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第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~

リスタニア国の方言がスラング満載だって話

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エステードさんが知らなかったツンデレって言葉を、ルサーが知ってる。
だけど、ルサーが言った「ツンデレ同士」がオレの思ってる通りなのか。

……確かめてみよう。


「る、ルサーって……、その、ツンデレ…」
「俺は別にツンデレじゃねぇだろう?」

間髪入れずに答えたルサーはちょっと不満顔だ。
自分がツンデレって言われるのがイヤっぽい。


「そりゃまぁ……お前の名前が分かるまでは、その……意地を張ってたトコはあったがよ。……ツンデレってほどじゃ、ねぇだろ。」

どうやらルサーの『ツンデレ』と、オレの『ツンデレ』は一致してるっぽい。
細かな部分はともかく、概ねは間違い無さそうだ。

そっか、なぁんだ。この世界にもツンデレはあったんだな。
たまたまエステードさんが知らなかっただけかぁ。


「イグザ、さっきからどうした?」
「あぁうん、大したことじゃないんだ。エステードさんがさ、ツンデレって言葉を知らなかったみたいなんだ。ツンデレとは何ですか、って聞かれたんだけど、説明する言葉に困ったぞ。」
「まっ、エステードが知らなくても無理は無ぇ。他国の方言だからな。」
「だよなぁ、ツンデレは……。……えっ?」

デジャヴな感じでルサーを見るオレ。
ルサーもまた、デジャヴな感じで不思議そうにオレを見た。


「えっ、ツンデレって……方言だったのかっ? どこのっ?」
「何処って、リスタニアに決まってンだろ。知らねぇのか?」

え、待ってくれ。
ツンデレがリスタニアの方言ってことは、もしや……!


「じゃ、じゃあ……ヤンデレはっ? クーデレはっ?」
「それも方言だ。ここら辺じゃ誰も使ってねぇだろ。」
「そ…そっか、方言だったのか。てっきり……大陸共通語だと思ってた。」

ヤンデレも居た! クーデレも居た! ただし、リスタニア国にだけ!
なんでだよ。オラオラ系とか俺様系とか、そんな言葉は普通にあるのに、なんで『○○デレ』だけ方言なんだよ。
もしかしたらメリクルは、共通語だと思ってたんだろうか。
でもなぁ……オレと顔を見合わせたメリクルの様子は、いかにも実は転生者っぽかったんだけどなぁ。


「そうか。ちなみに俺ァ、エステードはクーデレじゃねぇかと思ってる。」
「あぁ確かに。エステードさん、クーデレ説もアリだな。」
「ところで、イグザはリスタニアの方言を良く知ってるようだな。……俺は教えた覚えが無いんだが。何処で教わったんだ?」
「あ……。」

ルサーから聞かれた今、この瞬間。
オレは、オレが暮らしてた養育所について。ビリーに聞いて分かったり、思い出したことを、ルサーに何も言ってなかった……って気付いた。
だって色々あって忘れてたんだよ、ルサーに話すのを。

これはもう、しょうがないよな?
今から話せばいいじゃないか、よし。
せっかくだからこの機会に、不自然じゃない程度に話しとこうか。


「そうだ、ゴメン。ルサーに言うの、すっかり忘れてた。こないだ、ビリー達と顔合わせしただろ。その前……詰め所の外で待ってる間に、ビリーと喋ってて思い出したんだけどさ。オレが暮らしてた養育所って、リスタニア国の端っこにあったんだ。」
「は……? ……お前、が?」

かなり驚いた様子のルサー。
そんなまさか、って顔に書いてるようだ。

うんうん、分かるぞ、ルサー。オレも同じだった。
だってノマルの町とはメチャクチャ遠いもんな。
でもソコの問題を考えるのはやめよう。
ルサーをたぶん、更に驚かせる情報がこの後にあるんだ。


「それでさ、養育所では色々な先生が居て、読み書きや計算から武器の扱い方とかも教わったりしてた。まだ、センセイ全員の名前は思い出してないけど、所長の名前は思い出したんだ。えっと……あ、……アレイスティ。」
「っあ……!」

一瞬、大声を出しそうになったルサーは口元を手で押さえた。
見開いた目がオレを凝視してる。

予想はしてたけど……本当に、ルサーはアレイスティって名前を知ってるんだな。
本当に所長はルサーの。ルサージュのお兄さん、なんだよな?


「皆からは、所長とか、アレス所長って呼ばれてた。でも、たまぁ~にセンセイが所長のこと、殿下って……。」
「アレイスティが…養育所の、所長………。」
「げ……元気そう、だったぞ。……その、……ハーレムでの立場がどうなってるのかは、分かんないけど。少なくとも、養育所があったのは宮殿内じゃなかったし、所長はほぼ養育所に居た。……元気だった、……うん。」
「……そう、か。」

絞り出すように呟いたルサーは、懐かしいような、痛がるような表情だ。
たぶんオレは想像するしかないような複雑な感情なんだろう。
ツラい気持ち、までは行かなくても。今ここでオレに、所長のことをアレコレ聞こうと出来ないくらいには。
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