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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~
フィロウに取り仕切って貰おうか
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「何となくだけど……あの人、乱暴なんだろうな~。……とか思ったり。」
「あぁ……。」
まだメリクルの話は続くらしい。
見た目的には確かにメリクルって、いかにもタチっぽくて相手に困ってなさそうで、ちょっと傲慢な態度とかも取ったりしそうだもんな。……これ、メリクルには内緒だぞ? もちろん、エステードさんにもだ。
「ボクは、イグゥが優しく、シテくれたから。……あんまり痛くなかったけど。」
「そ、そうでもないぞ?」
オレなりに気を遣ったのは。そう言い切れるのは初めの一回だけ。
二回目以降は結構、なんて言うか『優しさ控えめ』な感じになっちゃってたぞ?
「正直言って、ボクさ……。お兄さんの事、ちょっと妬んでたりしたんだよね。」
フィロウはオレから視線を外して進行方向の宙を見る。
ツラそうって言うよりは、ちょっとだけ悔やんでることがあるみたいな。何かを思い出すような表情だ。
「お兄さんは領主にもならないし。見た目……顔も身体も、羨ましいし。しかもその上、恋人もいるって……。」
「……そう、か。」
ヒトから見ればフィロウだって、羨ましがられる側の存在だと思う。
なのに、兄であるエステードさんに、そんな風に感じてたんだ。
初めて聞いたけど、ある意味、別に不思議じゃないか。人間って他人を羨ましがる生き物だからな。
フィロウから見れば、百八十センチのエステードさんの身長は高過ぎなくて丁度良いんだろう。
顔立ちも、甘い王子様フェイスのフィロウには、エステードさんの冷たく整った系統は魅力的なんだろう。
色気が全く無いように見えるトコも……げふっげふん。これは聞かなかったことにしてくれ。
「でも正直、今は……お兄さんがちょっと心配。あんな恋人で、大丈夫かなぁ。」
「うっ、……あぁ。」
話題がメリクルから変わったように思ったのは早計だったようだ。
またメリクルの話に戻って来た。
腕組みをして考える仕草をするフィロウ。
「考え直してみたら?って、お兄さんに言おうか……ちょっと考えちゃった。余計なお世話なんだろうけどさ。」
「なるほどなぁ。……ところでさ。メリクルって実は、オレの知り合いなんだ。」
「へぇ~、そうなん……。……えぇっ?」
相槌を打ち掛けて驚くフィロウ。
凄い勢いでコッチを見るから、オレは苦笑しながら頷いてみせた。
「え、そうなの? 知り合いって…」
「同じ養育所で育った、年上の幼馴染みなんだ。」
言おうかどうしようか迷ったけど言った。
メリクルがエステードさんと深い仲なんだから、いずれはフィロウにも分かるだろうし。いつか皆で顔を合わせる場面もあるかも知れない。
「イグゥ、あの人、大丈夫なの? なんか感情の起伏、って言うか……情緒もちょっと不安定気味だし?」
「あぁ、メリクルは……。まぁ、そんな感じなんだよ。」
「子供の頃から?」
「あ……いや……。」
確かに、再会した後のメリクルって、そういうトコあるよなぁ。エステードさんちで見たメリクル、怒ったり上機嫌になったり、目まぐるしかったっけ。
フィロウも見たんだなぁ。ビックリしたろうなぁ。
曖昧に笑みを浮かべるオレの様子に、何となく察してくれたフィロウは「そっか……」って呟いて。
その後は、詳しくツッコんで聞いて来なかった。
ホッとしながら窓の外に目をやると、娼館エリアの風景が流れてく。
見覚えのある建物、道の感じ。
「この辺って確か……。」
「イグゥ、どうかした?」
覗き込んで来るフィロウにオレは、この近くにリッカが住んでるって話した。
フィロウには、妻になる人達について話したからな。
名前を言ったら大体分かったようで。
ちょっと小首を傾げて、フィロウはオレを窺うように。
「寄って行こうか? リッカさんには、まだ話してないんでしょ? イグゥの身体の、天守のシルシの事。」
「それはそうなんだけど…」
「大事な事だから、知らせるだけは早めにしといた方が……って思うよ。」
フィロウに言われる通り。大事な話だから、知らせるのは早い方がいい。
でも急に行っても大丈夫かな? ユーグには「いつでも来て良い」って言われてたし、自宅じゃなくて店舗だったから行ってみたんだけどさ。自宅にアポ無し突撃されて、リッカに迷惑がられないかな?
あ、でも。自宅で寛いでるリッカ、……見てみたいなぁ。
「ちょっと寄って話をしても、お兄さん達のお昼休みには充分間に合うよ? ……ヤラシイ事をしてる時間は無いけど、ね?」
「ぉ、おうっ。」
ぎこちなく頷くオレにフィロウが吹き出して笑った。
流石のオレも、フィロウを待たせといてリッカと……は、シないぞ。
きっと、シないハズだ。オレは、オレの良心を信じる。
「ついでだからさ、他にも……まだちゃんと伝えてない人がいるなら、話をしに行ってみたらどうかな? 今日はボク、予定無いし。馬車で移動すれば早いから。」
「それはちょっと申し訳ないぞ。」
「ぅううん、ボクがそうしたいの。イグゥが嫌じゃなかったら、だけど。」
健気か、フィロウ。健気なのか。
そういや、エステードさんも割と健気だったな。血の繋がりって概念は無くても、この世界でも家族は似てる部分があるんだな。
「ありがと、フィロウ。ただ、どうするかは……リッカのトコや、詰め所に行ってみてから、でもいいか?」
「うん、もちろん。あ、良かったらリッカさんのとこ、ボクも一緒に訪問したいな。……今日ボクが挨拶を済ませちゃう気は無いけど、後日の顔合わせの日程調整をスムーズにしたいから、リッカさんには不都合日の確認をしたくって。」
「お、おぅ。」
「あと、ルサーさんが任せてくれるんなら、だけど。他の人の日程調整も進めたい、かな。今日、話をしに行く人とか、候補日を何日か押さえといた方がいいと思うから。……ルサーさんに聞いてみてもいい?」
「おう…」
社会人か、フィロウ。社会人なのか。
まずは日程調整、シッカリしてるな。
ハーレム作りがあんなにモタモタしてた人と同一人物とは思えないぞ。
オレは割とモタモタしがちだから。どうしようか。
このままフィロウに任せちゃっていいもんかな~。
「あぁ……。」
まだメリクルの話は続くらしい。
見た目的には確かにメリクルって、いかにもタチっぽくて相手に困ってなさそうで、ちょっと傲慢な態度とかも取ったりしそうだもんな。……これ、メリクルには内緒だぞ? もちろん、エステードさんにもだ。
「ボクは、イグゥが優しく、シテくれたから。……あんまり痛くなかったけど。」
「そ、そうでもないぞ?」
オレなりに気を遣ったのは。そう言い切れるのは初めの一回だけ。
二回目以降は結構、なんて言うか『優しさ控えめ』な感じになっちゃってたぞ?
「正直言って、ボクさ……。お兄さんの事、ちょっと妬んでたりしたんだよね。」
フィロウはオレから視線を外して進行方向の宙を見る。
ツラそうって言うよりは、ちょっとだけ悔やんでることがあるみたいな。何かを思い出すような表情だ。
「お兄さんは領主にもならないし。見た目……顔も身体も、羨ましいし。しかもその上、恋人もいるって……。」
「……そう、か。」
ヒトから見ればフィロウだって、羨ましがられる側の存在だと思う。
なのに、兄であるエステードさんに、そんな風に感じてたんだ。
初めて聞いたけど、ある意味、別に不思議じゃないか。人間って他人を羨ましがる生き物だからな。
フィロウから見れば、百八十センチのエステードさんの身長は高過ぎなくて丁度良いんだろう。
顔立ちも、甘い王子様フェイスのフィロウには、エステードさんの冷たく整った系統は魅力的なんだろう。
色気が全く無いように見えるトコも……げふっげふん。これは聞かなかったことにしてくれ。
「でも正直、今は……お兄さんがちょっと心配。あんな恋人で、大丈夫かなぁ。」
「うっ、……あぁ。」
話題がメリクルから変わったように思ったのは早計だったようだ。
またメリクルの話に戻って来た。
腕組みをして考える仕草をするフィロウ。
「考え直してみたら?って、お兄さんに言おうか……ちょっと考えちゃった。余計なお世話なんだろうけどさ。」
「なるほどなぁ。……ところでさ。メリクルって実は、オレの知り合いなんだ。」
「へぇ~、そうなん……。……えぇっ?」
相槌を打ち掛けて驚くフィロウ。
凄い勢いでコッチを見るから、オレは苦笑しながら頷いてみせた。
「え、そうなの? 知り合いって…」
「同じ養育所で育った、年上の幼馴染みなんだ。」
言おうかどうしようか迷ったけど言った。
メリクルがエステードさんと深い仲なんだから、いずれはフィロウにも分かるだろうし。いつか皆で顔を合わせる場面もあるかも知れない。
「イグゥ、あの人、大丈夫なの? なんか感情の起伏、って言うか……情緒もちょっと不安定気味だし?」
「あぁ、メリクルは……。まぁ、そんな感じなんだよ。」
「子供の頃から?」
「あ……いや……。」
確かに、再会した後のメリクルって、そういうトコあるよなぁ。エステードさんちで見たメリクル、怒ったり上機嫌になったり、目まぐるしかったっけ。
フィロウも見たんだなぁ。ビックリしたろうなぁ。
曖昧に笑みを浮かべるオレの様子に、何となく察してくれたフィロウは「そっか……」って呟いて。
その後は、詳しくツッコんで聞いて来なかった。
ホッとしながら窓の外に目をやると、娼館エリアの風景が流れてく。
見覚えのある建物、道の感じ。
「この辺って確か……。」
「イグゥ、どうかした?」
覗き込んで来るフィロウにオレは、この近くにリッカが住んでるって話した。
フィロウには、妻になる人達について話したからな。
名前を言ったら大体分かったようで。
ちょっと小首を傾げて、フィロウはオレを窺うように。
「寄って行こうか? リッカさんには、まだ話してないんでしょ? イグゥの身体の、天守のシルシの事。」
「それはそうなんだけど…」
「大事な事だから、知らせるだけは早めにしといた方が……って思うよ。」
フィロウに言われる通り。大事な話だから、知らせるのは早い方がいい。
でも急に行っても大丈夫かな? ユーグには「いつでも来て良い」って言われてたし、自宅じゃなくて店舗だったから行ってみたんだけどさ。自宅にアポ無し突撃されて、リッカに迷惑がられないかな?
あ、でも。自宅で寛いでるリッカ、……見てみたいなぁ。
「ちょっと寄って話をしても、お兄さん達のお昼休みには充分間に合うよ? ……ヤラシイ事をしてる時間は無いけど、ね?」
「ぉ、おうっ。」
ぎこちなく頷くオレにフィロウが吹き出して笑った。
流石のオレも、フィロウを待たせといてリッカと……は、シないぞ。
きっと、シないハズだ。オレは、オレの良心を信じる。
「ついでだからさ、他にも……まだちゃんと伝えてない人がいるなら、話をしに行ってみたらどうかな? 今日はボク、予定無いし。馬車で移動すれば早いから。」
「それはちょっと申し訳ないぞ。」
「ぅううん、ボクがそうしたいの。イグゥが嫌じゃなかったら、だけど。」
健気か、フィロウ。健気なのか。
そういや、エステードさんも割と健気だったな。血の繋がりって概念は無くても、この世界でも家族は似てる部分があるんだな。
「ありがと、フィロウ。ただ、どうするかは……リッカのトコや、詰め所に行ってみてから、でもいいか?」
「うん、もちろん。あ、良かったらリッカさんのとこ、ボクも一緒に訪問したいな。……今日ボクが挨拶を済ませちゃう気は無いけど、後日の顔合わせの日程調整をスムーズにしたいから、リッカさんには不都合日の確認をしたくって。」
「お、おぅ。」
「あと、ルサーさんが任せてくれるんなら、だけど。他の人の日程調整も進めたい、かな。今日、話をしに行く人とか、候補日を何日か押さえといた方がいいと思うから。……ルサーさんに聞いてみてもいい?」
「おう…」
社会人か、フィロウ。社会人なのか。
まずは日程調整、シッカリしてるな。
ハーレム作りがあんなにモタモタしてた人と同一人物とは思えないぞ。
オレは割とモタモタしがちだから。どうしようか。
このままフィロウに任せちゃっていいもんかな~。
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