116 / 364
第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~
礼拝堂とオヤツが目的地と用件
しおりを挟む
前に、果物屋を見張ってたら、エステードさんに声掛けられたなぁ……。
あれは確か、一週間くらい前だったっけ。
って思い出したりしてるのは。
「教会でバッタリ会うなんて初めてだね?」
エステードさんの弟、フィロウに。
同じような感じで声掛けられてるからだ。
フィロウがニコニコしながら寄って来る。
『超美麗グラフィック』が売りのファンタジーRPGでイケメン王子様キャラとして出て来そうな、爽やかさと凛々しさが同居してるような笑顔だ。
黒髪黒目なのに、陽射しを集中して浴びてるのか、周囲がキラキラして見える。
しかもフィロウは、オレがこの町で『知り合い』って呼べる人の中で、実は唯一オレより背が高い。
……隣に並ばれると、オレのモブ感が半端無いぞ。
「教会に用事? これから?」
「いや、終わった……トコ?」
フランクに話し掛けて来るフィロウ。
そう言えば一昨日。オレはそそくさ帰ったけど。
あの後、エステードさんと何か話したのかな。揉めてなきゃいいけど。
……この様子なら大丈夫そう、だな。
「なんで疑問形なのさ?」
「えーっとさ、実は読みたい本があって図書室に行ったんだけ……あ。……そうだ、フィロウ!」
話し出してから思い付いた。
オレはガシッとフィロウの腕を掴む。ビックリした顔でフィロウが瞬きする。
オレが読みたかった本は全部、エステードさんが借りてる。
エステードさんに、読ませてくれって頼んでいいもんか、迷ってたんだけど。
考えてみたら、エステードさんが借りてるのってハーレム関連の本なんだから、フィロウに読ませる為な可能性が高くないか。
だったら今、その本を保管してるのはフィロウかも知れないぞ。
「エステードさんからハーレムの本とか預かってないかっ?」
「何か凄い分厚っいやつなら、読めって渡されたけど。何で知っ…」
「なぁ、それ、オレにも読ませて貰えないか?」
「え? あれを?」
戸惑ってる感じなフィロウに、グイグイお願いする。
だってオレ今、フィロウと並んでみて、自分がモブだって改めて再認識したからな。
モブは黙っててもラッキーが転がって来ないんだから、自分からお願いして行かなくちゃさ。
「えーと……? ……んん~。ふぅーん……。」
あんなの読みたいの? って言わんばかりだったフィロウだけど。
フィロウなりに、何となく納得してくれたようだ。
甘いマスクにやや悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……いいよ。ウチに来る?」
「フィロウの、か? あのデカイお屋敷に? ……う~ん。」
有難いんだけどオレは躊躇した。
フィロウの屋敷は、ゲームに出て来るライバル天守の住居だから。
黒髪黒目で瞳に『天守のシルシ』があるフィロウは、ゲームの主人公だって思ってたんだよ。
だけど、今いる世界がストーリーモードから二十年くらい経ってるなら。
ゲームでは主人公だった天守や、ライバル天守がどうなってるのか、考えたらちょっと怖くないか。
一瞬、エンドレスモードなんじゃ。って頭に浮かんだけど……。
それこそ『エンドレス』なんて現象、この世界では再現されてるんだろうか。
「割と迷惑だけど、お兄さんからの預かり物だからね。外に持ち出すのは出来ないから。」
「そりゃそうだな。」
「もうしばらく……たぶん、うん。預かってるから、読みたかったらおいでよ。いつでも良いからね?」
「あぁ、ありがとう、助かる。」
迷惑って……。さり気なく本音を言ったな、フィロウ。
そんな風に言うくらいだから、さては、ハーレム作りが全然進んでないな?
これじゃ、エステードさんも不安になるよな。分厚い本とか渡すよな。
納得してるオレに、気付かないままフィロウは話す。
「ねぇ? キミの用事が終わったんなら、ちょっと付き合わない?」
「ドコへ?」
ここが学園物BL小説の世界で、そしてオレが主要キャラだったら、フィロウに「そういう意味じゃないってばっ」なんて赤面しながら言われるんだろうけどなぁ……。
「礼拝堂。……と、オヤツ。」
ほら、これがモブの現実だ。
見事に、簡潔に、目的地と用件を言われただろ。
「意外と信仰熱心なんだな、フィロウ。……何か願い事か?」
「うん。ハーレムがどうにかなりますように、って。」
……エステードさん。分厚い本を渡すだけじゃ、駄目じゃないかな、これ。
あれは確か、一週間くらい前だったっけ。
って思い出したりしてるのは。
「教会でバッタリ会うなんて初めてだね?」
エステードさんの弟、フィロウに。
同じような感じで声掛けられてるからだ。
フィロウがニコニコしながら寄って来る。
『超美麗グラフィック』が売りのファンタジーRPGでイケメン王子様キャラとして出て来そうな、爽やかさと凛々しさが同居してるような笑顔だ。
黒髪黒目なのに、陽射しを集中して浴びてるのか、周囲がキラキラして見える。
しかもフィロウは、オレがこの町で『知り合い』って呼べる人の中で、実は唯一オレより背が高い。
……隣に並ばれると、オレのモブ感が半端無いぞ。
「教会に用事? これから?」
「いや、終わった……トコ?」
フランクに話し掛けて来るフィロウ。
そう言えば一昨日。オレはそそくさ帰ったけど。
あの後、エステードさんと何か話したのかな。揉めてなきゃいいけど。
……この様子なら大丈夫そう、だな。
「なんで疑問形なのさ?」
「えーっとさ、実は読みたい本があって図書室に行ったんだけ……あ。……そうだ、フィロウ!」
話し出してから思い付いた。
オレはガシッとフィロウの腕を掴む。ビックリした顔でフィロウが瞬きする。
オレが読みたかった本は全部、エステードさんが借りてる。
エステードさんに、読ませてくれって頼んでいいもんか、迷ってたんだけど。
考えてみたら、エステードさんが借りてるのってハーレム関連の本なんだから、フィロウに読ませる為な可能性が高くないか。
だったら今、その本を保管してるのはフィロウかも知れないぞ。
「エステードさんからハーレムの本とか預かってないかっ?」
「何か凄い分厚っいやつなら、読めって渡されたけど。何で知っ…」
「なぁ、それ、オレにも読ませて貰えないか?」
「え? あれを?」
戸惑ってる感じなフィロウに、グイグイお願いする。
だってオレ今、フィロウと並んでみて、自分がモブだって改めて再認識したからな。
モブは黙っててもラッキーが転がって来ないんだから、自分からお願いして行かなくちゃさ。
「えーと……? ……んん~。ふぅーん……。」
あんなの読みたいの? って言わんばかりだったフィロウだけど。
フィロウなりに、何となく納得してくれたようだ。
甘いマスクにやや悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……いいよ。ウチに来る?」
「フィロウの、か? あのデカイお屋敷に? ……う~ん。」
有難いんだけどオレは躊躇した。
フィロウの屋敷は、ゲームに出て来るライバル天守の住居だから。
黒髪黒目で瞳に『天守のシルシ』があるフィロウは、ゲームの主人公だって思ってたんだよ。
だけど、今いる世界がストーリーモードから二十年くらい経ってるなら。
ゲームでは主人公だった天守や、ライバル天守がどうなってるのか、考えたらちょっと怖くないか。
一瞬、エンドレスモードなんじゃ。って頭に浮かんだけど……。
それこそ『エンドレス』なんて現象、この世界では再現されてるんだろうか。
「割と迷惑だけど、お兄さんからの預かり物だからね。外に持ち出すのは出来ないから。」
「そりゃそうだな。」
「もうしばらく……たぶん、うん。預かってるから、読みたかったらおいでよ。いつでも良いからね?」
「あぁ、ありがとう、助かる。」
迷惑って……。さり気なく本音を言ったな、フィロウ。
そんな風に言うくらいだから、さては、ハーレム作りが全然進んでないな?
これじゃ、エステードさんも不安になるよな。分厚い本とか渡すよな。
納得してるオレに、気付かないままフィロウは話す。
「ねぇ? キミの用事が終わったんなら、ちょっと付き合わない?」
「ドコへ?」
ここが学園物BL小説の世界で、そしてオレが主要キャラだったら、フィロウに「そういう意味じゃないってばっ」なんて赤面しながら言われるんだろうけどなぁ……。
「礼拝堂。……と、オヤツ。」
ほら、これがモブの現実だ。
見事に、簡潔に、目的地と用件を言われただろ。
「意外と信仰熱心なんだな、フィロウ。……何か願い事か?」
「うん。ハーレムがどうにかなりますように、って。」
……エステードさん。分厚い本を渡すだけじゃ、駄目じゃないかな、これ。
0
お気に入りに追加
662
あなたにおすすめの小説
大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?
あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。
……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。
学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。
……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!?
由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!?
・・・・・
乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。
始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
残業リーマンの異世界休暇
はちのす
BL
【完結】
残業疲れが祟り、不慮の事故(ドジともいう)に遭ってしまった幸薄主人公。
彼の細やかな願いが叶い、15歳まで若返り異世界トリップ?!
そこは誰もが一度は憧れる魔法の世界。
しかし主人公は魔力0、魔法にも掛からない体質だった。
◯普通の人間の主人公(鈍感)が、魔法学校で奇人変人個性強めな登場人物を無自覚にたらしこみます。
【attention】
・Tueee系ではないです
・主人公総攻め(?)
・勘違い要素多分にあり
・R15保険で入れてます。ただ動物をモフッてるだけです。
★初投稿作品
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
噂の補佐君
さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。
[私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。
個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。
そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!?
無自覚美少年な補佐が総受け
*
この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。
とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。
その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。
王道BL学園~モブに転生したボクは見ていたい!巻き込まれたくないのに!~
星崎 杏
BL
腐女子の私が死んで気がついたら、お気に入りのゲームのモブに転生した!?
ボクは見ていたいだけなのに、巻き込まれるのはノーサンキューです!
念のため、R15にしています。過激なシーンは少なめにしたいです。
父が腐男子で困ってます!
あさみ
BL
父子家庭に育った尾崎リョウは16歳の誕生日に、若くてイケメンの父、宗親(ムネチカ)に腐男子である事をカミングアウトされる。
趣味に文句は言わないと思うリョウだったが、宗親のBL妄想はリョウの友人×リョウだった。
いつでも誰といても、友人×リョウで妄想されては聞かされるリョウは大迷惑。
しかも学校にいる美少年をチェックしては勧めてくる始末。
どう見ても自分と釣り合わない優等生や、芸能人の美少年まで攻キャラとして推してくる。
宗親本人は腐男子であるだけで、恋愛対象は美女だという事で、自分勝手にリョウだけを振り回す毎日。
友人達はみんな心が広く、宗親の趣味を受け入れたり、面白がったりで、今までよりもリョウの家に集まるようになる。
そんな中、宗親に感化されたかのように、自分も腐男子かもしれないと言いだす友人や、リョウの事を好きになったとストレートに伝えてくる友達まで現れてしまう。
宗親の思い通りにはなりたくないと思うリョウだが、友人達の事も気になりだして……。
腐男子の父親に振り回される、突っ込み系主人公総受けBLラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる