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第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~

領主邸の壁は意外と薄いようだぞ

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昼御飯を食べた後、食後のデザートと珈琲もご馳走になった。
デザートはスイートポテトで、中にカスタードクリームが入ってないヤツで、オレもそっちの方が好きだし、メリクルも食べられるヤツ。
……あっ、カスタードクリームを悪く言うツモリは無いからな?


そんで、今。
オレはまたフィロウの部屋にお邪魔してる。
メリクルが近日中に、オレがイクシィズと話せる機会を作ってくれるんだから。
その前にもうちょっと、オレもしっかり勉強しとこうって考えたからだ。
フィロウの部屋には、エステードさんが用意した参考資料がまだ残ってる。


「お腹は一杯だろうけど、一応、飲み物用意したよ? ここに置くね。」
「あぁ、フィロウ、ありがと。」

壁際に置かれた背の高いテーブルに乗ってる本を、ペラペラするオレ。
フィロウはオレに声を掛けて、ソファ前の応接テーブルの中央にグラスを置いた。

本に目を通してる内に咽喉が渇くこともあるだろう。
流石はフィロウ、気が利くな。


「……ねぇ、イグゥ。」
「ぅん? どうした、フィロウ?」
「メリクルさんが、さぁ。向こうのハーレム天守に面会の話を付けてから、イグゥに連絡があるんでしょ?」
「あぁ、そうだな。たぶん、そのハズ。」

とりあえず数冊を選んで持って行く。
長ソファに座ってページを捲ってたら、フィロウがそっと隣に腰掛けた。
横から、オレが開いてる本を覗き込んで。

「ぅわぁ……難しそうだねぇ。」
「うんまぁ、一回は読んでるし。もうちょっと頭に入れとこうと思ってさ。」
「ふ~ん。……あっ、それでね? イグゥに連絡あったら、ボクにも教えて欲しいんだけど。……ダメかな?」

オレに聞きながら、小首を傾げるフィロウ。
実に可愛らしくて似合ってる仕草だけど、その意図が良く分かんない。

「フィロウに?」
「うん。イグゥは呼ばれたら王都に行くよね? ボクも一緒に行きたいな。」
「一緒に……かぁ。」
「だって、つ…妻だしぃ。天守同士で話すんなら、一人でもいた方が良くない?」
「あぁ、なるほど……。」

言われてみれば確かに、フィロウが言う案も、対策としては悪くない。
ゲームじゃ、天守同士の争いには『妻からの応援』みたいなのがあったんだ。
確か、争いをする場所にいるハーレム妻からの愛情度や親密度によって、ポイントが違ってたような気がする。愛情度か親密度が高い妻からはボーナスが貰えて。それらが余りにも低い妻がいる場合は、逆にペナルティになっちゃってた……かなぁ。

もし、この世界でもその仕組みが有効だとしたら。
オレの妻で、しかも凄い愛してくれてるフィロウが一緒なのは心強い。
……けど。
出来ればオレは、イクシィズとの対決シーンを妻に見せたくないんだよなぁ。
仮メリクルとの遣り取りとかもアレだったけど。イクシィズと対面したオレが、同じタチ同士でどれくらい頭に血が昇るか、分かんないからさ。
ぎゃあぎゃあ喚いて暴れたりは、たぶん流石にしないと、思いたい。
でも、オレの様子を診て怯えさせるような事態に……ならないとは言えないから。


「……有難いけど今回は一人でイクシィズと会うよ。気持ちだけ貰っとく。」
「そぉ? ……うん、分かった。」

フィロウはちょっと心配そうな、残念そうな表情をして。
だけど、オレの言葉を尊重して頷いてくれた。



所々を速読も織り交ぜつつ、必要な範囲は不安を消すように復習する。
間違えてないか、勘違いしてないかの確認だから、長時間は掛からない。


「イグゥ、終わった?」

読み終わった本を閉じたら、フィロウに声を掛けられた。
フィロウはオレの隣で別な本を読んでたんだけど、様子を窺ってたっぽいな。

「じゃあさ、イグゥ。……構って?」
「本を片付けて来たら、な?」

立ち上がりざまに、フィロウの頬っぺたにチューするオレ。
キスしやすいように顔の角度を傾げて、フィロウが誘ってくれたお陰なんだけど。
何だかイケメンっぽい行動で、分不相応さに自分がドキドキした。


ドキドキしながら、壁際のテーブルに本を戻したら。


「ぅん?」

何処からか声が聞こえて、動きを止めたオレ。

別にオレは殺し屋でもなければ、誰かに狙われてもいない。
リスタニア国の王子って設定もあるけど、大々的に広めてもない。
だけど、養育所での訓練の弊害っていうか。聞こえるか聞こえないかギリギリな音声を耳にしたら、それが何なのか、ハッキリさせたくなっちゃうんだ。

どうやら壁の向こうから聞こえてる。
よ~く耳を澄まして、オレは……。


「……あ。」

オレは気まずくなった。


「なぁ、フィロウ?」
「なぁに、イグゥ?」
「コッチ側の、隣の部屋ってさ…」
「あ、お兄さんが使ってた部屋。」
「そうかぁ……。」

隣って……元々エステードさんの部屋、かぁ。だったら仕方ないか。
たぶん今頃は、メリクルも一緒にいるんだろうな。
だって、さっきちょっと聞こえた音声。
明らかに、そのぉ……ヤッてます、って感じだったんだ。


「それがどうかした?」

不思議そうに言いながら、フィロウが寄って来た。
兄の濡場を弟に聞かせるとか、それは気まずい。


「え、やっ、あ…べつにっ。何も聞こえてないし。」

フィロウに気付かせないように。
って意識するあまり、余計な一言を発するオレ。

思いっ切りヒントを与えたっぽくて、フィロウは「え~、どれどれ?」って言いながら、壁に耳を付けた。
エッチな音声はフィロウにも聞こえたんだろう。

「も…っ、……もおぉ~っ。」

フィロウはポポポって赤面する。
ソワソワして、オレも落ち着かない。
二人して顔を見合って、なんかモジモジしてる。

オレはちょっとムラムラもしてるんだけど、流石に自分でも流され過ぎだよな。
会うたびにセックスするって、アレだし……ちょっとは我慢もしないとな。


「ね…ねぇ、イグゥ……。」

フィロウがオレの服を摘んで、クイクイってしながら。


「……構って? 気持ちイイコトしたい。……イグゥは?」
「オレもしたいっ。」

オレはアッサリ、前言撤回した。

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