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第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~
エステードがアレやコレやの話・6 $ルサー$
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あの一件が被害か被害じゃないかって問題は、事件が起きた時に散々っぱら言い争った話だった。
言い争ったのは主に、王都から来たネコ兵士と、ここにいる面子だ。……ただし、団長は除くがな。
かなり腹立たしい遣り取りをした記憶がある。
* * * * * *
およそ一年近く前。
赤ん坊の『探索隊』を補強するって名目で王都から派遣されて来た兵士の中に、タチのグループがいた。
派遣兵士はネコも含めてそれなりの人数だったが、タチ兵士連中は探索隊に参加したり、しなかったりで、ハッキリ言って戦力外だった。
気紛れで詰め所に来たと思ったら、兵士や一般人の身体を触って揶揄ったり。
俺でさえ何回か触られてた。もちろん、俺以外にもっと触られてる同僚は大勢いる。
ムカ付いたし気持ち悪かったが、その場で抵抗するだけで、特に騒ぎはしなかった。
シッカリ嫌がって文句を言ってやったら、ヤツらは不服そうな様子を見せながらも深追いして来なかったからだ。
他のネコへの態度を見る限り、全く懲りずに触ってるようだったが。
俺は、タチって存在は皆、そんなモンだと思ってた。
そんなある日。
タチ兵士連中に、夜勤中のエステードが襲われた。
夜勤の人数は日によって違うものの、少なくとも通常、七~八人はいる。
いつ発生するかも分からねぇ住民の困り事に対応する為に、だ。
あの夜ももちろん、同じようにいた。
だって~のに、エステードが襲われた時は詰め所に三人しかいなかった。
娼館エリアでタチ娼夫二人を含む、複数人の喧嘩騒ぎが起きたって報せが入ったモンだから、兵士四人が現場へ直行。もう一人は、本部か自宅に居るハズの団長を呼びに行ってたからだ。
詰め所に残った内の一人がカシュだった。
三人になってしばらくしてから、トイレに行ったエステードがなかなか戻って来ねぇのに気付いたカシュが様子を見に行ったら、すぐそばの部屋で襲われてるエステードを見たんだと。
助けたかったんだが自分も襲われそうになり、しかも頬を殴られ。
エステードが「逃げなさい!」って言うままに駆け出したカシュは、その足で補佐に助けを求めた。
タチ兵士連中の所業に苛立ってた補佐がその日、詰め所の近くにある酒場で飲んでるのを知ってたからだ。
たまたま俺も、他の同僚二人も、補佐に誘われて一緒に飲んでた。
そこにカシュが駆け込んで、一緒に詰め所へ向かい。……現場を見た。
部屋にはタチの匂いと、攻撃性フェロモンが充満してた。
すげぇ申し訳無いんだが……俺はその場で、殆ど役に立ってねぇ。
駆け付けた癖に現場を見た途端、過去の、ハーレム宮殿での出来事を思い出した所為で。一瞬で身体が竦んだ。
エステードに群がってるタチ兵士を補佐が蹴散らしてから、ようやく動けるようになって捕縛を手伝えたぐらいだった。
ヤツらをとりあえず勾留し、エステードは被害届を出した。
タチ兵士が身柄を拘束された事は、だいぶ衝撃的だったらしい。
すぐに王都から何人もネコ兵士がやって来た。文句を言いに、だ。
アッチのネコは「エステードに同意があった」、「必死で抵抗していない」、「タチから求められるのはネコとして光栄な事」、「楽しんだだろうから被害ではない」とかナントカ。もっと口汚い言葉でな。
コッチだって黙ってねぇ。
至極冷静に、「嫌だと言った」、「痛いだけだった」、「掴まれた手を振り解こうとしたら殴られた」、「寄ってたかって押さえ付けてた」、「止めるように言ったが止めなかった」、「同意の無い行為は普通に犯罪だ」……確か、そんな感じの事を言ったハズだ。
