11 / 44
本編1 警戒される男
5・こんなに遠い異世界で役立たずとか本当にツライ @泉州
しおりを挟む
オレがこの場から立ち去るって伝えた途端、王子は目に見えて狼狽えだした。
何か知らんがヤバいって思ったんだろう。
ついでに言うと、オレがそう決意したのは自分の所為だ、とか思ったのかも知れん。
ふっふっふ……。残念ながら、半分は当たってるが半分はハズレだ。
王子が明確に答えを言わなくても、オレは立ち去るツモリだったからな。
少なくとも、この場からは。
呼ばれてねぇし、歓迎すべき対象でも無さそうなのに、長々と居られねぇっつの。
「まっ……お待ちください!」
扉へ向かうオレを王子が追い掛けて来た。
止めようとした護衛を振り払って、必死な様子でオレの前に回り込む。
美形王子の焦り顔とか、結構レアじゃねぇか?
……まぁ、それより。
こんな得体の知れないオレによくまぁ、不用心に近寄って来られンな。
……って感想が正直な所だ。
「と…っ、突然に、これまで暮らしていらしたのとは異なる世界に来られて、さぞや不安を感じられた事かと思います。」
「いや? 別に?」
不安じゃなくて、ガッカリしたんだよ。居場所が無いって事に。
そして恥ずかしいんだよ。自分を勇者、とか言っちゃった事に。
どっちも王子の所為じゃねぇから、わざわざ口に出しては言わんが、よ。
「でっ……ですが、ご安心ください。この国の召喚術は失われておりますが、異世界から来られた方をお迎えする事は充分に可能です。」
オレの反応が期待以下の薄さだったのか、オレが動き出す気配でも感じたのか。
王子がオレの腕を掴んで来た。
掴んだっていうか、……縋って来た感じか?
護衛は警戒心をバリバリに出しながらオレを睨み付けてる。
僧侶っぽい連中は遠巻きに離れてコッチを窺うだけで、オレへの対応はどうやら、王子に丸投げする構えだ。
さっきの桃色少年の所には、同僚っぽい僧侶が駆け寄るのが見えた。
「国として、出来るだけ丁寧に対応させていただきます。此方での生活基盤となる住居は勿論の事、今後の…」
「いや、別に。」
王子の台詞が長くなりそうだったんで、簡潔にぶった切った。
声を詰まらせた王子の顔を見ると、オレは不機嫌そうに見えたのかも知れねぇな。
だから……別に、オレは、怒ってねぇよ。
繰り返しになるが、ガッカリして恥ずかしいんだ。落胆、及び、羞恥だ。
呼ばれたワケでもねぇのに、人々を救うだとか調子に乗ってて御免なさい、だ。
「そ~いうの求めてねぇから。自分の事は自分で何とかする。」
勝手に異世界から現れといて、国に生活の面倒みて貰うとか……正直、無ぇわ。どこの寄生虫だよ。
これがまだ、無理矢理に連れて来られたとか、オレに何か働けねぇ事情があるならともかく。異世界から来てきっと不安だろう可哀想に、って理由で生活保護して貰うなんて有り得ねぇ。
下町辺りでのんびり勝手に暮らすから、気を遣わないでくれ。
あんまりにも気に掛けられると、逆に落ち着かねぇんだ。
何処ででも、適当に暮らせンだから、ほっといてくれ。
軽く……あくまで軽く、オレは王子の手を振り解いた。
よろけた王子を、駆け寄った護衛達が支える。
ガチで殺気立ってるのに、それでも歯を食いしばって黙ってんのは、恐らく王子がオレに丁寧な態度で接してるからだろう。
王子の顔を立ててるんだな。
やる事あっていいな、……オレと違って。
「そんな……、異世界人様!」
悲愴感に塗れた王子の声が背後から聞こえた。
その声は可哀想な子を呼び止めるみたいで、オレはやり切れない気分で扉を開けた。
何か知らんがヤバいって思ったんだろう。
ついでに言うと、オレがそう決意したのは自分の所為だ、とか思ったのかも知れん。
ふっふっふ……。残念ながら、半分は当たってるが半分はハズレだ。
王子が明確に答えを言わなくても、オレは立ち去るツモリだったからな。
少なくとも、この場からは。
呼ばれてねぇし、歓迎すべき対象でも無さそうなのに、長々と居られねぇっつの。
「まっ……お待ちください!」
扉へ向かうオレを王子が追い掛けて来た。
止めようとした護衛を振り払って、必死な様子でオレの前に回り込む。
美形王子の焦り顔とか、結構レアじゃねぇか?
……まぁ、それより。
こんな得体の知れないオレによくまぁ、不用心に近寄って来られンな。
……って感想が正直な所だ。
「と…っ、突然に、これまで暮らしていらしたのとは異なる世界に来られて、さぞや不安を感じられた事かと思います。」
「いや? 別に?」
不安じゃなくて、ガッカリしたんだよ。居場所が無いって事に。
そして恥ずかしいんだよ。自分を勇者、とか言っちゃった事に。
どっちも王子の所為じゃねぇから、わざわざ口に出しては言わんが、よ。
「でっ……ですが、ご安心ください。この国の召喚術は失われておりますが、異世界から来られた方をお迎えする事は充分に可能です。」
オレの反応が期待以下の薄さだったのか、オレが動き出す気配でも感じたのか。
王子がオレの腕を掴んで来た。
掴んだっていうか、……縋って来た感じか?
護衛は警戒心をバリバリに出しながらオレを睨み付けてる。
僧侶っぽい連中は遠巻きに離れてコッチを窺うだけで、オレへの対応はどうやら、王子に丸投げする構えだ。
さっきの桃色少年の所には、同僚っぽい僧侶が駆け寄るのが見えた。
「国として、出来るだけ丁寧に対応させていただきます。此方での生活基盤となる住居は勿論の事、今後の…」
「いや、別に。」
王子の台詞が長くなりそうだったんで、簡潔にぶった切った。
声を詰まらせた王子の顔を見ると、オレは不機嫌そうに見えたのかも知れねぇな。
だから……別に、オレは、怒ってねぇよ。
繰り返しになるが、ガッカリして恥ずかしいんだ。落胆、及び、羞恥だ。
呼ばれたワケでもねぇのに、人々を救うだとか調子に乗ってて御免なさい、だ。
「そ~いうの求めてねぇから。自分の事は自分で何とかする。」
勝手に異世界から現れといて、国に生活の面倒みて貰うとか……正直、無ぇわ。どこの寄生虫だよ。
これがまだ、無理矢理に連れて来られたとか、オレに何か働けねぇ事情があるならともかく。異世界から来てきっと不安だろう可哀想に、って理由で生活保護して貰うなんて有り得ねぇ。
下町辺りでのんびり勝手に暮らすから、気を遣わないでくれ。
あんまりにも気に掛けられると、逆に落ち着かねぇんだ。
何処ででも、適当に暮らせンだから、ほっといてくれ。
軽く……あくまで軽く、オレは王子の手を振り解いた。
よろけた王子を、駆け寄った護衛達が支える。
ガチで殺気立ってるのに、それでも歯を食いしばって黙ってんのは、恐らく王子がオレに丁寧な態度で接してるからだろう。
王子の顔を立ててるんだな。
やる事あっていいな、……オレと違って。
「そんな……、異世界人様!」
悲愴感に塗れた王子の声が背後から聞こえた。
その声は可哀想な子を呼び止めるみたいで、オレはやり切れない気分で扉を開けた。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
子悪党令息の息子として生まれました
菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!?
ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。
「お父様とお母様本当に仲がいいね」
「良すぎて目の毒だ」
ーーーーーーーーーーー
「僕達の子ども達本当に可愛い!!」
「ゆっくりと見守って上げよう」
偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。
転生先がハードモードで笑ってます。
夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。
目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。
人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。
しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで…
色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。
R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる