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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~
オレの名前を言ってくれ
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「決めかねているのなら、両方を試してみるのはどうだ?」
「……試、す?」
妄想で危うく勃起し掛けたオレ。
ユーグの声で正気を取り戻したけど、よく分かんなくて首を傾げた。
分かってないオレに、ユーグはクスッと笑い声を零して。
「呼ばれ慣れているのは愛称の方、だったか? そちらから試してみよう。」
「あっ、試しに呼んでみるって話か。」
「そうだ。どちらとも呼ぶから、キミの好きな方に決めて欲しい。……イグゥ。」
ようやくコツを掴んで来た新入社員を見守るような笑みを浮かべた後。自然な流れでオレの愛称を口に出したユーグ。
だけど段々と口を尖らせる。
オレを見上げたユーグは、ちょっと拗ねたような困ったような表情になった。
「この年齢で愛称呼びは、少々……恥ずかしいものだな。大体、私に似合わん。」
「えっ、そうかな。可愛かったのに。」
「四十歳を過ぎた私を可愛いなどと言ってくれるのはキミくらいだ。……イグザ。」
オレを呼ぶ声が若干掠れてる。ちょっとはユーグもドキドキしてるのかな。
ドッチの呼び方も良かったんだけど……あぁ、どっちかに決めろって言われたら。ホント、僅差で。
イグザ。……かなぁ。
オレをイグゥって呼んだ直後のユーグ。唇が凄く色っぽい感じになってて良かったんだけどさ。その声には、ほんのちょっとだけど。子供を可愛がるみたいな雰囲気があったから。
一方、イグザ、って呼ぶユーグの声は。オレの気の所為かも知れないんだけど、『私のオトコ』みたいなニュアンスを感じて……良かった。気を抜いてたらウッカリ興奮しそうな点だけは、要注意だけどな。
何を言ってるんだ、オイ。って思うだろ?
聞いてて気持ち悪いだろうけど、オレは本気で言ってるんだぞ。
「決めた。」
「早いな。」
「オレ、ユーグに……イグザって呼んで欲しい。」
ユーグはホッとした表情で頷いた。
ゆっくり手が伸びて来て、オレの頬っぺたを掌で包み込まれる。
「分かった、ではそうしよう。……イグザ。」
「うん。」
音の響きを確かめるように名前を呼ばれる。
オレは嬉しくなって目を細めた。
「イグザ……?」
「ぅん……?」
「……イグザ。……私の名も、呼んでくれないか?」
「っ……、ユーグ……可愛い。」
もおぉ~っ、なんだなんだ、可愛いかっ。可愛いだろ、これ。
切れ者の厳しい上司風な大人が、ちょっと恥じらいながら強請るとか。
……かなり、ヤバい。こんなん、滾るってば。
「ふふっ、……イグザ。」
誘われてるんだなぁって頭の片隅では分かってる。
まだユーグはルサーと話してない。本当は今、触っちゃ駄目かも知れないのに。
オレの手もユーグの頬に吸い寄せられるように動いて、そっと撫でて。お互いの顔が近くなる。
だけど口を塞いでしまうのは、勿体無くて。声が聞こえなくなっちゃうから。
ユーグとしばらくの間、そうして。
至近距離で見詰め合いながら、たまに頬や額、鼻先にちょっとだけ触れて。
ただただお互いを呼び合ってた。
ユーグに呼ばれるたびに、ユーグの名前を口に出すたびに。擽ったい気持ち。
だけど段々、声が熱を帯びてく。
ユーグの瞳がハッキリ誘って来るように見えた。
「イグザ……、っん。」
「ユー、グ……。」
チョンって触れさせた鼻先同士。オレは目測を誤った風に、唇同士も触れさせた。
視線を絡めてユーグの意思を確認する。
ユーグは自分の唇をペロッて舐めてから、オレを見詰めたまま薄く開いた。もっと深いキスを欲しがる顔をしてる。
「せっかく来てくれたのに、これ以上はしないで帰る……なんて、酷い事は言わないだろう? イグザ……。」
肩の後ろ側にユーグの両腕が回されるのと同時に、オレはユーグの髪に指を潜り込ませた。
毛先がクルっと縦ロールになっちゃうユーグの髪は、意外とコシが強くて滑りもいい。だからついつい、指に絡ませて遊んじゃう。
「私はもうソノ気でいるんだが? あまり遊ばないでくれ……。」
「ははっ、ゴメン、ゴメン。ユーグの髪って、撫で心地が良くて。」
もっかいキスする寸前みたいな体勢になっといて、髪に夢中なオレを、焦れたユーグが優しく詰る。
凄く大人な態度で、だけどこの雰囲気は居心地が良かった。
ユーグの方が余裕があるのに、子供っぽいオレに翻弄されてるような。そんなちょっとした優越感を感じさせてくれるのが上手いんだろう。
トトトトトンッ! トトトンッ!
