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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

年下相手と●●●6 $ルサー$

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記憶があやふやだ。
気付いたら終わってて、気付いたら風呂場にいて、いつの間にかベッドで眠ってた。


……酷く酔っぱらった時でも、こんな事は無かったんだがな。





「ダルい。」

昨夜は本気で駄目になるぐらい、ヤリ過ぎだった。
お陰で今朝の俺は、ダル過ぎてパンを千切るのにも一苦労。
しかも眠い。今起きてるだけでも奇跡なぐらいだ。


年下がどーのこーのって散々思ってたクセに、このザマとはな……。
すっかりアイツに嵌まっちまってる。自分でも情けねェわ。


食卓の向こう側から、アイツが俺の機嫌をそっと伺って来る。
食事の途中で邪魔されたって文句を言ってやったら、アイツは面白いぐらいにしゅんとして、イイ身体を小さく縮こめた。

「ゴメン……。次は気を付けるから。」
「はぁ……、お前なァ……。食事中は駄目だ。つ……次、やったら流石に怒るぞ?」

こうやって反省はしてるんだがなぁ、反省はな。
……ったく。前回もヤリ過ぎで俺に叱られてンだろうがよ。


言葉では叱ってみたが、それだけ俺に盛ってたンだと思えば悪い気しねぇ。

あんなに啼かされたってのに、一晩明けてからの無害そうな顔を見たら。怒る気も失せちまうんだが……それはそれで、調子に乗らせるからな。
機嫌が悪そうに見えるよう、俺はキュっと唇を引き結んだ。




   *   *   *   *   *   *




詰め所まで、アイツに送って貰う。

いつも通りだが、今日に限っては助かったかも知れん。
俺一人だったら来なかっただろうからな。


……待てよ? そもそも俺がこんだけダルいのは誰の所為だ?
今回は風呂場で盛って来なかったから、そこだけは褒めてやれる所だが……って、それも待て。それも普通、褒められるようなトコじゃねぇぞ。

幾ら若いからって普通、タチが……一通りのセックスが終わった後、割とすぐにまた始めたがるなんぞ、なかなか聞かねぇ話なんだが。
本当にどんだけ……。まさか……タチなだけじゃなく、バリタチなのか……?



詰め所に着いた所で、アイツが急に晩飯のリクエストを聞いて来た。


好きなメニューで機嫌を取ろうってよ、子供かよ。
あんな事とかこんな事とか、する癖してな。

まぁ……美味いから、別に何でもいいが。


「……最後まで食えるのにしてくれれば、な?」

ダルいのは変わらないが気分はいい。
昨夜の晩飯は途中で切り上げさせられたから、それをネタに揶揄ってやった。


てっきりアワアワ狼狽えるか、困ったような顔をするかと思ったアイツが。



「ルサー。今日オレ、迎えに来るから。」

どうしてその発想になった?


「な、んで……急にどうした?」
「どうしても。いいから待ってて。帰って来る途中で強姦されたくないだろ? 迎えに来るからなっ。」


……どうしてその発想になった?(二回目)






首を捻りながらアイツの背中を見送ってたら、普段よりかなり視線を感じる。
振り返る俺から慌てて目を逸らす奴等が数人いた。


……毎朝、一緒に来てンだろ。今更、見てんじゃねぇぞ。


ムスッとした顔で席に着く俺に、さっそく話し掛けて来る奴が一人いた。

「おはよ、ルサーぁ~。ねぇ、ちょっとぉ~。」

同僚の、カシュ。
コイツにはビルメリオを探す時の借りがあるからな、無下には出来ねぇ。


「ルサーの休暇ってぇ、明日じゃなかったぁ~?」
「あぁ、明日だ。それがどうした?」
「ん~っとさ……。」

カシュはなかなか答えずに、微妙な笑顔で俺を眺め回す。


「気持ち悪いな。何だ?」
「ルサー、昨夜シたね。」
「ッは……?」

なんで知ってンだ……っ。

既に分かってる事を確認するような言い方でよ。
ハタから見ても丸分かりなのかと思ったら、驚くやら焦るやらで、即座に否定する事を俺は忘れちまってた。


「すっごい、艶々してるしぃ。色気も出てるしぃ。肌の調子も良さそうだしぃ。気怠そうな雰囲気ぃ?」
「馬鹿言うな。」
「明日が休みなんだから、今日シたら良かったのに~。」

駄目だ。カシュの中ではもう、俺は昨夜シた事で確定だ。
まぁ……実際、ヤッたわけだが。


「日にち変えて貰えば良いのに……って、無理だよねぇ普通。せっかくだもん。スるよねぇ~。」

しみじみした口調でカシュが言う通り。
タチから誘われて断れるネコはそうそういねぇ。カシュもそうなんだろう。



そもそもタチは二割程度しかいねぇ上に、一般的には割とネコよりも淡泊だ。
しかも大概は、特に支障無く『抱ける』んであって、積極的に『抱きたい』って思う頻度はあまり高くないみたいでな。
そのタチが珍しく抱きたいなんて意思を見せりゃ、応えてやりたいって思うのがネコってもんだ。

タチの中でも、特に抱きたい欲を強く持ってるような一部の奴が、バリタチって呼ばれてンだが……。



「あの子ってどう? 若いから流石に一回じゃないよねぇ~?」

まだ話してんのか。仕事中だって止めようにも、まだ暇な時間だしな。
ムキになってるとか言われンのも腹が立つ……クソっ。


「そのダルそうな様子はぁ……。三回くらい出されてパンパンになっちゃったヤツだっ。」

カシュの言葉で、聞き耳を立ててた連中が咳込んだ。


三回でも十分多いってのに。
アイツは少なくとも五~六回以上。割れた実があるのに、中で吸収し切れなくて溢れて来るぐらいだ。

……って言ったらコイツら、どんだけ驚くだろうなァ。



「い~いなぁ、年下の、若い恋人ぉ~。」
「カシュは恋人いるだろが。んな事言ってると、そこら辺で刺されるぞ? ……あと。俺はそんなんじゃねぇ。」

一応だが釘を刺してやると、カシュは不満そうに膨れた。

「心配してるのにぃ~。愚図愚図言ってたら、自分の場所無くなっちゃうよぉ?」
「……気持ちだけ貰っておく。」
「恋人の一人にして貰える内にぃ、さっさとくっ付いた方が良いんだからねっ。」


心配してくれてるのは有難いんだが。
こりゃあ、アイツが迎えに来た時にも何かしら言われそうだな……。



そう考えてた俺だったが。


夕方近くになっても。

アイツはなかなか姿を現さなかった。
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