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第六章 ~ゲームと違ってオレのハーレムは自動生成されない~

恋人が妻になる祈念の記念

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ルサーと晩御飯を食べて。
それから暖かい紅茶を淹れて。
また一緒に長ソファに腰掛けて寛ぐ。
今度、明るい内に、コーヒーミルを買いに行こうって約束した。

こないださ、詰め所でルサーはコーヒーを飲んでただろ。オレにも淹れてくれたし。
それを思い出して、そう言えば家では飲んでるの見たこと無いし、コーヒーを淹れる器具も無いな~って気付いてさ。聞いてみたら。
炊事が凄く苦手で掃除もちょっと苦手なルサーは、コーヒー豆を挽いたり、アレやコレやを用意したり片付けたりってのが面倒だったんだ、って。
だから今度、一人用のコーヒーミルを二台買って来て、一緒に豆を挽くんだ。


いよいよ明日はルサーがオレの『妻』になる。
その前日の、穏やかな時間を……



……なんて。
オレが大人しく、過ごせるワケもなくって。



えっと、……あのさ、ゴメン。普通に会話もしてたんだけどさ。
長ソファにくっ付いて座ってて、何となくイイ雰囲気になったらさ。
それにルサーだってさ、黙ってオレを見詰めたりするからさ。
そりゃもう、チューくらい……するだろ。
キスしたら、自然な流れで押し倒すだろ。



「んっ、ぅ……ふ、ぁ……。はぁっ、……っん。」

座面に横たわってるルサーの口から、悩ましい声が零れた。
割としつこく唇を貪ってたから、呼吸も乱れてる。
息継ぎしようとして、開いた唇の隙間から覗き見える赤い舌がエロい。
何回舐めてもやっぱり美味しそうに見えるから、オレはまたソレに吸い付いた。


「はっ、は…、んん~っ。」

ギュッと目を瞑ったルサーがオレの肩をバシバシ叩いた。
何かを伝えたそうで、名残惜しく思いながら顔を離すオレ。


「なぁルサー。抱きたい。……ダメ?」

お互いの鼻先がギリギリで触れ合わない程度に、近い距離で目を合わせて。
超ド直球でオレは聞いた。っていうか、強請った。
赤い顔したルサーが見つめ返してくれるだけでオレは興奮する。


「明日は大切な用事があるし、忙しくなるのも分かってる。でも……シたい。」
「寝不足でオレに、顔合わせをさせる気か? それに、ソファで、とか……。」
「日付がっ……日付が変わるまでに、するから。今日はいつも以上に気を付ける。もしオレが気付かなかったら、引っ叩いて教えてくれ。……なぁルサー。天守と妻になる前の、恋人同士のセックス……オレの部屋で、シよ?」

妙な粘り強さには自信があるオレ。必死でルサーにお願いする。の、巻き。
ルサーは、しょうがねぇな、って顔をして。オレの頬を両手で挟んだ。
撫でてくれるのかと思ったら、ムニ~ッて引き延ばされる。


「りゅ、……りゅ、ひゃあ?」
「……ッたく。ンな言い方、ドコで仕入れて来るんだか……。」

怒ってない顔でオレを睨みながら、ルサーは口の片端を引き上げる。
ニヤリ、って微笑み方が格好良くて色っぽい。
そう言うルサーの方こそ、そんな笑い方ってドコで練習してるんだよ。


たぶんマヌケな表情になって、ルサーに見惚れてるオレを尻目に。
ルサーは頬を摘んでた手を、オレの頭の後ろへ回して、抱えるように上体を起こす。


「まぁ、なんだ……。なるだろうな、とは……思ってたが。」
「ルサーの予想通りだぞ。」
「嬉しそうなツラ、しやがって……全く。ちゃ……ちゃんと加減、してくれよ?」
「あぁ分かった、出来るだけ、希望に沿えるよう頑張る。明日には響かせない。」

精一杯の努力をしよう、って決意するオレ。
ルサーは、あまり信用出来ないものを見る視線を向けて来たけど、頷いてくれた。


「それじゃあ、よ。時間もあんまり無ぇ事だし、シャ……ぅわっ!」
「そうだな移動しよう、すぐにベッド行こう。」

オレは過去最高レベルで速やかに、ルサーを抱え上げた。
凄く嬉しくて、ワクワクもドキドキも止まらない。




非常にスムーズに自室へと移動したオレは、出来る限り優しく、ルサーをオレのベッドに寝かせる。
なんか余裕がちっとも無くて、無さ過ぎてちょっとアレなんだけど。寝かせた瞬間から、オレの手はやたら素早い動きで、ルサーの衣服を剥ぎ取り出した。


「おい……? 俺はさっさとシャワーを浴びる、ってツモリだったんだが?」
「ルサーは帰って来てから浴びただろう? むしろオレがシャワー浴びてなくてゴメン。……だけど待てない。」

完全にルサーを裸にして。
オレは自分の衣服を乱雑に脱ぎ捨てた。

買って貰った物なのに申し訳ないんだけど、今は許してくれ。


改めてベッドに乗り上がったオレを、ルサーは眩しそうに見た。
ルサーが伸ばした手が、オレの胸から肩へ滑ってく。


「…いつまで、イグザは俺に……ガッ付いてくれンだろうなぁ。」
「ルサーがいいなら、ずっとだ。ルサーこそ……イヤに、ならないでくれ。」
「イグザに欲しがられて、嫌になったりなんぞ、しねぇさ。」
「……ルサぁ~っ!」
「うをぉっ!」


ルサーの許しを得た。
……って思ったオレが。

遠慮なくガッ付いちゃうのは仕方ないよな。
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