「あのっ、すみません、オーナーっ!」
凄いイイ雰囲気になったオレ達を、ノック音と誰かの焦った声が邪魔した。
「……試、す?」
妄想で危うく勃起し掛けたオレ。
ユーグの声で正気を取り戻したけど、よく分かんなくて首を傾げた。
分かってないオレに、ユーグはクスッと笑い声を零して。
「呼ばれ慣れているのは愛称の方、だったか? そちらから試してみよう。」
「あっ、試しに呼んでみるって話か。」
「そうだ。どちらとも呼ぶから、キミの好きな方に決めて欲しい。……イグゥ。」
ようやくコツを掴んで来た新入社員を見守るような笑みを浮かべた後。自然な流れでオレの愛称を口に出したユーグ。
だけど段々と口を尖らせる。
オレを見上げたユーグは、ちょっと拗ねたような困ったような表情になった。
「この年齢で愛称呼びは、少々……恥ずかしいものだな。大体、私に似合わん。」
「えっ、そうかな。可愛かったのに。」
「四十歳を過ぎた私を可愛いなどと言ってくれるのはキミくらいだ。……イグザ。」
オレを呼ぶ声が若干掠れてる。ちょっとはユーグもドキドキしてるのかな。
ドッチの呼び方も良かったんだけど……あぁ、どっちかに決めろって言われたら。ホント、僅差で。
イグザ。……かなぁ。
オレをイグゥって呼んだ直後のユーグ。唇が凄く色っぽい感じになってて良かったんだけどさ。その声には、ほんのちょっとだけど。子供を可愛がるみたいな雰囲気があったから。
一方、イグザ、って呼ぶユーグの声は。オレの気の所為かも知れないんだけど、『私のオトコ』みたいなニュアンスを感じて……良かった。気を抜いてたらウッカリ興奮しそうな点だけは、要注意だけどな。
何を言ってるんだ、オイ。って思うだろ?
聞いてて気持ち悪いだろうけど、オレは本気で言ってるんだぞ。
「決めた。」
「早いな。」
「オレ、ユーグに……イグザって呼んで欲しい。」
ユーグはホッとした表情で頷いた。
ゆっくり手が伸びて来て、オレの頬っぺたを掌で包み込まれる。
「分かった、ではそうしよう。……イグザ。」
「うん。」
音の響きを確かめるように名前を呼ばれる。
オレは嬉しくなって目を細めた。
「イグザ……?」
「ぅん……?」
「……イグザ。……私の名も、呼んでくれないか?」
「っ……、ユーグ……可愛い。」
もおぉ~っ、なんだなんだ、可愛いかっ。可愛いだろ、これ。
切れ者の厳しい上司風な大人が、ちょっと恥じらいながら強請るとか。
……かなり、ヤバい。こんなん、滾るってば。
「ふふっ、……イグザ。」
誘われてるんだなぁって頭の片隅では分かってる。
まだユーグはルサーと話してない。本当は今、触っちゃ駄目かも知れないのに。
オレの手もユーグの頬に吸い寄せられるように動いて、そっと撫でて。お互いの顔が近くなる。
だけど口を塞いでしまうのは、勿体無くて。声が聞こえなくなっちゃうから。
ユーグとしばらくの間、そうして。
至近距離で見詰め合いながら、たまに頬や額、鼻先にちょっとだけ触れて。
ただただお互いを呼び合ってた。
ユーグに呼ばれるたびに、ユーグの名前を口に出すたびに。擽ったい気持ち。
だけど段々、声が熱を帯びてく。
ユーグの瞳がハッキリ誘って来るように見えた。
「イグザ……、っん。」
「ユー、グ……。」
チョンって触れさせた鼻先同士。オレは目測を誤った風に、唇同士も触れさせた。
視線を絡めてユーグの意思を確認する。
ユーグは自分の唇をペロッて舐めてから、オレを見詰めたまま薄く開いた。もっと深いキスを欲しがる顔をしてる。
「せっかく来てくれたのに、これ以上はしないで帰る……なんて、酷い事は言わないだろう? イグザ……。」
肩の後ろ側にユーグの両腕が回されるのと同時に、オレはユーグの髪に指を潜り込ませた。
毛先がクルっと縦ロールになっちゃうユーグの髪は、意外とコシが強くて滑りもいい。だからついつい、指に絡ませて遊んじゃう。
「私はもうソノ気でいるんだが? あまり遊ばないでくれ……。」
「ははっ、ゴメン、ゴメン。ユーグの髪って、撫で心地が良くて。」
もっかいキスする寸前みたいな体勢になっといて、髪に夢中なオレを、焦れたユーグが優しく詰る。
凄く大人な態度で、だけどこの雰囲気は居心地が良かった。
ユーグの方が余裕があるのに、子供っぽいオレに翻弄されてるような。そんなちょっとした優越感を感じさせてくれるのが上手いんだろう。
トトトトトンッ! トトトンッ!
「あのっ、すみません、オーナーっ!」
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