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第四章 ~なんだかんだでゲームに沿う形でハーレムっぽい感じになる~
ご褒美を貰えるようなことした覚えが無いんだけど
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散々笑ったメリクルが涙目を親指で拭った。
「まぁなんでイグゥがシステムと知り合えたかは、ど~でもいいけど…」
「それは、オレが王都の神殿に転移し…」
「ど~でもいい、つってんだろ。それより随分……システムを手懐けたな?」
散々笑った所為で血色の良いメリクルがコップに右手を伸ばす。
メリクルはニヤニヤしながらオレの反応を窺ってるけど、……オレは見たぞ?
膝とか太腿を叩いて笑い転げるメリクルが時々ローテーブルに当たるから、気を遣ったエステードさんが手で、メリクルのコップが倒れないように支えてたんだ。
そしたら。
右手を伸ばしたメリクルはコップを掴む前に、瞬間的にだけど、エステードさんの指先を指の腹で撫でてた。
オレ、動体視力には自信あるから見間違いじゃないぞ。
それに、メリクルの視線はオレの方からチラッとも外れなかったけど、エステードさんがちょっとだけ、ドキッてした感じにメリクルを見たから間違いない。
もぉ~、すぐそうやって、さり気なくイチャ付くんだから~。
いいなぁ~、オレも今度ルサーにしよう。
「まぁ俺にとっちゃ、悪い展開じゃないけどなぁ。」
一口。珈琲紅茶を飲んでせせら笑うメリクルは結構なワルの表情だった。
見詰めるエステードさんの表情がウットリして見えるのは気の所為じゃないよな。
「これで粗方、システムの強権は削げただろ。……良くやったぞ、イグゥ。後はまぁせいぜい、アレに懐かれ過ぎないように気を付けるんだな?」
「はぁ、まぁ……気を付けるよ。」
メリクルの言う話は分かんないけど、取り敢えず「あんまり馴れ馴れしくするなよ」って言ってるんだろ。
王都にいるティムと会う機会はそんなに無いだろうから大丈夫じゃないかな。
今一つピンと来てないオレと対照的に。
メリクルは小さく頷いたり、たまに視線を何処かに逸らしたりして、何かを考えてるようだった。
時々コップを片手に傾げてチビチビ飲みながら、雰囲気がかなり居酒屋。
「……だとしたら、今…か……? いや、万が一もある、か……。」
呟いたメリクルがエステードさんに視線を滑らせる。
エステードさんは特に表情も変えず、小首を傾げてメリクルを見返した。
表情を変えないまま、ローテーブルの下側……きっとメリクルから見えない位置で、そっと自分の指を握ってた。
さっきメリクルが撫でてたトコだ。
手を繋ぐよりずっと先のコトしてるのに、そんな初々しい反応するとか……意外。
「何にせよ、具体的な所は一旦、王都に戻ってみてからだな。……イグゥ、何か頼みとか無いか? 聞きたい事でもいい。……お兄ちゃんからご褒美、やるぞ?」
「……後で、何かあったら助けてくれ。」
やたら機嫌が良さそうなメリクルから、ビックリするくらいゾワッとする猫撫で声を出されたオレ。
目を細めて、カーブを描く口元は確かに笑ってるのに、あんまり笑顔に感じない。
ちょっと怖いし、何のご褒美なのかも分かんない。
特に今じゃなきゃダメなお願い事も無いから、先延ばしにしてみた。
慌てて何か言ったって、絶対それ後から、失敗した~って思いそうだ。
だったら後で、何か頼りたくなってからお願いした方がいいだろ。
「今、つってんだろ。」
「良く分かんない内に凄く親切にされるよりも、必要になったらちょっと親切にされる方がいいじゃん。そういう話だよ。」
「小賢しいな、イグゥ。」
「酷いっ。メリクル酷いっ。後悔しないように考えたのにぃ。」
お兄ちゃんからのご褒美なら、それくらい融通利かせてくれたっていいじゃんか。
遠慮なく口を尖らせたオレのおでこを、メリクルが何故か指でグリグリする。
視界の端にいるエステードさんが小さく微笑ったように見えた。
「はいはい、よく考えたな? ……まぁいいわ。俺は今とても機嫌がいいから、特別に一つ教えてやろうか?」
「後でって言ったのに…」
「ノーカンで教えてやる、つってんだ。」
「じゃあ聞く。教えてくれ。」
オレは先延ばしにしたのに、そう言って来るんだから。
きっとメリクルは何か伝えたい話があるんだろう。
メリクルはオレと同じで、たぶん前世の記憶がある。わざわざ『システム』って発音する辺りとかも、『ハーレムワンダーパラダイス』を知ってそうだ。
だけどオレもメリクルも、相手が転生者っぽいって気付いても、お互いに触れずにここまで来た。
そのメリクルがこうやって、割と強引に伝えようとしてるんだから、それって結構重要な話なんじゃないかな。
……って、オレは真面目に聞く体勢だったのに。
「さぁ~て、っと……どうしようかなぁ? 何にしようかなぁ?」
アクが強くて面倒臭いサブキャラみたいな感じになってる~。
頬杖付いての上目遣いはネコがやったら可愛いけど、タチのメリクルにはあんまり似合わないぞ。
「まぁなんでイグゥがシステムと知り合えたかは、ど~でもいいけど…」
「それは、オレが王都の神殿に転移し…」
「ど~でもいい、つってんだろ。それより随分……システムを手懐けたな?」
散々笑った所為で血色の良いメリクルがコップに右手を伸ばす。
メリクルはニヤニヤしながらオレの反応を窺ってるけど、……オレは見たぞ?
