96 / 364
第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~
そっと見守るしかないオレ
しおりを挟む
それから気を取り直して、聞かれたことに答えた。
事件の目撃者になるのも兵士に尋問されるのも初めてだから、もっと緊張しそうなもんなのに。カシュの雰囲気の所為か、言動の所為か、オレは割かし普通に答えられた気がする。
ひょっとしたら最初のあの質問も、そういう狙いだったのかも。
……うん。勢いで適当な回数とか答えちゃわなくて良かった。
「ルサーは、このまま上がっちゃいなよ~。報告はコッチでやっといてあげるからさっ。」
オレの話を聞き終えたカシュがウィンクしながらメモ書きを仕舞い込んだ。
微妙な顔をしたルサーが了解する。
「ねぇ……彼氏ぃ?」
「うん?」
立ち上がったカシュがオレに向かって悪戯っぽく微笑んだ。
反射的に返事するオレ。
「程々に可愛がってあげて~? ヤリ貯めは身体に良くないよぉ?」
「ふぇっ?」
ビックリした。メッチャ変な声出た。
これって完全にその……オレとルサーの、アレ……。同じ詰所の人達にバレてる、わけだよな?
オレ、どうしたらいいんだ。なんて答えればいいんだろ?
「おい、コラ! カシュっ!」
「はいはい、じゃあねっ。お先にぃ~。」
真っ赤になったルサーが怒鳴って、平気そうなカシュは手を振って立ち去った。
ポツン。じゃないけど、部屋に残ったオレ、ルサー、それからリオ。
リオはルサーに話があるみたいだけど。
ルサーとリオは何となく、どっちが話し出すかを計り合ってる感じで。
先に声を出したのは。
「お話は終わったんですね。」
カシュと入れ替わりで部屋に入って来た看護師さんだった。
ルサーもリオも微妙な顔になって、オレまで何だか微妙な気持ちで、何かを誤魔化すように頭を掻いた。
「今晩は泊った方が良いですよ。部屋の準備が出来たら呼びに来ますから、また少しだけ待って下さいね。」
リオの状態を確認した看護師さんは、そう伝えてまた忙しそうに部屋を出てった。
「えっと、彼の事……。」
また沈黙になりそうな雰囲気を破ったのはリオ。
オレに小さく笑い掛けてから、リオはルサーの方に向き直った。
「ルサーさんと、ちゃんと話したかったんだけど。」
「さん付けはいらねぇよ。ルサーで、いい。」
「……ありがと。おれの事も、リオって。」
「あぁ。」
そのタイミングで慌てて起き上がるオレ。
リオがふら付いたように見えたから。
駆け寄って無言で背中を支えた。
黙ってるのは一応、二人の会話を邪魔しないように気を遣ったつもりだ。
リオがオレを見て。……なんでかちょっと膨れた顔になる。
「ほら、そ~いうトコ。勘違い……しちゃうだろ。」
「言っても無駄だぞ? そういう奴だ。」
リオに続いて、ルサーも肩を竦めて言う。
オレの手から離れるように、リオは背筋を伸ばした。
「あの、ルサー。もう……分かってるだろうけど。ちゃんと伝えさせて?」
「……あぁ。」
リオはさっきより落ち着いてるけど、声が緊張してるって分かる。
オレは黙って聞いてるべきだ、って思った。
「おれは……。彼の事が、好き。……好きだって告白、した。」
リオは静かな声で話す。
ルサーが息を呑んだ気配がした。
「ルサーを、蹴落とすツモリじゃない……。そんな事、出来ない。」
「俺、は……そういうんじゃ…」
「知っておいて。考えて貰えたら、嬉しい。」
否定しかけたルサーだけど。
そっとリオにお願いされて、頷いた。それとも俯いただけかな。
「悪いけど……今日はもう帰って?」
疲れたのか、リオはベッドに横たわった。
首を捻ってオレとルサーの方を向く。顔に疲労が浮かんでた。
「おれは大丈夫だから。」
そう言われても。
ハイそうですかって、リオを残して帰れない。
「でも……刃物で大きな怪我したときは熱が出やすいって聞いたぞ。一人でいるの、心細いだろ。」
「一人じゃないだろ。たぶん、看護師さんもいるし。」
「や、でもさ…」
「……そのぐらいにしとけ。」
リオに反論するオレをルサーが止めた。
腕を掴んでオレを立たせる。
「今日は一人で休ませてやれ。」
「う……。わ、分かった……。」
「付き添ってくれたの、凄い嬉しかった。えっ、と……。あの……、……おや、すみ?」
何故か見送りの言葉が疑問形なリオ。なんでだ?
