9 / 44
本編1 警戒される男
3・あんた達にとってオレはただの通りすがり @泉州
しおりを挟む
大人しくオレが待ってた所で、どうやら事態は良くならなそうだ。
それより前に、準備万端に整った兵士連中に捕まえられる方が早いかも知らん。
さっきも言ったが、捕まって牢屋かどっかに入れられるのは嫌だからな。
待ちくたびれ、寂しくなったオレは、自分から話し掛ける事に決めた。
「ん゛、ん゛んっ!」
咳払いするだけで、周囲からの警戒レベルと、怯えた雰囲気が強まる気がする。
オレはまだ何もしてねぇと思うんだが。
ここまで反応がアレだと、逆に面白く感じたり……は、無ぇな。
「あ~、もしかしたら見てて、分かってるかも知れねぇが。オレは異世界から来た。」
咽喉の調子を整えたオレは、何かの発表か演説でもするように声を張った。
その瞬間、周囲の雰囲気がこれまで以上に悪くなる。
ドヨドヨ……って言うか、ザワザワ……って言うかとにかく、警戒と怯えが融合して、緊迫って感じだ。
兵士連中の中には、明らかに武器へと手を掛ける奴も出た。
ちょっと待ってくれ! な、…なんでだ? 異世界から来た、ってフレーズがそこまで恐ろしいもんか?
あぁ~、これ……マジで、まいったな。
なぁ神様? 本当に、全然、聞いてた話と違うじゃねぇか。
「あのさァ……?」
オレから皆に話し掛けて、返事してくれた人物とその後の会話を続けよう。って作戦を立てたものの、無理だって分かったから早々に諦めた。
仕方ねぇから、オレの近くでまだ座り込んだままの桃色少年に声を掛ける。
金髪王子は、話し掛けるには位置がちょっと遠いからだ。
こン中じゃ一番ガッツがありそうで、話も出来そうだったんだがな。残念だ。
「はっ……! はひっ!」
「一応オレ、異世界から来たんだがな?」
なるべく優しく話し掛けた、ってのに。
桃色少年は目を見開いて、身体も震わせてる。
オレが凄く怖がらせてるみたいで、申し訳ねぇ気分になり掛けた。
待てよ、いや、だから、オレは何もしてねぇ。……ハズだろ?
自分の記憶に無いだけで実は……とかの可能性まで考えてたらキリがねぇ。
「なぁ、正直に答えてくれ……。もしかして、オレ……呼ばれてねぇのか?」
「えっ……!」
薄々……実はかなり序盤から気付いてた疑問を、オレは声に出して質問した。
桃色少年が更に目を大きく見開く。そろそろ零れ落ちそうなぐらいだ。
どうやらオレの来訪は歓迎されてないって事は、……その雰囲気は感じてた。
周囲にいる人間の態度からして、それは明らかだったがよ。認めるのに躊躇した。
それを認めちまったら、オレは一体何をしに来たんだ、って話になるからよ。
「え、えっ、ぃや……あの…っ。」
桃色男は狼狽えるばっかりで、オレの問い掛けに明確な返事は無かった。
だがその困り顔だけで充分『答え』にはなる。
……よし、諦めて、覚悟を決めて、認めるしかねぇな。
ここにいる人々にとって、オレはただの通りすがり。明らかに想定外だって。
つまりオレは、呼ばれたワケでも何でも無い……単なる異邦人って事だ。
あぁ……なるほど……、……そっか。
特に呼ばれてねぇンなら立ち去ってもいいんじゃねぇか。
「そ……、そなたは、異世界から来られたのですか?」
ボンヤリ考えてたオレに話し掛けて来るような猛者がいた。
その正体は……やっぱりっちゃ~やっぱりなんだが、金髪王子だった。
護衛達が口々に「危険です、殿下」って言って止めてンのに、王子はちょっとずつオレの方へと近付いて来る。
おっ、近くに来てみれば王子は、金髪なだけあって、なかなかの美形だな。
イケメン滅びろ、悪い、言い過ぎた。
年齢はオレと同じか……ちょっと年上、か? 外人の外見年齢は謎過ぎるぜ。
離れてた時には分からんかったが、いかにもロイヤリティなご尊顔で、しかも良く見りゃ細目の縦ロールとか。凄げぇな、ゴージャス過ぎだろよ。
「来訪された理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」
「いや、別に……その…、来訪って…程じゃねぇんだが、よ……。」
空気を読むのが得意だなんて、口が裂けても言えねぇオレでも。
周囲の……特に、戦えそうな連中の……顔を見れば、歓迎されてないって分かる。
それぐらいに穏やかとは程遠い雰囲気バリバリな中で。
キラっキラな王子を前に、決まり悪過ぎなオレはみっともなくモゴモゴと喋る。
呼ばれてねぇのが分かった今、凄い『浮いちゃってる感』がツラい。
だからって、他に適当な言葉もオレには見つからなかった。
「え~と、……なんだその、一応、勇者……? を、やりに来たん…だが。」
自分の頭を掻きながら、つい王子から視線を逸らした。
王子は息を呑み。周囲は静まり返った。
勇者をやるって何だソレ。
聞きようによっちゃ、勇者を殺しに来たみてぇだろ。
自分で自分の台詞にツッコむぞ。
……寂しくなんかねぇわ、ちくしょう。
それより前に、準備万端に整った兵士連中に捕まえられる方が早いかも知らん。
さっきも言ったが、捕まって牢屋かどっかに入れられるのは嫌だからな。
待ちくたびれ、寂しくなったオレは、自分から話し掛ける事に決めた。
「ん゛、ん゛んっ!」
咳払いするだけで、周囲からの警戒レベルと、怯えた雰囲気が強まる気がする。
オレはまだ何もしてねぇと思うんだが。
ここまで反応がアレだと、逆に面白く感じたり……は、無ぇな。
「あ~、もしかしたら見てて、分かってるかも知れねぇが。オレは異世界から来た。」
咽喉の調子を整えたオレは、何かの発表か演説でもするように声を張った。
その瞬間、周囲の雰囲気がこれまで以上に悪くなる。
ドヨドヨ……って言うか、ザワザワ……って言うかとにかく、警戒と怯えが融合して、緊迫って感じだ。
兵士連中の中には、明らかに武器へと手を掛ける奴も出た。
ちょっと待ってくれ! な、…なんでだ? 異世界から来た、ってフレーズがそこまで恐ろしいもんか?