すったもんだ言い争ったが結局、タチ兵士連中の身柄は王都に移されちまった。
実は後から分かったんだが、夜勤で一緒だった同僚も手を出されてたらしい。
ソイツは被害届を出さなかった。
団長から問われるまで被害を誰にも言わなかった。
タチに強姦された話なんぞ、ネコは誰も同情しないどころか、下手したら『自分の魅力アピール』が鼻について総スカンを喰らうだけだ……って判断したから、だそうだ。
その同僚は、数ヶ月前まで王都に住んでた奴だった。
タチに抱かれた。その事実が全てで、ネコが喜んだかどうかは無関係。
王都じゃそんな考え方が割と蔓延ってるらしい。
ノマルの町なら、ちょっと考えられねぇ。
こんなに感覚が違うもんかと、かなり驚いたもんだ。
感覚が違うと言やぁ、タチ兵士も大概だった。
他の犯罪者ともまるで違ってた。
やらかした行動をちょっとでも誤魔化そうともしなかった。
ヤツらは王都に戻るまで、最後までオカシかった。
エステードに暴力を振るった事も、嫌がられた事も否定しなかった。
殴ったのはエステードが「素直に強請らなかったのが悪い」、嫌がられたが「抱いてやったのに文句を言うな」って主張だった。
嫌がる相手を殴って犯すのは、普通に犯罪なんだが? 大丈夫か?
……あぁそうか。
悪い事だと微塵も思ってねぇから、逃げたカシュを口止めする為に追い掛ける事もしねぇで、その場で平然と強姦を続けてたってワケだ。
エステードが王都に呼び付けられたのは、事件から三か月近くも経ってからだった。
王都兵士団の詰め所で事情聴取されたらしいんだが、やっぱりと言うべきか、カタチだけのパフォーマンスみてぇなモンだったらしい。
事情聴取の時期が遅過ぎな時点で察しろ、って事だろな。
タチ兵士連中への処罰が結局どうなったのかは、コッチの兵士団幹部にも、エステードを始めとした被害者にも知らされてねぇ。
辛うじて団長の所にあったのは、『組織外で起こした兵士同士の揉め事として、適切な処分を検討する』って話だけだった。
* * * * * *
言い争ったのは主に、王都から来たネコ兵士と、ここにいる面子だ。……ただし、団長は除くがな。
かなり腹立たしい遣り取りをした記憶がある。
* * * * * *
およそ一年近く前。
赤ん坊の『探索隊』を補強するって名目で王都から派遣されて来た兵士の中に、タチのグループがいた。
派遣兵士はネコも含めてそれなりの人数だったが、タチ兵士連中は探索隊に参加したり、しなかったりで、ハッキリ言って戦力外だった。
気紛れで詰め所に来たと思ったら、兵士や一般人の身体を触って揶揄ったり。
俺でさえ何回か触られてた。もちろん、俺以外にもっと触られてる同僚は大勢いる。
ムカ付いたし気持ち悪かったが、その場で抵抗するだけで、特に騒ぎはしなかった。
シッカリ嫌がって文句を言ってやったら、ヤツらは不服そうな様子を見せながらも深追いして来なかったからだ。
他のネコへの態度を見る限り、全く懲りずに触ってるようだったが。
俺は、タチって存在は皆、そんなモンだと思ってた。
そんなある日。
タチ兵士連中に、夜勤中のエステードが襲われた。
夜勤の人数は日によって違うものの、少なくとも通常、七~八人はいる。
いつ発生するかも分からねぇ住民の困り事に対応する為に、だ。
あの夜ももちろん、同じようにいた。
だって~のに、エステードが襲われた時は詰め所に三人しかいなかった。
娼館エリアでタチ娼夫二人を含む、複数人の喧嘩騒ぎが起きたって報せが入ったモンだから、兵士四人が現場へ直行。もう一人は、本部か自宅に居るハズの団長を呼びに行ってたからだ。
詰め所に残った内の一人がカシュだった。
