上 下
144 / 364
第四章 ~なんだかんだでゲームに沿う形でハーレムっぽい感じになる~

オレが言うのも難だけど誤解はちゃんと解いた方がいい

しおりを挟む
「カシュ、夜勤明けなんだろ? ちゃんと家で休まないと。カシュが気を遣って、どっかに行く必要なんか無い。」
「えっ、い…いいよ、だって…」
「良くない。」

振り払って逃げられないようにシッカリと、でも一応なるべく痛くないよう気を付けながら。
カシュの手を掴み直して、玄関の呼出ベルを鳴らす。

アパートメントの外観を見た限り、たぶん一軒一軒の部屋自体はそんなに広くなさそうだ。
ビリーが寝てたりトイレ中じゃなければ、すぐに出て来るだろう。


手を掴まれてるのにカシュがジリジリ離れようと画策する。

「家主のカシュを追い出さなきゃいけないような話なんか、するツモリ無い。」
「でも……きっと、ヴィルは…話し辛いよぉ……。それでなくても、ヴィル……遠慮がちだしぃ。……イグゥさんに告白、するんでもしないんでも。たっ……、他人がいちゃ…」
「他人じゃないだろっ。」

ちょっとだけどオレから離れたとこで、その台詞。
反射的にオレの声は強めになった。


オレの方にカシュを引き寄せる。
小柄な身体は、兵士をやってるのが心配になるくらい、簡単にオレにくっ付いた。


「ヴィルの恋人、って嘘だったのか? カシュが勝手に言ってただけ?」
「……それは、」
「昨日、ビリーは否定しなかったぞ。」
「……優しい、から。」

完全に俯かれたら、身長差の所為でオレにはカシュの表情が見えない。
カシュの顎を掌で包んで上向かせる。

合うハズの視線は、カシュが逸らした。


「そんな顔する前に、カシュの方こそビリーと話した方がいい。」

タチとネコの人数比に差があり過ぎる所為か、それともカシュの性格的なものかはハッキリ断定出来ないけど。
いつでも諦められる準備が出来てる。
いつでも捨てられる覚悟が出来てる。
今のカシュを見てたら、オレはそんな風に感じた。

昨日はオレ、自分の名前が分かった衝撃と嬉しさで、気に掛ける余裕が無かったけど。
カシュの言葉だと、ビリーはオレが好きだったらしくて……。それがどういう経緯でどんな結論になったかまでは流石に分かんないけど。
この表情は、自分の居場所が無いって感じてる子みたいな、そんな感じだ。



「オレとの話は、まぁ一旦置いとくぞ。でもカシュとの話は……。ビリーが、カシュをどう思ってるかは…」
「俺が、言う……話だから。」
「ぅおぉうっ!」

ビックリした! 間抜けな声、出た!


いつの間にか玄関の扉は開いてて、そこにビリーが立ってる。


今の出で立ちは、ウェーブが掛かった明るい色の髪を首の後ろ側で一纏めに。
昨日見たようなゴールドの髪留めや、首元のダブルチェーンは着けてないけど、ピアスは健在だった。
一言で表せば、極稀に休日の自宅で寛いでるパリピ……だ。
ビリーと言うよりは、ヴィルって感じ。分かり難いけどそんな感じ。

あんまり表情が動かないのは、ビリーのまんま。
だけどオレ、分かる。
普通に閉じてるように見える口の中、実は結構、食いしばってるのが。


慌てたカシュがオレの胸を押す。
この状況で逃げたりしないだろうから、その動きに任せてカシュを離した。

「…わっ! ヴィル、ぁの……っ。」
「……カシュ、お帰り。」
「おはよう、ビリー。ちょうどカシュが、詰め所から帰るのを見掛けてさ。せっかくだから、家に連れて来て貰ったんだ。」
「うん……。」

招いてくれてるかどうかも微妙な返事だけど、嫌がられてはいないようで取り敢えず一安心。
してる場合じゃないぞ。


たぶん、この後。ちゃんと話さなきゃいけない。
久し振りに会えたビリーと、いっぱい色々話したいのももちろんだけど。
出来れば、カシュが自分の中だけで何かの結論を出すのは、何とかしたい。

頭を使うのは得意じゃないし。
なんか、またオレが間抜けな状態を晒すだけ、にもなりそうだけどな。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

四大精霊の愛し子はシナリオクラッシャー

ノルねこ
BL
ここはとある異世界ファンタジー世界を舞台にした、バトルあり、ギャルゲー・乙女ゲー要素ありのRPG「最果てに咲くサフィニア」、通称『三さ』もしくは『サン=サーンス』と呼ばれる世界。 その世界に生を受けた辺境伯の嫡男ルーク・ファルシオンは転生者ーーーではない。 そう、ルークは攻略対象者でもなく、隠しキャラでもなく、モブですらなかった。 ゲームに登場しているのかすらもあやふやな存在のルークだが、なぜか生まれた時から四大精霊(火のサラマンダー、風のシルフ、水のウンディーネ、地のノーム)に懐かれており、精霊の力を借りて辺境領にある魔獣が棲む常闇の森で子供の頃から戦ってきたため、その優しげな相貌に似合わず脳筋に育っていた。 十五歳になり、王都にある王立学園に入るため侍従とともに出向いたルークはなぜか行く先々で無自覚に登場人物たちに執着され、その結果、本来攻略対象者が行うはずのもろもろの事件に巻き込まれ、ゲームのシナリオを崩壊させていく。

断罪だとか求婚だとかって、勝手に振り回してくれちゃってるけど。僕はただただ猫を撫でたい。

たまとら
BL
じいちゃんに育てられたリラク。 なんか、ちょっと違うみたいだ。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

至って平凡なハーレムのお話

える
BL
 夢から醒めたら、世界線が変わってしまった主人公。  気になる人達と両片思いの状態でスタートとか、俺得でしかない!!  ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈  緩く書いていきます。  随時リクエスト募集、誤字脱字報告はどうしても気になった場合のみにお願いします。  ~更新不定期~

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

処理中です...