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第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~
オレが天守になった……けど
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ゆっくりめにティータイムを楽しんでたら、あっという間に午後二時を過ぎて、リッカとユーグは帰って行った。
欲を言えば、教会でハーレムの手続きをするのを二人にも見せたかったんだけど、まだ二人とも妻の登録が出来ないんだから見ても仕方ないか。
午後三時になる少し前に、貸し馬車が届いた。
リオを迎えに行く為の馬車だ。
御者は頼まないで、馬車だけ借りてる。
オレが御者台に上がったら、ルサーも隣に乗って来た。
「ルサー、オレ一人で大丈夫だぞ?」
「分かってるが、よ……。リオを迎えに行ったら、こうやって並んで乗るワケにも行かねぇだろ。だから……。」
行きだけでも一緒に並びたい、って。
可愛いだろ、ルサー、オレの妻、可愛すぎだろ、異論は認めないぞ。
ルサーの可愛さに悶絶しつつ、病院へ馬車を走らせる。
時間帯の所為か、通りの行き交いがそれほど多くなくて助かった。
到着した病院で看護師さんから、くれぐれもリオを走らせないようにって注意を受けて、無事にリオと合流。
腕に掴まらせながら馬車へ誘導するオレに、照れたような感じでリオが笑った。
「馬車で迎えに来てくれるなんて王子様みたいだな、イグゥ。」
「っぶ……ふ、へへっ。」
すっごい気色悪い笑い方しちゃったぞ。
王子様みたいってのは、フィロウみたいな人を指して言う評価だからっ。ちょっと外見の陽キャ感が強めなのを差し引けばビリーも、かな。
オレみたいなモブ・フレーバー満載な王子様って可哀想だろっ。
病院の次に向かうのは、兵士の詰め所だ。
時間休を取ってくれてるカシュと、それに合わせて待機してるビリーを回収しに。
家に来て貰うとか、教会で合流するって話だったんだけど、どうせ馬車を借りるなら一緒に乗ればいいじゃないかって結論になったんだ。
「うっわぁ~、馬車でお迎えっ。なぁんか緊張して来たぁ~。」
「いよいよ…だね……、イグゥ……俺、も……緊張して…る。」
ドキドキ。を体現してる表情のカシュとビリー。
ビリーはカシュを馬車にエスコートする。
ほ~ら、格好良い。サマになってる。
動きがあんまり仰々しくなくてスマートで、差し出した手の安心感も凄い。オレの、力強い頷きとは雲泥の差だ。
オレがいる御者台に来たビリー。
御者役を代わってくれようとしたのを断るオレ。
だってオレも、ちょっとは『出来る面』を見せたかったから。
セコくたって構わない。
妻になる四人が馬車の中で何を話してるのか。
気になりつつ、午後四時ちょい。オレ達は教会に到着した。
あぁ~、本当に、オレもドキドキして来たぞ……。
* * *
天守になる為の手続き自体はスムーズだった。
まずは教会の人に、オレの『シルシ』を見せる。
もちろんアレの裏筋に浮かぶヤツじゃなくて、両瞳に浮かぶ方を。
フィロウから貰ったシルシだけど別にいいよな? 流石にアッチはちょっと……。
見せられる方もきっと苦痛だろうし、お互いの精神衛生上、この方がいいハズ。
シルシが本物かどうかのチェックが終わったら、オレの国民登録を確認される。
これについてはビリーに感謝だ。
ビリーとの会話で養育所を思い出してて良かった。
どこの国・町に登録してるかが分かんないと、名前だけじゃ確認出来なかったから。
確認作業の後、オレが天守として認定されるまでの待ち時間も短かった。
たぶん、天守様の機嫌を損ねないようにだろう。
天守のシルシって証拠がシッカリしてるから、って点も大きそうだ。
サクサクっと天守になったら。
後は妻を登録して、手続きが完了する……予定。
なんだけど……。
妻達の国民登録の確認に時間が掛かってるっぽい。
メチャメチャ待たされてる。
「ふぅぅ……。意外と時間、掛かるんだな。」
緊張の糸がほつれたオレ。
しびれを切らして、つい零した。
「ホント。おっそいねぇ~。」
「……そうだな。人数いるから、それだけ手間が掛かってンだろ。」
「流石に六時は過ぎないよな? おれ、外泊許可貰ってないんだけど。」
皆もいい加減、待ち疲れてるだろう。何となくグッタリしてる感じだ。
ここからは見れない裏の方でどんな手続きがあって、何に時間を取られてるのかが分かんないから、余計に。
ただ待つしかないって状況は、精神的にシンドイ。
椅子から立ち上がったり座ったりを繰り返してたら、ビリーが近寄って来た。
ちょっと表情が暗めだ。
「もしか…して……、俺の所為、かも……。」
「ビリーの? 何かあるのか?」
「登録、ここじゃ…ない、から……。」
「同じ国内だろう? 気にしなくていいぞ、ビリー。」
ションボリしてるビリーの国民登録は王都だ。
兵士を辞めてから、登録を王都に移して、それっきりだったらしい。
ビリーにも言った通り、同じ国内なんだから、大きな手間が掛かるとは思えない。
それを言うなら、オレの国民登録はリスタニア国だ。国内ですらないのに、オレの確認は早かったじゃないか。
単純に、この町では久々の手続きだから手間取ってるだけじゃないかって思う。
リオが病院に帰らなきゃいけない門限があるから、出来れば早くして欲しい……って考えちゃうのはオレ、苛立つ一歩手前だな。気を付けよう。
かなり待たされて。手続きをしてくれてたシスターがようやく姿を現した。
困った顔で走って来る姿を見て、オレは何となく嫌な予感。
「あ、あの……済みませんが……。」
シスターの第一声を聞いて、更に嫌な予感がした。
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