よく分かんなくて、ルサーの方を見たら、そっと視線を逸らされた。なんでだ?
事件の目撃者になるのも兵士に尋問されるのも初めてだから、もっと緊張しそうなもんなのに。カシュの雰囲気の所為か、言動の所為か、オレは割かし普通に答えられた気がする。
ひょっとしたら最初のあの質問も、そういう狙いだったのかも。
……うん。勢いで適当な回数とか答えちゃわなくて良かった。
「ルサーは、このまま上がっちゃいなよ~。報告はコッチでやっといてあげるからさっ。」
オレの話を聞き終えたカシュがウィンクしながらメモ書きを仕舞い込んだ。
微妙な顔をしたルサーが了解する。
「ねぇ……彼氏ぃ?」
「うん?」
立ち上がったカシュがオレに向かって悪戯っぽく微笑んだ。
反射的に返事するオレ。
「程々に可愛がってあげて~? ヤリ貯めは身体に良くないよぉ?」
「ふぇっ?」
ビックリした。メッチャ変な声出た。
これって完全にその……オレとルサーの、アレ……。同じ詰所の人達にバレてる、わけだよな?
オレ、どうしたらいいんだ。なんて答えればいいんだろ?
「おい、コラ! カシュっ!」
「はいはい、じゃあねっ。お先にぃ~。」
真っ赤になったルサーが怒鳴って、平気そうなカシュは手を振って立ち去った。
ポツン。じゃないけど、部屋に残ったオレ、ルサー、それからリオ。
リオはルサーに話があるみたいだけど。
ルサーとリオは何となく、どっちが話し出すかを計り合ってる感じで。
先に声を出したのは。
「お話は終わったんですね。」
カシュと入れ替わりで部屋に入って来た看護師さんだった。
ルサーもリオも微妙な顔になって、オレまで何だか微妙な気持ちで、何かを誤魔化すように頭を掻いた。
「今晩は泊った方が良いですよ。部屋の準備が出来たら呼びに来ますから、また少しだけ待って下さいね。」
リオの状態を確認した看護師さんは、そう伝えてまた忙しそうに部屋を出てった。
「えっと、彼の事……。」
また沈黙になりそうな雰囲気を破ったのはリオ。
オレに小さく笑い掛けてから、リオはルサーの方に向き直った。
「ルサーさんと、ちゃんと話したかったんだけど。」
「さん付けはいらねぇよ。ルサーで、いい。」
「……ありがと。おれの事も、リオって。」
「あぁ。」
そのタイミングで慌てて起き上がるオレ。
リオがふら付いたように見えたから。
駆け寄って無言で背中を支えた。
黙ってるのは一応、二人の会話を邪魔しないように気を遣ったつもりだ。
リオがオレを見て。……なんでかちょっと膨れた顔になる。
「ほら、そ~いうトコ。勘違い……しちゃうだろ。」
「言っても無駄だぞ? そういう奴だ。」
リオに続いて、ルサーも肩を竦めて言う。
オレの手から離れるように、リオは背筋を伸ばした。
「あの、ルサー。もう……分かってるだろうけど。ちゃんと伝えさせて?」
「……あぁ。」
リオはさっきより落ち着いてるけど、声が緊張してるって分かる。
オレは黙って聞いてるべきだ、って思った。
「おれは……。彼の事が、好き。……好きだって告白、した。」
リオは静かな声で話す。
ルサーが息を呑んだ気配がした。
「ルサーを、蹴落とすツモリじゃない……。そんな事、出来ない。」
「俺、は……そういうんじゃ…」
「知っておいて。考えて貰えたら、嬉しい。」
否定しかけたルサーだけど。
そっとリオにお願いされて、頷いた。それとも俯いただけかな。
「悪いけど……今日はもう帰って?」
疲れたのか、リオはベッドに横たわった。
首を捻ってオレとルサーの方を向く。顔に疲労が浮かんでた。
「おれは大丈夫だから。」
そう言われても。
ハイそうですかって、リオを残して帰れない。
「でも……刃物で大きな怪我したときは熱が出やすいって聞いたぞ。一人でいるの、心細いだろ。」
「一人じゃないだろ。たぶん、看護師さんもいるし。」
「や、でもさ…」
「……そのぐらいにしとけ。」
リオに反論するオレをルサーが止めた。
腕を掴んでオレを立たせる。
「今日は一人で休ませてやれ。」
「う……。わ、分かった……。」
「付き添ってくれたの、凄い嬉しかった。えっ、と……。あの……、……おや、すみ?」
何故か見送りの言葉が疑問形なリオ。なんでだ?
よく分かんなくて、ルサーの方を見たら、そっと視線を逸らされた。なんでだ?
0
お気に入りに追加
662
あなたにおすすめの小説
大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?
あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。
……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。
学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。
……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!?
由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!?
・・・・・
乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。
始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
残業リーマンの異世界休暇
はちのす
BL
【完結】
残業疲れが祟り、不慮の事故(ドジともいう)に遭ってしまった幸薄主人公。
彼の細やかな願いが叶い、15歳まで若返り異世界トリップ?!
そこは誰もが一度は憧れる魔法の世界。
しかし主人公は魔力0、魔法にも掛からない体質だった。
◯普通の人間の主人公(鈍感)が、魔法学校で奇人変人個性強めな登場人物を無自覚にたらしこみます。
【attention】
・Tueee系ではないです
・主人公総攻め(?)
・勘違い要素多分にあり
・R15保険で入れてます。ただ動物をモフッてるだけです。
★初投稿作品
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
噂の補佐君
さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。
[私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。
個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。
そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!?
無自覚美少年な補佐が総受け
*
この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。
とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。
その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。
王道BL学園~モブに転生したボクは見ていたい!巻き込まれたくないのに!~
星崎 杏
BL
腐女子の私が死んで気がついたら、お気に入りのゲームのモブに転生した!?
ボクは見ていたいだけなのに、巻き込まれるのはノーサンキューです!
念のため、R15にしています。過激なシーンは少なめにしたいです。
父が腐男子で困ってます!
あさみ
BL
父子家庭に育った尾崎リョウは16歳の誕生日に、若くてイケメンの父、宗親(ムネチカ)に腐男子である事をカミングアウトされる。
趣味に文句は言わないと思うリョウだったが、宗親のBL妄想はリョウの友人×リョウだった。
いつでも誰といても、友人×リョウで妄想されては聞かされるリョウは大迷惑。
しかも学校にいる美少年をチェックしては勧めてくる始末。
どう見ても自分と釣り合わない優等生や、芸能人の美少年まで攻キャラとして推してくる。
宗親本人は腐男子であるだけで、恋愛対象は美女だという事で、自分勝手にリョウだけを振り回す毎日。
友人達はみんな心が広く、宗親の趣味を受け入れたり、面白がったりで、今までよりもリョウの家に集まるようになる。
そんな中、宗親に感化されたかのように、自分も腐男子かもしれないと言いだす友人や、リョウの事を好きになったとストレートに伝えてくる友達まで現れてしまう。
宗親の思い通りにはなりたくないと思うリョウだが、友人達の事も気になりだして……。
腐男子の父親に振り回される、突っ込み系主人公総受けBLラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる