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第四章 ~なんだかんだでゲームに沿う形でハーレムっぽい感じになる~
忘れたかった過去・4 $ルサー$
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「ル、ベロ……? 何で……。」
「……ルサージュ。」
姿も、声も、仕草も。確かにルベロだ。
だがルベロは、兄王子であるアレイスティの護衛騎士に戻ったんじゃ……?
辛い経験の後に見知った人に会って。それがルベロで。俺の身体から力が抜けた。
膝から崩れそうになった俺を、素早くルベロが支えてくれる。
大人に対してあんなに感じた恐怖心が、ルベロに対しては無かった事に、俺はホッとした。
「ルベロ……。何で、ここに……仕事は?」
「護衛騎士は辞めた。急いで来たんだが、思ってたより遠くてよ。……遅くなって、済まねぇ。」
俺を抱えたルベロは暖かかった。
ガサツな男の癖に、普段と全然違って優しく背中を撫でてる。
「こんな、子供に……っ。……辛かっただろ。もう大丈夫だ、俺が護衛してやるから。」
「ルベ……。……っ、う…っ、ふ、ぅ……っ。」
やっと縋れる相手が現れて。やっと安心して。
ルベロにしがみ付いて泣いた。
ひょっとすると、それまでの人生で一番長い時間、泣き続けてたかも知れないぐらい。
「……ぶち、殺してェ……。」
誰をとは言わなかったが。
しゃくり上げ続ける俺の耳に、押し殺したルベロの声が聞こえたような気もした。
* * *
落ち着いてから、ルベロに聞いた話だが……。
俺が出発した翌日。
やって来たハーレムの使者から、俺の『失態』と慰謝料請求が伝えられたそうだ。
それを知った者の中に、アレイスティの護衛中だったルベロもいた。
俺の身に実際は何が起きたか、推測する事は容易だったろう。
失態を犯したとされる俺は宮殿には居られないハズ。
子供相手だし、それなりの詫びをすれば「寛大な扱いを考えている」そうだから、死罪にはならないだろう。何処かに幽閉されるか、辺境の小さな村にでも追いやられるか、森深くに置き去りにされるか……。
国はハーレムと交渉し、俺の処罰を『宮殿及び祖国からの追放』って所に落ち着かせた。
つまり……。
ルサージュ第二王子を廃嫡し、祖国へ迎え入れない代わりに。
ハーレムが決める何処かの町に、俺を住まわせる。用意された住居は、陛下からの、親としての最後の恩情だった。
俺が宮殿の一室に閉じ込められてる間に、俺の住処になる町と家が決まった。
家を買ったりするのに必要な費用を渡すのと引き換えに、俺の行き先の詳細情報が伝えられる。
使者が去った後。
ルベロは陛下に、俺が住む事になった町……ノマルの町……へ行きたいと願い出た。
理由は、俺を護衛する為。それだけだ。
俺が『失態』の詳細を誰かに洩らさないようにする為、危害を加えられる可能性がある。
例えば……脅される。ノマルの町に着いてから監禁される。最悪、命を狙われる恐れまであるかも知れんと、ルベロは警戒した。
ルベロは騎士を辞めてここに来てた。
「安心しろや。兵士になれるよう、紹介状を書いて貰ってんだよ。俺ならまぁ、それなりに出世も出来んだろ。」
確かにルベロなら兵士としても存分にやって行けるだろう。だが……。
リスタニアに居れば、地位も稼ぎも充分なだけ有ったってのに。
それを……俺の為にわざわざ……。馬鹿な奴だ……、ルベロは本当に、馬鹿だ……。
* * *
ルベロが来てくれたから。
俺はちょっとずつだが、どうにか落ち着いて暮らし始めた。
最初の数日は、ルベロが家に泊ってくれた。
生活能力が高い方とも言えねぇルベロに、風呂の入り方や洗濯機の使い方、湯の沸かし方を教わった。
……生憎と二人とも料理は駄目だった。
ルベロがこの町の兵士になってからは、悪いんだが、兵舎に住んで貰った。
俺の精神的な問題が理由だ。
幽閉されてた十日間を、ずっと一人で過ごした所為か。
俺は長い時間、誰かが一緒にいる事にストレスを感じるようになった。部屋が違ってても、同じ家に誰かが居るのが気になった。
王子だった頃は常に……、最低でも隣室には誰か居るのが通常だったのにな。
あぁそうそう。町の兵士になったのは俺も、だ。
十三歳になった俺に、『有能な兵士』であるルベロが提案した事だ。
俺もその頃には、大人に対する無差別な恐怖心も多少マシになってたからな。
それまでの間、ルベロは言葉を違えず俺を守ってくれてたし、俺が兵士になる事でもっと守りやすくなるとか、何かがあったんだろうよ。
兵士連中はネコばっかりだし、子供好きも多かった。
若干気性の荒い奴が数人いたが、荒くればっかりのリスタニア兵を思い出せば、取り立てて怖くはなかった。
そういや、初めて『割れた実』の発作が起きた時は大変だったな。
俺がじゃなく……ルベロが。
何も分からねぇで震えてる俺を見て、ルベロは薬を買って来た。
だがその薬を使うって時に、俺が嫌がって一悶着あった。
薬ってのは、嫌な言い方をすれば『見知らぬタチの精液で作られた』物だからな。
最終的に、泣いて暴れる俺をルベロが押さえ付けて、強引に薬を塗られたなぁ。
結局ルベロも俺も、まだノマルの町で暮らしてる。
ルベロは兵士団の『団長補佐』にまで出世した。この町出身じゃない兵士としては異例らしいな。
団長から気に入られたってのは大きいが、ルベロの実力が……武器の扱いだけじゃなく他にも……高いって事だ。
俺の為に国での地位を捨てて来たルベロが、他の国で認められるのは嬉しかった。
そのルベロだが……俺が三十歳になったのを契機に兵士を辞めた。
ハーレムの元・妻と一緒に、今は果物屋をやってる。
幽閉されてる俺に食事を運んだ、陰気な妻が。ネモーリだ。俺を見張る為に、王都からノマルの町に移動させられてたんだ。
ルベロは、ネモーリが俺を見張ってるとすぐに気付いたらしいんだが……。
なんでか知らんが、惚れ合う事になったらしい。
世の中、何がどうなるか分からねぇモンだな。
「……ルサージュ。」
姿も、声も、仕草も。確かにルベロだ。
だがルベロは、兄王子であるアレイスティの護衛騎士に戻ったんじゃ……?
辛い経験の後に見知った人に会って。それがルベロで。俺の身体から力が抜けた。
膝から崩れそうになった俺を、素早くルベロが支えてくれる。
大人に対してあんなに感じた恐怖心が、ルベロに対しては無かった事に、俺はホッとした。
「ルベロ……。何で、ここに……仕事は?」
「護衛騎士は辞めた。急いで来たんだが、思ってたより遠くてよ。……遅くなって、済まねぇ。」
俺を抱えたルベロは暖かかった。
ガサツな男の癖に、普段と全然違って優しく背中を撫でてる。
「こんな、子供に……っ。……辛かっただろ。もう大丈夫だ、俺が護衛してやるから。」
「ルベ……。……っ、う…っ、ふ、ぅ……っ。」
やっと縋れる相手が現れて。やっと安心して。
ルベロにしがみ付いて泣いた。
ひょっとすると、それまでの人生で一番長い時間、泣き続けてたかも知れないぐらい。
「……ぶち、殺してェ……。」
誰をとは言わなかったが。
しゃくり上げ続ける俺の耳に、押し殺したルベロの声が聞こえたような気もした。
* * *
落ち着いてから、ルベロに聞いた話だが……。
俺が出発した翌日。
やって来たハーレムの使者から、俺の『失態』と慰謝料請求が伝えられたそうだ。
それを知った者の中に、アレイスティの護衛中だったルベロもいた。
俺の身に実際は何が起きたか、推測する事は容易だったろう。
失態を犯したとされる俺は宮殿には居られないハズ。
子供相手だし、それなりの詫びをすれば「寛大な扱いを考えている」そうだから、死罪にはならないだろう。何処かに幽閉されるか、辺境の小さな村にでも追いやられるか、森深くに置き去りにされるか……。
国はハーレムと交渉し、俺の処罰を『宮殿及び祖国からの追放』って所に落ち着かせた。
つまり……。
ルサージュ第二王子を廃嫡し、祖国へ迎え入れない代わりに。
ハーレムが決める何処かの町に、俺を住まわせる。用意された住居は、陛下からの、親としての最後の恩情だった。
俺が宮殿の一室に閉じ込められてる間に、俺の住処になる町と家が決まった。
家を買ったりするのに必要な費用を渡すのと引き換えに、俺の行き先の詳細情報が伝えられる。
使者が去った後。
ルベロは陛下に、俺が住む事になった町……ノマルの町……へ行きたいと願い出た。
理由は、俺を護衛する為。それだけだ。
俺が『失態』の詳細を誰かに洩らさないようにする為、危害を加えられる可能性がある。
例えば……脅される。ノマルの町に着いてから監禁される。最悪、命を狙われる恐れまであるかも知れんと、ルベロは警戒した。
ルベロは騎士を辞めてここに来てた。
「安心しろや。兵士になれるよう、紹介状を書いて貰ってんだよ。俺ならまぁ、それなりに出世も出来んだろ。」
確かにルベロなら兵士としても存分にやって行けるだろう。だが……。
リスタニアに居れば、地位も稼ぎも充分なだけ有ったってのに。
それを……俺の為にわざわざ……。馬鹿な奴だ……、ルベロは本当に、馬鹿だ……。
* * *
ルベロが来てくれたから。
俺はちょっとずつだが、どうにか落ち着いて暮らし始めた。
最初の数日は、ルベロが家に泊ってくれた。
生活能力が高い方とも言えねぇルベロに、風呂の入り方や洗濯機の使い方、湯の沸かし方を教わった。
……生憎と二人とも料理は駄目だった。
ルベロがこの町の兵士になってからは、悪いんだが、兵舎に住んで貰った。
俺の精神的な問題が理由だ。
幽閉されてた十日間を、ずっと一人で過ごした所為か。
俺は長い時間、誰かが一緒にいる事にストレスを感じるようになった。部屋が違ってても、同じ家に誰かが居るのが気になった。
王子だった頃は常に……、最低でも隣室には誰か居るのが通常だったのにな。
あぁそうそう。町の兵士になったのは俺も、だ。
十三歳になった俺に、『有能な兵士』であるルベロが提案した事だ。
俺もその頃には、大人に対する無差別な恐怖心も多少マシになってたからな。
それまでの間、ルベロは言葉を違えず俺を守ってくれてたし、俺が兵士になる事でもっと守りやすくなるとか、何かがあったんだろうよ。
兵士連中はネコばっかりだし、子供好きも多かった。
若干気性の荒い奴が数人いたが、荒くればっかりのリスタニア兵を思い出せば、取り立てて怖くはなかった。
そういや、初めて『割れた実』の発作が起きた時は大変だったな。
俺がじゃなく……ルベロが。
何も分からねぇで震えてる俺を見て、ルベロは薬を買って来た。
だがその薬を使うって時に、俺が嫌がって一悶着あった。
薬ってのは、嫌な言い方をすれば『見知らぬタチの精液で作られた』物だからな。
最終的に、泣いて暴れる俺をルベロが押さえ付けて、強引に薬を塗られたなぁ。
結局ルベロも俺も、まだノマルの町で暮らしてる。
ルベロは兵士団の『団長補佐』にまで出世した。この町出身じゃない兵士としては異例らしいな。
団長から気に入られたってのは大きいが、ルベロの実力が……武器の扱いだけじゃなく他にも……高いって事だ。
俺の為に国での地位を捨てて来たルベロが、他の国で認められるのは嬉しかった。
そのルベロだが……俺が三十歳になったのを契機に兵士を辞めた。
ハーレムの元・妻と一緒に、今は果物屋をやってる。
幽閉されてる俺に食事を運んだ、陰気な妻が。ネモーリだ。俺を見張る為に、王都からノマルの町に移動させられてたんだ。
ルベロは、ネモーリが俺を見張ってるとすぐに気付いたらしいんだが……。
なんでか知らんが、惚れ合う事になったらしい。
世の中、何がどうなるか分からねぇモンだな。
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