あぁ~、これ……マジで、まいったな。
なぁ神様? 本当に、全然、聞いてた話と違うじゃねぇか。
「あのさァ……?」
オレから皆に話し掛けて、返事してくれた人物とその後の会話を続けよう。って作戦を立てたものの、無理だって分かったから早々に諦めた。
仕方ねぇから、オレの近くでまだ座り込んだままの桃色少年に声を掛ける。
金髪王子は、話し掛けるには位置がちょっと遠いからだ。
こン中じゃ一番ガッツがありそうで、話も出来そうだったんだがな。残念だ。
「はっ……! はひっ!」
「一応オレ、異世界から来たんだがな?」
なるべく優しく話し掛けた、ってのに。
桃色少年は目を見開いて、身体も震わせてる。
オレが凄く怖がらせてるみたいで、申し訳ねぇ気分になり掛けた。
待てよ、いや、だから、オレは何もしてねぇ。……ハズだろ?
自分の記憶に無いだけで実は……とかの可能性まで考えてたらキリがねぇ。
「なぁ、正直に答えてくれ……。もしかして、オレ……呼ばれてねぇのか?」
「えっ……!」
薄々……実はかなり序盤から気付いてた疑問を、オレは声に出して質問した。
桃色少年が更に目を大きく見開く。そろそろ零れ落ちそうなぐらいだ。
どうやらオレの来訪は歓迎されてないって事は、……その雰囲気は感じてた。
周囲にいる人間の態度からして、それは明らかだったがよ。認めるのに躊躇した。
それを認めちまったら、オレは一体何をしに来たんだ、って話になるからよ。
「え、えっ、ぃや……あの…っ。」
桃色男は狼狽えるばっかりで、オレの問い掛けに明確な返事は無かった。
だがその困り顔だけで充分『答え』にはなる。
……よし、諦めて、覚悟を決めて、認めるしかねぇな。
ここにいる人々にとって、オレはただの通りすがり。明らかに想定外だって。
つまりオレは、呼ばれたワケでも何でも無い……単なる異邦人って事だ。
あぁ……なるほど……、……そっか。
特に呼ばれてねぇンなら立ち去ってもいいんじゃねぇか。
「そ……、そなたは、異世界から来られたのですか?」
ボンヤリ考えてたオレに話し掛けて来るような猛者がいた。
その正体は……やっぱりっちゃ~やっぱりなんだが、金髪王子だった。
護衛達が口々に「危険です、殿下」って言って止めてンのに、王子はちょっとずつオレの方へと近付いて来る。
おっ、近くに来てみれば王子は、金髪なだけあって、なかなかの美形だな。
イケメン滅びろ、悪い、言い過ぎた。
年齢はオレと同じか……ちょっと年上、か? 外人の外見年齢は謎過ぎるぜ。
離れてた時には分からんかったが、いかにもロイヤリティなご尊顔で、しかも良く見りゃ細目の縦ロールとか。凄げぇな、ゴージャス過ぎだろよ。
「来訪された理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」
「いや、別に……その…、来訪って…程じゃねぇんだが、よ……。」
空気を読むのが得意だなんて、口が裂けても言えねぇオレでも。
周囲の……特に、戦えそうな連中の……顔を見れば、歓迎されてないって分かる。
それぐらいに穏やかとは程遠い雰囲気バリバリな中で。
キラっキラな王子を前に、決まり悪過ぎなオレはみっともなくモゴモゴと喋る。
呼ばれてねぇのが分かった今、凄い『浮いちゃってる感』がツラい。
だからって、他に適当な言葉もオレには見つからなかった。
「え~と、……なんだその、一応、勇者……? を、やりに来たん…だが。」
自分の頭を掻きながら、つい王子から視線を逸らした。
王子は息を呑み。周囲は静まり返った。
勇者をやるって何だソレ。
聞きようによっちゃ、勇者を殺しに来たみてぇだろ。
自分で自分の台詞にツッコむぞ。
……寂しくなんかねぇわ、ちくしょう。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

【運命】に捨てられ捨てたΩ
雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる