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第四章 ~なんだかんだでゲームに沿う形でハーレムっぽい感じになる~

メリクルがやっちゃってた話 $シス・ティム$

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ノマルの町の教会で、初めてイクシィズと出会ったのは約二十年前。


「ハーレム、作りたいんだけど。」

彼の第一声はそんなのでした。
何処の田舎から来たのかと思うような、垢抜けないイクシィズの瞳に。確かに天守様のシルシがあるのを見た時は信じられない気持ちでしたよー。

しかも何も分かってないような口振りでー。
こんな少年が果たして本当に天守としてやって行けるのかー、他人事ながら心配になったもんでーす。
だからつい、お節介をしてしまったんですよー。
そうするべきだと、何故だか知りませんけど、そう思ったんでーす。


本来であれば簡単に説明をしてー、登録手続きをしてー、求められたら資料でも渡してやれば良いだけでーす。
もっと手厚い対応をして欲しければー、王都にでも行くべきですからねー。

ですが、イクシィズは余りにも知識が無くてー、その上、とても面倒臭がりでー。
妻となる人と出会う為には何処へ行くとか、何をするとか、そういった行動をサポートするのもー。
妻になった人を教会で登録してから、妻同士の顔合わせをしたり、今後の予定を確認したりー。
ハーレムの宮殿を見繕ったり、そこに備え付ける家具や設備等の手配、業者との契約をするのもー。
何ならイクシィズの好みそうな相手を探したり、彼等の行動パターンやスケジュールを調べて知らせたりー。
気付けば、教会の神官がする範囲を大きく超えて、手を貸していましたー。


大きなハーレムを作りたい。
それが彼の望みでしたー。叶える為に色々な事をしましたー。

彼が、妻にしたい相手が入宮してくれるよう。大きなハーレムを持つ魅力的な天守様に見えるよう。目に付いた人を片っ端からハーレムに入れましたー。
それが出来るよう、大きな宮殿にしましたー。
お金で苦労しないよう、公けの手続きは最大限以上に利用しましたしー、それなりの人は妻に出来るよう動いたつもりでーす。
彼に靡いてくれない人を落とす為には、相手の事を色々と調べもしましたしー、人もお金も使いましたー。
良い噂が流れれば、ハーレムが大きく強くなるのが容易になりますからー、それにも手間とお金を使いましたー。
王子が何人も居て、容易に妻に出来そうな他国とも縁を結びましたー。

その甲斐あって、かなりの速度でハーレムは大きくなりましたねー。
ノマルの町だけでなく、幾つもの町に拠点を持つに至りましたー。
大きなハーレムは雪だるま式に増々大きくなりまーす。


小国の王子を二人とも妻にしたい。
そう言われた時には最大級に知恵を絞りましたよー。

いくら小国とは言え、王子が二人とも入宮するなんて普通は有り得ませーん。
ですから、それを可能にする『本妻』という仕組みを利用したのでーす。
ただし……本妻としての権限を。ワタシが担ってた役割を、譲り渡してやる気は全くありませんでしたけどー。



イクシィズは長い間、言う事をよく聞いてくれましたー。
彼の望みを叶えられるのが誰なのか、ちゃんと分かっていたからでーす。

ノマルの町から『ハーレムの見做し解散』について連絡があった時。どうするか迷った彼に、どちらでも良いと伝えた事がありまーす。
大した手間では無いのですが、その時の構成員を考えれば、無くしても惜しくはないと判断したからでーす。

彼は結局、何もしませんでしたねー。

昔と変わらず面倒臭がりで、言ってあげた事しか出来ないイクシィズ。
何て素敵なんでしょー。


そうしてずっと、ずーっと。
彼は、言う事を聞いて、常に頼ってくれる事を確信してましたー。





……メリクルが現れるまでは。




約四年前。
ハーレムを訪れたメリクルは、二十歳にもなってなさそうな少年でした。


顔を見た瞬間に嫌な予感がしたんです。
全力で追い出すべきでした。

「シス・ティム、ね。ふぅ~ん……。お前さ……誰にも触られた事、無ぇだろ?」

ワタシの名前を確認した時の、あの男の顔は今でも忘れません。
獲物を見付けた獣のような、獰猛な表情でした。


そして予感通り。

奪われました。


身体を暴かれる際に。
犯される以外にも、重要な何かを奪われる。

そんな感覚がありました。


「これで、お前はもう『純粋なシステム』じゃなくなった。」

何を言ってるのか理解出来ません。

「俺が没ネタだからって、簡単に消せなくなったな。……まぁ精々恨んでくれ。」




メリクルに権力の半分を奪われました。
正確には、ワタシと近い権力を持つようになった、と言うべきでしょうが。

気付けばメリクルは若守(わかもり)様と呼ばれ、イクシィズの後継者として認知されるまでになってしまいました。
否定したくても、イクシィズの態度がそれを助長するんです。


「なぁ、イクシィズ。」

年齢差があるのに、呼び捨てにするのを咎めもしない。


「もうじき二十年、か。」

何の事だか分からない。
だけど二人の間では明白な事らしい。


「俺がお前を自由にしてやるから……楽しみにしてろ。」
「上等だ、メリクル。やってみろ。」

挑戦的な視線を楽しそうに受け止めるイクシィズ。

自由じゃなかった、とでも言うのでしょうか。
望む事は全て叶うように、して来たのに。




イクシィズは、メリクルにも相談するようになりました。
これまではワタシだけだったのに。ずっとそうして来たのに。

ワタシがイクシィズに与えたアドバイスは度々、メリクルの言葉で覆されるようになりました。
これまでは全て言う通りにしていたのに。ずっとそうだったのに。


だけどメリクルは、イクシィズの事を思ってません。
話す事は無責任で適当で、ハーレムにタチ妻を加入させようとしたり、妻のハーレム離脱を勝手に認めたり。
一人で好きな時に出掛けたり、気紛れでイクシィズを連れ出したり。

これではハーレムが……イクシィズの望みが……消えてしまう。


それを止める為のワタシの言葉には、もう以前のような、周囲に有無を言わせぬ強さが無くなっています。

身体が汚されたからって、こんなにもチカラが落ちますか……。
ワタシは一体、何を、奪われたんでしょうか。
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