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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~
ションボリしたフィロウが気になって仕方ない
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ビリーを家に送り届けて、馬車の中はオレとフィロウの二人だけになった。
それからフィロウは元気が無い。気がする。
スパルタ勉強が終わって気が抜けた、にしては解放感が無い。疲れただけかも知れないけど、なんだか暗い表情に見える。
「フィロウ……? なんか、大丈夫か?」
「……大丈夫。……じゃ……ないかも。」
意外にハッキリ、弱音を吐いたフィロウ。
本当にションボリした感じがする。
「もしかして、ビリーが居なくなったのが寂しいのか? 随分、静かになった。」
「静かに……? まぁ、そうかもね。」
いつの間にそんな親しくなってたんだ?
仲違いするよりはいいけどさ。オレも交ざりたいぞ。
フィロウは視線を窓の外に向ける。釣られてオレも目をやった。
夕方になる町の中は人の往来が増えてる。スピードを緩めた馬車はそろそろ、オレとルサーの家に到着しそうだ。
「ねぇ、イグゥ? 送って来たけど……今日、ウチに泊まらない?」
「え、今日か?」
「今日は殆ど、旧帝国語の勉強で終わっちゃったでしょ。」
「う~ん……。」
そう言われればそうだな。
結局オレ、最初に読んだ法律書と、旧帝国語で書かれた条解本した読んでないぞ。
頭が学習モードな内に他の本も一気に読んでおく、ってのも一理あるワケだし。確かに魅力的な提案では、ある。
泊まりじゃなくてもいいんじゃ、って思うんだけど。帰り時間を気にしなくていい、ってのはラクだろうな。
どうだろう?
喧嘩してとか、黙ってとかの外泊じゃないから大丈夫かな。
ルサーも、ちゃんと伝えてくれって、そう言ってたもんな。
「ちょっと、寂しいな……。」
「じゃあ……ルサーに言っとかないとな。兵士の詰め所に行って貰えるか?」
「……っ! うんっ。」
伏し目がちのフィロウが何だか元気無くて。
それが気になってオレは、泊まりに行く方向で返事した。
頷いたフィロウがちょっと元気出たように見えて、それでオレはホッとしてた。
* * *
詰め所にいたルサーに、フィロウの家にお泊りを誘われた話をした。
ルサーは一瞬、ちょっと微妙な表情をしてから「まぁ程々にしろ」って微妙な返事をくれて。
とりあえず外泊の許可を貰った。
申し訳ないんだけど、食事は何か適当に買って食べてくれるよう頼んどいた。
一応、オレが転がり込む前は一人暮らしだったんだから……大丈夫だろうとは思うんだけどさ。なんかルサーってさ、今までどうやって生活してたんだ? って心配になる場面が結構あるからなぁ。
それから、着替えの服を持ち出す為にウチに寄って貰って。
干してた洗濯物も取り込んで。
フィロウの家……領主邸に到着してから、夕食をご馳走になって。
本日だけで三度目。
フィロウの部屋に足を踏み入れた。
「お疲れ様、ちょっと休憩にしたら? もう殆ど読んじゃったんじゃない?」
「あぁフィロウ。ありがと、そうするよ。」
冷たい飲み物を注いだグラスを持って来てくれたフィロウに礼を言って、オレは分厚い条解本を一旦テーブルの脇に閉じて置く。
空いた場所にフィロウがグラスを置いた。グラスの中から葡萄の良い香りと、シュワシュワって小気味良い音がしてる。
きっと炭酸だ。この世界にも炭酸あるんだな、有難いぞ。
「もしかして全部読み終わってたりする?」
「まぁ一応。内容的に似た感じだからな。」
「ぅわぁ……。」
テーブルの上や、向かい側の一人掛けソファ上にある本の山を見回して、フィロウは呆れたような引いたような呻き声を漏らす。
念の為、意識啓発系の本も目を通して、そっちは既に壁際の定位置に戻してある。
フィロウは自分のグラスを手に持ったまま、長ソファに腰掛けるオレの隣に座った。
ちょっと身体が強張ってる気がして、オレは立ち上がって思いっ切り伸びをする。
「そう言えばさぁ…」
「…んっ?」
特に何も考えてなかったのに、ウッカリ声が出ちゃったオレ。
フィロウに返事されて、慌てて何か言うことを捻り出す。
「今日は急にビリーを呼ぶって言い出してゴメンな? フィロウにはあんまり面識の無い相手だったのに。」
「あぁ……ぅううん、別に…」
「割と親しくなったみたいで……良かった。」
ほんのちょっとだけ寂しかったけど。って、口を滑らせそうになったオレ。
言わずに済んで良かった。
「……そう見えた?」
「見えた、けど……違ってたか?」
質問に質問で返すとか良くないのは分かってる。
だけど、オレに短く問い掛けたフィロウがまた元気無くて、それに気を取られてた。
「……さぁ? 向こうはどうだろうね?」
「ビリーは嫌いな相手とはわざわざ喋らないからな。少なくともフィロウを嫌ってはいないだろ。……って、オレは思ってる。」
「ボクと喋るのは……大好きなイグゥの前だから、じゃない?」
「うっ……。」
「向こうはイグゥの事、好きなんだよね?」
旧帝国語スパルタ講義中、ビリーはちょこちょこ「好き」って言ってたからなぁ。
そりゃフィロウにもシッカリ聞かれてるよなぁ。
「幼馴染みで、気心が知れてて、再会後も……仲良く、て。…………いいなぁ。」
てっきり「イグゥも好きなの?」とか言われるかと思ったら。
そっち方面のツッコミじゃなかった。
それでホッとする気にはなれないオレ。
フィロウは凄く、沈んでる顔してた。
この世界に『妊娠』も『出産』も無い。神様が落とした赤ん坊を拾って来て養育所で育てるのが基本だ。
エステードさんもだけど、フィロウは領主が養育所から引き取ったハズ。
領主の息子として、領主の家族になって、領主の仕事を手伝う為の勉強をする必要もある。だからとても小さな子供の内に養育所を出てる可能性が高くて。
だからフィロウには、久し振りに再会して懐かしく会話出来るような。そんな幼馴染みが居ないんじゃないだろうか。
それからフィロウは元気が無い。気がする。
スパルタ勉強が終わって気が抜けた、にしては解放感が無い。疲れただけかも知れないけど、なんだか暗い表情に見える。
「フィロウ……? なんか、大丈夫か?」
「……大丈夫。……じゃ……ないかも。」
意外にハッキリ、弱音を吐いたフィロウ。
本当にションボリした感じがする。
「もしかして、ビリーが居なくなったのが寂しいのか? 随分、静かになった。」
「静かに……? まぁ、そうかもね。」
いつの間にそんな親しくなってたんだ?
仲違いするよりはいいけどさ。オレも交ざりたいぞ。
フィロウは視線を窓の外に向ける。釣られてオレも目をやった。
夕方になる町の中は人の往来が増えてる。スピードを緩めた馬車はそろそろ、オレとルサーの家に到着しそうだ。
「ねぇ、イグゥ? 送って来たけど……今日、ウチに泊まらない?」
「え、今日か?」
「今日は殆ど、旧帝国語の勉強で終わっちゃったでしょ。」
「う~ん……。」
そう言われればそうだな。
結局オレ、最初に読んだ法律書と、旧帝国語で書かれた条解本した読んでないぞ。
頭が学習モードな内に他の本も一気に読んでおく、ってのも一理あるワケだし。確かに魅力的な提案では、ある。
泊まりじゃなくてもいいんじゃ、って思うんだけど。帰り時間を気にしなくていい、ってのはラクだろうな。
どうだろう?
喧嘩してとか、黙ってとかの外泊じゃないから大丈夫かな。
ルサーも、ちゃんと伝えてくれって、そう言ってたもんな。
「ちょっと、寂しいな……。」
「じゃあ……ルサーに言っとかないとな。兵士の詰め所に行って貰えるか?」
「……っ! うんっ。」
伏し目がちのフィロウが何だか元気無くて。
それが気になってオレは、泊まりに行く方向で返事した。
頷いたフィロウがちょっと元気出たように見えて、それでオレはホッとしてた。
* * *
詰め所にいたルサーに、フィロウの家にお泊りを誘われた話をした。
ルサーは一瞬、ちょっと微妙な表情をしてから「まぁ程々にしろ」って微妙な返事をくれて。
とりあえず外泊の許可を貰った。
申し訳ないんだけど、食事は何か適当に買って食べてくれるよう頼んどいた。
一応、オレが転がり込む前は一人暮らしだったんだから……大丈夫だろうとは思うんだけどさ。なんかルサーってさ、今までどうやって生活してたんだ? って心配になる場面が結構あるからなぁ。
それから、着替えの服を持ち出す為にウチに寄って貰って。
干してた洗濯物も取り込んで。
フィロウの家……領主邸に到着してから、夕食をご馳走になって。
本日だけで三度目。
フィロウの部屋に足を踏み入れた。
「お疲れ様、ちょっと休憩にしたら? もう殆ど読んじゃったんじゃない?」
「あぁフィロウ。ありがと、そうするよ。」
冷たい飲み物を注いだグラスを持って来てくれたフィロウに礼を言って、オレは分厚い条解本を一旦テーブルの脇に閉じて置く。
空いた場所にフィロウがグラスを置いた。グラスの中から葡萄の良い香りと、シュワシュワって小気味良い音がしてる。
きっと炭酸だ。この世界にも炭酸あるんだな、有難いぞ。
「もしかして全部読み終わってたりする?」
「まぁ一応。内容的に似た感じだからな。」
「ぅわぁ……。」
テーブルの上や、向かい側の一人掛けソファ上にある本の山を見回して、フィロウは呆れたような引いたような呻き声を漏らす。
念の為、意識啓発系の本も目を通して、そっちは既に壁際の定位置に戻してある。
フィロウは自分のグラスを手に持ったまま、長ソファに腰掛けるオレの隣に座った。
ちょっと身体が強張ってる気がして、オレは立ち上がって思いっ切り伸びをする。
「そう言えばさぁ…」
「…んっ?」
特に何も考えてなかったのに、ウッカリ声が出ちゃったオレ。
フィロウに返事されて、慌てて何か言うことを捻り出す。
「今日は急にビリーを呼ぶって言い出してゴメンな? フィロウにはあんまり面識の無い相手だったのに。」
「あぁ……ぅううん、別に…」
「割と親しくなったみたいで……良かった。」
ほんのちょっとだけ寂しかったけど。って、口を滑らせそうになったオレ。
言わずに済んで良かった。
「……そう見えた?」
「見えた、けど……違ってたか?」
質問に質問で返すとか良くないのは分かってる。
だけど、オレに短く問い掛けたフィロウがまた元気無くて、それに気を取られてた。
「……さぁ? 向こうはどうだろうね?」
「ビリーは嫌いな相手とはわざわざ喋らないからな。少なくともフィロウを嫌ってはいないだろ。……って、オレは思ってる。」
「ボクと喋るのは……大好きなイグゥの前だから、じゃない?」
「うっ……。」
「向こうはイグゥの事、好きなんだよね?」
旧帝国語スパルタ講義中、ビリーはちょこちょこ「好き」って言ってたからなぁ。
そりゃフィロウにもシッカリ聞かれてるよなぁ。
「幼馴染みで、気心が知れてて、再会後も……仲良く、て。…………いいなぁ。」
てっきり「イグゥも好きなの?」とか言われるかと思ったら。
そっち方面のツッコミじゃなかった。
それでホッとする気にはなれないオレ。
フィロウは凄く、沈んでる顔してた。
この世界に『妊娠』も『出産』も無い。神様が落とした赤ん坊を拾って来て養育所で育てるのが基本だ。
エステードさんもだけど、フィロウは領主が養育所から引き取ったハズ。
領主の息子として、領主の家族になって、領主の仕事を手伝う為の勉強をする必要もある。だからとても小さな子供の内に養育所を出てる可能性が高くて。
だからフィロウには、久し振りに再会して懐かしく会話出来るような。そんな幼馴染みが居ないんじゃないだろうか。
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