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本編1 警戒される男
3・あんた達にとってオレはただの通りすがり @泉州
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大人しくオレが待ってた所で、どうやら事態は良くならなそうだ。
それより前に、準備万端に整った兵士連中に捕まえられる方が早いかも知らん。
さっきも言ったが、捕まって牢屋かどっかに入れられるのは嫌だからな。
待ちくたびれ、寂しくなったオレは、自分から話し掛ける事に決めた。
「ん゛、ん゛んっ!」
咳払いするだけで、周囲からの警戒レベルと、怯えた雰囲気が強まる気がする。
オレはまだ何もしてねぇと思うんだが。
ここまで反応がアレだと、逆に面白く感じたり……は、無ぇな。
「あ~、もしかしたら見てて、分かってるかも知れねぇが。オレは異世界から来た。」
咽喉の調子を整えたオレは、何かの発表か演説でもするように声を張った。
その瞬間、周囲の雰囲気がこれまで以上に悪くなる。
ドヨドヨ……って言うか、ザワザワ……って言うかとにかく、警戒と怯えが融合して、緊迫って感じだ。
兵士連中の中には、明らかに武器へと手を掛ける奴も出た。
ちょっと待ってくれ! な、…なんでだ? 異世界から来た、ってフレーズがそこまで恐ろしいもんか?
あぁ~、これ……マジで、まいったな。
なぁ神様? 本当に、全然、聞いてた話と違うじゃねぇか。
「あのさァ……?」
オレから皆に話し掛けて、返事してくれた人物とその後の会話を続けよう。って作戦を立てたものの、無理だって分かったから早々に諦めた。
仕方ねぇから、オレの近くでまだ座り込んだままの桃色少年に声を掛ける。
金髪王子は、話し掛けるには位置がちょっと遠いからだ。
こン中じゃ一番ガッツがありそうで、話も出来そうだったんだがな。残念だ。
「はっ……! はひっ!」
「一応オレ、異世界から来たんだがな?」
なるべく優しく話し掛けた、ってのに。
桃色少年は目を見開いて、身体も震わせてる。
オレが凄く怖がらせてるみたいで、申し訳ねぇ気分になり掛けた。
待てよ、いや、だから、オレは何もしてねぇ。……ハズだろ?
自分の記憶に無いだけで実は……とかの可能性まで考えてたらキリがねぇ。
「なぁ、正直に答えてくれ……。もしかして、オレ……呼ばれてねぇのか?」
「えっ……!」
薄々……実はかなり序盤から気付いてた疑問を、オレは声に出して質問した。
桃色少年が更に目を大きく見開く。そろそろ零れ落ちそうなぐらいだ。
どうやらオレの来訪は歓迎されてないって事は、……その雰囲気は感じてた。
周囲にいる人間の態度からして、それは明らかだったがよ。認めるのに躊躇した。
それを認めちまったら、オレは一体何をしに来たんだ、って話になるからよ。
「え、えっ、ぃや……あの…っ。」
桃色男は狼狽えるばっかりで、オレの問い掛けに明確な返事は無かった。
だがその困り顔だけで充分『答え』にはなる。
……よし、諦めて、覚悟を決めて、認めるしかねぇな。
ここにいる人々にとって、オレはただの通りすがり。明らかに想定外だって。
つまりオレは、呼ばれたワケでも何でも無い……単なる異邦人って事だ。
あぁ……なるほど……、……そっか。
特に呼ばれてねぇンなら立ち去ってもいいんじゃねぇか。
「そ……、そなたは、異世界から来られたのですか?」
ボンヤリ考えてたオレに話し掛けて来るような猛者がいた。
その正体は……やっぱりっちゃ~やっぱりなんだが、金髪王子だった。
護衛達が口々に「危険です、殿下」って言って止めてンのに、王子はちょっとずつオレの方へと近付いて来る。
おっ、近くに来てみれば王子は、金髪なだけあって、なかなかの美形だな。
イケメン滅びろ、悪い、言い過ぎた。
年齢はオレと同じか……ちょっと年上、か? 外人の外見年齢は謎過ぎるぜ。
離れてた時には分からんかったが、いかにもロイヤリティなご尊顔で、しかも良く見りゃ細目の縦ロールとか。凄げぇな、ゴージャス過ぎだろよ。
「来訪された理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」
「いや、別に……その…、来訪って…程じゃねぇんだが、よ……。」
空気を読むのが得意だなんて、口が裂けても言えねぇオレでも。
周囲の……特に、戦えそうな連中の……顔を見れば、歓迎されてないって分かる。
それぐらいに穏やかとは程遠い雰囲気バリバリな中で。
キラっキラな王子を前に、決まり悪過ぎなオレはみっともなくモゴモゴと喋る。
呼ばれてねぇのが分かった今、凄い『浮いちゃってる感』がツラい。
だからって、他に適当な言葉もオレには見つからなかった。
「え~と、……なんだその、一応、勇者……? を、やりに来たん…だが。」
自分の頭を掻きながら、つい王子から視線を逸らした。
王子は息を呑み。周囲は静まり返った。
勇者をやるって何だソレ。
聞きようによっちゃ、勇者を殺しに来たみてぇだろ。
自分で自分の台詞にツッコむぞ。
……寂しくなんかねぇわ、ちくしょう。
それより前に、準備万端に整った兵士連中に捕まえられる方が早いかも知らん。
さっきも言ったが、捕まって牢屋かどっかに入れられるのは嫌だからな。
待ちくたびれ、寂しくなったオレは、自分から話し掛ける事に決めた。
「ん゛、ん゛んっ!」
咳払いするだけで、周囲からの警戒レベルと、怯えた雰囲気が強まる気がする。
オレはまだ何もしてねぇと思うんだが。
ここまで反応がアレだと、逆に面白く感じたり……は、無ぇな。
「あ~、もしかしたら見てて、分かってるかも知れねぇが。オレは異世界から来た。」
咽喉の調子を整えたオレは、何かの発表か演説でもするように声を張った。
その瞬間、周囲の雰囲気がこれまで以上に悪くなる。
ドヨドヨ……って言うか、ザワザワ……って言うかとにかく、警戒と怯えが融合して、緊迫って感じだ。
兵士連中の中には、明らかに武器へと手を掛ける奴も出た。
ちょっと待ってくれ! な、…なんでだ? 異世界から来た、ってフレーズがそこまで恐ろしいもんか?
