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第七章 ~ゲームの強制力に縛られた者、縛られない者~
バグはバグなりに色々あるんでな・2 $メリクル$
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「ぁの……、メリクル、何か…飲みます……?」
昼飯を食った直後だってのに、部屋に入るなりエステードは言い出した。
実家の自分が使ってた部屋に、俺がいるのが落ち着かねぇようだ。
「さっき食後のコーヒーを飲んだばっかだろが。要らねぇよ。」
俺は長ソファに腰を下ろし、手持ち無沙汰に突っ立ってるエステードを見上げる。
「……あ、じゃあ……。何かツマめるような物でも…」
「いらねぇ、っつってんだろ。」
「そ、そうですか……。」
「いいから、コッチ来て座れ。」
敢えて、何処に座れとまでは言わなかった。
エステードは小さく返事して、そっとコッチに近寄り。
俺の向かい側にあるシングルソファに腰掛けた。
「チッ……。」
おっと、ウッカリ舌打ちしちまったぜ。
つ~かよ……俺が長ソファに一人で座ってんのに、わざわざソッチ行くか?
気付かなかったのか、ワザとなのかは知らねぇけどよ…
「…っとに、可愛げが無ぇな。」
「……っ、す……すみません。」
思わず舌打ちと共に呟いた文句に、エステードは小さくなった。
……おい? どうも、なんか変だな。
いつもなら「可愛げなんてありませんよ」とか、「知ってます」とか、何か言い返して来るトコだろがよ。
部屋に上がり込まれて緊張してるにしたって、自宅には散々押し入ってるだろ。そこでヤル事も散々っぱらヤッてんだろ。
「…………そうか。」
お陰で俺までクソつまんねぇ返事しちまったろ~が。
生意気に、調子狂わしてんじゃねぇぞ。
それっきり、俺達はしばらくの間、お互いに無言で過ごした。
別に俺から振ってやるような話題も無い。
エステードはソワソワしてんのを必死に隠してるようで、テーブルと俺の顔とを、交互に視線をやってる。
飲み物を出してないのがそんなに気になんのかねぇ?
ん? ……あぁ、そうか。エステードの方が手持ち無沙汰なのか。
エステードの仕草を見て俺は気付いた。
さっきからエステードは手指をモジモジ、組んだり握ったり、開いたり。
カップの一つでもありゃ、もうちょっとは時間を潰せるってもんなんだろ。
俺と一緒にいるのに時間を潰す、とか……なんかイラッとすんなぁ。
普段通りにしてりゃいいだろがよ。
そう言やぁ、普段通りって……。
普段、俺ら……何してた? 何か話したりしてたか?
ちっと思い出せねぇな……いや、そもそも、会話なんかしてたか?
俺がエステードの自宅に転移してって、とりあえずヤッてから何か食ったり飲んだりして、休憩して、まだ時間があれば抱く。
シャワーを浴びさせながら風呂場で弄ってから帰る。
あぁ~、会話とか……してねぇな。
そりゃエステードも戸惑うってもんか。
ったく、それならそうと、何か言えばいいのによ……。
そういうトコを、エステードは甘えるってことを知らねぇからな。
……しょ~がねぇ。飲み物ぐらい用意させてやるか。
「……おい。」
「はい?」
声を掛けてやると、待ち構えてたようにエステードが返事する。
この反応の速さだけがいつも通りで、俺は苦笑いだ。
なんっつ~か、躾の行き届いた犬みたいで可愛いっちゃあ可愛い。
けど、そうじゃねぇんだよ、エステードに求めてんのはよ。
そんな誰にでも分かりやすい可愛さとか要らねぇから、もうちょい俺に………。
……っだあぁ~っ、違うっ、そうじゃねぇっ。
ナニ言おうとしてんだ、馬鹿か、俺は。
あぁクソっ、エステードの所為で調子狂ってんな。
普段、ただヤリに来てるだけなんだから、いつも通りでいいだろ。
別に会話なんか要らねぇわ。
「ここはエステードの部屋、だったな?」
「ぇ…えぇ、そうです。まだ残しておいてくれてたようですね。」
喋り出した俺に、エステードはあからさまにホッとした様子を見せた。
俺はわざと口端を吊り上げ、嫌な感じの笑みを浮かべてやる。
コーヒーぐらい飲んでやるかとも思ったけどな、気が変わった。
いくら実家だからってよ、部屋にエステードと二人でいるのに何もヤッてないって、その状況がオカシかったんだ。
「使用人に風呂の支度させとけ。冷たい飲み物も、だ。」
「はい、すぐに…」
「エステードは…」
「はい?」
「…………、いや、何でもねぇ。」
お前はすぐに戻って来い。……って言い掛けたのを止めた。
妙に鈍いエステードは、俺が風呂の支度をさせるよう言ったのに、今から何をやるかピンと来てないようだった。
わざわざ前以って教えてやる必要も無いだろ、って思い直しただけだ。
「すぐに用意しますから少しだけ待っててください。」
「……おう。」
立ち上がったエステードがいそいそと部屋を出て行く。
何が嬉しいんだか、ちょっと笑みも零れてるようだった。
エステードが戻って来たら四の五の言わせず啼かしてやる。
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