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第四章 ~なんだかんだでゲームに沿う形でハーレムっぽい感じになる~

今更そんなこと言われたって

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メリクルの言ってる意味が分かんない。
とぼけてるんじゃなくて、本当に。
ティムからペンダントを借りて、転移版を利用する費用は掛からないハズだし。
だとしたら……他に、慰謝料って……。


「なんでだよっ? オレがエステードさんの裸とか潮吹きとか見たからかっ?」
「……その件は明日、話そうぜ? 木剣持って朝九時、兵舎の中庭に集合だ。」
「あの、メリクル? 私なら、もう気にしてませ…」
「エステードはも~ちょっと気にしろっ!」
「メリクルっ!」

ちょっとワチャワチャしそうだったけど、オレは身を乗り出してメリクルを呼んだ。
オレの大声で、メリクルはやっとエステードさんの指を離した。
エステードさんが心配そうに、オレとメリクルを見る。


「どういう経緯で何の話かも分かんない。ちゃんと説明してくれよ。」
「なぁに、簡単な話だ。」

メリクルは面白がって観察するような視線を寄越した。
弧を描いた唇が滑らかに開く。

「慰謝料の請求者は、天守イクシィズの金獅子ハーレム。請求理由は、ハーレムを所有する天守じゃない男が、イクシィズの妻に手を出したから、……だ。」
「金獅子……、つ、ま……。……えっ?」


やっぱりメリクルの話が分かんない。
オレが、誰に、手を出した、って?


「王都からソレを使って帰って来たイグゥなら、たぶん知ってるだろうけどな? 俺はそのハーレムで一応、若守(わかもり)様って呼ばれててな。これでも、それなりの立場にいる。」

メリクルに見せた後、ローテーブル上に出しっぱなしのペンダントを、メリクルは顎をしゃくって示す。
返事を求められてるのかも知れないけど、オレは頷き返すことも出来ずにいた。
相槌もナシの状況でメリクルは話を進めてく。


「ノマルの町のハーレムは五年以上放置された結果、役人の手で解散扱いになってる。だけど情報収集の為の人員配置は、まだ持続してあってな。俺の所に情報が集まる手筈になってんだ。だからイグゥが、リッカ、ユーグの二人と『そういう宿屋』を利用したって事も分かってる。」

どうりで、メリクルが色々知ってるワケだ。
それはいいけど、やっぱり分かんないよ。……納得が行かない。

要するに、天守でもないオレが、リッカとユーグに手を出したのを責められるんだろ?
なんでだよ……。何年も何年も放ったらかしにした所為で、ハーレムは解散してるし、リッカもユーグも、他の妻達も放り出されたんじゃないか。
それを今更になって『妻』だって? もうハーレムも無いのに?


「ハーレムを『見做し解散』状態から休止状態に戻す手続きは、二年前に……、……俺が代理で済ませてる。」

まるでオレの考えが分かってるみたいに、メリクルは続けた。
口端はちょっと上がってるけど目が笑ってなくて、何を考えてるのか窺えない。

「リッカもユーグも、他の男達も、生きてる『元妻』は全員『妻』に戻ってるハズだ。ただ、休止状態だから給付金制度の対象にはならんけどな。」
「……っ、ゆ…ユーグも、リッカもそんな…」
「復活じゃなくて休止状態だから、妻には通知されねんだろ。知らなくても不思議じゃねぇよ。」
「そんな……!」

思わず立ち上がるオレ。メリクルの視線はオレを追わなかった。


勝手に身分を『妻』に戻されて、しかもそれを、知らされもしないなんて。
そんなテキトーな、酷い話があるか……?




「ずっと放置した挙句に手離しといて……。これから更に縛り付けるのかっ?」

今更の話にオレは腹が立って来た。


ノマルの町のハーレムが解散した件について、確かに、イクシィズに文句を言いたい気持ちはあった。
だけどオレには……オレの直近の前世であるウェネットにも、ゲームの知識があったから。イクシィズの行動に、仕方ないって思う気持ちもあった。
ストーリーモードじゃ、主人公はただただ次の町に『進む』だけで、以前の町には戻らない。戻れない。
エンドレスモードじゃないと、それは叶わない。だってそんな『システム』だから。

イクシィズのハーレムには『金獅子』の称号が付いてる。『獅子』はシナリオクリアの称号だ。
だけど、ストーリーモードのシナリオをクリアしてから、イクシィズがノマルの町に戻れるようになった頃には、とっくにハーレムが解散してて。どうにも出来なかったんだろう。……って考えてた。

でも今のメリクルの話だと。
ハーレムが解散した後だって、今までの間に、いつでも再開出来たってワケだろ。
例え同じ結果でも『出来なかった』と『やらなかった』は……全然、違うぞ?



「妻達はもう、新しい生活を始めてるだろっ。今更そんな、何言ってるんだよ!」

怒りの矛先を向ける相手を間違えるな。
頭の中に、養育所のセンセイから教わった言葉が浮かんだのに、ダメだった~。


「ちょっとした情報は以上だ。」

メリクルの表情は全然変わらない。
本当にそれで話はお終い、って感じで、興味を無くしたように他所を向いた。
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