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第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~

やっと手続きが終わると思ったのに

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「あの、長らくお待たせしているのに恐縮ですが、天守さまのご本人確認をもう一度させて頂いてもよろしいでしょうか?」

天守のシルシを見せた後でオレの国民登録も確認してるから、オレに二度手間を掛けさせる申し訳なさを感じてるんだろう。
伺いを立てるシスターは、恐る恐るって感じだった。


「あぁ、もちろん。」

なるべく気さくな感じに答えるオレ。
シスターはあからさまにホッとした様子で、本人確認の装置をオレに差し出した。
受け取って、小さな双眼鏡の筒っぽい形状をした部分を両目で覗き込む。
こんな小さな装置なのに、瞳孔の差異を認識して個人を判断する優れモノだ。
どんな原理かは分かんない。たぶん魔法技術的な物かな。



「確認出来ました。結構ですよ。」

数秒後に声を掛けられて、シスターに装置を返した。
これで手続きが済むって思ったのに、シスターが心配そうに口を開く。


「済みません、あの……念の為に確認させて頂きますが……。ここで手続きをされますと、天守様の国民登録場所に関わらず、ハーレムの所在地はこの町という事になってしまいますよ? ハーレムをノマルの町で設立する、という事で本当によろしいでしょうか?」
「もちろん、それでいい。」
「母国のリスタニアでなくてよろしいのですか? ……あ、あの、差し出がましくて済みません。ここはリスタニアから遠いので、何かと不便なのではないか、と思いまして。」
「あぁゴメン、気を遣わせちゃったかな。実はオレ、ちょっと前からノマルに住んでるんだ。変更手続きするの忘れてて……。」


あ~、オレの国民登録がリスタニアだからか~。そういうことか~。
なんでこんな、わざわざ遠い町に来て手続するのか……って疑問に思うよな。


「もしかして……結構時間が掛かってるのって、オレの登録場所が原因だった?」
「お待たせして本当に済みません。あの、上の方の判断で、必要だという事になりまして。勝手ではありますが職権で、一応、リスタニア王家に問い合わせをさせて頂きました。」

オレ達の長い待ち時間は、リスタニアからの返事を待ってる時間だったんだな。
この世界に電話が無い代わりに、たぶん魔法技術を使った電報みたいなのがある。
教会とか城とか、公共施設や裕福なトコにあるソレが、早く一般にも普及すればいいのに。そしたらオレも、家から養育所に電報を送って、自分の無事を知らせれたのにな。


リスタニア王家って聞いて、リオ、カシュ、そしてビリーも不思議そうだ。
ついなんとなく、ルサーと顔を見合わせるオレ。

オレの予想。
養育所の所長はリスタニア国の王子であるアレイスティだ。
つまり、あの養育所は国立、又は王家が運営してる。
そして、オレはそこで所長の手伝い……センセイをしてる。
だから、王家に問い合わせするのが通常の流れ。
……なんだよな? いいよな? 合ってる?


「ハーレムをノマルの町で設立する、という事でよろしいんですね?」
「もちろん。」
「ハーレムタグはどうなさいます?」
「タグって、確か……教会が出してくれる、ハーレム所属の証だったか。せっかくだから欲しいな。まだリングが用意出来てないから、それがあれば有難い。」
「では、こちらをご覧ください。」

シスターは、若い眼鏡のシスターを呼び寄せる。
元気の良い眼鏡シスターは薄っぺらい箱を、皆に見えるように開いた。


「あんまり種類が無くてスミマセンっ。王都なら色も選べるんですけどねっ。」
「お選び頂いた物を加工致します。」

箱の中には、細長いプレートが幾つも並んでた。
種類が無いって言葉は謙遜じゃなかった。プレートは全部、茶色い。

選ぶ必要なんか無さそう、って思うだろう? 違うんだ。
茶色は茶色でも、どれもが他とは異なる茶色なんだ。
濃い・薄い・明るい・暗い・黄色っぽい・白っぽい・赤っぽい・黒っぽい……。
色以外の部分でも、透明感あるとか、ツヤツヤだとか、グラデ掛かってるとか。
茶色だけでこんなにあるって、逆に凄くないか?


「へぇ~、面白いな。それぞれ好きなのを選んだらいいぞ。」

妻達が寄り集まって箱の中を覗く。
その様子を微笑ましく見守りながら、オレは眼鏡シスターに声を掛けた。


「タグはいつ出来上がるんだ?」
「スミマセンっ、この時間の受付なので、お渡しは明後日になっちゃいますっ。」
「そうか、仕方ないな。」
「あ、スミマセン、それとっ。……そちらの方は妻の登録、出来ませんっ。」
「そうか……。………?」

一瞬、何を言われたか理解出来なかった。
聞こえた言葉が頭から抜け落ちちゃって。


「………えっ?」

ちょっと経ってから、意味が分かって。
オレはマヌケな声を出して、眼鏡シスターを振り返る。

眼鏡シスターが伸ばした手は真っ直ぐに、ルサーを示してた。
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