三人になってしばらくしてから、トイレに行ったエステードがなかなか戻って来ねぇのに気付いたカシュが様子を見に行ったら、すぐそばの部屋で襲われてるエステードを見たんだと。
助けたかったんだが自分も襲われそうになり、しかも頬を殴られ。
エステードが「逃げなさい!」って言うままに駆け出したカシュは、その足で補佐に助けを求めた。
タチ兵士連中の所業に苛立ってた補佐がその日、詰め所の近くにある酒場で飲んでるのを知ってたからだ。
たまたま俺も、他の同僚二人も、補佐に誘われて一緒に飲んでた。
そこにカシュが駆け込んで、一緒に詰め所へ向かい。……現場を見た。
部屋にはタチの匂いと、攻撃性フェロモンが充満してた。
すげぇ申し訳無いんだが……俺はその場で、殆ど役に立ってねぇ。
駆け付けた癖に現場を見た途端、過去の、ハーレム宮殿での出来事を思い出した所為で。一瞬で身体が竦んだ。
エステードに群がってるタチ兵士を補佐が蹴散らしてから、ようやく動けるようになって捕縛を手伝えたぐらいだった。
ヤツらをとりあえず勾留し、エステードは被害届を出した。
タチ兵士が身柄を拘束された事は、だいぶ衝撃的だったらしい。
すぐに王都から何人もネコ兵士がやって来た。文句を言いに、だ。
アッチのネコは「エステードに同意があった」、「必死で抵抗していない」、「タチから求められるのはネコとして光栄な事」、「楽しんだだろうから被害ではない」とかナントカ。もっと口汚い言葉でな。
コッチだって黙ってねぇ。
至極冷静に、「嫌だと言った」、「痛いだけだった」、「掴まれた手を振り解こうとしたら殴られた」、「寄ってたかって押さえ付けてた」、「止めるように言ったが止めなかった」、「同意の無い行為は普通に犯罪だ」……確か、そんな感じの事を言ったハズだ。
すったもんだ言い争ったが結局、タチ兵士連中の身柄は王都に移されちまった。
実は後から分かったんだが、夜勤で一緒だった同僚も手を出されてたらしい。
ソイツは被害届を出さなかった。
団長から問われるまで被害を誰にも言わなかった。
タチに強姦された話なんぞ、ネコは誰も同情しないどころか、下手したら『自分の魅力アピール』が鼻について総スカンを喰らうだけだ……って判断したから、だそうだ。
その同僚は、数ヶ月前まで王都に住んでた奴だった。
タチに抱かれた。その事実が全てで、ネコが喜んだかどうかは無関係。
王都じゃそんな考え方が割と蔓延ってるらしい。
ノマルの町なら、ちょっと考えられねぇ。
こんなに感覚が違うもんかと、かなり驚いたもんだ。
感覚が違うと言やぁ、タチ兵士も大概だった。
他の犯罪者ともまるで違ってた。
やらかした行動をちょっとでも誤魔化そうともしなかった。
ヤツらは王都に戻るまで、最後までオカシかった。
エステードに暴力を振るった事も、嫌がられた事も否定しなかった。
殴ったのはエステードが「素直に強請らなかったのが悪い」、嫌がられたが「抱いてやったのに文句を言うな」って主張だった。
嫌がる相手を殴って犯すのは、普通に犯罪なんだが? 大丈夫か?
……あぁそうか。
悪い事だと微塵も思ってねぇから、逃げたカシュを口止めする為に追い掛ける事もしねぇで、その場で平然と強姦を続けてたってワケだ。
エステードが王都に呼び付けられたのは、事件から三か月近くも経ってからだった。
王都兵士団の詰め所で事情聴取されたらしいんだが、やっぱりと言うべきか、カタチだけのパフォーマンスみてぇなモンだったらしい。
事情聴取の時期が遅過ぎな時点で察しろ、って事だろな。
タチ兵士連中への処罰が結局どうなったのかは、コッチの兵士団幹部にも、エステードを始めとした被害者にも知らされてねぇ。
辛うじて団長の所にあったのは、『組織外で起こした兵士同士の揉め事として、適切な処分を検討する』って話だけだった。
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