330 / 364
第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~
やっと手続きが終わると思ったのに
しおりを挟む
「あの、長らくお待たせしているのに恐縮ですが、天守さまのご本人確認をもう一度させて頂いてもよろしいでしょうか?」
天守のシルシを見せた後でオレの国民登録も確認してるから、オレに二度手間を掛けさせる申し訳なさを感じてるんだろう。
伺いを立てるシスターは、恐る恐るって感じだった。
「あぁ、もちろん。」
なるべく気さくな感じに答えるオレ。
シスターはあからさまにホッとした様子で、本人確認の装置をオレに差し出した。
受け取って、小さな双眼鏡の筒っぽい形状をした部分を両目で覗き込む。
こんな小さな装置なのに、瞳孔の差異を認識して個人を判断する優れモノだ。
どんな原理かは分かんない。たぶん魔法技術的な物かな。
「確認出来ました。結構ですよ。」
数秒後に声を掛けられて、シスターに装置を返した。
これで手続きが済むって思ったのに、シスターが心配そうに口を開く。
「済みません、あの……念の為に確認させて頂きますが……。ここで手続きをされますと、天守様の国民登録場所に関わらず、ハーレムの所在地はこの町という事になってしまいますよ? ハーレムをノマルの町で設立する、という事で本当によろしいでしょうか?」
「もちろん、それでいい。」
「母国のリスタニアでなくてよろしいのですか? ……あ、あの、差し出がましくて済みません。ここはリスタニアから遠いので、何かと不便なのではないか、と思いまして。」
「あぁゴメン、気を遣わせちゃったかな。実はオレ、ちょっと前からノマルに住んでるんだ。変更手続きするの忘れてて……。」
あ~、オレの国民登録がリスタニアだからか~。そういうことか~。
なんでこんな、わざわざ遠い町に来て手続するのか……って疑問に思うよな。
「もしかして……結構時間が掛かってるのって、オレの登録場所が原因だった?」
「お待たせして本当に済みません。あの、上の方の判断で、必要だという事になりまして。勝手ではありますが職権で、一応、リスタニア王家に問い合わせをさせて頂きました。」
オレ達の長い待ち時間は、リスタニアからの返事を待ってる時間だったんだな。
この世界に電話が無い代わりに、たぶん魔法技術を使った電報みたいなのがある。
教会とか城とか、公共施設や裕福なトコにあるソレが、早く一般にも普及すればいいのに。そしたらオレも、家から養育所に電報を送って、自分の無事を知らせれたのにな。
リスタニア王家って聞いて、リオ、カシュ、そしてビリーも不思議そうだ。
ついなんとなく、ルサーと顔を見合わせるオレ。
オレの予想。
養育所の所長はリスタニア国の王子であるアレイスティだ。
つまり、あの養育所は国立、又は王家が運営してる。
そして、オレはそこで所長の手伝い……センセイをしてる。
だから、王家に問い合わせするのが通常の流れ。
……なんだよな? いいよな? 合ってる?
「ハーレムをノマルの町で設立する、という事でよろしいんですね?」
「もちろん。」
「ハーレムタグはどうなさいます?」
「タグって、確か……教会が出してくれる、ハーレム所属の証だったか。せっかくだから欲しいな。まだリングが用意出来てないから、それがあれば有難い。」
「では、こちらをご覧ください。」
シスターは、若い眼鏡のシスターを呼び寄せる。
元気の良い眼鏡シスターは薄っぺらい箱を、皆に見えるように開いた。
「あんまり種類が無くてスミマセンっ。王都なら色も選べるんですけどねっ。」
「お選び頂いた物を加工致します。」
箱の中には、細長いプレートが幾つも並んでた。
種類が無いって言葉は謙遜じゃなかった。プレートは全部、茶色い。
選ぶ必要なんか無さそう、って思うだろう? 違うんだ。
茶色は茶色でも、どれもが他とは異なる茶色なんだ。
濃い・薄い・明るい・暗い・黄色っぽい・白っぽい・赤っぽい・黒っぽい……。
色以外の部分でも、透明感あるとか、ツヤツヤだとか、グラデ掛かってるとか。
茶色だけでこんなにあるって、逆に凄くないか?
