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第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~

エステードさんが鈍いのか、メリクルが下手なのか

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「しばらく会ってない……? って、どれくらいだ?」
「イグゥ君がうちに来た時、メリクルと会いましたよね? それからなので……かれこれ、十日間ぐらいでしょうか。」
「エステードさんちで会った、あれからか……。」

それって、オレが転移板で王都に飛ばされた、あの日だよな? あれからエステードさん、一度もメリクルと会ってないのか?
え? えっ? それじゃ、もしかして……メリクルって、まだオカシイままか?
あぁいや、でも……待て待て。結論を出すには早いぞ。
メリクルが普段、どれくらいの頻度でエステードさんに会いに来てるのか、オレには分かんないんだから。


「エステードさんとメリクルって、普段はどれくらいの頻度で会ってるんだ?」
「会ってる、と言うよりも……メリクルが来たい時に来る、というだけなので。二~三日で来る事もあれば、一~二週間ぐらい姿を見せない事もありますから。一概には言えませんね。」

うわぁ~、そうかぁ。
てっきりメリクルが別人みたいになっちゃってるから、エステードさんに会いに来ないのかと思ったけど。今の話を聞いた限りじゃ、十日間くらいの空白期間は今までも普通にあるんだよな。
だったら分かんないなぁ。
オレがコミュニケーション取れそうな方のメリクルに限定して、連絡取りたかったんだけど……まっ、選べなくても仕方ないか。


「ところでエステードさん。オレ、メリクルにちょっと用事があってさ。出来れば近い内に会いたいんだ。」
「そうですか。」
「メリクルにさ、オレが会いたがってた、って伝えて欲しいんだ。いいかな?」
「はい、いいですよ。……ただし、いつになるかは分かりませんが。」

注意を言いつつ、了承してくれたエステードさん。
そこについてはオレも分かってるんで、頷いといた。



「ねぇねぇ、ところで……イグゥ。ちょっと聞いてくれる? お兄さんったら、酷いんだよ。」

会話が一段落したタイミングで、フィロウが切り出した。
ちょっと身体も載り出し気味になってる。


「エステードさんが酷い?」
「うん。酷いって言うか……発想がオカシイ。」
「……フィロウ。私の話はもう、いいでしょう。」
「良くないよ。絶対、お兄さんの思い違いだってば。」

話を聞こうとしたら、フィロウとエステードさんはちょっと揉め出す。
何となく分かる。エステードさんはたまに、ちょっと独特な発想するから。

「ボクはお兄さんの話を聞いて……、お兄さん、そうじゃないでしょ……って思ったよ? メリクルさんが可哀想に感じたぐらいだからね? イグゥにも聞いて貰えばいいんだよ。絶対、イグゥだってボクと同じように思うんだから。」
「へぇ~。そうまで言うなら、聞いてみたいな。」
「秘密にしろ、なんて言われてないんでしょ? だったら言ってもいいよね?」
「えぇ……、……まぁ、そうですね。」

今一つ歯切れは悪いものの、エステードさんは一応、了承の返事をした。
フィロウが聞いて「メリクルが可哀想」って思うような話だぞ。聞けるもんなら聞いてみたい。エステードさんが了承してくれて良かった。


「あのね、ハーレムリング、知ってる? イグゥもその内、作るよね?」
「もちろん知ってるぞ。まぁその内……作りたいな、と。」
「天守からハーレムリングを渡されて、持ってろ、って言われたら……イグゥはどう思う? どういう意味だと思う?」
「あ~……。その前に、前提条件を一つ確認したい。天守が渡したリングってさ、自分のハーレムの、だよな?」
「うん、そうだよ。」

肯定するフィロウの声を聞きながら、オレはエステードさんの表情を確認した。
全く動揺してないエステードさん。分かりにくい。

それでも今の遣り取りから想像出来る内容は、一つだろう。


「だったらまぁ……普通に考えれば、自分のハーレムに入ってくれ、って誘い。……かなぁ、って。思うかな。オレだったら、な。」
「そうだよねっ、ボクもそう思った。」
「メリクルがエステードさんにハーレムリングを渡した、って話だよな?」
「うん、そうっ。」

ジッとエステードさんを観察するオレ。
会話に関わる気が無いのか、涼しい顔のエステードさん。
なんかメチャ憤ってる感じのフィロウは、ザザッと掻い摘んで話してくれた。


二人でハーレムの話をしてる内に、リングの話題になったそうだ。
ちょうどエステードさんが持ってるから、参考として見せようかって話に……。


「貰ってからずっと、箱に入れっ放しなんだってさ。酷くない?」
「あぁ……そうなのか。」
「貰ってません。持ってろと言われたので、預かってるんです。」
「あぁ……そうなんだ。」

相槌を打つオレには、状況が容易に想像出来た。


メリクルがふてぶてしい調子で、エステードさんにリングを渡す。
「何ですか?」って言うエステードさん。小首も傾げてて欲しい。
「持ってろ」って言うメリクルは、ちょっと不機嫌顔だったろう。
「分かりました」ってエステードさん、箱にリングを仕舞い込む。
ピシッて動きが固まるメリクル、眉間の皺を深くして睨み付ける。
視線を感じたエステードさん、「どうかしました?」って尋ねる。
「クソッ、何でもねぇ」ってメリクルが吐き捨て、この話は終了。


あ~、目に浮かぶなぁ。
だから、付き合ってるとか付き合ってないとかの話で、微妙な雰囲気だったのか。
エステードさん、「持ってろ」って言葉を何故、もっと突っ込んで聞かないんだ。
メリクルも。エステードさんの鈍さや斜め下の発想具合は予想外だったろうけどさ、それにしたって、もうちょっと上手くやればいいのに。
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