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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

閉じ込めた記憶と想い・2 $リッカ$

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 ※【逃げ出すリッカと送り出されるオレ】【リッカと風呂場で】辺り


ザザァーーー。


頭から浴びてるシャワーが激しい水音を鳴らしてる。
だけど耳には、気持ち良さそうに啼くユーグの声や、そんなユーグを可愛がってあげるアノ子の興奮した声がこびり付いたみたいに残ってて。

ベッドで繋がったままのアノ子に「これ……どうしよう」って囁かれたユーグが、悪戯っぽくアタシを見て。
たぶん「次はリッカを」って言い出すのが分かったから。
寝室を逃げ出して来たのに。



心臓がドキドキしてる。
二人の絡みを見て興奮しちゃった所為なのもあるけど。
ハーレムにいた頃の事、思い出しちゃって。

同じハーレムにいても、妻同士の全員が親しく交流するんじゃないから、アタシは、ユーグとウェネットの二人しか知らないんだけどね。


ユーグはアタシよりずっと、宮さまへの奉仕が上手で。何より積極的で。
宮さまからとっても可愛がられてた。

でもアタシは、自分の見た目に自信を持ってた所為もあるけど。
恥ずかしくて……口淫も手淫も下手くそなのに、宮さまが求める姿態もろくに取れない、いわゆる『ハズレ妻』だった。

アタシをベッドに呼ぶ時に、ユーグも一緒に呼ぶようになったのも仕方ないわよね。
自分で言うのも悲しい話だけど、アタシじゃ、抱いてもあんまり面白くないもの。

時々二人で一緒に宮さまのお相手をして……ユーグが咥えてるのを見たり、アタシがユーグに舐めて貰って教わったり。
そんなだから、アタシ達はどっちかが気持ち良くなると、もう一人も興奮するようになってた。

宮さまはそれを見るのも好きだった、みたいね。



「ヤだ、アタシったら……宮さま、って……。」

ようやく気付いて思わず自嘲しちゃった。

ハーレムの主は天守さまって呼ばれるのが普通。
それを宮さまって呼べるのは、ハーレム内の人間だけなのに。

いつまで妻気取りなのかしら。
もうあの頃の記憶なんて、幾つかの出来事を箇条書きみたいに覚えてる程度しかない。
どんな気持ちで過ごしたかなんて殆ど忘れちゃったくらい、ずっと昔の事なのに。




   *   *   *   *   *   *




意識が急に浮上したら、辺りは殆ど真っ暗。
ベッドの足元の方にある小さな灯りで、部屋の中がなんとか見える程度。

アノ子の上に跨ってる時にユーグがしゃぶって来るから、たぶん失神しちゃったんだろうけど。
アタシはベッドに横たわってた。
しかも……アノ子に、腕枕して貰ってた。

誰が着せてくれたのか、柔らかいガウンを羽織ってて良かった。
もしも裸で抱き付いたりしてたらアタシ、ビックリして悲鳴上げるトコだったわよ。



ちょっと仰け反ってみたら、眠ってるアノ子の顔が見える。
ルサーが恋人っぽいの知ってて、そのルサーに黙って身体を重ねる事に罪悪感があったけど……アノ子に触られるのは気持ち良かった。

コノ子とあんな事シタのよね……。
たぶんアタシの方が二十くらいは年上なのに。
こんなオジサン相手に……よく出来たわね。


「ありがと、ね。」

謝るなって言われたから。
そっと一言だけ。

手を伸ばして、アノ子の目元に掛かってた髪を横へ撫でた。
起きてる時よりもずっとあどけない寝顔。


「不思議な子……。」

あんなに強くて、度胸があって、だけど弱くて、人が好くて、クールで、ちょっと自信無さそうなトコあって、それなのに強引なトコもあって、あざといくらい優しくて、シテる時も優しくて意地悪で……。

……ううぅん、違う。一番不思議なのは。


「……どうして?」

どうしてアタシの名前を知ってるの?
アタシの名前、知ってる人なんてあんまりいないのに。
知ってても名前で呼ぶ人なんて……ユーグくらいなのに。

なんで「オネェ」でも「リッカさん」でもなく、「リッカ」って呼ぶの?
その所為で……これまでずっと忘れてた、思い出さないようにしてた宮さまの事、思い出しちゃってるのよ?
アタシの首筋に噛み付くのが好きとか……偶然、よね?


「アタシの事、知ってるの……?」

返事は来ない。アノ子は起きない。
起こさないよう小さな声で囁いてるから。



アノ子が自分の名前を知らない子で良かった。
それをアタシが知ってて良かった。

聞いても答えられないって分かってるから、「アナタは誰なの?」なんて口走らなくて済んだから。
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