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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

そっと見守るしかないオレ

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それから気を取り直して、聞かれたことに答えた。
事件の目撃者になるのも兵士に尋問されるのも初めてだから、もっと緊張しそうなもんなのに。カシュの雰囲気の所為か、言動の所為か、オレは割かし普通に答えられた気がする。
ひょっとしたら最初のあの質問も、そういう狙いだったのかも。

……うん。勢いで適当な回数とか答えちゃわなくて良かった。



「ルサーは、このまま上がっちゃいなよ~。報告はコッチでやっといてあげるからさっ。」

オレの話を聞き終えたカシュがウィンクしながらメモ書きを仕舞い込んだ。
微妙な顔をしたルサーが了解する。


「ねぇ……彼氏ぃ?」
「うん?」

立ち上がったカシュがオレに向かって悪戯っぽく微笑んだ。
反射的に返事するオレ。

「程々に可愛がってあげて~? ヤリ貯めは身体に良くないよぉ?」
「ふぇっ?」

ビックリした。メッチャ変な声出た。
これって完全にその……オレとルサーの、アレ……。同じ詰所の人達にバレてる、わけだよな?
オレ、どうしたらいいんだ。なんて答えればいいんだろ?


「おい、コラ! カシュっ!」
「はいはい、じゃあねっ。お先にぃ~。」

真っ赤になったルサーが怒鳴って、平気そうなカシュは手を振って立ち去った。



ポツン。じゃないけど、部屋に残ったオレ、ルサー、それからリオ。

リオはルサーに話があるみたいだけど。
ルサーとリオは何となく、どっちが話し出すかを計り合ってる感じで。


先に声を出したのは。


「お話は終わったんですね。」

カシュと入れ替わりで部屋に入って来た看護師さんだった。
ルサーもリオも微妙な顔になって、オレまで何だか微妙な気持ちで、何かを誤魔化すように頭を掻いた。

「今晩は泊った方が良いですよ。部屋の準備が出来たら呼びに来ますから、また少しだけ待って下さいね。」

リオの状態を確認した看護師さんは、そう伝えてまた忙しそうに部屋を出てった。




「えっと、彼の事……。」

また沈黙になりそうな雰囲気を破ったのはリオ。
オレに小さく笑い掛けてから、リオはルサーの方に向き直った。


「ルサーさんと、ちゃんと話したかったんだけど。」
「さん付けはいらねぇよ。ルサーで、いい。」
「……ありがと。おれの事も、リオって。」
「あぁ。」

そのタイミングで慌てて起き上がるオレ。
リオがふら付いたように見えたから。

駆け寄って無言で背中を支えた。
黙ってるのは一応、二人の会話を邪魔しないように気を遣ったつもりだ。


リオがオレを見て。……なんでかちょっと膨れた顔になる。

「ほら、そ~いうトコ。勘違い……しちゃうだろ。」
「言っても無駄だぞ? そういう奴だ。」

リオに続いて、ルサーも肩を竦めて言う。


オレの手から離れるように、リオは背筋を伸ばした。

「あの、ルサー。もう……分かってるだろうけど。ちゃんと伝えさせて?」
「……あぁ。」

リオはさっきより落ち着いてるけど、声が緊張してるって分かる。
オレは黙って聞いてるべきだ、って思った。


「おれは……。彼の事が、好き。……好きだって告白、した。」

リオは静かな声で話す。
ルサーが息を呑んだ気配がした。


「ルサーを、蹴落とすツモリじゃない……。そんな事、出来ない。」
「俺、は……そういうんじゃ…」
「知っておいて。考えて貰えたら、嬉しい。」

否定しかけたルサーだけど。
そっとリオにお願いされて、頷いた。それとも俯いただけかな。




「悪いけど……今日はもう帰って?」

疲れたのか、リオはベッドに横たわった。
首を捻ってオレとルサーの方を向く。顔に疲労が浮かんでた。


「おれは大丈夫だから。」

そう言われても。
ハイそうですかって、リオを残して帰れない。


「でも……刃物で大きな怪我したときは熱が出やすいって聞いたぞ。一人でいるの、心細いだろ。」
「一人じゃないだろ。たぶん、看護師さんもいるし。」
「や、でもさ…」
「……そのぐらいにしとけ。」

リオに反論するオレをルサーが止めた。
腕を掴んでオレを立たせる。


「今日は一人で休ませてやれ。」
「う……。わ、分かった……。」
「付き添ってくれたの、凄い嬉しかった。えっ、と……。あの……、……おや、すみ?」

何故か見送りの言葉が疑問形なリオ。なんでだ?
よく分かんなくて、ルサーの方を見たら、そっと視線を逸らされた。なんでだ?
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