上 下
318 / 364
第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~

お前がそれでいいなら俺もそれでいい $ルサー$

しおりを挟む
 
   *   *   *






仕事上がり、イグザと外でメシを食って帰る事にした。
カシュとビリー……呼び方は若干迷ったがイグザが妻にしたがってる幼馴染みの『ビリー』の方で、俺も呼ぶ事にした……も一緒に、四人でな。

残念ながらエステードは今日、実家に行く予定らしい。
弟と話をするンだとさ。
アイツの弟がハーレム入りする話だから、早いに越した事は無ぇ。
とは言え……今日はエステード、かなり面白くねぇ事があったばかりだからな。
変に荒れたりしなきゃいいんだが。




念の為、個室のある店を選んだ。
イグザのハーレムの話をするってのは決まった事だし、話の流れによっちゃそのまま『顔合わせ』まで済ませる事になるかも知れねぇ。
同僚と飲みに行くようなオープンな場所じゃマズいだろ。


「……この四人で、改めてちゃんと話したくって、来て貰ったんだけど……さ。」

適当に料理を注文した後、飲み物が届いたのを頃合いに。
俺に促されたイグザが緊張した面持ちで切り出した。
歓迎会で自己紹介させられる新入りかってぐらいの緊張っぷりに笑いながら、俺は努めてさり気なく三人の様子を窺ってた。
今日ここで話さなきゃならねぇのは、ビリーのハーレム入りについて、だからな。


ビリー。イグザと同じ養育所に居た幼馴染み。
ウェーブがかった明るい髪に整った顔立ちをした、かなりの色男だ。
イグザに惚れてて、イグザもビリーを可愛いと思い、その気持ちを受け入れてる。

だが現在、ビリーはカシュと恋人でもある。
休憩室でカシュが泣いてる姿を見た途端、すぐに駆け出して慰めてンのを見る限り、大事にしてそうだった。
跪いて、手を繋いで。エステードの話を聞いてる最中もずっとそうしてたな。
それなり以上に二人は、恋人同士として仲良くやってんだろう。



「俺、イグゥの……妻、に……。……なりたい。」
「……! そ、そっ、そうか、ありがと、ビリーっ!」

立ち上がったイグザが嬉しそうにビリーの手を握った。
ビリーも嬉しそうに微笑んでる。

ここまでは想定通り。順調だ。
惚れてる男から妻になるよう誘われて、断るなんぞ有り得んからな。
……って、こんな発想は王都から来た連中と同じじゃねぇか。その内に「イグザに抱かれて嫌なワケがねぇ」とか言い出さねぇよう、気を付けねぇと。


「カシュ、の事なんだ…けど……。」
「そう、それっ。カシュは、どういう風にしたいんだ?」

そこは結構デカ目な問題だ。
ビリーがハーレムに入るんなら、カシュとの恋人関係をどうするか、ちゃんと考えなきゃならねぇぞ。
妻がハーレム外にオトコを作ってる、ってのは天守の評判に傷を付けるからな。
一般的な事を言えば、妻になる前に今のオトコは切る、それが出来ねぇなら妻にしない。そういうモンだ。
カシュとビリーは……いや、イグザもか。その辺をどう考えてンだか。

対応策らしきモンは一応、あるにはあるんだが……。
イグザにもカシュにも妥協させるような内容だ。俺から提案すべき事じゃねぇな。
まぁ、困り果てるような展開になるようだったら、知らせてやればいいか。


ビリーが言うには、イグザもカシュも好きで、ドッチかだけにするってのは考えてないらしい。
その言い分にカシュが頷いてる所を見ると、そこはアイツも納得してンだろう。



「だから、ね……イグゥ。……お願いなん、だけど…」
「あぁ、言ってくれ。」
「…俺と、カシュ……、二人…とも……。……して。」

頷きながら聞いてたイグザは、ビリーの言葉で明らかに動きを止めた。
一瞬硬直し、口元がピクリとした所で、慌てて自分の両頬をパシパシ叩き出す。
確実に妙な想像をしたに違いねぇ。
気にしねぇ風でビリーが話を進めたから、叱ってやる事はしなかったがな。


「つ、……妻同士が……交流、するんじゃ……なくて。……えっと……、恋人…同士の、俺とカシュを……妻に、して……欲しい……。」
「んん? オレには違いが良く分かんないんだけど…」

ビリーが言ったのは、カシュも一緒に妻にしてくれ、って話だ。
俺が知ってる対応策と同じ内容だった。恋人同士の二人を纏めて妻にして、『天守の寛容性』をアピールする方向にすり替える方法だな。
だからイグザが理解しにくい部分については、俺がちょろっと補足してやれた。
こんな事でも、役に立てたなら嬉しいってモンだ。



説明を聞いたイグザはすぐに答えを出した。
カシュも妻に迎える、と。
予定もしてなかっただろう、他の妻の恋人を、だ。


「ルサー、いいか? もう一人、妻が増えるんだけど。」
「イグザがそれでいいってンなら、俺も別に構わねぇ。……本当にいいのか? 自分の妻に、他に男がいるってので。」
「あぁ分かってる。でもオレ、ビリーにカシュを諦めてツライ思いをして欲しくないし、カシュも泣かせたくないんだ。……変な気持ちだなって、自分でも分かってるぞ。」

イグザが俺を窺うように確認して来た。
俺を本妻にする予定だからだろう。
同意してやると、ホッとした様子を見せる。


天守が新しく妻を迎える前に、本妻や既存の妻に相談する事もある、とは聞く。
だがよっぽどの場合……それこそ、入宮させるのにかなり問題がある人物でもない限り、妻達が反対出来るワケが無ぇだろ。
しかも今回の場合、相手はカシュだ。
悪いヤツじゃねぇのは分かってるし、俺とも、他の妻とも揉めたりもしねぇだろう。

イグザがそれでいいんなら、俺は反対する気は無い。
イグザが俺を愛してくれてるなら……俺も、イグザが望んだ通りでいい。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

四大精霊の愛し子はシナリオクラッシャー

ノルねこ
BL
ここはとある異世界ファンタジー世界を舞台にした、バトルあり、ギャルゲー・乙女ゲー要素ありのRPG「最果てに咲くサフィニア」、通称『三さ』もしくは『サン=サーンス』と呼ばれる世界。 その世界に生を受けた辺境伯の嫡男ルーク・ファルシオンは転生者ーーーではない。 そう、ルークは攻略対象者でもなく、隠しキャラでもなく、モブですらなかった。 ゲームに登場しているのかすらもあやふやな存在のルークだが、なぜか生まれた時から四大精霊(火のサラマンダー、風のシルフ、水のウンディーネ、地のノーム)に懐かれており、精霊の力を借りて辺境領にある魔獣が棲む常闇の森で子供の頃から戦ってきたため、その優しげな相貌に似合わず脳筋に育っていた。 十五歳になり、王都にある王立学園に入るため侍従とともに出向いたルークはなぜか行く先々で無自覚に登場人物たちに執着され、その結果、本来攻略対象者が行うはずのもろもろの事件に巻き込まれ、ゲームのシナリオを崩壊させていく。

断罪だとか求婚だとかって、勝手に振り回してくれちゃってるけど。僕はただただ猫を撫でたい。

たまとら
BL
じいちゃんに育てられたリラク。 なんか、ちょっと違うみたいだ。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...