膝とか太腿を叩いて笑い転げるメリクルが時々ローテーブルに当たるから、気を遣ったエステードさんが手で、メリクルのコップが倒れないように支えてたんだ。
そしたら。
右手を伸ばしたメリクルはコップを掴む前に、瞬間的にだけど、エステードさんの指先を指の腹で撫でてた。
オレ、動体視力には自信あるから見間違いじゃないぞ。
それに、メリクルの視線はオレの方からチラッとも外れなかったけど、エステードさんがちょっとだけ、ドキッてした感じにメリクルを見たから間違いない。
もぉ~、すぐそうやって、さり気なくイチャ付くんだから~。
いいなぁ~、オレも今度ルサーにしよう。
「まぁ俺にとっちゃ、悪い展開じゃないけどなぁ。」
一口。珈琲紅茶を飲んでせせら笑うメリクルは結構なワルの表情だった。
見詰めるエステードさんの表情がウットリして見えるのは気の所為じゃないよな。
「これで粗方、システムの強権は削げただろ。……良くやったぞ、イグゥ。後はまぁせいぜい、アレに懐かれ過ぎないように気を付けるんだな?」
「はぁ、まぁ……気を付けるよ。」
メリクルの言う話は分かんないけど、取り敢えず「あんまり馴れ馴れしくするなよ」って言ってるんだろ。
王都にいるティムと会う機会はそんなに無いだろうから大丈夫じゃないかな。
今一つピンと来てないオレと対照的に。
メリクルは小さく頷いたり、たまに視線を何処かに逸らしたりして、何かを考えてるようだった。
時々コップを片手に傾げてチビチビ飲みながら、雰囲気がかなり居酒屋。
「……だとしたら、今…か……? いや、万が一もある、か……。」
呟いたメリクルがエステードさんに視線を滑らせる。
エステードさんは特に表情も変えず、小首を傾げてメリクルを見返した。
表情を変えないまま、ローテーブルの下側……きっとメリクルから見えない位置で、そっと自分の指を握ってた。
さっきメリクルが撫でてたトコだ。
手を繋ぐよりずっと先のコトしてるのに、そんな初々しい反応するとか……意外。
「何にせよ、具体的な所は一旦、王都に戻ってみてからだな。……イグゥ、何か頼みとか無いか? 聞きたい事でもいい。……お兄ちゃんからご褒美、やるぞ?」
「……後で、何かあったら助けてくれ。」
やたら機嫌が良さそうなメリクルから、ビックリするくらいゾワッとする猫撫で声を出されたオレ。
目を細めて、カーブを描く口元は確かに笑ってるのに、あんまり笑顔に感じない。
ちょっと怖いし、何のご褒美なのかも分かんない。
特に今じゃなきゃダメなお願い事も無いから、先延ばしにしてみた。
慌てて何か言ったって、絶対それ後から、失敗した~って思いそうだ。
だったら後で、何か頼りたくなってからお願いした方がいいだろ。
「今、つってんだろ。」
「良く分かんない内に凄く親切にされるよりも、必要になったらちょっと親切にされる方がいいじゃん。そういう話だよ。」
「小賢しいな、イグゥ。」
「酷いっ。メリクル酷いっ。後悔しないように考えたのにぃ。」
お兄ちゃんからのご褒美なら、それくらい融通利かせてくれたっていいじゃんか。
遠慮なく口を尖らせたオレのおでこを、メリクルが何故か指でグリグリする。
視界の端にいるエステードさんが小さく微笑ったように見えた。
「はいはい、よく考えたな? ……まぁいいわ。俺は今とても機嫌がいいから、特別に一つ教えてやろうか?」
「後でって言ったのに…」
「ノーカンで教えてやる、つってんだ。」
「じゃあ聞く。教えてくれ。」
オレは先延ばしにしたのに、そう言って来るんだから。
きっとメリクルは何か伝えたい話があるんだろう。
メリクルはオレと同じで、たぶん前世の記憶がある。わざわざ『システム』って発音する辺りとかも、『ハーレムワンダーパラダイス』を知ってそうだ。
だけどオレもメリクルも、相手が転生者っぽいって気付いても、お互いに触れずにここまで来た。
そのメリクルがこうやって、割と強引に伝えようとしてるんだから、それって結構重要な話なんじゃないかな。
……って、オレは真面目に聞く体勢だったのに。
「さぁ~て、っと……どうしようかなぁ? 何にしようかなぁ?」
アクが強くて面倒臭いサブキャラみたいな感じになってる~。
頬杖付いての上目遣いはネコがやったら可愛いけど、タチのメリクルにはあんまり似合わないぞ。
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