あぁ~、これ……マジで、まいったな。
なぁ神様? 本当に、全然、聞いてた話と違うじゃねぇか。
「あのさァ……?」
オレから皆に話し掛けて、返事してくれた人物とその後の会話を続けよう。って作戦を立てたものの、無理だって分かったから早々に諦めた。
仕方ねぇから、オレの近くでまだ座り込んだままの桃色少年に声を掛ける。
金髪王子は、話し掛けるには位置がちょっと遠いからだ。
こン中じゃ一番ガッツがありそうで、話も出来そうだったんだがな。残念だ。
「はっ……! はひっ!」
「一応オレ、異世界から来たんだがな?」
なるべく優しく話し掛けた、ってのに。
桃色少年は目を見開いて、身体も震わせてる。
オレが凄く怖がらせてるみたいで、申し訳ねぇ気分になり掛けた。
待てよ、いや、だから、オレは何もしてねぇ。……ハズだろ?
自分の記憶に無いだけで実は……とかの可能性まで考えてたらキリがねぇ。
「なぁ、正直に答えてくれ……。もしかして、オレ……呼ばれてねぇのか?」
「えっ……!」
薄々……実はかなり序盤から気付いてた疑問を、オレは声に出して質問した。
桃色少年が更に目を大きく見開く。そろそろ零れ落ちそうなぐらいだ。
どうやらオレの来訪は歓迎されてないって事は、……その雰囲気は感じてた。
周囲にいる人間の態度からして、それは明らかだったがよ。認めるのに躊躇した。
それを認めちまったら、オレは一体何をしに来たんだ、って話になるからよ。
「え、えっ、ぃや……あの…っ。」
桃色男は狼狽えるばっかりで、オレの問い掛けに明確な返事は無かった。
だがその困り顔だけで充分『答え』にはなる。
……よし、諦めて、覚悟を決めて、認めるしかねぇな。
ここにいる人々にとって、オレはただの通りすがり。明らかに想定外だって。
つまりオレは、呼ばれたワケでも何でも無い……単なる異邦人って事だ。
あぁ……なるほど……、……そっか。
特に呼ばれてねぇンなら立ち去ってもいいんじゃねぇか。
「そ……、そなたは、異世界から来られたのですか?」
ボンヤリ考えてたオレに話し掛けて来るような猛者がいた。
その正体は……やっぱりっちゃ~やっぱりなんだが、金髪王子だった。
護衛達が口々に「危険です、殿下」って言って止めてンのに、王子はちょっとずつオレの方へと近付いて来る。
おっ、近くに来てみれば王子は、金髪なだけあって、なかなかの美形だな。
イケメン滅びろ、悪い、言い過ぎた。
年齢はオレと同じか……ちょっと年上、か? 外人の外見年齢は謎過ぎるぜ。
離れてた時には分からんかったが、いかにもロイヤリティなご尊顔で、しかも良く見りゃ細目の縦ロールとか。凄げぇな、ゴージャス過ぎだろよ。
「来訪された理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」
「いや、別に……その…、来訪って…程じゃねぇんだが、よ……。」
空気を読むのが得意だなんて、口が裂けても言えねぇオレでも。
周囲の……特に、戦えそうな連中の……顔を見れば、歓迎されてないって分かる。
それぐらいに穏やかとは程遠い雰囲気バリバリな中で。
キラっキラな王子を前に、決まり悪過ぎなオレはみっともなくモゴモゴと喋る。
呼ばれてねぇのが分かった今、凄い『浮いちゃってる感』がツラい。
だからって、他に適当な言葉もオレには見つからなかった。
「え~と、……なんだその、一応、勇者……? を、やりに来たん…だが。」
自分の頭を掻きながら、つい王子から視線を逸らした。
王子は息を呑み。周囲は静まり返った。
勇者をやるって何だソレ。
聞きようによっちゃ、勇者を殺しに来たみてぇだろ。
自分で自分の台詞にツッコむぞ。
……寂しくなんかねぇわ、ちくしょう。
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