「へぇ~、面白いな。それぞれ好きなのを選んだらいいぞ。」
妻達が寄り集まって箱の中を覗く。
その様子を微笑ましく見守りながら、オレは眼鏡シスターに声を掛けた。
「タグはいつ出来上がるんだ?」
「スミマセンっ、この時間の受付なので、お渡しは明後日になっちゃいますっ。」
「そうか、仕方ないな。」
「あ、スミマセン、それとっ。……そちらの方は妻の登録、出来ませんっ。」
「そうか……。………?」
一瞬、何を言われたか理解出来なかった。
聞こえた言葉が頭から抜け落ちちゃって。
「………えっ?」
ちょっと経ってから、意味が分かって。
オレはマヌケな声を出して、眼鏡シスターを振り返る。
眼鏡シスターが伸ばした手は真っ直ぐに、ルサーを示してた。
天守のシルシを見せた後でオレの国民登録も確認してるから、オレに二度手間を掛けさせる申し訳なさを感じてるんだろう。
伺いを立てるシスターは、恐る恐るって感じだった。
「あぁ、もちろん。」
なるべく気さくな感じに答えるオレ。
シスターはあからさまにホッとした様子で、本人確認の装置をオレに差し出した。
受け取って、小さな双眼鏡の筒っぽい形状をした部分を両目で覗き込む。
こんな小さな装置なのに、瞳孔の差異を認識して個人を判断する優れモノだ。
どんな原理かは分かんない。たぶん魔法技術的な物かな。
「確認出来ました。結構ですよ。」
数秒後に声を掛けられて、シスターに装置を返した。
これで手続きが済むって思ったのに、シスターが心配そうに口を開く。
「済みません、あの……念の為に確認させて頂きますが……。ここで手続きをされますと、天守様の国民登録場所に関わらず、ハーレムの所在地はこの町という事になってしまいますよ? ハーレムをノマルの町で設立する、という事で本当によろしいでしょうか?」
「もちろん、それでいい。」
「母国のリスタニアでなくてよろしいのですか? ……あ、あの、差し出がましくて済みません。ここはリスタニアから遠いので、何かと不便なのではないか、と思いまして。」
「あぁゴメン、気を遣わせちゃったかな。実はオレ、ちょっと前からノマルに住んでるんだ。変更手続きするの忘れてて……。」
あ~、オレの国民登録がリスタニアだからか~。そういうことか~。
なんでこんな、わざわざ遠い町に来て手続するのか……って疑問に思うよな。
「もしかして……結構時間が掛かってるのって、オレの登録場所が原因だった?」
「お待たせして本当に済みません。あの、上の方の判断で、必要だという事になりまして。勝手ではありますが職権で、一応、リスタニア王家に問い合わせをさせて頂きました。」
オレ達の長い待ち時間は、リスタニアからの返事を待ってる時間だったんだな。
この世界に電話が無い代わりに、たぶん魔法技術を使った電報みたいなのがある。
教会とか城とか、公共施設や裕福なトコにあるソレが、早く一般にも普及すればいいのに。そしたらオレも、家から養育所に電報を送って、自分の無事を知らせれたのにな。
リスタニア王家って聞いて、リオ、カシュ、そしてビリーも不思議そうだ。
ついなんとなく、ルサーと顔を見合わせるオレ。
オレの予想。
養育所の所長はリスタニア国の王子であるアレイスティだ。
つまり、あの養育所は国立、又は王家が運営してる。
そして、オレはそこで所長の手伝い……センセイをしてる。
だから、王家に問い合わせするのが通常の流れ。
……なんだよな? いいよな? 合ってる?
「ハーレムをノマルの町で設立する、という事でよろしいんですね?」
「もちろん。」
「ハーレムタグはどうなさいます?」
「タグって、確か……教会が出してくれる、ハーレム所属の証だったか。せっかくだから欲しいな。まだリングが用意出来てないから、それがあれば有難い。」
「では、こちらをご覧ください。」
シスターは、若い眼鏡のシスターを呼び寄せる。
元気の良い眼鏡シスターは薄っぺらい箱を、皆に見えるように開いた。
「あんまり種類が無くてスミマセンっ。王都なら色も選べるんですけどねっ。」
「お選び頂いた物を加工致します。」
箱の中には、細長いプレートが幾つも並んでた。
種類が無いって言葉は謙遜じゃなかった。プレートは全部、茶色い。
選ぶ必要なんか無さそう、って思うだろう? 違うんだ。
茶色は茶色でも、どれもが他とは異なる茶色なんだ。
濃い・薄い・明るい・暗い・黄色っぽい・白っぽい・赤っぽい・黒っぽい……。
色以外の部分でも、透明感あるとか、ツヤツヤだとか、グラデ掛かってるとか。
茶色だけでこんなにあるって、逆に凄くないか?
「へぇ~、面白いな。それぞれ好きなのを選んだらいいぞ。」
妻達が寄り集まって箱の中を覗く。
その様子を微笑ましく見守りながら、オレは眼鏡シスターに声を掛けた。
「タグはいつ出来上がるんだ?」
「スミマセンっ、この時間の受付なので、お渡しは明後日になっちゃいますっ。」
「そうか、仕方ないな。」
「あ、スミマセン、それとっ。……そちらの方は妻の登録、出来ませんっ。」
「そうか……。………?」
一瞬、何を言われたか理解出来なかった。
聞こえた言葉が頭から抜け落ちちゃって。
「………えっ?」
ちょっと経ってから、意味が分かって。
オレはマヌケな声を出して、眼鏡シスターを振り返る。
眼鏡シスターが伸ばした手は真っ直ぐに、ルサーを示してた。
0
お気に入りに追加
674
あなたにおすすめの小説
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。
伝説のドラゴン 世界をかけた戦い~記憶がない俺が天龍から授かった魔法で無双になる?!~
杏子
ファンタジー
俺はふと目が覚めると、崖の下に寝転がっていた。 頭が割れるように痛い。
『いって~······あれ?』
声が出ない?!!
『それよりも······俺は·········誰?』
記憶がなかった。
振り返るとレインボードラゴン〈天龍〉が俺の下敷きになっていたようで気を失っている。
『こいつのおかげで助かったのか?』
レインボードラゴンにレイと名付け、狼の霊獣フェンリルも仲間になり、旅をする。
俺が話せないのは誰かが魔法をかけたせいなのがわかった。 記憶は?
何も分からないまま、なぜか魔法が使えるようになり、色々な仲間が増えて、最強(無双)な魔法使いへと成長し、世界を救う物語です。
晴れの日は嫌い。
うさぎのカメラ
BL
有名名門進学校に通う美少年一年生笹倉 叶が初めて興味を持ったのは、三年生の『杉原 俊』先輩でした。
叶はトラウマを隠し持っているが、杉原先輩はどうやら知っている様子で。
お互いを利用した関係が始まる?
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる