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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~
心の準備はしてたハズなんだけど
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自宅を訪ねる前にフィロウが気にしてた顔合わせの日程については、どうやら昨日の内にユーグから連絡が来てたらしい。ルサーと話をする日の日程調整について、手紙が届けられた。ってリッカは言ってた。
流石はユーグだ、仕事が早いぞ。
手紙には、他にも大事な話がある、って書かれてて。
それがオレのシルシだと思ったリッカは「ユーグは知ってたのね、狡いわよン」って呟いて、ちょっと頬を膨らませた。
それがリッカやユーグの現在の立場についてだって考え付いたオレだけど。それをこの場で言う気にはならなかった。
オレとしては、リッカもユーグも未だにイクシィズの妻扱いなのが腹立たしい。
書類上だけとは言え、声を荒げて文句を言いたくなるくらい頭に来る。
だけど、イクシィズのハーレムが休止状態になってるとか、オレがどうするツモリだとか。そんな話は、フィロウがいる場でする話じゃない。フィロウには関係無い話だから。
リッカだって不安にも思うだろ。オレだって、そんなリッカを一人残して家から出る、なんて出来なさそうだ。
だったらもっと、ちゃんと時間の取れる別な機会に話す方がいい。
だからオレは「その件は今度、ユーグも一緒に話そう」って、なるべく不機嫌な声にならないよう注意して言ったツモリだ。
急にオレが苛立つのは明らかにおかしくて、何かあるんじゃないかって勘ぐらせるから。
時間があんまり長くないってのもあるけど。
どうにか不自然じゃなく、伝えたかった部分は話せたように思うから。
オレとフィロウはリッカの家を後にした。
* * *
兵士の詰め所に到着したのは、ちょうど昼休みのド真ん中くらいの時間だった。
一階のロビー的な場所は今日もそれなりに賑わってる。
何人かの町民達に兵士がぞれぞれ対応してたり。順番待ちなのか、対応してる兵士が一旦離れてるだけなのか、それとも本当に兵士には用事が無いのか、町民同士で雑談中な人達も居て。
なんだか区役所や病院の待合室みたいな雰囲気だ。もちろん偏見だ。
「えぇっと、お兄さんは……っと。」
フィロウがキョロキョロする。
オレも見回してみたけど、エステードさんもルサーも姿が見えない。
むしろ、急に現れた王子様のようなフィロウの美貌に、兵士も町民も注目しちゃってるのがよく見える。
「居ないねぇ。……今日は日勤じゃないのかな?」
周囲のザワ付きが気にならないのか、一通り視線を巡らせたフィロウがオレに。何故かコッソリ耳打ちして来た。
ちょっとだけど、ザワ付きが一瞬、ドヨめきになった気がする。
王子様の隣にモブがいてスミマセン的な気分になるオレ。
だけどモブがいれば王子様が更に引き立つんだから許してくれ、みたいな気にもなるオレ。
でも更に本心を言えば、そんな王子様なフィロウはオレの妻になるんだけどな、ってイイ気になってるオレ。
そんなオレの肩を。
ガッシリ掴んだ素朴顔の兵士。
「あっ、お前、一昨日ぶりじゃん。」
あっ、コレ、いつもの流れだぞ。
「昼休みだからたぶん、裏でメシじゃね? 会ってきゃイイじゃん。」
なんでか分かんないけどこの人、いっつもオレを連行するよなぁ。
しかも、なんでか全然逆らえないんだよなぁ。逆らう気も無いけどさ。
これはもう様式美と言っていいかも。凄く自然な感じで『裏』へ連れてかれるオレ。
状況が良く分かってないフィロウが慌てて後ろから追って来る。
ハッキリと明確に『関係者以外立ち入り禁止』って書いてある扉を開ける素朴顔。
前にも言ってるけどこの人、本当に自由だな。
でも結構……いや、かなり有難い。今日も助かってるぞ。
「ルサーっ、彼氏来てるぞ~っ!」
休憩所というよりは、大きな会議室っぽい広い部屋。
そこに響き渡る素朴顔の声。
もう慣れたからか、今が休憩中だからか、しっかりプロポーズした後だからか。
ビックリして振り返ったルサーだけど、怒鳴り返したりせず、苦笑いを浮かべた。
こんなちょっとした変化が嬉しくて、オレの機嫌はグンッと上がる。
「あれぇ? エステード、いないなぁ~。……おぉ~い、エステードぉ~っ! エぇステ~ぇド~っ!」
「……なんですか、騒々しい。」
大声で呼び探す素朴顔。
連呼されて、姿が見えなかったエステードさんが更に奥から出て来た。
きっと給湯室的なのがあるんだろう。
エステードさんはちょっとムッとした表情をしてて、それを見たフィロウがゴクッと息を呑み込んだ。にわかに緊張したのが分かる。
自由人な素朴顔はエステードさんに向かって、「弟、来てるぞ」って言いながらフィロウを押し出した。
そうしておいて、自分はさっさとロビーの方へ戻ってく。
あっという間……って程でもないのに、止める隙は無かった。
「フィロウ……。こんな昼間から、わざわざ……どうしたんです?」
「ぁの、お兄さん……ちょっと、あの、大事な話をしたくて……。」
向かい合う長身の男二人。
歯切れの悪いフィロウの声に、エステードさんは眉をしかめる。
そのままフィロウの顔をジ~ッと見た後、オレの顔に目線だけを向けてから。またフィロウへ戻す。
ルサーはエステードさんと逆で。オレを見て、フィロウに視線を流した後、またオレを見た。
オレを見たエステードさんは、怒りの形相でも冷たい視線でも無かったのに。なんでか背筋にジリジリするものを感じた。
一緒に居るからたまたま見たとか、様子を窺うって感じじゃない。
視線の強さに。何となくだけど、オレは思う。
エステードさんは、たぶん……気付いてるんじゃないか? フィロウとオレとの関係も。フィロウが言いたい『大事な話』が何なのかも。
もしかしたら、ルサーも薄っすら気付いてるか?
「大事な話、ですか……。そうですか、では……座って話しましょう。」
「あの、今じゃなくて…」
「座りなさい、フィロウ。……イグゥ君もですよ?」
「 「 ……はい。」 」
ちっとも頼りにならなくてゴメンな、フィロウ。
でもこれ、言われた通りに座る、以外の選択肢はないだろ?
大人しく……いや、覚悟を決めて。決めたハズなんだから。
手ごわいと思うけど、頑張って説得しような。
流石はユーグだ、仕事が早いぞ。
手紙には、他にも大事な話がある、って書かれてて。
それがオレのシルシだと思ったリッカは「ユーグは知ってたのね、狡いわよン」って呟いて、ちょっと頬を膨らませた。
それがリッカやユーグの現在の立場についてだって考え付いたオレだけど。それをこの場で言う気にはならなかった。
オレとしては、リッカもユーグも未だにイクシィズの妻扱いなのが腹立たしい。
書類上だけとは言え、声を荒げて文句を言いたくなるくらい頭に来る。
だけど、イクシィズのハーレムが休止状態になってるとか、オレがどうするツモリだとか。そんな話は、フィロウがいる場でする話じゃない。フィロウには関係無い話だから。
リッカだって不安にも思うだろ。オレだって、そんなリッカを一人残して家から出る、なんて出来なさそうだ。
だったらもっと、ちゃんと時間の取れる別な機会に話す方がいい。
だからオレは「その件は今度、ユーグも一緒に話そう」って、なるべく不機嫌な声にならないよう注意して言ったツモリだ。
急にオレが苛立つのは明らかにおかしくて、何かあるんじゃないかって勘ぐらせるから。
時間があんまり長くないってのもあるけど。
どうにか不自然じゃなく、伝えたかった部分は話せたように思うから。
オレとフィロウはリッカの家を後にした。
* * *
兵士の詰め所に到着したのは、ちょうど昼休みのド真ん中くらいの時間だった。
一階のロビー的な場所は今日もそれなりに賑わってる。
何人かの町民達に兵士がぞれぞれ対応してたり。順番待ちなのか、対応してる兵士が一旦離れてるだけなのか、それとも本当に兵士には用事が無いのか、町民同士で雑談中な人達も居て。
なんだか区役所や病院の待合室みたいな雰囲気だ。もちろん偏見だ。
「えぇっと、お兄さんは……っと。」
フィロウがキョロキョロする。
オレも見回してみたけど、エステードさんもルサーも姿が見えない。
むしろ、急に現れた王子様のようなフィロウの美貌に、兵士も町民も注目しちゃってるのがよく見える。
「居ないねぇ。……今日は日勤じゃないのかな?」
周囲のザワ付きが気にならないのか、一通り視線を巡らせたフィロウがオレに。何故かコッソリ耳打ちして来た。
ちょっとだけど、ザワ付きが一瞬、ドヨめきになった気がする。
王子様の隣にモブがいてスミマセン的な気分になるオレ。
だけどモブがいれば王子様が更に引き立つんだから許してくれ、みたいな気にもなるオレ。
でも更に本心を言えば、そんな王子様なフィロウはオレの妻になるんだけどな、ってイイ気になってるオレ。
そんなオレの肩を。
ガッシリ掴んだ素朴顔の兵士。
「あっ、お前、一昨日ぶりじゃん。」
あっ、コレ、いつもの流れだぞ。
「昼休みだからたぶん、裏でメシじゃね? 会ってきゃイイじゃん。」
なんでか分かんないけどこの人、いっつもオレを連行するよなぁ。
しかも、なんでか全然逆らえないんだよなぁ。逆らう気も無いけどさ。
これはもう様式美と言っていいかも。凄く自然な感じで『裏』へ連れてかれるオレ。
状況が良く分かってないフィロウが慌てて後ろから追って来る。
ハッキリと明確に『関係者以外立ち入り禁止』って書いてある扉を開ける素朴顔。
前にも言ってるけどこの人、本当に自由だな。
でも結構……いや、かなり有難い。今日も助かってるぞ。
「ルサーっ、彼氏来てるぞ~っ!」
休憩所というよりは、大きな会議室っぽい広い部屋。
そこに響き渡る素朴顔の声。
もう慣れたからか、今が休憩中だからか、しっかりプロポーズした後だからか。
ビックリして振り返ったルサーだけど、怒鳴り返したりせず、苦笑いを浮かべた。
こんなちょっとした変化が嬉しくて、オレの機嫌はグンッと上がる。
「あれぇ? エステード、いないなぁ~。……おぉ~い、エステードぉ~っ! エぇステ~ぇド~っ!」
「……なんですか、騒々しい。」
大声で呼び探す素朴顔。
連呼されて、姿が見えなかったエステードさんが更に奥から出て来た。
きっと給湯室的なのがあるんだろう。
エステードさんはちょっとムッとした表情をしてて、それを見たフィロウがゴクッと息を呑み込んだ。にわかに緊張したのが分かる。
自由人な素朴顔はエステードさんに向かって、「弟、来てるぞ」って言いながらフィロウを押し出した。
そうしておいて、自分はさっさとロビーの方へ戻ってく。
あっという間……って程でもないのに、止める隙は無かった。
「フィロウ……。こんな昼間から、わざわざ……どうしたんです?」
「ぁの、お兄さん……ちょっと、あの、大事な話をしたくて……。」
向かい合う長身の男二人。
歯切れの悪いフィロウの声に、エステードさんは眉をしかめる。
そのままフィロウの顔をジ~ッと見た後、オレの顔に目線だけを向けてから。またフィロウへ戻す。
ルサーはエステードさんと逆で。オレを見て、フィロウに視線を流した後、またオレを見た。
オレを見たエステードさんは、怒りの形相でも冷たい視線でも無かったのに。なんでか背筋にジリジリするものを感じた。
一緒に居るからたまたま見たとか、様子を窺うって感じじゃない。
視線の強さに。何となくだけど、オレは思う。
エステードさんは、たぶん……気付いてるんじゃないか? フィロウとオレとの関係も。フィロウが言いたい『大事な話』が何なのかも。
もしかしたら、ルサーも薄っすら気付いてるか?
「大事な話、ですか……。そうですか、では……座って話しましょう。」
「あの、今じゃなくて…」
「座りなさい、フィロウ。……イグゥ君もですよ?」
「 「 ……はい。」 」
ちっとも頼りにならなくてゴメンな、フィロウ。
でもこれ、言われた通りに座る、以外の選択肢はないだろ?
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