い事をした、済まないな。次からは気を付けよう。」
「いやまぁ、そこまでの事でも……、あっ、ロイズ? 何処に行くんだ?」
神官長に話し掛けられて出来た隙を突いてロイズがオレから離れて行く。
声を掛けて付いて行こうとしたオレに、振り返ったロイズが可愛らしく牙を剥いた。
「もおっ、いちいちウルサイんだよ、お前。」
「ロイズが心配なんだ。悪いがそこは我慢してくれ。」
「はあ~? 教会の建物の中で、何が心配なん……。」
言ってる途中でロイズが不自然に言葉を切った。
何かあるのかと思って、オレはロイズの瞳を覗き込む。
「……ぅん? どうした?」
「……何でもない、お前には関係無い話だから。気にすんなよ。」
「分かった。ロイズがそう言うなら気にしねぇ。」
気にならない、って言うのは嘘になる。
だから、気にしないって伝えた。
本当は何か悩み事があるようだし、オレに話してちょっとでもラクになるんなら言って欲しい所だ。
だがロイズが不器用なりに隠そうとしてるなら、無理には聞き出せねぇ。
まだオレはロイズから、全然信頼を貰ってないからな。ここはグッと我慢だ。
「そ、…いうトコは素直だな。」
「オレはロイズに対しては、いつだって素直な気持ちを伝えるツモリだぞ。」
「気持ち悪いから付いて来るな。もぉ……いいから、大人しく座ってろっ。」
ロイズはオレの肩をソファの方に押した。
思わぬラッキースケベ……じゃねぇ、ラッキー接触だ。今日は赤飯だな。
……異世界だった。赤飯、無ぇわ。
普通の応接セットもあるんだが、割と立派なデカい長机が部屋の中央から少しだけ脇にずれた位置にドドンと鎮座して、やたらと存在感を放ってた。
んで、だ……。
そのデカい長机には、オレ達が部屋に入った時から既に先客アリ、だ。
誰だ、コイツら。……って思った次の瞬間、一人は思い出した。さっき神官長におんぶされてた司教様って中年だ。
その横にいる僧侶っぽい数名は、ちょっと分からねぇ。
もしかしたらさっき、オレが降り立った部屋の中にいたかも知れねぇが、あん時は結構な人数がいたからな。一人一人の僧侶達の顔なんざ、流石に覚えてねぇわ。
「あ、司教様……、……えっ? えっ?」
オレに続いて部屋に入ったロイズが驚いた顔で、神官長と『しきょうさま』って中年とを交互に見る。
てっきり知ってるのかと思ってたらロイズも、部屋に司教達がいる事を知らなかったようだ。
どうしていいか分からねぇで狼狽えちまってるロイズも魅力的なんだが、ロイズを自分でも知らねぇ事で無駄にドキドキさせたままってのは良くない。
ちょうどオレとロイズを通り越すように入って来た神官長を、オレは呼び止めた。
振り返った神官長がチラッと司教達の方へ視線を向け、それからコッチを見てニヤリと笑う。
「あぁ、あちらにいるのは司教……えぇと、そうだな……、ここの、神殿で一番偉い人だ。ちょうどティータイムでな、まぁ……今は気にしないでくれ。」
神官長が『ココの』って強調した所を見ると。
組織全体のってよりは、この建物限定でって思っとくのがイイトコだな。さしずめ、支社長って所か。
さも偶然だってアピールしちゃいるが、アレだろ?
異世界から来て自分を勇者だとかホザいた頭のオカシイ男が、ここに勤めてるロイズに「好きだ」とか何とか言い出したから、支社を預かる者としてどんなモンかを見に来てんだろ?
さっきオレが司教に「待たれよ」とか言われたのをブッチしたから、余計に怪しんでんだろ?
神官長は、納得がいってなさそうなロイズに何か指示を出してから、オレには応接セットの方を示した。
そっちに座れ、って事だ。
ソファに座ったら司教達からは丸見えになって、居心地は良くねぇんだがな。
気にしなくていいらしいから、本気で無視するが……いいんだよな?
「そう言やぁ、異世界人サマは食事は済んでるのか? 腹は? 減ってないか?」
「それなぁ……。ロイズが聞いてくれたら、最高なんだがなぁ。」
「そりゃあ悪い事をした、済まないな。次からは気を付けよう。」
「いやまぁ、そこまでの事でも……、あっ、ロイズ? 何処に行くんだ?」
神官長に話し掛けられて出来た隙を突いてロイズがオレから離れて行く。
声を掛けて付いて行こうとしたオレに、振り返ったロイズが可愛らしく牙を剥いた。
「もおっ、いちいちウルサイんだよ、お前。」
「ロイズが心配なんだ。悪いがそこは我慢してくれ。」
「はあ~? 教会の建物の中で、何が心配なん……。」
言ってる途中でロイズが不自然に言葉を切った。
何かあるのかと思って、オレはロイズの瞳を覗き込む。
「……ぅん? どうした?」
「……何でもない、お前には関係無い話だから。気にすんなよ。」
「分かった。ロイズがそう言うなら気にしねぇ。」
気にならない、って言うのは嘘になる。
だから、気にしないって伝えた。
本当は何か悩み事があるようだし、オレに話してちょっとでもラクになるんなら言って欲しい所だ。
だがロイズが不器用なりに隠そうとしてるなら、無理には聞き出せねぇ。
まだオレはロイズから、全然信頼を貰ってないからな。ここはグッと我慢だ。
「そ、…いうトコは素直だな。」
「オレはロイズに対しては、いつだって素直な気持ちを伝えるツモリだぞ。」
「気持ち悪いから付いて来るな。もぉ……いいから、大人しく座ってろっ。」
ロイズはオレの肩をソファの方に押した。
思わぬラッキースケベ……じゃねぇ、ラッキー接触だ。今日は赤飯だな。
……異世界だった。赤飯、無ぇわ。
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